新潟大学人文学部と包括連携協定を締結します(PDF:711.1

十日町市
報道資料
平成28年6月20日
十日町市総務部企画政策課
十日町市教育委員会生涯学習課
新潟大学人文学部と包括連携協定を締結します
新潟大学人文学部との連携を強化し、相互に協力して地域の文化資源にかかる教育研
究活動を進め、その成果を活用することにより、地域社会の発展と人材の育成を図るこ
とを目的とします。
1
日 時
2
会 場
平成28年6月23日(木) 午後3時15分~(30分程度)
※協定締結後、新潟大学人文学部・齋藤陽一学部長と十日町市長によ
る記者会見を行います。
十日町市役所車庫棟大会議室
3 連携の内容
(1) 十日町市は、当市における新潟大学人文学部の教育研究活動に対して、必要な情
報を提供することを通じて、その実現に便宜を図ること。
(2) 新潟大学人文学部は、当市における研究活動の成果を、当市の要求に応じて地域
社会に提供すること。
(3) 前述の目的を達成するため、上記の項目のほかに必要な事案について、相互に協力
すること。
4
主な連携事業
ま る い
主な事業として、新潟大学人文学部・原田健一教授が構築した「にいがたMALUI連
携・統合型データベース」(新潟県全体の文化資源を一元的に管理公開するシステム)
のネットワークに、十日町情報館で公開している旧・山内写真館の写真資料データベー
ス(約3,000件)を加え、将来的に同ネットワークに参加しているデータベース群を閲
覧できるようにする事業を予定している。
5 添付資料
① 「新潟大学地域映像アーカイブデータベース」の概要
② 「にいがた MALUI 連携・統合データベース」の概要
■お問合せ先
十日町市教育委員会 文化スポーツ部 生涯学習課
社会教育係 担当:髙橋由美子 ☎025-757-8918
新潟大学地域映像アーカイブデータベースと
新潟県立図書館の新聞データベースとの統合へ向けて
原田健一(新潟大学)
1.統合型データベースの構築、
その社会的背景
今回、新潟県立図書館の新聞データベースと新潟大学地域映
像アーカイブのデータベースの統合に向け、一歩を踏み出すこと
になりました。マス・コミュニケーションである新聞記事のデジ
文化全体をボトムアップする基盤を創出することになることが
期待されています。
2.統合型データベース構築によって
明らかになる新たな研究的な意味
タル化したコレクションと、社会の中間的なコミュニケーション
既に述べたように今回の統合型データベースは、異なった
というべき「地域」コミュニティに関連する映像を発掘・デジタ
ジャンルのデータ群とデータ群とを統合することで、既に社会
ル化したコレクションとを統合します。ゆくゆくはこれら地域メ
に実在するが不可視のものとして存在していた資料空間を現
ディアの情報(コンテンツ)を集合化し、横断的に検索し、研究
出させるものです。こうした新たな膨大な資料空間、群として
するなど、さまざまな利活用に応えようとするものです。
の資料を分析する新たな研究方法の開拓という大きな転換を
既に、新聞社が行うデータベースや、放送局、あるいは資料
促進するものです。
館、アーカイブなどが単 独で行うデータベースは数多く存 在
ここで求められる研究方法は、資料・映像などを単体で扱う
しています。しかし、現在、こうしたさまざまな資料、デジタル
のではなく群(かたまり)として扱うものです。つまり、記事や
データを横断的に結びつけることは行われていないだけでな
作品単体、1つ1つ、1枚 1枚の資料や映 像の分析ではなく、
く、そうした新しい創意に満ちた研究も行われていません。各
コレクション(資料群・映 像群)の分析方法であり、複 数の他
研究領域で、単体でバラバラに行われているにすぎないので
の研究領域の研究者との連携による資料分析の方法を新たに
す。そのことそのものが、現在のメディア研究、映像研究などの
作り出すものです。
停滞をもたらしている原因でもあるのですが、そうした社会の
こうした資料・映像のもつ社会的な関係性、場のコンテクス
システムそのものを問うことができていない状況にあります。
トを明確にするには、必ずしも、その内容にこだわらない、横
もちろん、こうしたデータの統合は、研究的な問題だけでは
断的な関係性のあり方を探り出す必要があります。歴史資料、
ない社会的意味を有しています。こうした社会の情報コンテン
民俗資料、芸術資料など個々の研究領域の枠組みの内で見て
ツを文化資源として共有化するためには、異なる領域の機関で
いたのでは分からない関連性、社会的な文脈を読み解くため
ある博物館、資料館、図書館、大学、産業界と提携すること、こ
にデータ群とデータ群とを関連づけ、媒介することで、社会で
れをMALUI連携といいますが、そうした大きな社会的な枠
生み出されている不可視の構造性、社会的意識、感情、感覚の
組み、システムを創出する、既存の社会システムの再構築という
共通性をえぐり出すことが可能になるのです。
大きな社会的動向と関わっています。統合型データベースの構
その意味で統合型データベースは、今まで目の前の日常生活
築は、単なる研究という枠では収まらない、大きな社会の流れ
に隆起し見えていたにも関わらす、実体化できなかった現実を
なかにあり、自らもそうした動向に関わろうとするものです。
新たな研究概念、パラダイムによって捉え直すことを可能にす
今回の取り組みにあたって、現在までに、新潟県立図書館で
は、戦前期の地域新聞のデジタル化が終わり、データベースを
構築する段階に来ています。さらに、新潟大学地域映像アーカ
イブの映像データベースは準備段階を終え、本格的な運用体
るものとなります。
3.統合型データベースを構築するための
新たな技術の開発
制へと移行しつつあります。この二つのデータベースを検索で
異なったジャンルのデータ群とデータ群とは、そのまま異
きる、統合型データベースを構築するために、新しい検索シス
なった機関と機関のデータであり、機関と機関との連携による
テムの作成を、イパレットが開発し行える状況にきています。
統合を意味します。
この三者の連携によって開発されたシステムが運用できるよ
統合のための構成は、公開用の表示・検 索等を担うウェブ
うになった場合、今後、県内の他の関連機関のデータの統合が
サーバーと、外 部から直 接アクセスできない 画 像 管 理 サー
大きく進むことになるでしょう。さらには、研究的であったデー
バーに分 離 することによって、資 料 公 開 方 法 の 柔 軟 性と一
タベースはさらに汎用性を高め、小中高校などの学校教育に映
部公開制限のある画像データの保安について両立を図りま
像などさまざまなデジタル情報を提供することを通して、社会・
す。具体的には、マルチフォーマット対応の画像ビューアとIIIF
にいがた 地域映像アーカイブ
20
▶
新潟大学地域映像アーカイブデータベースと新潟県立図書館の新聞データベースとの統合へ向けて
▶ (International Image Interoperability Framework) 等の
国際的規約、新技術による、運用者側と利用者側の双方に利
便性の高い新世代型統合システムを目指しています。
この方式の利点は、画像サーバーを Web サーバーから分離
するため、インターネットから画像への直接的なアクセスを制
トを用いることができるのです。
第一段階として、新しいシステムであり、システムとして機能
するか、実証するための作業を今年度行います。第二段階とし
て、今後、将来的な発展した統合型データベースの構築を行う
ことになります。
御で、さらに画像管理サーバーにより、多様な画像フォーマッ
統合型データベース
今回の配信構造
統合型データベース
配信構造(将来の発展例)
(作図:イパレット 津田光弘)
4.連携機関、ならびにそのデータの状況
新潟大学地域映像アーカイブデータベース http://arc.human.niigata-u.ac.jp/db/
は、現在、映 像や音 源は 着々とデジタル 化しアーカイビン
さらに、教育における地域コミュニティの機能は弱くなって
いることを受け、MALUI 連携による統合型データベースを基
盤として、弱くなったコミュニティと学校や社会教育施設との
間を、情報・映像などを媒介とすることで再構築することをめ
グされ蓄 積されています。2015 年 10 月段階で、写真約 2 万
ざします。活 力ある
7000 点と動画約 300 本を新潟大学内で公開していますが、
地 域コミュニティの
将来的には、総計で写真約 10 万点、動画約 1000 本、音源約
形成の中核に、学 校
1000 点の公開を予定しています。
や 図 書 館 な どの 社
新潟県立図書館では所蔵する新潟県関係新聞マイクロフィ
会 教 育 施 設を再度、
ルム( 明 治 ~ 昭 和 17 年 10 月)約 22 万 7500コマ を デ ジタ
位置づけ直し、また、
ル化を終え、貴重な新聞の保存媒体の多様化を図ると共に、
中 高 年 層 の ボ ラン
データベースを構築しインターネットを通じて、地域における
ティア・チームを立ち
他の登録図書館での閲覧を可能とし、資料の有効活用を図る
上げ、地 域に蓄 積さ
ことを予定しています。
れている無形の知識
地域映 像アーカイブと新潟県立図書 館の連携による統合
や 知恵を発掘し、伝
型データベースのシステムの構築を 2016 年 6月、ならびにそ
達・継 承 し、蓄 積 す
の閲覧公開は、9月頃を予定しています。それに合わせ、今後
ることが求められて
の地域の関連機関のデータの統合を促進するための公開シ
います。 ■
ンポジウムなども行う予定です。
21
にいがた 地域映像アーカイブ
新潟県立図書館でデジタル化した新聞
提言
(仮称)
「
にいがた MALUI 連携・統合型データベース」
新潟県立図書館
1 デジタルアーカイブの現状と課題
(1)国内の状況
従来、国会図書館でデジタル化した資料は国会図書館
現在、教育・研究に関わる博物館・文書館・図書館・大学・
産業(MALUI)において、書籍・絵画・古文書・動画・写真・
内だけでしか閲覧できなかった著作権のある絶版資料が、
音源などのデジタル化を行い、文化資源化することは喫
登録した公共図書館、大学図書館内で利用可能になった。
緊の課題となっている。欧米ではこの領域のデジタル化
(2)新潟県立図書館の状況
による文化資源の共有化が、急速に進んでおり、日本の
新潟県立図書館では、デジタルアーカイブ「越後佐渡
立ち遅れは明らかとなりつつある。
デジタルライブラリー」により、県立図書館・県立文書館・
こうした現況を打開することが求められているなか、
国立国会図書館は 2014 年 1月21日より図書館向けデ
県内市町村(図書 館・博物館等)の MLA 連携に取り組
ジタル化資料送信サービス(図書館送信)を開始した。
んできている。
にいがた MALUI 連携・統合データベース 概念図
県全体の文化資源を一元的に管理公開するシステム
新潟大学
中核的役割
新潟県立歴史博物館
連 携
にいがた
地域映像
アーカイブ
データベース
絵はがき
コレクション
新聞のデジタル化
明治・大正期終了
未公開
新潟県立図書館
連 携
付属図書館
連 携
県内大学・小中高等学校
地域の文化資源
連 携
越後佐渡
デジタル
ライブラリー
柏崎市立図書館
長岡市立図書館
全資料の閲覧可能
約 3,900 点
約 70,000 画像
参加 11 市町村
新潟県立文書館
古文書・古典籍
コレクション
佐渡金山
圖會の世界
ライブラリー
新聞社等民間機関
越後佐渡
デジタル
ライブラリー
ながおか
ネット・
ミュージアム
小竹
コレクション
絵葉書
研究・教育・まちづくり等への活用
にいがた 地域映像アーカイブ
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▶
「(仮称)にいがた MALUI 連携・統合型データベース」
この「越 後 佐渡デジタルライブラリー」の構築は、貴
▶
重資料の「保存(原本の劣化や消滅の回避)」と「活用
考値)は約 167 万件であり、一日平均約 4,500 件にの
ぼっている。
(いつでもどこでも)」を目的とし、構 築に当たっての
更に、当館では貴重資料にとどまらず、地域新聞のデ
県立文書館・県内市町村(図書館・博物館等)との連携
ジタル 化も進めている。明治・大 正期の新 潟県の主要
は、
「 資 料の多様 性の追求」と「市町村 支 援 」を目的と
新聞のデジタル 化は終了し、昭和初期の新聞デジタル
したものである。
化が 現在進行中である。それらのデータは膨大な量に
現在、デジタル化した資料は約 3,900 点、約 70,000
のぼってきており、また、中にはプライバシー問題など
画像となり、参加市町村も 30 市町村中 11市町村(11
のため登録機関を対象とした限定公開が求められるも
機関)となっている。昨年度のトップページのログ(参
のもある。
2
MALUI 連携による統合型データベースの構築による
新しい地域連携モデルへの発展
(1)提案
こうした上記のような試みや課題は新潟県立図書館
だけではなく、
新潟大学附属図書館
(2)期待される効果
構成される資料群は新潟地域の歴史・社会の情報を
豊富に含み、文化資源として高いポテンシャルを有して
■
いる。現在、各機関の窓口またはホームページでしか閲
「新潟大学古文書・古典籍コレクションデーターベース」
覧できないこれらの資料群を、統合型データベースで一
「佐渡金山圖會の世界」
元的に利用することが 可能になれば、研究や教育はも
新潟大学地域映像アーカイブセンター
■
とより、地域の文化資源をまちづくり等に生かすなど、
「にいがた地域映像アーカイブデータベース」
現代的な観点からも活用できることになる。
長岡市立図書館
■
「ながおかネット・ミュージアム」
柏崎市立図書館(ソフィアセンター)
これらの実現により、本県における画期的な研究・教
育環境が整備されることになるとともに、ひいては、本
■
県の魅力の発信力向上に大きく貢献していくことにもつ
「小竹コレクション絵葉書」
「地域新聞」
ながる。 ■
十日町情報館
■
「山内写真館コレクション」
新潟県立歴史博物館
■
「笹川勇吉氏旧蔵絵はがきコレクション」
など、個々の機関で進められ、また課題となってきた。
現在、これらの文化資源活用の効率性・利便性を高め
可能性を広げていくために、広く県内全体の文化資源を
一元的に管理公開するシステム(MALUI 連携による統
合型データベース)を構築することが、緊急の課題となっ
ている。しかしながら、この試みは膨大なデータ量を処
理する必要があるだけでなく、さまざまな機関が参加す
る必要があり、また新たなシステムを築く必要がある。
今回、MALUI 連携に向けて、新潟大学人文社会・教育
科学系附置地域映 像アーカイブセンターの「にいがた
地域映像アーカイブデータベース」が県立図書館内で閲
覧可能となった。今後は、さらに研究・教育機関のみなら
ず新聞社や放送局などにも呼びかけを行い、オール新
潟の MALUI 連携へと発展させていくことが望まれる。
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にいがた 地域映像アーカイブ
「県立図書館は、創立百周年を迎えます。
」
写真:明治記念新潟県立図書館(新潟市寄居町)