2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 23 日 資料 9 Ⅴ.運送(続) 8.海商法 8.1.総論 商法第3編「海商」:船舶を用いた海上での企業活動 船舶・船舶所有者(第 1 章)、船長(第 2 章) 海上運送(第 3 章) 共同海損・船舶の衝突(第 4 章)、海難救助(第 5 章) 海上保険(第 6 章) 船舶債権者(第 7 章) + 特別法:Ex. 国際海上物品運送法、船主責任制限法等 「船舶」(商法 684 条):商行為をなす目的で航海に供用するもの 平水区域(河川・湖・港湾)内のみで用いられる船舶は? 商行為以外の目的で用いられる船舶は? ➡船舶法 35 条 海上企業主体としての船舶所有者と船舶賃貸借・傭船 船舶所有者の責任(商法 690 条) 船舶賃借人の地位(商法 704 条) 8.2.船主の責任とその制限 8.2.1.船舶の所有者等の責任の制限に関する法律(船主責任制限法) 同一の事故から生じる損害賠償債権全体についての責任制限(6 条 1 項) 海事債権についての責任の制限に関する条約(1976 年+1996 年) 制度趣旨 Cf.船舶の委付(旧商法 691 条) 合憲性(最決昭和 55 年 11 月 5 日民集 34 巻 6 号 765 頁) 制限債権(3 条 1 項 2 項) 旅客の損害(3 条 4 項)や被用者の債権(4 条 2 号)等は対象外 責任制限の否定(3 条 3 項) 責任限度額(7 条) 1 2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 23 日 資料 9 8.2.2.船舶油濁損害賠償保障法 油による汚染損害についての民事責任に関する国際条約(1969 年→1992 年) 油による汚染損害の補償のための国際基金の設立に関する国際条約(1971 年→1992 年) タンカーの積荷油による油濁 汚染除去費用(2 条 6 号ロ)を含む損害について厳格責任(3 条 1 項) 船舶のトン数に応じた責任限度額(6 条)による責任制限(8 条、9 条) タンカー油濁損害賠償保障契約の締結の強制(13 条 1 項)と入港禁止(13 条 2 項) 国際油濁補償基金(IOPCF)からの補償(22 条) 油受取人による基金への拠出(28 条、30 条) 一般船舶の燃料油による油濁 燃料油による汚染損害に関する民事責任条約(2001 年)は未批准 汚染除去費用(2 条 7 号ロ)を含む損害について厳格責任(39 条の 2) 船主責任制限法による責任制限(39 条の 3) 一般船舶油濁損害賠償等保証契約の締結強制と入港禁止(39 条の4) 8.3.船舶抵当権・船舶先取特権(江頭 324-325 頁) 8.3.1.船舶抵当権(商法 848 条) 船舶の建造資金の融資に利用 船舶の登記制度(商法 686 条) Cf. 日本籍船の減少と便宜置籍船の増加 所有者資格(船舶法 1 条)と船員資格(船舶職員および小型船舶操縦者法)の限定 8.3.2.船舶先取特権 債権者共同の利益に貢献した債権(商法 842 条 1・2・4-6・8 号) 公益的・社会的政策的配慮から優遇されている債権(商法 842 条 3 号 7 号) 責任制限の対象となる債権(国際海運 19 条、船主責任制限法 95 条) 他の先取特権や船舶抵当権に優先(商法 845 条、849 条) 商法 842 条の順番(商法 844 条)>船主責任制限法 95 条 船舶金融の取引の安全と船舶先取特権の範囲の限定 Ex. 最判平成 14 年 2 月 5 日判時 1787 号 157 頁 2 2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 23 日 資料 9 改正法:842 条 1・2・8 号削除 人身損害による損害賠償請求権についての先取特権を最優先に 銀行 vs 船員 船舶賃借人・傭船者に対する船舶先取特権の船舶所有者への対抗 商法 704 条2項、国際海運 19 条 1 項、船主責任制限法 2 条 1 項 2 号 最判平成 14 年 2 月 5 日判時 1787 号 157 頁 執行手続(民事執行法 189 条) 船舶のアレストと解除金の供託(民事執行法 114 条・115 条・117 条) 8.4.共同海損(江頭 318 頁) 制度趣旨 ヨーク=アントワープ規則(1994 年版、2004 年版、2016 年版) 国内法の意義、改正法 8.5.海難救助 任意救助(商法 800 条) 救助料の額・分配・支払(商法 801−814 条) 改正法:現代化(ex. 805 条)、条約との調整 海洋環境の汚染防止措置についての特別補償料の導入 1910 年:海難ニ於ケル救援救助ニ付テノ規定ノ統一ニ関スル条約 1989 年:海難救助に関する国際条約 【参考文献】 落合誠一=江頭憲治郎編『海法大系』(商事法務、2003 年) 中村眞澄=箱井崇史『海商法(第 2 版)』(成文堂、2013 年) 9.貸切形態での物品運送 9.1.傭船契約の種類 特定の船舶の貸切り、大口契約としての交渉力→契約自由(国際海運 16 条) Cf.数量契約 3 2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 23 日 資料 9 船舶所有者 → オペレーター → 荷主 9.1.1.船舶賃貸借(裸傭船) 船舶所有者は船舶だけを提供、船員は賃借人が手配、運航主体は賃借人 船舶所有者と同様の責任(商法 704 条・690 条) 9.1.2.航海傭船 大口の運送契約 船舶提供側は船舶所有者の他、船舶賃借人・定期傭船者・航海傭船者のこともある 運航主体は船舶所有者等の側、航海傭船者に運航に関する指示権はない 9.1.3.定期傭船 船舶所有者・船舶賃借人が船員の手配・船舶の管理 定期傭船者は燃料・航海費用を負担、運航を管理、船長の交代請求権の保有 定期傭船契約の法的性質 運送契約説か混合契約説(船舶賃貸借+労務供給)か 第三者との関係で問題 改正法:船舶賃貸借とならぶ船舶の利用に関する契約として基本的内容を規定 危険物通知義務、堪航能力担保義務等の運送契約に関する規定の準用 船舶の衝突に関する定期傭船者の責任(商法 704 条 1 項) 東京地判昭和 49 年 6 月 17 日判時 748 号 77 頁(フルムーン号事件) 最判平成 4 年 4 月 28 日判時 1421 号 122 頁(Ⅴ-2) 法的性質論への批判 日本の判例・学説の背景:船舶先取特権による差押えの容易性 定期傭船者に対する先取特権の船舶所有者への対抗(704 条 2 項)➡改正法で準用 高松高決昭和 60 年 5 月 2 日判タ 561 号 150 頁 9.1.4.運航委託 船舶所有者が船舶と船員を提供、運航受託者が運航を管理 出来高払いか定額か ➡海運不況時に定期傭船と比べてオペレーターに有利なのはどちらか? 4 2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 23 日 資料 9 9.2.傭船契約と船荷証券 9.2.1.船舶所有者が発行する船荷証券 責任主体は船舶所有者 傭船者と船舶所有者の間では片面的強行規定性は適用除外(16 条本文) 船荷証券の第三取得者との関係では片面的強行規定性が復活(16 条但書) 9.2.2.傭船者が「船長の代理人として」発行する船荷証券 船舶所有者-傭船契約―傭船者-荷主 |雇用 For the master として BL 発行 | 船長 「船長のために」発行された船荷証券に基づく責任を負うのは誰か デマイズ条項の有効性 最判平成 10 年 3 月 27 日民集 52 巻 2 号 527 頁(Ⅴ―3:ジャスミン号事件) Cf.大判昭和 10 年 9 月 4 日民集 14 巻 1409 頁 東京地判平成 9 年 9 月 30 日判時 1654 号 142 頁 傭船者と第三者との運送契約についての責任主体(商法 759 条)➡改正法で削除予定 Cf.国際海上物品運送法 20 条 1 項、19 条 1 項 【参考文献】 小林登「定期傭船契約の法的諸問題」竹内昭夫編『特別講義商法Ⅱ』(有斐閣、1995 年) 246 頁 森田果「判批」法学協会雑誌 116 巻 6 号 1021 頁(2000 年) 10.物流関連企業(倉庫営業、3PL 等) 倉庫営業(江頭 361-381 頁) 運送ターミナル・オペレーター Cf.寄託総則(商法 593-597 条) 3PL(third party logistics) 物流のアウトソーシング化 輸送・保管・荷役・流通加工・包装・物流情報システム構築の全般を受託 業者の責任について複合運送と類似の問題 5 2016 年度 商法第 3 部 2016 年 6 月 23 日 資料 9 【参考文献】 森隆行『現代物流の基礎』(同文館出版、2007 年) 小塚荘一郎「倉庫業者と運送ターミナル・オペレーターの責任」『落合誠一先生還暦記念 商事法への提言』(商事法務、2004 年)665 頁 清水真希子「物流サービスプロバイダーの責任について」『江頭憲治郎先生還暦記念 企 業法の理論・下』(商事法務、2007 年)281 頁 6
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