確定的影響と しきい線量

研修歯科医放射線業務従事者新規講習
2011.4.7
放射線の人体に与える影響と
その防護
先導生命科学研究支援センター
松田 尚樹
実効線量限度(一般公衆)
 1mSv/年
実効線量限度(放射線業務従事者)
 100mSv/5年

ただし50mSv/年を越えないこと
 妊娠可能な女子の場合の特例

5mSv/3月
放射線の人体影響
放射線防護の観点からの区分
頻度100
(%)
 確定的影響
 しきい値を越えて被ばくした場合に現れ
る
 確率的影響
 しきい値が存在せず、線量の増加とと
もに影響の発生確率が増加する
 がん
 遺伝的影響
しきい値
50
0
発生
確率
(%)
線量
10
5
0
線量
放射線の標的
DNA
Radiation-induced chromosomal aberration
塩基損傷
修復酵素
放射線
修復
1本鎖切断
2本鎖DNA
2本鎖切断
生物影響
修復不可能
不完全修復
損傷
自然発生(/細胞/日)
放射線誘発(/細胞/Gy)
塩基損傷
20,000
300
1本鎖切断
50,000
1,000
2本鎖切断
10
300
DNA損傷の cellular outcome
DNA損傷
修復不能
不完全修復
 遺伝情報を複製できない

 間違った遺伝情報を持つ
細胞増殖の停止
 遺伝情報を翻訳できない


DNAの変異
タンパク合成の停止
細胞死
突然変異
一定量以下の
DNA損傷であれ
ば、すべて修復で
きる。
一定量以上の線
量で障害が起こる。
細胞死
組織、機能障害
確定的影響
突然変異
遺伝的不安定性
確率的影響
・がん
・遺伝的影響
不完全な修復は、
DNA損傷量にかか
わらず、一定の確
率で起こる。
どんなに低線量で
も、障害がおこる
可能性がある。
放射線の単位
単位
意味
吸収線量
Gy
(グレイ)
ある任意の物質中の単位質量あたりに放射線
により付与されたエネルギーの平均値
等価線量
Sv
(シーベルト)
組織・臓器における放射線の影響を、放射線の
種類やエネルギーによる違いを補正し、共通の
尺度で表現する量
実効線量
Sv
(シーベルト)
等価線量を組織荷重係数によって補正し、全身
の放射線影響の指標となる量
確定的影響
100
頻度
(%)
50
0
しきい値
線量
確定的影響と しきい線量
標的組織
骨髄
症状
白血球減少
0.5
赤血球減少
2–6
血小板減少
2-6
男性
不妊
女性
眼
しきい線量(Gy)
水晶体混泥
白内障
一時的不妊
永久不妊
一時的不妊
永久不妊
0.15
3.5 – 6
0.65 – 1.5
2.5 - 7
0.5 – 2
5
確定的影響と しきい線量
標的組織
症状
胚死亡 流産
胎児
奇形
精神発達遅延
皮膚
しきい線量(Gy)
0.05 – 0.1
0.1
0.12 – 0.2
一時的紅斑
2
一時的脱毛
3
壊死
18
X線検査の胎児被ばく線量
検査
平均線量(mGy)
最大線量(mGy)
腹部単純
1.4
4.2
胸部単純
<0.01
<0.01
尿路造影・腰椎
1.7
10.0
骨盤
1.1
4.0
ICRP Publ.84 1999
X線透視・CT検査の胎児被ばく線量
検査
平均線量(mGy)
最大線量(mGy)
上部消化管
1.1
5.8
注腸
6.8
24.0
胸部CT
0.06
1.0
腹部CT
8.0
49.0
骨盤CT
25.0
80.0
ICRP Publ.84 1999
頭頸部撮影時の患者被ばく線量(mGy)
組織
単純撮影
成人
CT
1歳児
成人
赤色骨髄
0.2
0.15
2.7
甲状腺
0.4
1.6
1.9
乳腺
<0.01
<0.01
0.03
卵巣
<0.01
<0.01
<0.01
睾丸
<0.01
<0.01
<0.01
胎芽
<0.01
<0.01
<0.01
ICRP Publ.62, 1992, NCRP Report 68, 1981
歯科撮影時の患者被ばく線量(mGy)
組織
口内
パノラマ
赤色骨髄
0.01
0.045
甲状腺
0.03
0.2
乳腺
0.005
0.003
卵巣
0.0001
0.00008
睾丸
0.0001
0.00025
0.001
0.004
肺
ICRP Publ.34
確率的影響
発生
確率
(%)
10
5
0
線量
原爆被爆者にみられる発がん
潜伏期は白血病が2〜5年、その他のがんは10年以上
放射線被ばく者の発がん
放射線被曝
放射線治療
放射線診断
職業被曝
発電所事故
放射線誘発がん
脊髄疾患のX線治療
照射部位、骨、白血病
骨盤内疾患のX線治療
消化管、白血病
血管造影(トロトラスト)
肝臓、胆道、白血病
胎児の被曝
白血病
頻回の胸部X線透視
乳腺
ウラン鉱山
肺
文字盤工(ラジウム)
骨、副鼻腔
放射線技師
白血病
チェルノブイリ
小児甲状腺
原爆被爆者の被ばく線量域と発がんリスクの関係
PNAS 100, 13761-137661, 2003
10~100mSv以下の低線量放射線の影響を推定する
最も適切なモデルは何か?
a
b
c
d
e
しきい値なし直線モデル
下向きカーブ
上向きカーブ
しきい値あり直線モデル
ホルミシスモデル
名目発がんリスク係数(一般公衆)
detriment-adjusted nominal risk coefficients for cancer
(whole population)
ICRP1990 6.0 x 10-2 / Sv
6.0 x 10-5 / mSv
1 人/ 16,667 人
ICRP2007 5.5 x 10-2 / Sv
5.5 x 10-5 / mSv
1 人/ 18,182 人
名目発がんリスク係数
(放射線業務従事者)
detriment-adjusted nominal risk coefficients for cancer (adult workers)
ICRP1990
4.8 x 10-2 / Sv
4.8 x 10-5 / mSv
ICRP2007
4.1 x 10-2 / Sv
4.1 x 10-5 / mSv
年平均線量限度(20mSv)を40年間浴び続けたとすると
4.1 x 10-5 x 20 x 40 = 0.0328
3.2人 / 100人
リスクの比較
(人口10万人あたりの年間死亡者概数)
全死因
848.5
放射線発がん
(放射線業務従事者)
4.1
がん
255.1
水難事故
0.70
心疾患
135.4
インフルエンザ
0.55
脳血管疾患
103.9
他殺
0.52
喫煙発がん(現状)
80.0
自然災害
0.10
喫煙発がん(1000円)
30.0
HIV
0.04
自殺
23.9
食中毒
0.004
交通事故
9.1
落雷
0.002
放射線発がん
(一般公衆)
5.5
BSE感染牛による
クロイツフェルトヤコブ病
0.0009
いろいろな事項についての10万人あたりの年間死亡数、体質研究会、http://www.taishitsu.or.jp/risk/risk2006.html
リスクのモノサシ、中谷内一也、NHKブックス
福島原発周辺の放射線環境
2011/3/12
2011/3/13
2011/3/14
2011/3/16
DigitalGlobe
2011/3/15 17:34
福島医大→福島市街移動車中
12.48μSv/h(109.3mSv/y)
2011/3/15 17:59
福島医大→福島市街移動車中
16.38μSv/h(143.5mSv/y)
2011/3/15 18:13
福島自治会館4F
1.58μSv/h(13.8mSv/y)
2011/3/16 15:56
5,470cpm
福島医大除染室前
2011/3/16 15:56 福島医大除染室前
8.34μSv/h (73.1mSv/y)
2011/3/16 15:56
19,790cpm
福島医大除染室前
2011/3/16 15:56 福島医大除染室前
43,900cpm
空間線量率
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1304001.htm
積算線量
http://www.mext.go.jp/a_menu/saigaijohou/syousai/1304002.htm
原子力発電
-
軽水炉
加圧水型炉
沸騰水型炉
(PWR : Pressurized Water Reactor)
(BWR : Boiling Water Reactor)
原子燃料
- 濃縮ウラン
 天然ウラン



234U
235U
238U
0.005%
0.72%
99.275%
 濃縮ウラン

低濃縮ウラン
 235U濃度が0.72%~20%
 原子力発電では3%~5%の濃縮ウランを使用
 高濃縮ウラン
 235U濃度が20%以上
 原子爆弾では90%を超える
 劣化ウラン
 235U濃度が0.72%未満
 密度が高いため戦車砲の徹甲弾や装甲材として用いられている
核分裂
重い原子核が2個以上の原子核に分裂する現象
巨大エネルギー
中性子
235U
235U
連鎖反応
(臨界)
核分裂生成物
γ線
核分裂生成物
核分裂生成物
生成物
Cs-133
収率(%)
6.79
半減期
安定
I-135
Zr-93
Cs-137
6.33
6.30
6.09
6.75時間
153万年
30.17年
Tc-99
Sr-90
I-131
Pm-147
6.05
5.75
2.83
2.27
21.1万年
28.9年
8.02日
2.62日
Sm-149
I-129
1.09
0.66
安定
1570万年
238U(n,g)239U
239U
b
→
239Np
23.45m
239Np
b
→
239Pu
2.357d
239Pu(n,g)240Pu
238U(d,2n)238Np
238Np
b
→
2.117d
238Pu
放射線影響Q&A 日本放射線影響学会 Q&A対応グループ
http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/rb-rri/gimon.html
Q
どの程度の線量から影響がでるのですか?
A
現在、一般人の被ばく限度(自然界および医療用放射線を除く)は、
1mSv/年が採用されています。
しかし、現実には、100mSv/年以下の被ばくならほとんど問題は
ないとされています。
http://www.nirs.go.jp/data/pdf/hayamizu0405-hi.pdf
放射線の防護
放射線防護体系
(国際放射線防護委員会による)
 行為の正当化
 Justification of practice
 防護の最適化
 Optimization of protection
 As low as reasonably achievable: ALARA
 個人の線量限度
 Dose limitation
放射線防護の目標
(国際放射線防護委員会による)
 利益をもたらすことが明らかな、放射線被ばくを伴う行為を不当に制限す
ることなく人の安全を確保すること
 個人の確定的影響の発生を防止すること
被ばく線量をしきい値
以下に抑える
 確率的影響の発生を制限すること
なるべく被ばくしないよ
うにする
放射線防護(外部被ばく)の3原則
時間の短縮
距離の確保
遮蔽の利用
病室での出張撮影
 あなたは、どうしますか?




病室にとどまり、撮影を手伝う
病室にとどまり、少し距離を置く
付き添いの家族とともに廊下に出る
動ける患者さんも連れて廊下へ出てドアを閉める
病室内の散乱線の空間線量
胸部
190μSv
0.14μSv
0.1μSv
腹部
1100μSv
0.90μSv
0.5μSv
1.5 m
自然放射線
6.6μSv/日
2.0 m
在宅医療における
X線撮影装置の安全な仕様について
平成10年6月30日 医薬安発第69号
 X線撮影に必要な医療従事者以外は、X線撮影管容器およ
び患者から2m以上離れて待機すること。
 患者の家族、介護者および訪問者は、X線撮影管容器およ
び患者から2m以上離れて待機させること。
最後に
放射線を
正しく怖がり
正しく使い
正しく説明するよう
心がけてください