愛知万博と環境影響評価法

愛知万博環境影響評価
• シデコブシ 博覧会協会作成のCD-ROM
1
万博環評の4つの制約
評価手法検討委員会議事要旨(1997)
• 環境影響評価法施行前の先取り
実施
• 跡地利用計画との「共生」
• 2005年開催という時間的制約
• 環境万博という独自の目標
+アセスメント途中の計画変更
2
万博環評の論点
• 跡地利用計画の問題は、万博のア
セスメントで議論できなかった
か?
• 評価書前に会場計画を変える場合、
アセスメントはどうすべきか?
• 里山を生かした環境万博は、海上
の森をどう評価すべきだったか?
3
遷移する二次林への影響評価方法?
環評項目等選定指針に関する基本的事項
• 予測の対象となる時期は、…供用後の
定常状態及び工事の実施による影響が
最大になる時期等について、選定項目
ごとの環境影響を的確に把握できる時
期を設定
•
また、供用後定常状態に至るまでに長期間
を要する場合又は予測の前提条件が予測の対
象となる期間内で大きく変化する場合には、
必要に応じ中間的な時期での予測を行うこと
4
絶滅リスクへの影響評価
Population size
• 要因=現存個体数の減少、減少率の激化
• 新たな減少要因の付加=減少率激化
• ある事業の影響=現存個体数減少
1,000
100
10
1
1998
2008
2018
2028
Year
5
個体数、減少率、平均余命の
回帰式
• 全国個体数 Nr=Σni×[3.162×10i]
• 減少率 Rreg=1-Σri(fi+pi)/(1+Σfi)
– p=(0.74, 0.26, 0, 0, 0, 0),
– r=(0.000, 0.000, 0.057, 0.288, 0.751, 1.00)
• 平均余命 Treg = a - b lnNr/ln(1-Rreg) +c
ln(L)
– a=2.709, b=4.650, c= 4.559
6
損失余命を計る
• 事業地内の株数(開花個体)を数える
• 全国個体数、区域数、減少率は植物
RDBで公開
• 事業地を含む25000分の1地図の基礎情
報は未公開
• T(Nr, R)とT(Nr-N1, R)を比べる
• 絶滅リスクの増分は逆数の差Δ(1/T)
7
絶滅リスクの上昇
シデコブシ400株
8
シデコブシと2005年愛知万博
• レッドリストの基礎情報(個体数分布13500
個体と減少率分布)に加えて、万博予定地付
近の個体数情報(数千×2=14000)を考慮
• 21200個体、23区域、減少率31%/10年
• 平均余命 約257年
• もしも万博予定地内の400個体を潰していた
ら、平均余命は約1年短縮していた。
• 誘致前の計画変更で予定入場者数は4000万人
から2500万人に40%の規模縮小
9
貴重植物の絶滅リスク評価
• Δ(1/T)を絶滅リスクの増分とする
Sp.
RDB R
シマジタムラソウ
VU
L
Np
N2
N1
T0
D(1/T )
0.59 4370
447
5,000
10
84 5´ 10-5
オオヒキヨモギ VU
0.46
137
31
1,000
40
128 2´ 10-6
ウンヌケ
VU
0.68 1721
108
7,000
20
77 2´ 10-6
イトトリゲモ
EN
0.84
31
18
2,000
20
38 3´ 10-6
シデコブシ
VU
0.29 1554
140
10,000
20
302 3´ 10-7
ヒメコヌカグサ nt
0.35 1888
681 100,000
60
274 2´ 10-7
サガミトリゲモ EN
0.85
13
9
4,000
10
40 7´ 10-7
シラン
nt
0.48
64
41
10,000
50
156 1´ 10-7
サクラバハンノキ
nt
0.38
711
88
30,000
60
229 9´ 10-8
クロヤツシロラン EN
0.74
2
1
2,000
20
56 9´ 10-8
キンラン
0.62
2
1
3,000
100
88 3´ 10-8
0.31
127
33
60,000
50
316 1´ 10-8
VU
タチキランソウ nt
10
シマジタムラソウへの影響大
直接改変による消失評価
(準538頁)
踏圧等の間接的影響予測
(準188頁)
影響規模が見えない(準541
頁)
人の踏み荒らしの影響を
無視
1日2万人余が来る森林
体感地区
11
リお
ンび
グた
調だ
査し
い
ボ
ー
(上杉毅氏・瀬戸市住人のページhttp://www.synnet.or.jp/UESUGI/noexpo/98102601s.jpgより)
12
伐らねば良いのか?
(瀬戸市住人のページhttp://www.synnet.or.jp/UESUGI/noexpo/990217.htmより)
13
オオタカの高利用域
準備書
古巣は使
われず、
造成対象
14
反証可能な影響評価
• 直接改変が営巣中心域に及ばない
からオオタカへの影響は回避でき
(準635頁)、オオタカ・フクロウ生態系
への影響が比較的小さい(準757頁)
– 営巣中心域は営巣木の周囲50m
– 実際に予定地内に営巣し、影響
は避けられないことを示唆
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オオタカの現営巣地でなく、
営巣適地を予測すべき
• 消失する営巣(可能)地等を予測(準191頁)
– 営巣可能地を予測していない
• オオタカの環境容量を記すべき
• 予定地内に古巣(準597頁、資料編208頁)
– 予定地内に営巣中心域はない(準631頁)
• 年により営巣場所を変え得る(準631頁)
– 3つがい目の営巣を予測していない
16
代替案の必要性
• オオタカ営巣場所は変わり得る+
新たな巣を保全する(準備書631-2
頁)
– 1つの会場計画・道路計画では危機
管理ができない
• 環境庁基本的事項“複数案を同時ま
たは並行して検討”(時間がなけれ
ば同時に検討すべき)
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不確実な予測による新アセス
に必要な3つの鍵
• 説明責任accountability
– 新たな知見を政策に取り込む
• 順応性adaptability
– 状況に応じた政策変更を明記
• 反証可能性falsifiability
– どんな事態は生じないと明記
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1年だけの調査で評価可能?
• 個体群は短期的にも非定常
– 成り年を調べるか、豪雪年を調べる
か
– 阪神タイガース問題
• 追跡調査(事後調査)を行うが、
– 万博終了後は調査できない
– 反証可能な報告書が必要
19
跡地利用計画の問題
• オオタカ営巣後、万博
で保全を図った場所が、
依然として住宅の造成
対象となっていた
(1999年9月)→跡地
利用計画が万博の理念
に合わないことが明らかになった
• 万博中止または会場変更は可能。
BIE“それはあなた方の選択だ。万博の理
念と引き替えにはできない”
20
計画変更とアセス手続き
環境影響評価法施行令第9条
• 新たな関係市町村が加わる計画変
更は、方法書からやり直す
– 今回は法施行前の例外=通産省通達
により、影響低減が評価書で明らか
にできればやり直しに及ばず)
• 2000年5月登録へ評価書を急ぐ
21
前代未聞の評価書
• 青少年公園の調査は2ヶ月
– 評価書青少年公園地区等編49頁
“春に開花する植物などは調べら
れていない可能性がある”
• 青少年公園の計画は熟度が低い
• 長久手町住民との方法書段階の
合意形成無し
22
植生図と総合評価
波田善夫氏http://www.big.ous.ac.jp/~hada/kaisyonomori/
断層
開発予定地
23
環境万博における里山利用
• 自然回廊(里山コリ
ドー)
– 自然に親しむ≠自然
を守る
– 海上の森に1日2万
人か、1000人か
24
「遷移と自然撹乱の釣り合い
がもたらす多様性」を誤解
• 今日の多様性の維持には
新たな人為的撹乱が必要
• 斜面を固めて土砂崩れを
起こさないようにする環
境「保全」措置(住準2:97
頁)
– 地形は生きている!
25
かいしょ
海上の森と谷頭
• 手を入れないと
「守れない」里
山?
• 斜面を固めること
が「保全」?
波田善夫さんのページ
http://www.big.ous.ac.jp/~hada/kaisyonomori/landform/landform.html
26
堰堤を壊せ+イノシシを放て
有史以前から維
持された自然
乱伐+燃料革命
猪は森の友
森山昭雄
波田善夫
27
5m林分調査:崩落地の衰退
• 土砂崩れ・山火事、大型獣の食害
• 薪炭林利用
波田善夫http://www.big.ous.ac.jp/~hada/kaisyonomori/より作図
28
急峻な花崗岩層
波田善夫http://www.big.ous.ac.jp/~hada/kaisyonomori/より作図
29
メタ集団動態
出生死亡過程
潜在生息地K
現存生息地N0
• K=20, N0=4
1現存地消失
K=19, N0=3
全潜在地消失
K=4, N0=4
30
隔離集団とメタ
集団の価値
• 隔離集団=遺伝的に特殊だが、もとも
と絶滅リスク大
• メタ集団の一部=遺伝的には固有では
ないが、メタ集団全体のリスク低減に
貢献
• 全体の面積、潜在生息地消失のリスク
31
Snake河猛禽類国立保護区Idaho
• ダム水源地センターの視察団
32
Snake河猛禽類
国立公園の植生
「
るや 牧 生
しが態
、山
植火系
生事管
をを理
変増」
放
え
33
遷移と撹乱を計る?
• 遷移の速さを評
価する
• 自然撹乱の規模
と頻度を評価す
る(谷頭)
• 1年間で調査で
きるか?(過去
を読む)
アイダホ州スネーク河猛禽類国
立保護区の山火事の頻度
34
除草剤と在来種種子散布
• 遷移と撹乱の速さの不確実性を見込む
• 速さに応じて保全措置を微調整する
• 放牧を止めさせることができれば・・・
35
非定常性(non-equilibrium)と
不均一性(heterogeneity)
• 放置しても自然は変わる
• 遷移と自然撹乱の釣り合いがもた
らすモザイク =双六
• 状態変化に応じて方針を変える順
応性(adaptability)
順応的管理adaptive management
36
入れ歯と箱庭
•
•
•
•
•
昔 虫歯をすぐ抜く
今 歯根を残して治療する
病んだ自然でも、箱庭に優る
医療
生理学と病理学
自然保護 生態学と「造園学」
37
なぜ多様性がたいせつか?
38