第6回関⻄ものづくり技術シーズ発表会 航空宇宙用の複合材製品を成形する治工具 (成形型やカウルプレート) 近畿経済産業局 地域経済部 様 航空機・宇宙機器の部品に炭素繊維を中心とした複合材部品が が多く採用されるようになってきた。 最新のボーイング787では構造重量の50%以上にCFRPが使わ れている。 離型機能付き複合材料成型⽤型の開発 2016年6月29日(水) 15:40~16:00 岐阜大学 研究推進・社会連携機構 次世代金型技術研究センター 特任教授 深川 仁 1 出典:川崎重工業ホームページ(川崎重工技報第171号) H28年6月22日 https://www.khi.co.jp/rd/tech/171/nj171tr01.html 2 CFRP部品成形用の治工具 カウルプレート(上にかぶせる当て板)と下にくる金型 自動車部品への複合材製品適用事例 スポーツカー、電気自動車、水素自動車などを中心にCFRP部品の適用が急増 BMW i3 レクサスLFA みらいなどでは構造や水素タンク等へも適用拡大。 出典:BMW HP(平成28年6月22日) http://www.bmw.co.jp/ja/all-models/bmw-i/i3/2013/design.html SEEK & DRIVE CAR NEWS & SCOPE (平成28年6月22日) http://www.j-sd.net/toyota-mirai-2015/ 環境ビジネスオンライン(平成28年6月22日) http://www.kankyo-business.jp/news/009213.php 熱硬化系CFRPの一般的な成形法 複合材成形加工における現状工程の課題 プリプレグレイアップ・オートクレーブ法 1.離型剤を塗布する工程が発生 ・離型剤を塗布する工程とプリプレグを積層する工程は作業エリアを共有でき ず(大手航空機メーカの規定)、専用の離型剤塗布作業エリアが必要 ・有機溶剤なので作業者の健康に細心の注意が必要(労働安全衛生の規定) ・離型剤塗布後、乾燥するまでに1時間程度、要する(ネック工程になっている) バッグフィルム カウルプレート CFプリプレグ 裁断 金型など 積層 離型剤塗布 エリア 離型剤塗布 プリプレグ積層 エリア 2.カウルプレートは寿命が短い ・脱型に時間がかかる。 脱型時に力がかかりやすい。 ・治具自体をCFRPで作る場合が多く、寿命が短い。 ・離型剤を塗る手間隙がかかる 離型フィルムでは皺ができ易い 金型 & カウルプレート 型など 4 3 オートクレーブ 製品 脱型 高圧ガス 真空ポンプ 180℃ 0.5MPa CFRP積層板 完成 非破壊検査 外周トリム 4~8時間のサイクル 3.成形金型が高価で重い ・材料費 熱膨張が低いインバー合金(ニッケルと鉄の合金)は高価 ・加工費 難削材で機械加工時間を要する。 ・重量物 熱伝導率が低い(インバーは比重8.1)、成形型の取回し困難。 ・熱伝導率が低い(約13W/(m・K)) オートクレーブの運転時間がかかる。 6 5 1 研究動機 (航空機メーカのニーズ) 離型剤塗布作業(従来技術)の説明動画 ボーイング787に代表されるように、航空機の構造部材にCFRPを用いるケース が急増。成形用の治工具に離型剤を毎回塗布する工程を省きたい 岐阜大学にて東海広域ナノテクものづくりクラスター事業を実施する中で「離型機 能つきカウルプレートの開発」を開始。 熱成形後のCFRP製カウルプレート表面に フッ素系シートを接着し離型機能を持たせることに成功。 岐阜大学にて特許取得。 カウルプレートの開発において、成形型にも離型機能を付加することに着眼。 岐阜大学、吉田SKT(名古屋市)、企業と共同でカウルプレートと成形型をセットに した離型機能付治工具を開発 岐⾩⼤学シーズ Henkel FREKOTE など 事前に表面清掃 ⇒離型剤1回目塗布 ⇒15分乾燥 ⇒離型剤2回目塗布 ⇒約1時間完全乾燥 ⇒クリーンルームへ移動 7 フッ素系樹脂の特徴と種類 CFRP製の離型機能付き曲面カウルプレート 離型膜はPTFE、PFAなどの各種を試作 CFRP 10 CFRP caul plate(tool) CFRP製カウルプレート(治具) 耐薬品性 高温・高濃度の強酸・強アルカリに不活性、溶剤にも不溶。 PTFE (ポリテトラフルオロエチレン) -(CF2-CF2)n-180~+260℃ 8 毎回離型剤を塗らなくても,くり返し使える離型膜を内蔵させたい ⽬標:耐久性(30回以上)の離型膜成膜技術の開発 フッ素系樹脂の特徴 低摩擦性 非粘着性 難燃性 耐熱性・耐寒性 使用温度域:-100~260℃ フッ素系樹脂の種類 CFRP製品(左)とカウルプレート(右) bag film 他のフッ素系樹脂よりも 摩擦係数が低い -(CF2-CF2)m-(CF2-CF2)nO-Rf 離型膜 Sectional view of caul plate Form block (tool) PFA (パーフルオロアルコキシアルカン) テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共 重合樹脂 熱可塑性樹脂 -200~+260℃ -(CF2-CF2)m-(CF2-CF2)n- 成形型(治具) Form block vacuum (tool) Sectional view of vacuum bag CFRP prepreg lay up (product part) 実際の適用形状(参考) 3m CF3 FEP (パーフルオロエチレン-プロペンコポリマー) CFRP caul plate (tool) Layer of release agent Φ6m 50mm 3m Tool 8m Caul Plate (CFRP) Product parts (CFRP) 100mm Caulplate(CFRP) Tool (Metal) Caul Plate 9 Methods of preparing caul plates カウルプレート Transfer printing method (転写法)→フィルム貼付法 Baking method A&B (焼付け法) Mixing & hot pressed Method (混合加圧法) Resin PFA Experiments 実験方法 積層・硬化・離型 n回 実施 1. カウルプレート・供試体の表面観察 Short CF 離型時の状態・感触確認 Hot pressed 2. 接触角測定(純水使用) カウルプレート 離型面 離型面外 供試体(模擬部品側) 離型面 A :PFA Fig.2 Transfer printing method for the caul plate B: FEP Fig.3 Baking method for the caul plate Caul plate Size:(148x210 mm) (Baking method B: 50x50 mm) 3. SEM‐EDX (表面成分分析) ‐離型後の表面構造の観察 ‐供試体へのフッ素転写のチェック 供試体 写真 写真 写真 4. Peel ply test 11 カウルプレート 引張応力試験 12 2 Process of works 離型試験の工程 曲面カウルプレート(C断面形状)の試作 3:オートクレーブ焼成 1:積層 2:真空引き 加熱 110℃×60分 180℃×90分 加圧 約0.5MPa+真空引き Fig.4 Auto-clave curing profile (180℃×0.5MPa) 4:AC硬化後 5 真空バッグ取外し 6 脱型直後(離型前) 7:離型後 CFRP製品(左)とカウルプレート(右) PTFE PFA FEP など各種試作中 13 候補技術の耐久性評価試験結果 及び ⽐較評価 PTFE カウルプレートの離型膜製作工程 離型性 耐久性 作り易さ 製造コスト 総合評価 転写法 ◎⇒○ ○(30回) ○ ○ ○ 焼付法 ◎⇒○ ◎(30回) ○ △ ○ 混合加圧法 ◎⇒○ ○(30回) △ △ △ ◎⇒○ △(10回) ○ △ △ 離型処理候補技術 熱可塑性樹脂CFRP CFRPの耐熱性は約200℃以下であるために,PFAを330℃以上の高温で直接コーティン グすることは不可能である.このため,離型材を膜状に仮コーティングしたものを後工程で CFRPと接合する工程が必要となる.小型試験片ではこれに成功しており,大型3次元曲面 を作り検証予定. カウルプレート成型用の型 成果のまとめ ①4種類の離型処理技術を開発し,転写法と焼付け法が候補として残った ②転写法と焼付法は30回の耐久テストに耐え,離型性も良好であり,要素 試験として成功 (特許申請済) ③今後さらに耐久性を⾼め,曲⾯・複雑形状への対応性や製造コストを下げ る⼯夫し,実機適⽤できるところまで改良を重ねる ⇒ サイズ100mm長×130mm幅×40mm深さ PFA離型膜の片面だけを活性化処理し, (テトラエッチという化学処理を行う) 型治具上に,膜を載換える CFRPプリプレグを積層し オートクレーブでPFA膜とCFRPを同時に 硬化成形し,一体のものとする 現在新型の軽量治具も開発中で60回の耐久性を確認済み。 特許の名称 成形用治具の製造 方法 ・出願番号(出願日)および ・公開あるいは公告の最新の 出願人 特許番号 PCT/JP2012/080962 岐阜大学 2012年11月29日 3次元形状のPFA離型膜だけを作る ここで330℃以上の熱をかける 離型膜成形用の型 発明者 備考 離型機能付き カウルプレートの完成 深川仁 他2名 申請済 (CFRPに330°以上の 熱がかかることはない) 離型膜の製成方法 他1件出願中 16 その後 新型軽量治具(成形型)の離型機能 耐久性評価と積層後の表面測定 表面粗さ測定結果 水滴落下による撥水試験 膜厚測定 表面粗さ測定 C B A 各測定ポイントを3回測定 しその平均値を採用 現在軽量な治工具で離型機能付きの型を完成済み。 より堅牢で耐久性のある離型膜を作るべく、改良中。 目標は100回以上使える耐久性を持った、航空機用治工具を開発すること。 ワンタッチの脱型方法も何通りか検証中で、一部を将来的に公開したい。 これらを用いることで、複合材料の製作工程のコストダウンが可能となる。 撥水性(水滴面積)測定結果 現在60回まで実施したが殆 ど変化無し 17 18 3 研究開発体制 スポンサー 研究助成団体 研究開発財団等 研究チーム 航空機メーカ(ユーザ) 研究推進 シーズ提供・評価分析 PTFE等焼付け 離型技術提供 軽量治具素材メーカ 素材接合技術提供 ユーザとしての評価・意見 ご質問をどうぞ! [email protected] 県内の航空機部品メーカ 治工具試作・改良 コスト評価 ぎふ技術革新センター 研究設備使用 評価・試験等の支援 ご清聴ありがとうございました (将来的に) 自動車部品メーカ等 19 20 4
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