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株式会社メディカ出版 INFECTION CONTROL 編集室
「医療関連感染に関する行政関連トピックス」
(40)国の AMR 対策で再注目される可能性の高い「院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)」
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が平成 29 年からの参加医療機関を追加募集
厚生労働省は平成28年6月3日付で「院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)に係る参加
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医療機関の追加募集について」を通知(医政地発0603第2号)しました。
この通知は平成29(2017)年1月からJANISに新たに参加する医療機関について追加募集を
行ったものです。平成12(2000)年にスタートしたJANISですが、平成19(2007)年以降は
参加医療機関の追加募集が年1回行われてきています。しかし、参加医療機関は約1,859(平
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成28年1月現在)となっており、全国の病院数全体の約2割にとどまっているのが現状です。
この数字を多いとみるか少ないとみるかについては意見の分かれる所でしょうが、①診療
報酬上での「感染防止対策加算1」算定の施設基準に一部追加された(平成26年度診療報酬
改定でJANISの検査部門への参加が必須要件とされています)こと、②平成24年度診療報酬
改定で新設された「感染防止対策加算」点数の高評価(感染防止対策加算1=400点、感染
防止対策加算2=100点、感染防止対策地域連携加算=100点)が平成28年度診療報酬改定に
おいても変更されることなく、平成24年度から平成29年度まで6年間継続されることが既に
決定していること、③平成27(2015)年5月の世界保健機関(WHO)総会において、薬剤
耐性に関する国際行動計画が採択されたことを契機として、わが国においても政府レベル
で平成28(2016)年4月に「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020」が新たに
策定されたこと、などを考慮すると、JANISへの参加医療機関はこれまで以上にさらに増加
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するのではないかと思われます。
平成12(2000)年にわが国における院内感染の発生状況や薬剤耐性菌の分離状況を把握す
るための厚生労働省院内感染対策サーベイランス(Japan Nosocomial Infections Surveillance,
JANIS)事業が開始されました。スタート時は検査部門、全入院患者部門の2部門だけでし
たが、平成19(2007)年7月からSSI部門、ICU部門、NICU部門が新たに追加され、現在は
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目的の異なる上記5部門で構成されています。
各部門等の参加医療機関数(2007年、2016年比較)は次のようになっています。
〈2016年1月現在〉 〈2007年7月現在〉
 参加医療機関数
伸長率
1,859
722
2.6倍
1,696
525
3.2倍
(全入院患者部門)
885
392
2.3倍
(SSI部門)
771
302
2.6倍
(ICU部門)
193
159
1.2倍
(NICU部門)
114
95
1.2倍
(検査部門)
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(JANIS資料をもとに作成)
JANISは厚生労働省医政局地域医療計画課の事業であり、統計法に基づく国の統計調査です。
運営にあたっては関係者からなる院内感染対策サーベイランス運営委員会が組織されてお
り、さまざまな提言がなされています。実務については、国立感染症研究所の細菌第二部
内にJANIS事務局が設置されています。事務局ではJANISデータベースの管理と運用(国か
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ら委託された専門業者)が行われています。また、サーベイランスデータの提出方法や参
加医療機関への還元情報や理解を深めてもらうことを目的に、2011(平成23)年度からは
ニュースレター「JANIS通信」が年4回発行されています。なお、JANIS通信は参加医療機
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関のみに提供されているものです。
JANISへの新規参加への主な流れは次のようになっています。
〈Step1〉
①都道府県より病院長宛てに参加医療機関の募集の連絡(JANISホームページに
も掲載)
②JANISへのデータ提出・活用のための説明会への参加募集
〈Step2〉
③JANISへのデータ提出・活用のための説明会開催
④サーベイランス参加登録締切り
〈Step3〉
⑤ログイン情報通知書を病院長宛てに発送
〈Step4〉
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⑥翌年からデータ提出開始
平成29(2017)年1月からJANISへの新規参加を検討している医療機関のための説明会は次
の日程で行われます。
第1回〈2016年7月9日(土)〉
定員120人 国立感染症研究所戸山庁舎
第2回〈2016年7月14日(木)〉 定員400人 厚生労働省
第3回〈2016年9月8日(木)〉
定員120人 国立感染症研究所戸山庁舎
第4回〈2016年9月9日(金)〉
定員120人 国立感染症研究所戸山庁舎
※注)説明会への参加申し込みは先着順となっていますので、定員になり次第締め切
られます。また、複数の日程を申し込まれた場合は重複予約とみなされキャン
セルされる場合がありますので御留意下さい。なお、締切日は各自治体により
異なりますので、その点も御注意願います。
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【筆者の意見】
以下、JANISがなぜ再注目されることになる可能性が高いかについて簡単に説明します。先
にも一部紹介しましたが、政府の「国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議」が2016
(平成28)年4月5日にまとめた「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020」の目
標2である〈薬剤耐性及び抗微生物剤の使用量を継続的に監視し、薬剤耐性の変化や拡大の
予兆を的確に把握する〉の戦略2.1〈医療・介護分野における薬剤耐性サーベイランスの強
化〉の中で、まず方針として
 院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)の対象施設や対象項目の見直し等により、外
来部門や高齢者施設入所者における薬剤耐性(AMR)の動向の把握に努める――とあり
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ます。
その上で、アクションのひとつとして
 院内感染対策サーベイランス事業(JANIS)の強化――が規定されています。
具体的には、
①JANISの対象施設や対象項目の見直しに資する調査研究の実施
②WHOグローバル薬剤耐性サーベイランスシステム(GLASS)で要求される菌種について
サーベイランス対象を拡大
③JANISデータを地域レベルで分析できる仕組みの導入及び地域感染症対策ネットワーク
(仮称)によるサーベイランス活動の活用を推進
④検査受託機関の協力による院内微生物検査室のない医療機関におけるAMRサーベイラン
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スの実施を支援――が盛り込まれています。
このように、新たに策定された「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」によって、JANIS
は新たな局面を迎えることになるわけで、再注目されることになるのは間違いないと思わ
れます。しかも、アクションプランは2016~2020年までの5年間に集中的に取り組むべき対
策としてまとめられたものであり、アクションの達成状況やプロセス指標は政府の関係閣
僚会議の下で毎年評価されることにもなっているからです。
〈メディカル ドゥ編集部 平野泰弘〉
◎出典
 JANIS「参加医療機関募集のお知らせ」
http://www.nih-janis.jp/participation/additional.html
※平成28年6月3日付けの厚労省からの通知内容、説明会の詳細案内、JANIS実施要綱をみるこ
とができます。
 JANIS「参加・脱退について」
http://www.nih-janis.jp/participation/index.html
※参加の流れ、募集のお知らせ、説明会のお知らせ、脱退について、2015年説明会スライド
一覧、体制チェックリストをみることができます。
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