2016 年度・第1回スクールリーダー研修

2016 年度<研修 News> No.4
2016 年度・第1回スクールリーダー研修
立命館附属校教育研究・研修センター
5 月 21 日(土)
、2016 年度・第1回スクールリーダー研修を、朱雀キャンパスにおいて開催した。
講師には、立命館大学稲盛経営哲学研究センター客員教授高津正紀先生をお招きした。テーマは「稲
盛哲学による組織改革-JALの事例を参考にして-」であった。なお、参加者は、長岡京 3、小
学校 4、宇治 2、慶祥 1、守山 1、一貫 5、計 16 人であった。
≪研修内容≫
1.稲盛哲学によるJAL再生の取り組み
・JAL再生を3人(稲盛名誉会長・大田秘書・森田会長)で取り掛かる。
(大企業の再生にこの
人数は異例)
・3人がJALに来たときに、一番ショックだったこと→社員に再生の意欲がないこと。
JAL幹部「JALの再生は出来ない」→老朽化と、優秀な社員が辞めてしまったため。
・稲盛経営哲学とJALの経営の実態とは、大きな隔たりがある。
○JALの経営の問題点(稲盛哲学の観点より問題点を抽出)
1. 何よりも「飛行機を安全に飛ばすこと」を最優先の課題と認識していた。
2. 事業計画が特定の企画部門で作成されており、その内容が社員と共有されてない。
3. 刻々と変化する状況を誰も把握しておらず、経営数値に基づいた経営がされていない。
4. 親方「日の丸」の感覚で経営に責任を感じている幹部がいない。
5. 部門間の通風が悪く、企業としての一体感や協力体制がない。
6. JALの経営はこんなものだという社員の意識。
→これらの考えを変えていかなければならない。
○JALリーダー教育の特徴 (まず幹部社員の意識改革を目的として実施)
・幹部を対象に実施。2010 年 6 月~7 月上旬まで。週4回程。朝一番か定時後に実施)
・JAL再生の基本ツール(京セラフィロソフィ・アメーバ経営・京セラ会計学)
・第一回の講義(稲盛会長講話) テーマ「リーダーのあるべき姿」
「日本空港の再生の3つの大義」
「会社依存から独立」
「リーダーは人格者であれ」
「明確な判
断基準を持つ」
「残る社員の幸せを考える」
「人生方程式」
「人間として何が正しいかで判断す
る」等
○経営12カ条(週1で実施)
経営に働く原理原則「複雑な現象には、それを動かしている原理原則があり、その原則を捉ま
えさえいれば、ものごとは全て解決する」
環境が変わったからといって変わるものではない。どのような状況でも普遍性がある。
経営12カ条を一所懸命実践すれば再建はできる。
1~6 経営の基本的な要素
7~12 経営を伸ばす「心構え」
SL 研修 1/4
○六つの精進(稲盛会長が最初に最も共有したかった事)
1.誰にも負けない努力をする
2.謙虚にして驕らず
3.反省のある毎日を送る
4.生きていることに感謝する
5.善行・利他行を積む
6.感性的な悩みをしない。
○会計学とアメーバ経営
会計学=実態を正しく把握して経営をする。
アメーバ経営=1 人 1 人の行動の価値=付加価値を追求する。
○コンパ・・・語り合い思いを共有する
研修後にコンパを実施しようとする。
・・・反対の声多数あったが実施。
稲盛会長としては、少しでもJALのことを知りたい。
他愛の無い質問にも、真摯に丁寧に回答する。
○JALの変化
集中した研修を経て、経営幹部の意識や発言が変わっていった。→部下も上司の変化に気付く。
研修を重ねるごとに雰囲気や会長への接し方も変わっていった。
リーダー教育の内容を、ミドルリーダークラスの社員も受けたいと声が挙がり、研修を実施。
○グループ業績報告会
京セラフィロソフィ並びにアメーバ経営、京セラ会計学の教育の場
会議で考え方を確認、さらにすり合わせ、フォローのためにコンパを実施。
○フィロソフィ手帳の作成や社内報の活用
手帳作成後、各本部や各関連会社の取り組みがなされた。
フィロソフィの浸透に大いに効果を発揮している。
○稲盛会長のリーダーシップ
1.再建に取り組む「大義名分」を確立する。
日本経済の活性化・JALの従業員を守る・独占の禁止
2.JAL会社員に現実を正しく認識させる。
3.JALという企業の存在意義を考え直す。
4.積極的に現場に行き、再生に必要な考え方を説く。
→現場を知らずして、何か判断することなかれ。
○JAL改革の要素
名誉会長のリーダーシップ・稲盛哲学・アメーバ経営・意識改革研修・JALフィロソフィの
作成と実践・フィロソフィ教育・本部、職場ごとの取り組み・JAL社員の危機意識・京セラ
や盛和塾の支援・
(再生機構の取り組み等)
SL 研修 2/4
○JAL再建を成功に導いた5つの要因(稲盛名誉会長講演オックスフォード大学講演より)
1.企業としての目的を明確にしたこと
2.フィロソフィをベースとした意識改革
3.独自の管理会計システムを導入
4.三つの大義名分を掲げたこと
5.全身全霊を傾けて再建にあたる姿勢
○JALから学んだ「意識管理」
1.組織のミッションおよびビジョンの作成と共有
2.組織の「判断基準・行動指針」の確立
3.2を日々の業務で実施するために必要な「社内システム」の構築
4.2を率先垂範し、3を正しく運営するリーダーによるリーダーシップの発揮
2.稲盛哲学の実践の姿(
「盛和塾」経営問答セッション)―ビデオで研修
○テーマ「社風を良くして、伸びる会社を作るには」
① 部下の心をつかみ、いかに人材を育てるか
② 伸びる社風づくりについて
③ 経営者の時間管理について
○ビデオを視聴した出席者の意見
①発想自身が上から目線。現場の責任者と一緒に目標・課題を作っていくのが重要。
経営者の努力をどう見せるか。社員とのコミュニケーション不足。
3 つの共通点は、
「現場との距離がある。
」現場を見に行くことが大事。
プラスの評価を具体的にしてあげる。
経営者と部下の思いがズレている。そこを見直さなければならない。
②朝礼も各部署で内容は違う。社長に言われたからするのではなく、部署ごとに決めて行う方
がいい。社風は経営者が作るのではなく、自然にできるようにする。
③社長が誰と会っているのかを社内で共有する。外回りと内回りと担当者を分ける。
優先順位をしっかりつける。時間を有効に使う。
部下を信頼して、仕事を任せる。
○稲盛塾長のアドバイス
・社風や経営について勉強するよりも、現場を知ることが大切。
・利は現場にある。社長自身が現場に行くべき。
・材料も吟味して、良いものをどこよりも安く仕入れること。
・毎日毎日の現場への厳しい追及が何より大事。
・追及がないのに、毎日朝礼をしても、何にもならない。
・仕事に精通しなければ、朝礼でも会議でも説得力もない。
・社風・理念は大事だが、それだけが先行していては意味がない。
・仕事は一点集中。時間配分をしっかりと。
・来客対応にしてもその都度頭を切り替える。
・トップが何倍も働き、仕入れ先や仕事内容を知っていないといけない。
・ただし厳しい追及をし続けると社員と関係がギスギスしだす。
→そのために社風・経営理念が必要となる。順番が間違えないこと。
SL 研修 3/4
・ふつうは小さいことは、社員に任せる→稲盛名誉会長は事の大小に関わらず、常に同じ集中
力をもって解決策を見出す。集中力には習い性がある、日常の生きざまが判断力に影響する。
○組織の成果を高めるには
人生方程式…名誉会長の哲学の根底にあるもの。
人生・仕事の結果=①考え方×②熱意×③能力
○リーダーが心しておくこと
「企業(事業)は、経営者(リーダー)の器以上に大きくならない」
組織のリーダーの持つ哲学によって、経営結果が変わってくる。
→心を高める、経営を伸ばす。
3.学校運営に活かす稲盛哲学について-質疑応答-
Q:フィロソフィの中で、社会のため従業員のためとはあるが、なぜ「お客様のために」と言わ
ないのか。学校では生徒のためというのが主で、教員のためというのは中々出てこない。
A:社員を大切にすることが第一。社員が仕事に打ち込める環境がなければ、いい結果は出ない。
社員が気持ちを打ち込んで仕事をする第一番の要諦は、社長が物心両面で社員をサポートして
いること。学校では、
「先生や職員を大切にする」ということをあまり聞かない。
学校の目標と、社員の期待感や希望とが繋がっているかどうか。
目標をただ提示して実践を求めていくだけでは、社員のやる気は引き出せない。
学校も同じでは。
Q:学校現場では、役職に着きたがらない。次世代の幹部をどうやって育成すればいいか。
幹部としての意識を高められるのか。世代交代をどうしていくのか。
A:企業にとっても切実な問題点。
役職につくよりも、楽をしていきたい、という若者が増えている傾向がある。
社員から見た責任者が疲れているのでは? あんな風になりたくないと思われている。
自分たちが魅力的に思われるようにならなければ、部下も向上意識を持てないではないか。
「全き人」…物事に対して何でも出来る人。中々なれない。
「意見を持って接する上司たれ」…怖いけど、尊敬されるようなリーダー、→そのようなリー
ダーになるためにフィロソフィがいる。
上司がフィロソフィを実践しようとするだけで、JALのように部下の意識が変わるのではな
いか。そのような努力を重ねること、変化するように意識することが大切。
≪編集 立命館教育研究・研修センター 今宿純男≫
SL 研修 4/4