300t規模の ターボ型焼却炉

300t規模の
ターボ型焼却炉
東京都・葛西水再生センター
葛西水再生センター・ターボ炉
下水道の普及および下水処理の高度化に伴い,処理
場から発生する下水汚泥量は年々増加の一途を辿って
汚泥処理の流れ
います。それに加え,処分費の高騰や埋め立て地の確
葛西水再生センターでは,場内で発生した汚泥のほ
保難など,汚泥処分には課題が多く山積しています。
かに,中川水再生センター,小菅水再生センターから
そこで,セメント原料化やエネルギー燃料,肥料な
圧送管で送泥されてきた汚泥を合わせて(29,644m3/
ど有効利用も行われている一方,その多くが焼却処分
日)を処理しています。
されています。汚泥焼却時には多量の化石燃料が使わ
汚泥は第二沈殿池の余剰汚泥を遠心濃縮機で濃縮し
れることから,省エネはもちろん,温室効果ガスの削
たものと,第一沈殿池および小菅水再生センターの汚
減が求められています。
泥を重力濃縮槽で濃縮した汚泥を脱水機にかけます。
今回は圧力状態で下水汚泥を焼却する世界初の技術
葛西水再生センターでは,脱水機はベルトプレス脱水
を採用し,温室効果ガスの削減や省エネを実現した次
機,遠心脱水機,二重円筒加圧脱水機を使用して,汚
世代型汚泥焼却炉「ターボ型流動焼却炉」を新規炉と
泥の含水率を78%で管理しています。
して初導入した東京都・葛西水再生センターでお話し
脱水汚泥は焼却して,発生した灰を粒度調整灰に形
をお伺いしました。
成し,高品位の土木工事用資材の原料として使用され
たり,埋め立て処分されています。この焼却で使われ
るのが次世代型汚泥焼却炉「ターボ型流動焼却炉」で
す。
葛西水再生センターでは,平成26年4月から圧力下
での燃焼を行う施設としては世界最大規模の300t/日
の焼却能力を持つ焼却炉を導入しています。
ターボ型流動焼却炉とは…
「ターボ型流動焼却炉(以下,ターボ炉)」は,火力
発電で用いられる加圧流動床燃焼技術を応用し,下水
汚泥燃焼に最適な気泡流動炉と過給機を組み合わせた
システムです。下水汚泥燃焼時に圧力を用いるのは世
船舶でも使用されるターボ
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界初の技術です。
ターボ炉は独立行政法人土木研究所,月島機械,三
泥を処理し始め,排ガス量が増えると自立運転に切り
機工業,産業技術総合研究所が共同開発した次世代型
替わり,最高900度の高温で焼却されます。従来炉の
の汚泥焼却炉です。平成17年度から19年度まで北海道
燃焼温度は約850℃ほどでしたが,加圧することで,
長万部町下水処理場で,5t/日の実証プラントを建設
空気密度が濃くなり燃焼速度が速く,炉内に約900℃
して実証実験が行われました。平成21年度から平成22
の高温燃焼領域を形成します。温室効果ガスのN2Oは
年度まで東京都との共同研究として,東京都で発生し
高温で燃焼されるほど排出量が低減されるため,従来
た脱水汚泥をプラントに投入し,温室効果ガス削減効
より温室効果ガス排出量を約50%削減することが見込
果や連続運転(800hr×2回)といった性能確認を実
まれています。
施しています。
その後,焼却炉から発生した燃焼排ガスは空気予熱
器を経由してバグフィルタを通ります。バグフィルタ
ターボ炉のしくみ
の入口では排ガスが600℃まで下がり,セラミック
ターボ炉は脱水汚泥を圧力下(約130 ~ 150kPa・
空気のみが過給機に送られます。また,過給機で製造
G)で燃焼させ,そこで発生した燃焼排ガスを圧縮空
された圧縮空気は流動用空気予熱器に運ばれ予熱され
気とし,過給機(ターボチャージャー)を駆動させる
て,焼却炉の燃焼空気となります。
フィルタ約580本を通して,焼却灰と分離した排ガス
仕組みです。
従来は焼却時に発生する脱水汚泥中の水分が燃焼の
妨げになっていましたが,ターボ炉では,逆にその水
ターボ炉の効果
分を利用し,水分が蒸発するときのエネルギーを含ん
ターボ炉では,前述した温室効果ガスN2O排出量削
だ排ガスを駆動源としています。駆動した過給機は外
減のほかに,さまざまな効果が見込まれています。
気を取り込み,同時に加圧。圧縮空気を送り炉内に圧
従来焼却炉では,空気を送り込む流動ブロワと出て
力のかかった状態で燃焼空気として過給機に送られま
きた排気ガスを誘導する誘引ファンが必要でしたが,
す。従来,捨てられていた排ガスが駆動源となること
ターボ炉では,その役割を過給機が担っています。こ
で,自給駆動を可能にしています。
のことで,約40%の電力削減につながりました。ま
立ち上げ時は起動用ブロワを使用しますが,脱水汚
た,炉内の圧力も正圧(大気圧の約1.5倍)で行われ,
ターボ型流動焼却炉フロー
焼却炉
煙突(既
設)
白煙防止空気予熱器
排煙処理塔
バグフィルタ
バグフィルタ
脱水ケーキ
過給機
都市ガス
冷却水
流動用空気予熱器
焼却灰
臭気ガス
゙
灰ホッパ
起動用ブロワ
白煙防止ファン
苛性ソーダ
苛性ソータ
循環ポンプ
ターボ型流動焼却炉フロー図
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丈夫につくられた焼却炉
圧縮空気で過給機を稼働
導入した同局で
は,実機稼働後
も関連企業と協
力してシステム
の分析評価を行
い,機器間の圧
力差を常時監視
する方式の導入
や,圧力差が管
理値以上となっ
ブロワは起動時のみ使用
た場合に作動す
る強制停止シス
テムの導入など
燃焼用空気容積は従来の約40%になります。燃焼用空
各種の改良を実
気容積が圧縮されると,炉内径も細くなり,炉表面積
施しました。こ
が小さくなり,全燃費が約10%削減。施設自体もコン
れにより,順調な実機稼働とシステムとしての信頼性
パクトになり,同時に断熱材の使用量も少なくなって
を確立しています。
います。
ターボ型流動焼却システムは東京都下水道局浅川水
なお,ターボ炉は圧力に耐えられるよう灰搬送設備
再生センター,神奈川県模川流域下水道右岸処理場で
の貫通部を二重化するなど漏洩対策が設計されていま
昨年度に,また,東京都下水道局新河岸水再生セン
す。また,過給機は自動車や船舶等で用いられている
ターでも本年から順調に稼働を開始しているほか,東
安価な汎用品を採用,設備がコンパクトになること
京都下水道局みやぎ水再生センター,甲府市浄化セン
で,建設費は従来と変わらず,運転コストを削減する
ター,大阪府安威川流域下水道中央水みらいセンター
ことで全体的なコストも削減できています。
でも建設が進められています。今後,更新時期を迎え
排ガスが排出されるさわやか煙突
る焼却炉が多くなってくることから,コストと温室効
エネルギー自立型へ
果ガス削減につながるターボ炉の活躍が見込まれ,そ
ターボ炉は従来炉とはシステム全体の設計条件が大
最後になりましたが,取材の際にご協力いだたきま
きく異なるため,とくに安全性の確保が大きな課題と
した東京都下水道局の皆さまに誌面を借りて御礼申し
なっていました。全国で初めてターボ炉を実機として
上げます。
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れに先鞭をつけた東京都の取り組みが期待されます。