次世代地熱発電技術の全体像 - JOGMEC地熱資源情報

次世代地熱発電技術の全体像と
その位置づけ
米倉 秀徳
2016年6月3日
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
技術戦略研究センター 再生可能エネルギーユニット
Technology Strategy Center
1.組織概要・技術戦略研究センターの紹介
2.次世代地熱発電技術の種類と特徴
3.海外の動向
4.エネルギー・環境イノベーション戦略
2
組織概要
Technology Strategy Center
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構
New Energy and Industrial Technology Development Organization
日本最大級の公的研究開発マネジメント機関
• 職員数約900名(平成28年4月現在)
• 平成28年度予算1,298億円
NEDOのミッション
・エネルギー・地球環境問題の解決
・産業技術力の強化
33
平成28年度NEDO予算額
Technology Strategy Center
NEDO
1,298億円 [1,319億円]
22
[ ]:平成27年度予算
1
1,208
億円 [33億円]
億円
億円 [1億円]
[1,215億円]
ナショナルプロジェクト関連
技術シーズの発掘
実用化促進事業関連
●新エネルギー分野
431億円
[462億円]
●省エネルギー分野
108億円
[97億円]
●蓄電池・エネルギー
システム分野
48億円
[70億円]
●クリーンコールテクノロジー
(CCT)分野
166億円
[68億円]
●環境・省資源分野
23億円
[25億円]
●電子・情報通信分野
142億円
[124億円]
●材料・ナノテクノロジー分野
135億円
[118億円]
●バイオテクノロジー分野
0億円
[0億円]
●ロボット技術分野
65億円
[44億円]
●国際展開支援
70億円
[207億円]
●新製造技術分野
20億円
[0億円]
(地球温暖化対策技術普及等推進事業を含む)
●境界・融合分野
67
一般管理費
億円 [69億円]
46
提案公募(再掲)
億円 [38億円]
※1 補正予算及び戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)を除く。
※2 端数処理の関係で合計と内訳が一致しない。
1億円 [1億円]
25
億円
[31億円]
地球温暖化対策
●京都メカニズムクレジット取得事業
●地球温暖化対策技術普及等推進事業(再掲)
※3 提案公募は、エネルギー・環境新技術先導プログラム、
新エネルギーベンチャー技術革新事業の2事業。
4
組織図
Technology Strategy Center
平成28年4月時点
5
技術戦略研究センター(TSC)の概要
Technology Strategy Center
技術戦略研究センター(Technology Strategy Center)は、調査・研究を通じて、
「産業技術分野」と「エネルギー・環境技術分野」の技術戦略の策定、及び戦略
に基づくプロジェクトの企画・構想等に取り組む研究機関。(平成26年4月設立)
調整課
企画課
プロジェクトマネジメント室
マクロ分析ユニット
標準化・知財ユニット
電子・情報・機械システムユニット
ナノテクノロジー・材料ユニット
技術戦略研究センター長
川合 知二
(大阪大学
産業科学研究所 前所長)
新領域・融合ユニット
(IT・ロボット)(バイオ技術)
エネルギーシステム・水素ユニット
再生可能エネルギーユニット
環境・化学ユニット
6
フェロー紹介
Technology Strategy Center
平成28年4月現在 ( )内は専門領域
後藤 晃
専門領域:イノベーション政策
政策研究大学院大学
政策研究課 教授
島田 広道
専門領域:触媒
産業技術総合研究所
理事
中島 秀之
菊池 純一
専門領域:産業政策
青山学院大学法学部
教授
安永 裕幸
中屋 雅夫
専門領域:資源開発工学、
環境海洋工学
産業技術総合研究所 理事
室井 高城
指宿 堯嗣
専門領域:環境工学、
大気汚染、触媒化学
産業環境管理協会
技術顧問
金出 武雄
沼口 徹
専門領域:プロセス工学
千葉大学 特任教授
安井 至
専門領域:触媒化学、工業触媒 専門領域:材料科学、
環境科学
アイシーラボ代表
製品評価技術基盤機構
神奈川大学非常勤講師
名誉顧問
早稲田大学招聘研究員
加藤 紘
専門領域:ロボット工学
専門領域:産婦人科学
専門領域:人工知能
はこだて未来大学理事長 カーネギーメロン大学教授 山口大学 名誉教授
学長
湯元 昇
専門領域:生化学
産業技術総合研究所
フェロー
林 秀樹
専門領域:半導体・ 集積回路シ 専門領域:化合物半導体
ステム
デバイス
元株式会社半導体理工学
元住友電気工業フェロー
研究センター 代表取締役社長
北岡 康夫
出村 雅彦
専門領域:電気材料
大阪大学産学連携本部
副本部長
専門領域:金属材料
(兼)東京大学 特任教授
物質・材料研究機構 構造材
料研究拠点 拠点長補佐
黒沢 厚志
専門領域:エネルギー工学・
エネルギー政策
エネルギー総合工学研究所
研究部長
荻本 和彦
専門領域:エネルギーシステム・
電力系統
東京大学生産技術研究所
エネルギー工学連携研究センター
特任教授
7
技術戦略研究センター(TSC)のミッション
Technology Strategy Center
重要分野の技術戦略を策定するとともに、技
術戦略に基づくプロジェクトを企画・構想。
『TSC Foresight』 の公表及びセミナー等を通
じて、産学官の対話を促進。
我が国のイノベーションを牽引し、産業に橋
渡し。経済成長の加速を志向。
8
技術戦略の策定方針
Technology Strategy Center
「フォーキャスティング」と「バックキャスティング」及び「ポジション分析」を組み合わ
せた俯瞰的視点に基づく調査・分析により、重点的に取り組むべき技術分野を選定
バックキャスティング
社会課題抽出
重点課題抽出
社会的・産業的課題と要請
各ユニットに関わる重点課題
技術分野抽出
技術開発課題抽出
フォーキャスティング
9
ポジション分析の視点
Technology Strategy Center
日本の政策
(日本再興戦略、科学技術
イノベーション総合戦略等)
世界各国の政策動向
(米国、EU、中国、韓国等)
社会・産業
ニーズ
(エネルギー基本計画等)
企業・機関の動向
(特許出願動向等)
日本のエネルギー政策
重要分野
技術
先端技術の動向
(学会、論文発表動向、
産学とのワークショップ等)
市場
グローバル市場の動向
(日本企業の国際競争ポジション
に関する調査(NEDO)等)
10
技術戦略の策定分野
Technology Strategy Center
調査結果の一部を『技術戦略研究センターレポート TSC Foresight』
として公開。 (NEDO HP http://www.nedo.go.jp/introducing/foresight.html)
ナノテクノロジー・材料分野
■ ナノカーボン材料
■ 機能性材料
平成27年10月19日(月)
第1回セミナーと同時に公表
エネルギーシステム・水素分野
■ 水素
■ 超電導
■ 車載用蓄電池
環境・化学分野
■ 地球環境対策(フロン)
平成27年10月30日(金)
第2回セミナーと同時に公表
新領域・融合分野
■ ロボット(先端要素技術)
■ 人工知能(AI)
電子・情報・機械分野
■ コンピューティング/物性・電子デバイス
■ パワーレーザー
平成27年11月12日(木)
第3回セミナーと同時に公表
再生可能エネルギー分野
■ 太陽光発電
■ 地熱発電
(平成28年 6月27日 公表予定)
11
TSC Foresight の構成
Technology Strategy Center
記載項目
1.技術の概要
2.技術の置かれた状況
・世界・国内市場規模、市場予測、
シェア
・産業動向
・特許分析
・論文分析
・諸外国の研究開発動向
3.技術課題
・技術の体系化
・ポジション分析
・技術課題やブレークスルー要素12
Technology Strategy Center
1.組織概要・技術戦略研究センターの紹介
2.次世代地熱発電技術の種類と特徴
3.海外の動向
4.エネルギー・環境イノベーション戦略
13
従来型地熱発電
TSC
Renewable Energy Unit
表層もしくはマグマ等から供給された水分が、高温の地層内のキャップロック下
等に蓄積した場所を地熱貯留層といい、現在実用化している地熱発電はこれら
の天然の蒸気・熱水資源を活用したもの。
出典:地熱資源開発の現状(経済産業省, 2012)
14
EGSの定義(NEDO地熱技術戦略内用)
TSC
従来型地熱発電
涵養型EGS
(EGS Type1)
能力増進型EGS
(EGS Type2)
脆性域高温岩体発電 延性域高温岩体発電
(EGS Type3)
(EGS Type4)
高
温度
エネルギー変換技術
マグマ発電
(EGS Type6)
超臨界流体対応
発電システム
蒸気発電 or
バイナリー発電
バイナリー発電
低
トータルフロー発電
深部地熱資源利用
(脆性-延性境界以深の地熱利用)
資源開発技術
EGS(Engineered / Enhanced Geothermal System)
天然地熱貯留
層利用
人工涵養
• 既存の地熱
貯留層から吹
き出る蒸気・
熱水をそのま
ま利用
• 既存の貯留層
に水を注入
水の圧入無し(還
元井のみ)
水の注入のみ
貯留層
モデル
貯留層拡張・
透水性改善
脆性域高温岩
体利用
延性域高温岩
体利用
超臨界流体
利用
マグマ熱の直
接利用
• 坑井刺激によ
り既存の貯留
層の拡張、透
水性の改善、
周辺の天然貯
留層との連結
等を行う
• 岩盤内(脆性
岩体領域)に
水圧破砕等に
より人工的に
貯留層を新た
に造成
•延性岩体領域
に孤立型の貯
留層を新たに造
成
•マグマ起源の
超臨界流体を
利用
•マグマの熱を
熱交換等で直
接利用
坑井刺激有り
既存熱水系(貯留層)利用
場合によって水圧破砕/水圧刺激有り
新規貯留層造成
類似
主な技術
的差異
超臨界地熱発電
(EGS Type5)
蒸気発電
浅部地熱資源利用
(脆性-延性境界以浅の地熱利用)
水の注入
Renewable Energy Unit
人工涵養
水圧破砕/水圧刺激技術
延性帯での貯留層造成
高温対応
熱水系利用無し
(熱のみ利用)
既存熱水系
(超臨界流体)利用
別路線
別路線
超高温対応
15
出典:NEDO技術戦略研究センター作成(2015)
EGSの定義(イメージ)
TSC
Type1:
涵養型EGS
1.5~2km
(涵養注水)
200~350℃ ガイザース
柳津西山
キャップ
ロック
Type2:
能力増進型
EGS(天然熱水
天然熱水系 系との接続)
Desert Peak
堆積岩
変成岩
Type3:
浅部高温岩体発電
(堆積岩中での亀裂
造成)
Groß Schönebeck
2.5~5km
基板岩(硬質で透
水性が低い岩盤)
Renewable Energy Unit
既存亀裂(透水性有)
Type3:
脆性域高温岩体発電(高
透水性)肘折,雄勝
Type3:
浅部高温岩体発電
(低透水性)
既存亀裂(低透水性)
3~ km
350℃
延性領域
3~6km
400~600℃
Type4:
延性域高温岩体発電
(延性領域での人工貯留
層造成)
Type5:
超臨界地熱発電(プレートテクト
ニクス起源の超臨界流体の利用)
16
出典:産業技術総合研究所作成資料を基にNEDO技術戦略研究センター作成(2015)
涵養型EGS(EGS Type1)
TSC
Renewable Energy Unit
涵養型EGSとは、涵養井を用いて人工的に涵養することで、生産井からの蒸気・
熱水資源生産量を回復・向上させることを目指した技術。
蒸気・熱水の生産量低下の原因には、①水の減少、②貯留層内の構造変化(目
詰まり等)及び③温度の低下等があるが、涵養型EGSは①水の減少による生
産量低下に効果的な手法。これまでに、ガイザーズ(米国)、柳津西山(日本)等
でその効果の検証が進められている
※
涵養(かんよう)
地表の水が、地下の
地層(帯水層または
貯留層)に浸透する
現象
出典:JOGMEC資料
涵養型EGSのイメージ図
出典:地熱発電技術研究事業に関する資料(JOGMEC, 2013)掲載図を参考にNEDO 技術戦略研究センター作成(2016)
17
能力増進型EGS (EGS Type2)
TSC
Renewable Energy Unit
能力増進型EGS とは、高圧の水等を用いて坑井刺激(水圧破砕あるいは水圧刺
激等)を行い、既存貯留層の透水性を改善したり、周辺の貯留層と連結すること
で貯留層を拡大したりする技術。
能力増進型EGSでは、地下の地熱貯留構造の改善を図ることにより、失敗井の
活用や、生産量・還元量が低下した坑井の改善効果などが期待されている。こ
れまでに、デザートピーク(米国)等でその効果の検証が進められている。
能力増進型EGSのイメージ図
出典:地熱発電技術研究事業に関する資料(JOGMEC, 2013)掲載図を参考にNEDO 技術戦略研究センター作成(2016)
19
脆性域高温岩体発電(EGS Type3)
TSC
Renewable Energy Unit
高温の岩体に人工的に水を圧入して亀裂を発生させ、人工的に地熱貯留層を
造成。地熱資源開発に必要とされた、①熱源、②貯留構造、③水の内、②地質
構造と③水の2つを人工的に作ることが可能となるため、そのポテンシャルも多
いと考えられている(NEDOが資源調査をした地点の合計値で29,000MWe。全体
のポテンシャルに係る正確な数値は不明)。
過去に肘折・雄勝(日本)や、フェントンヒル(米国)等で検証実験が行われてい
る。
• 従来型地熱発電で利用可能
• 涵養型EGS/能力増進型EGSで
経済性が向上
• 能力増進型
EGSで利用可
能
• 高温岩体発電
で利用可能
• 涵養型EGSで
利用可能
地熱
貯留層
21
NEDOにおける高温岩体発電関連プロジェクト(1984~2003)
TSC
Renewable Energy Unit
各種要素技術開発及び山形県(肘折)での実証試験を実施。
実証試験では、約2000m深の坑井を計4本(注入井2本、生産井2本)掘削し、深
さの異なる2段の人口貯留層を造成、水の循環試験を行った。
1年半の長期循環実験を行い、最大で10MWt(熱ベース)の熱を抽出。小規模な
発電機(50kWe)を設置し、発電実験も行った。
バイナリ―発電設備
肘折高温岩体発電システムの概念図
出典:熱水利用発電プラント等開発 高温岩体発電システムの技術開発(要素技術の開発) 総括成果報告書(NEDO, 2003)
22
延性域高温岩体発電(EGS Type4)
TSC
Renewable Energy Unit
延性域高温岩体は、延性領域(より深く、高温)で行う高温岩体発電。
水の回収率を抜本的に改善できる(逸水がほぼなくなる)可能性があるとともに、
その岩石の物性から、亀裂造成時の振動を伝えにくいと考えられている 。
現在は基礎研究段階で、実証試験等は行われていない。
基板岩(硬質で透
水性が低い岩盤)
2.5~5km
延性領域
3~6km
400~600℃
Type4:
深部高温岩体発電
(延性領域での人工貯留
層造成)
水の回収
率が低い
熱量が
小さい
亀裂造成
時の振動
低逸水
高温
発生しない
(?)
24
超臨界地熱発電(EGS Type5)
TSC
Renewable Energy Unit
我が国を代表とする沈み込み帯の延性域(マグマに近い領域)では、プレートテ
クトニクスによって地下に引き込まれた海水に起因する水分が、マグマの周辺に
高温・高圧(超臨界状態)で賦存していると考えられている。超臨界地熱発電は、
この地熱資源を活用しようというもの。
NEDOのエネルギー・環境新技術先導プログラム(平成26年度~27年度)にて、
基礎的な検証を開始。
2016年6月27日NEDO TSCフォアサイトセミナーにて、結果の一部を紹介予定
Type1:
涵養型EGS
1.5~2km
(涵養注水)
200~350℃ ガイザース
柳津西山
キャップ
ロック
天然熱水系
Type2:
能力増進型
EGS(天然熱水
系との接続)
Desert Peak
堆積岩
変成岩
Type3:
浅部高温岩体発電
(堆積岩中での亀裂
造成)
Groß Schönebeck
2.5~5km
基板岩(硬質で透
水性が低い岩盤)
既存亀裂(透水性有)
Type3:
浅部高温岩体発電(高透
水性)肘折,雄勝
Type3:
浅部高温岩体発電
(低透水性)
既存亀裂(低透水性)
3~ km
350℃
延性領域
3~6km
400~600℃
Type4:
深部高温岩体発電
(延性領域での人工貯留
層造成)
Type5:
超臨界地熱発電(プレートテクト
ニクス起源の超臨界流体の利用)
26
なぜ次世代地熱発電なのか(地熱発電特有の課題)
TSC
課題
Renewable Energy Unit
詳細
(1)開発リ
スク
地熱資源を確認するには、一連の事前調査・開発プロセスが必要であり、蒸
気・熱水が得られなかった場合にはこの期間の費用は、無駄になるリスクを
秘めている 。また、他の再エネに比べて開発期間が長いことも課題の一つ。
(2)減衰リ
スク
地下の貯留層内の蒸気・熱水は生産と供給のバランスがとれなくなると減
衰し、圧力の低下(水・熱の減少)、温度の低下(熱の減少)、貯留層内沸騰過
熱化(水の減少)等が発生する場合がある。貯留層や坑井内にスケールが蓄
積することによって内部につまりが発生し、減衰する(せざるを得ない)ことも
ある。
(3)経済性 現在の我が国における地熱発電の発電コストは、現在普及している蒸気発電
型(30MWモデルプラント)で約11円/kWh程度。発電コストは地点によって異
なり、発電コストの高い地域への導入を進めるためには、発電コストを低減さ
せていくことが重要。
(4)導入可 導入ポテンシャルは2,370万kWに及ぶが、資エ庁の試算*では、「環境規制の
能量
緩和を想定した開発を見込み、中・小規模開発について、今後も開発が順調
に進行すると想定した場合」でその導入可能量は140万kW(既設含む) となる。
(5)社会受 地熱ポテンシャルの約8割が国立公園内に賦存。また、地熱発電資源がある
容性
場所の周辺は温泉地となっている場合もあり、地熱発電の導入に当たっては、
自然環境や地元産業との共存を図っていく必要がある。
*第4回長期エネルギー需給見通し小委員会配付資料 27
なぜ次世代地熱発電なのか(減衰リスクへの対応)
TSC
Renewable Energy Unit
地熱発電所の発電量は1997年のピーク時に比べ約3割減少
高度貯留層評価技術、スケール対策技術に加え、涵養型EGSや能力増進型EGS
技術もこれらの減衰リスク低減に貢献しうる。
約3割減
出典:NEDO再生可能エネルギー技術白書
28
なぜ次世代地熱発電なのか(導入可能量)
TSC
Renewable Energy Unit
従来型地熱発電
1.5~2km
200~350℃
Type1:
涵養型EGS
(涵養注水)
ガイザース
柳津西山
キャップ
ロック
既存地熱発電所 Type2:
52万kW
天然熱水系
ポテンシャル
2,350万kW堆積岩
変成岩
能力増進型
EGS(天然熱水
系との接続)
Desert Peak
Type3:
浅部高温岩体発電(堆
積岩中での亀裂造成)
Groß Schönebeck
2.5~5km
基板岩(硬質で透水
性が低い岩盤)
既存亀裂(透水性有)
脆性域高温岩体発電
2,900万kW(一部) Type3:
浅部高温岩体発電
Type3:
浅部高温岩体発電(高透
水性)肘折,雄勝
既存亀裂(低透水性)
(低透水性)
3~ km
350℃
延性領域
3~6km
400~600℃
延性域高温岩体発電 /Type4:
超臨界地熱発電
深部高温岩体発電
???万kW
(延性領域での人工貯留
層造成)
Type5:
超臨界地熱発電(プレートテクトニ
クス起源の超臨界流体の利用)
出典:産業技術総合作成資料をもとにNEDO技術戦略研究センター作成(2016)
29
次世代地熱発電技術の位置づけ
TSC
2030年
+約100万kWの実現(導入可能量の精緻化)
~従来型改善+涵養・能力増進EGS技術~
既導入量:
52万kW
従来型地熱
発電が抱え
る課題
(ⅰ)開発リ
スクの低減
(ⅱ)減衰リ
スクの低減
(ⅲ)経済性
の向上(発
電コストの
低減)
(ⅳ)設置可
能容量の増
加
(ⅴ)社会受
容性の向上
従来型地熱発電技術
をベースとした改善
(共通基盤技術)
○
○
○
△
○
•調査・探査・掘削技術の高
度化によってある程度のリ
スクを低減可能
•調査・探査・環境アセス短
縮を通じてリードタイムの
低減が可能
•貯留層モニタリング技術の
高度化及び生産・還元技術
の高度化(スケール対策含
む)によって減衰リスクを低
減可能
•開発コストの低減及び減
衰の防止等による生産量
増大によって発電コストの
低減が可能
•掘削機器の稼働率の向上
によって掘削コストを低減
可能
•(再掲)リードタイムの短縮
により低減可能
•強酸性対策技術の確立に
より、利用できなかった坑
井が利用可能になる。ただ
し増加分は微量
•環境影響評価技術、環境
に配慮した機器開発、環境
保全対策技術の高度化等
によって環境影響の低減及
び社会受容性の向上が可
能。
涵養型EGS
小規模低温利用
•既湧出の未利用
蒸気・熱水を利用
するためリスク低
◎
○
-
•低減余地はある
が大規模地熱の
水準まで下がる
見込みは乏しい
△
◎
○
◎
-
○
•件数は増加する
が容量としての
増加分は微量
•既湧出の未利用
蒸気・熱水を利用
することで新規開
発に伴うトラブル
を防止可能。
•掘削後、熱水資源
量及び貯留構造を
改善できるため、開
発リスクが低減。
•地熱流体採取によ
る減衰に効果有り
(利用する熱源に
依って異なる)
-
-
更にその先へ(導入ポテンシャルの推定)
~地熱フロンティアへの挑戦~
能力増進型EGS
・掘削後、熱水資源
量を改善出来るた
め、開発リスクが低
減。
-
•地下微少振動原
理の解明と対策に
向けた研究が必要
高温岩体発電
(脆性/延性)
○
•貯留層の透水性
悪化等に効果有り。
○
◎
•減衰率の低下によ
り、経済性が向上
が期待される(ただ
し、投資額以上の
効果が出るよう技
術開発が必要)
○
△
-
Renewable Energy Unit
•減衰率の低下によ
り、経済性が向上
が期待される(ただ
し、投資額以上の
効果が出るよう技
術開発が必要)
?
•貯留層を高精度に
コントロールできれ
ば開発リスクは低
減。
••掘削の結果、予
定していた岩盤構
造と異なっていた
場合などのリスク
が残る。
•貯留層管理が厳
密に行える技術が
確立すれば◎
•天然熱水系を利
用するものよりも容
量を小さくせざるを
得ない可能性があ
ること等から、経済
性に優れるかどう
か、検証が必要。
・より高度な探査技
術が必要となる。
【期待度(従来技術との比較)】
◎:大幅に改善 ○:改善可能 △:効果は小さいが改善/場合によって改善 -:改善効果無し./ 不明 ?:現時点では判断不能
革新的高精度探査・
モニタリング技術
-
◎
-
天然の地下の超臨
界水を利用するた
め、従来型同様減
衰リスクが発生す
る可能性がある。
•経済性に優れるか
どうかの検証が必
要。
?
•地下構造をほ
ぼ確実に把握
可能な技術。開
発リスク低減に
大きく寄与。現
時点で技術
シーズ無し。
革新的低コスト掘削技
術
◎
•初期コストを大
幅に低減可能
な技術。現時点
で技術シーズ
無し。
-
-
-
-
?
•コンセプト的には
•高温岩体に適した
•膨大な量のエネル
貯留層の改善に
地点がどの程度あ
ギー資源が存在す
よって設備容量が ? るか検証が必要。 ? る可能性もあるが、
増加可能。ただしど (◎)
(◎) 未だ未確認。
の程度使えるかは
見定めが必要
•地下微少振動原
•地下微少振動原
•環境影響について
理の解明と対策に
理の解明と対策に
調査・研究が必要。
向けた研究が必要
向けた研究が必要
-
抜本的
新要素技術
超臨界地熱発
電
30
Technology Strategy Center
1.組織概要・技術戦略研究センターの紹介
2.次世代地熱発電技術の種類と特徴
3.海外の動向
4.エネルギー・環境イノベーション戦略
31
各国の地熱発電取り組み状況
TSC
ポテンシャル(資
源量)【MW】
累積設備容量
(2015年)
順位
【MW】
①
ケニア
30,000
6,000
27,790
6,000
3,650
3,267
5,800
7,000
⑧
3,450
1,870
1,340
1,017
1,005
916
665
594
日本
23,470
⑨
519
トルコ
4,500
-
-
-
-
-
⑩
397
27
16
1
0
-
アメリカ
フィリピン
インドネシア
メキシコ
ニュージーランド
イタリア
アイスランド
ドイツ
フランス
オーストラリア
韓国
スイス
②
③
④
⑤
⑥
⑦
2010年からの設備
設備容量/ポテ
容量増加量
ンシャル【%】
順位
【MW】
②
⑤
④
①
352
-34
143
59
243
74
90
392
-16
③
306
20
-
1
-
-
Renewable Energy Unit
EGS関連研究開発実施状況
12 涵養型EGS、能力増進EGS、浅部高
温岩体
-
31
-
5
-
17
28
-
涵養型EGS
28
11 深部高温岩体、超臨界地熱発電
-
8
2 涵養型EGS、能力増進EGS、深部高
温岩体、 超臨界地熱発電
9
-
-
-
-
-
-
能力増進EGS/浅部高温岩体
能力増進EGS/浅部高温岩体
浅部高温岩体
浅部高温岩体
浅部高温岩体
タイプ分け
C
A
A
A
A
C
C
A
C
A
B
B
B
B
B
A:現在従来型地熱の導入を大きく推進しており、今後もまずは従来地熱の導入を進める。
B:従来地熱ポテンシャルに乏しいため、EGSにより地熱発電の導入を進める。
C:従来型地熱についても導入を進めるが、それに加えてEGSについても研究開発を進め、更なる導入量拡大を目指す。
出典: Geothermal Power Generation in the World 2010-2014 Update Report (Bertani, 2015)等をもとにNEDO技術戦略研究センター作成
32
各国の取り組み(米国)
TSC
Renewable Energy Unit
米国では、従来型地熱発電の導入に限らず、EGSに関する取り組みも積極的に
行われている。
Type3
Type2
Type2
Type1
Type2
既存のEGSプロジェクトとInfield、Nearfieldのイメージ
(出典: DOE説明資料)
33
各国の取り組み(アイスランド)
TSC
Renewable Energy Unit
アイスランドのクラフラにおいては、IDDP(The Iceland Deep Drilling Project)と呼
ばれる、従来型地熱に比べ高温な深部地熱資源を利用して、安い電力を大量に
作ることを目的とした実証事業が実施されている。
現在、これに続くプロジェクトとして、IDDP2の計画が検討されている。
IDDPプロジェクト事業概要
(出典:Orkustofnun社HP)
IDDP1より高温の蒸気が噴出している様子
(出典:WGC2015要旨集、Guðmundur Ómar Friðleifsson氏)
34
各国の取り組み(欧州)
TSC
Renewable Energy Unit
フランスのソルツにおいては、1987年から調査が始められ、1995年に天然の貯留層をもとに水圧破
砕による貯留層の造成に成功。その後循環試験を経て、2008年からは1.5MWのバイナリー発電で
の発電を実施している。
スイスのバーゼルにおいては、天然の貯留層を利用せずに、水圧破砕による貯留層造成を実施した
が、その際に誘発地震が発生したため2006年に計画を中止。その後住民投票が行われ、ザンクトガ
レンにて計画が再開されたが、予定した程の熱が取れず事業は中断した。その後も検討は続けられ
ており、現在もEGSに関する研究開発が行われている。
フランス ソルツ(Soultz-Sous-Forets)のEGSプロジェクト
(出典:GEIE(欧州経済利益団体(European Economic Interest Group))
Exploitation Miniére de la Chaleur HP)
スイスの地熱発電成長シナリオ
(出典:WGC2015要旨集、Roland Wyss and Katharina Link氏)
35
各国の取り組み(オーストラリア)
TSC
Renewable Energy Unit
オーストラリアにおいては、クーパーベイズン、パララナ等で浅部高温岩体発電
の実証事業が行われた(循環試験及び発電試験まで実施済み)。現在もいくつ
かの実証事業が進行中だが、未だ商用段階には至っていない。
Habanero地熱発電所外観
(出典:WGC2015要旨集、Robert A Hogarth and Daniel Bour氏)
36
各国のEGS関連の取り組み状況
TSC
従来型(小規模低
温利用含む)
アメリカ
オースト
ラリア
◎
◎
×
小規模には存在
ドイツ
小規模には存在
×
アイスラ
ンド
能力増進EGS
×
高温岩体発電
(延性領域)
超臨界発電
(延性領域)
マグマ発電
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
×
◎
×
◎
◎
◎
実証事業あり
e.g.デザートピーク
実証事業あり
e.g.ニューベリー
×
×
◎
実証事業あり
e.g.クーパーベイズン
パララナ
×
◎
実証事業あり
e.g.ソルツ
◎
×
実証事業あり
e.g.ランダウ
×
×
天然の高温地熱貯留
層無し、
熱の直接利用は盛ん
◎
高温岩体発電
(脆性領域)
実証事業あり
e.g.ガイザ-ス
天然の高温地熱貯留
層無し、
熱の直接利用は盛ん
フランス
スイス
涵養型EGS
◎
実証事業あり
e.g.バーゼル
×
×
×
×
熱のカスケード利用
が発達
×
Renewable Energy Unit
実証事業あり※
e.g.クラフラ
×
×
◎
韓国
天然の高温地熱貯留
層無し、
熱の直接利用は盛ん
◎
◎
〇
○
日本
JOGMEC、NEDOにお
いて技術開発を実施
実証事業あり
e.g.柳津西山
過去に民間レベル
での取り組みあり
実証事業あり
e.g.肘折、雄勝
×
×
×
△
×
実証事業あり
e.g.ポハン
△
NEDOエネ環境PG
◎:PJ実施中・稼働中、 ○:過去PJを実施、 △:検討中、 ×:PJ未実施、未検討
※マグマ付近に存在する超臨界流体を取り出して発電するため、超臨界地熱発電に分類しているが、本戦略で定義した超臨界発電とは蒸気の起源が一
致しない。 (本戦略での定義:プレートテクトニクス由来、アイスランドでの超臨界発電:海水由来)また、現状発電には至っておらず、蒸気を噴気させると
ころまでに留まる。
37
Technology Strategy Center
1.組織概要・技術戦略研究センターの紹介
2.次世代地熱発電技術の種類と特徴
3.海外の動向
4.エネルギー・環境イノベーション戦略
38
美しい星への行動(ACE)2.0
TSC
Renewable Energy Unit
2015年11月に開催されたCOP21において、安倍総理から「美しい星への行動(ACE)2.0」を発表。
途上国支援に加え、イノベーションの推進に向け、「エネルギー・環境イノベーション戦略」の策定に
ついて言及。
図 美しい星への行動 2.0 (Actions for Cool Earth : ACE 2.0)
出典:地球温暖化対策推進本部(第31回)(首相官邸, 2015)
39
エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI 2050)
TSC
Renewable Energy Unit
平成28年4月19日にエネルギー・環境イノベーション戦略が策定された。本戦略では、2030年迄の取
り組みに加えて、2050年のさらなる排出量削減のための革新技術として7つの個別技術+横断技術
を取り上げたもの。うち、再生可能エネルギーでは太陽光と地熱発電が選定された。
地熱発電については、次世代地熱発電技術として高温岩体発電と超臨界地熱発電が取り上げられ
ている。
出典:総合科学技術・イノベーション会議(第18回)配布資料(内閣府, 2016)
40
エネルギー・環境イノベーション戦略(NESTI 2050)
TSC
Renewable Energy Unit
出典:総合科学技術・イノベーション会議(第18回)配布資料(内閣府, 2016)
41
本文抜粋
TSC
Renewable Energy Unit
②次世代地熱発電
地熱資源はマグマが比較的浅部に存在する火山国に多く、活火山数が世界第
3位の火山大国である日本は、世界でもトップレベルの地熱資源ポテンシャルを
有し ている。天侯や時間帯に左右されずに出力が安定しており、水力と同様、
ベースロー ド電源として位置付けられる数少ない再生可能エネルギーであり、
その有効利用が期待されている。 しかし、現在の地熱発電は、地下1~3km 程
度に存在する地熱貯留層の位置 を正確に特定することが難しく、地熱発電所を
建設するためには地質調査・物理探 査等に長期間を要し経済的リスクが高い等
の課題がある。このため、世界全体でも、 地熱発電は全発電電力量の1%未満
に留まっている状況にある。 こうした地熱発電の持つ様々な課題を克服でき、既
存の発電方式では活用困難 な地熱資源を用いた、新世代の地熱発電システム
を開発する。日本は他国と比較 して浅部(4~5km)に高温地熱資源がある可能
性があり、優位な立場にある。
以下に、次世代地熱発電の具体例を記載する。
・・・・・・・
http://www8.cao.go.jp/cstp/siryo/haihui018/siryo1-2.pdf
42
まとめ
TSC
Renewable Energy Unit
次世代地熱発電技術には、短中期的に実用化が望まれる技術と、
長期的な視点で2030年以降の実用化を見据えたものなど様々な
種類が存在する。
次世代地熱発電技術(EGS技術)は、①従来型地熱発電の導入促
進(減衰対策、リスク低減)及び②導入ポテンシャルの飛躍的増大
の観点で、有用な技術となる可能性を秘めている。
EGS技術については、各国で研究開発~実証段階が実施されてい
るが、海外で検討されているものはType1~3がほとんどであり、
Type4、5について検討している(適用しうる)のは日本のみ。
2030年以降の非連続的な技術として、高温岩体発電及び超臨界
地熱発電への関心が高まりつつある。
43
ご清聴有り難うございました
※本資料に関するご質問、お問い合わせは下記まで
NEDO 技術戦略研究センター 再生可能エネルギーユニット 米倉 秀徳
[email protected]
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