発表概要 氏名(学籍番号) H28 年度 熊本大学工学部マテリアル工学科「マテリアル工学演習」 論文題目 福田 大晃(135-T2740) Mechanical properties and precipitate behavior of Mg–9Al–1Zn alloy processed by equal-channel angular pressing and aging 著者 Y.C. Yuan, A.B. Ma, J.H. Jiang, Y. Sun, F.M. Lu, L.Y. Zhang, D. Song 論文出典 Journal of Alloys and Compounds 594 (2014) 182–188 【緒言】 Mg 合金は hcp 構造であるため、室温で延性が低いという欠点がある。そこ で、巨大ひずみ(SPD)加工の一種である ECAP が注目されている。Mg 合金に ECAP を施すことで、集合組織が形成し、延性が向上する。しかしながら、Mg の底面すべりのシュミット因子が大きくなるため、強度は低下する[1][2]。そこ で、ECAP 後の時効処理による析出強化に注目した。しかしながら、SPD 加工 を施した Mg 合金の析出強化に関する研究はほとんど行われていない。そこ で本研究では、AZ91 合金に ECAP と時効処理を施し、組織と機械的特性の関 係について調査した。 【実験方法】 試料には、Mg-9.13wt%Al-0.69wt%Zn 合金鋳造材(AC 材)を用いた。この AC 材に 4pass と 12pass の ECAP を施したものを AC+ECAP4pass 材と AC+ECAP 12pass 材とした。AC 材に 430℃で 20 時間の溶体化処理を施した後、4pass と 12pass の ECAP を施したものを SHT+ECAP4pass 材と SHT+ECAP12pass 材と した。さらに、SHT+ECAP4pass 材と SHT+ECAP12pass 材に 180℃でそれぞれ 13 時間と 10 時間の時効処理を施したものを SHT+ECAP4pass+Aging 材と Fig. 1 Optical micrographs of the (a) SHT+ECAP 4 pass and (b) SHT+ECAP 12 pass. SHT+ECAP12pass+Aging 材とした。各試料の組織観察には、光学顕微鏡、SEM および TEM を用いた。力学特性は、引張試験により評価した。 【結果および考察】 Figure 1(a)と(b)に、SHT+ECAP4pass 材と SHT+ECAP12pass 材の光学顕微鏡 写真を示す。SHT+ECAP4pass 材の結晶粒は AC+ECAP4pass 材に比べ、微細で あり、組織は均一であった。このことから、溶体化処理は、ECAP による結晶 粒微細化を促進すると考えられる。SHT+ECAP12pass 材の結晶粒と析出物は SHT+ECAP4pass 材に比べ、わずかに大きく、組織は均一であった。これは、 pass 数の増加に伴い動的再結晶が起こったためと考えられる。 Fig. 2 TEM image of the SHT+ECAP for 12 pass and aging at 180℃ for 10h. Figure 2 に、SHT+ECAP12pass+Aging 材の TEM 像を示す。ECAP 中に析出 物は A で示すように球状に析出したが、時効中には B で示すように点状に析 出した。また、SHT+ECAP12pass+Aging 材では、ECAP 中に回復が生じたた め、時効中の回復はあまり生じなかった。 Figure 3(a)と(b)に、4pass 材と 12pass 材の真応力-真ひずみ曲線を示す。 SHT+ECAP4pass 材は、高い転位密度と微細粒を有していたため、AC+ECAP 4pass 材より強度が高かった。また、SHT+ECAP4pass+Aging 材は、時効によ り強度が向上しなかった。これは、SHT+ECAP4pass 材の組織が不均一であり、 時効中に回復が起こったためと考えられる。一方、SHT+ECAP12pass+Aging 材 は時効により強度が著しく向上した。これは、SHT+ECAP12pass 材の組織は 均一であり、時効中に回復が起こらず、析出強化の影響が強くなったためと 考えられる。以上の結果から、AZ91 に ECAP と時効処理を施すことで、強度 が向上することが分かった。さらに、時効による力学特性の向上には、ECAP 前の溶体化処理と ECAP 後の均一な組織が重要であることが分かった。 【参考文献】 [1] S.R. Agnew, J.A. Horton, T.M. Lillo, D.W. Brown: Scripta Mater. 50 (2004) 377–381. [2] W. Kim, S. Hong, Y. Kim, S. Min, H. Jeong, J. Lee: Acta Mater. 51 (2003) 3293–3307. Fig. 3 Typical true tensile stress-strain curves of ECAPed samples (a) for 4 passes and (b) 12 passes in different processing state.
© Copyright 2024 ExpyDoc