英国民投票 最終まとめ - 第一生命保険株式会社

Global Market Outlook
英国民投票
最終まとめ
2016年6月23日(木)
第一生命経済研究所 経済調査部
藤代 宏一
TEL 03-5221-4523
ポイント①
投票結果の直前予想
23日(日本時間)までに入手可能な世論調査などから判断すると「残留」が僅かに優勢。しかしながら、
先週は「離脱」が優勢となる場面があるなど、両者は拮抗しており、かつ、その動きは不安定。今週は、
残留支持派の女性議員が極右思想を持つと見做されている男に殺害されたことが一因となって残留派が
巻き返したが、それが決定打になったかはわからない。
当日の天候は、地域・時間帯によって降雨が予想されているが、外出を阻むような荒天ではない。一般
論として、EU離脱派は今回の投票に対する意気込みが強いため、悪天候でも投票所に向かうとされて
いる一方、残留派の中には関心の薄い人も相当数存在するため、悪天候だとそれらの人が投票所に行く
のを断念する可能性がある。投票率が低いと離脱派に有利とされているが、天候要因は考慮しなくてよ
さそう。
ブックメーカーの賭け率から逆算した英国民投票の残留/離脱割合
(%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
残留
2016/5/28
2016/4/28
2016/3/28
2016/2/28
2016/1/28
2015/12/28
2015/11/28
2015/9/28
2015/10/28
2015/8/28
2015/7/28
2015/6/28
2015/5/28
離脱
注:Ladbrokes社の賭け率より計算
出所:Oddschecker資料より第一生命経済研究所が作成
ポイント② 結果判明の時間
投票の締切りは日本時間24日午前6時(以下、全て日本時間)。結果判明は午後4時頃となる見込みだ
が、選挙管理委員会は、精査が終わった集計所から随時結果を公表するため、午前8時頃から速報が届
く予定。その後、午前11時で40%程度、12時で75%程度が判明する見込み。ただ、始めの方に発表され
る予定の集計所は残留優勢の地区で、離脱優勢の地区の発表見込み時刻は遅め。そのため初期段階では
残留が優勢になり、その後、離脱派が巻き返す展開となりそう。ニュースヘッドラインには注意したい。
なお、ロイター通信によると、世論調査会社ユーガブ(YouGov)が、午前6時までに投票を済ませた人
を対象にした調査の結果をスカイニュースが公表するという。同社は2014年のスコットランド独立住民
投票の際にも同様の調査を行い、ほぼ正確に結果を予想した実績がある。それ故、市場参加者の注目を
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
1
浴びそうだ。今回はマスコミ各社による出口調査が行われないため、ヘッジファンドなど一部投資家が
独自に出口調査を実施するという噂もあり、日本時間早朝から金融市場は神経質な展開となりそう。
英国民投票の開票見込み時刻の分布図
(%)
100
100
97
100 100
91
90
80
分布
70
累積分布
75
60
50
40
40
30
20
13
10
16:01-17:00
15:01-16:00
14:01-15:00
13:01-14:00
12:01-13:00
11:01-12:00
10:01-11:00
9:01-10:00
8:01-9:00
6:01-7:00
0
7:01-8:00
0
0
2
注:6月24日(金)の日本時間、各集計所の開票見込み時刻に基づく
出所:英選挙管理委員会資料より第一生命経済研究所が作成
ポイント③ 結果判明時の反応
離脱の場合
IMMデータでGBPのポジションを確認すると、EU離脱の国民投票が近づくにつれてショートポジショ
ンが膨らんでいるが、それほど偏っているわけではない。また、今週に入ってGBP/USDは6月入り後の下
落の大部分を取り戻しているため、その反動は不可避だろう。株式市場では、英国株を中心に世界的な
株安が観察されそうだ。USD/JPYは103を割れて一気に100割れを試す可能性があるが、その場面では日本
政府の為替介入が意識され、下げ止まる可能性が高いとみている。USD/JPYがあっさりと100を割れる可
能性は低く、また仮にそうなれば日本政府が介入に踏み切るだろう。
80
IMM
GBPネットポジション
1.8
60
1.7
40
GBP/USD(右)
20
1.46
1.6
1.5
-20
1.42
-40
1.4
-60
1.3
ネットポジション
-100
12
13
14
(備考)Thomson Reutersにより作成
GBP/USD
1.44
0
-80
1.48
1.2
15
16
1.4
1.38
16/01
16/02
16/03
(備考)Thomson Reutersにより作成
16/04
16/05
16/06
残留の場合
市場の意に沿う形で残留となった場合、不透明感の後退から金融市場ではリスクオンとなろう。株価は
世界的に上昇が見込まれ、為替市場ではGBP高が想起されるほか、EUR、CHF、SEKといった欧州通貨に買
いが波及、反対にJPYは売りが膨らみそうだ。USD/JPYは107程度(約2%)まで上値を伸ばし、6月の日
銀金融政策決定会合前の水準を回復するだろう。日経平均も16000円台後半まで上値を伸ばす可能性があ
る。もっとも、こうしたリスクオンが持続的な動きになるかについては不透明感が強く、その後は米国
をはじめとする世界経済の動向に関心が向かおう。各国の経済指標の公表が本格化する月末から第2週
にかけて方向感が決まりそうだ(6月米雇用統計は第一金曜ではなく第二金曜日の8日に公表)。
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足る
と判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内
容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。
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