2016 年 6 月 20 日 みずほ銀行(中国)有限公司 中国業務部 ―マクロ経済関連― みずほ中国 ビジネス・エクスプレス ( 経済編 第 57 号 ) 要 旨 5 月経済指標は総じて小幅鈍化。構造調整に伴う景気下押し圧力が続いていることを示唆する内容。 1.5 月経済指標は総じて小幅悪化 ・ 投資は小幅悪化 ・ 消費品小売額は小幅減速 ・ 不動産価格上昇率は一線都市で鈍化 ・ 輸出は減速、輸入は減少幅が縮小 ・ CPI上昇率鈍化は野菜価格安定が主因 ・ 貸出純増額は拡大、社会融資総量は縮小 2.トピックス~ゾンビ企業、過剰生産能力、債務問題を巡る動き ・ 「3 年で 345 社のゾンビ企業を処理」 (国有資産監督管理委員会) ・ 「債務問題を一元管理する専門機関を設置」 (李揚) -1- 1.5 月経済指標は総じて小幅悪化 ・投資は小幅悪化 5 月の経済指標は小幅悪化した。5 月の工業付加価値生産額は前年同月比(特記しない限り以下同)+ 6.0%と、4 月(+6.0%)と同水準であった(前月比+0.5%)(図表 1)。1~5 月累計では+5.9%で 15 年通年(+6.9%)から減速している。国家統計局は、5 月の生産統計に明らかな構造最適化、産業の 二極化の特徴があるとして「①ハイテク産業の加速、②装備製造業の回復、③採掘・エネルギー消耗型 伝統産業が引続き減速」と述べている1。 図表 1 22 工業付加価値生産額 図表 2 (前年比%) 40% 合計 化学 輸送機器 紡織 金属素材 20 18 固定資産投資 (前年比、%) 固定資産投資 不動産開発投資 35% 30% 16 14 25% 12 20% 10 8 15% 9.6% 6 10% 4 7.0% 2 5% 0 図表 3 固定資産投資(国有・民間投資) 16/3 15/9 15/3 14/9 14/3 (注)各年初から当月までの累計値の前年同期比。12年末まで3,6,9,12月末、13年以降月ベース。 (資料)国家統計局、CEIC 図表 4 鉄道・道路・水利・環境産業固定資産投資 (前年比、%) 60,000 固定資産投資 国有及び国有ホールディングス 35 13/9 3 5 16 13/3 7 9 11 15 12/9 5 12/3 3 11/9 7 9 11 14 11/3 5 10/9 3 10/3 9 11 09/9 12 7 13 09/3 5 08/9 3 08/3 9 11 07/9 7 (注)工業付加価値生産額。1月は1~2月累計の前年比。輸送機器は12年3月以降、自 動車。(資料)CEIC 40 1.0% 0% 5 07/3 -2 50,000 民間投資 (億元) (前年比%) 60 鉄道運輸投資額(左軸) 道路投資額 水利、環境、公共施設投資額 水利、環境、公共設備管理業 道路運輸 鉄道運輸前年比(右軸) 40 30 40,000 20 30,000 0 20,000 -20 10,000 -40 0 -60 25 23.3 20 15 10 9.6 5 16/5 16/1 15/9 15/5 15/1 14/9 14/5 14/1 13/9 13/5 13/1 12/9 12/5 12/1 11/9 11/5 11/1 0 12/2 12/4 12/6 12/8 12/10 12/12 13/3 13/5 13/7 13/9 13/11 14/2 14/4 14/6 14/8 14/10 14/12 15/3 15/5 15/7 15/9 15/11 16/2 16/4 3.9 (注)各年初から当月までの累計値及びその前年同期比。(資料)国家統計局、CEIC (注)各年初から当月までの累計値の前年同期比。(資料)国家統計局、CEIC 名目固定資産投資は 1~5 月累計では+9.6%と、1~4 月の+10.5%、15 年通年の+10.0%から減速し 1 国家統計局 6 月 13 日「国家统计局工业司高级统计师江源解读 5 月份工业生产数据(国家統計局工業司江源統計師が 5 月工業生産データ を解読)」 http://www.stats.gov.cn/tjsj/sjjd/201606/t20160613_1366734.html ①ハイテク産業(+11.5%)。うち、医薬(+12.2%)、航空 設備+28.3%、電子及び通信設備(+12.5%)、情報化学品(+27.5%)。②装備製造業+8.5%、4 月から+0.6%PT 加速。うち、計器製造(+3.2% PT)、コンピュータ及びその他電子設備(+1.7%PT)、電気機械器材(+0.9%PT)、専用設備(+0.7%PT)、汎用設備(+0.4%PT)の生産が 4 月 比で加速。③採掘業▲3.2%。うち、石炭採掘洗鉱▲4.4%。石油天然ガス採掘、鉄金属採掘はプラスからマイナス転化。6 大エネルギー消耗業種 +5.9%(4 月比で 0.4%PT 鈍化)。うち石油化工・コークス製造・核燃料加工業+6%(4 月比 2.7%PT 鈍化)、鉄金属製錬・圧延加工業▲2.1%、非 金属鉱物製品の伸び率は▲1.0%PT 鈍化。 -2- た(5 月単月前月比+0.5%)。5 月単月でも+7.4%2と 4 月(+10.1%)から減速している。1~5 月累 計のうち不動産開発投資は+7.0%と 1~4 月(+7.2%)から減速した(図表 2)。15 年 5 月は前月末の 中央政治局会議3を受け、当局によるインフラ建設投資強化など景気下支え色が強まり始めた時で、前年 同月の基数が高く、16 年 5 月の前年比が低くなったことも考えられる。また、国家統計局は「工業及び 民間投資の下降が投資減速の主因」4としている(図表 3)。 一方、水利、環境、公共設備管理業向け投資の伸びは 1~5 月に+28.6%と 1~4 月の+27.8%、15 年 通年の+20.4%から小幅加速している(図表 4)。 ・消費品小売額は小幅減速 個人消費は名目消費品小売額が 5 月に+10.0%と、4 月(+10.1%)から小幅減速した。物価上昇要 因を除いた実質では+9.7%と、4 月(+9.3%)から小幅加速した(前月比+0.8%)(図表 5)。1~5 月累計では+10.2%と 15 年通年の+10.7%を下回っている。このうち、ネット・ショッピングによる小 売額は 1 兆 8,089 億元(うち商品 1 兆 1,4633 億元、+25.9%)と消費品小売額合計の 14.0%を占め、 伸び率は+27.7%であった。 国家統計局は 5 月の小売統計の分析として「①休日要因(休祝日が昨年 5 月より 1 日少なかった)と 食品・衣類小売額の減速(2 品目計で▲0.1%PT押し下げ)、②新業態、新製品、消費高度化関連の好 調(ネット販売、SUV 販売 45.9 万台・+43.9%、自動車販売の伸び上昇による小売統計押し上げ分:+ 0.4%PT)、③消費高度化関連のレジャー・娯楽商品の伸び(体育娯楽用品+12.9%)」などの特徴を 挙げている5。 図表 5 消費品小売額、品目別小売売上、住宅販売面積 25% (前年同月比%) 20% 15% 指定企業商品小売額(左軸) 新車販売台数(右軸) 家電(右軸) 住宅販売面積(右軸) 消費品小売 総額(左軸) 自動車販売台数(乗用車・商用車別) 50% 40% 30% 10% 20% 5% 10% 0% 0% -10% -5% -10% 図表 6 6 8 10 122 4 6 8 10 122 4 6 8 10 122 4 6 8 10 122 4 12 13 14 15 16 -20% (注)指定企業:年商500万元以上。家電販売も同企業のもの。2月=1-2月累計。(資料)CEIC 住宅販売面積は 5 月に+24.2%(1 億 1,942 万㎡)と、13 年 12 月以来の単月プラスとなった 15 年 4 月(+7.0%、81,301 千㎡)以来、13 か月連続で拡大、1~5 月累計で 4 億 7,954 万㎡、+33.2%となっ 2 月次値とその前年比変動率は 1~5 月累計値から筆者算出。 3 新華社ウェブサイト 15 年 4 月 30 日「习近平主持政治局会议 分析研究当前经济形势和经济工作(習近平が政治局会議を主宰、当面の経済 情勢と経済工作を分析研究)」 。中国共産党は中央政治局会議を開き「経済の下振れ圧力への対応を高度に重視する」として、景気対策を進め る方針を確認した。http://news.xinhuanet.com/politics/2015-04/30/c_1115148648.htm 4 国家統計局 6 月 13 日「国家统计局投资司高级统计师王宝滨解读 2016 年 1-5 月份投资数据(国家統計局貿易投資司王宝濱高級統計師が 2016 年 1-5 月投資データを解読)」 http://www.stats.gov.cn/tjsj/sjjd/201606/t20160613_1366735.html 5 国家統計局 6 月 13 日「国家统计局贸易外经司高级统计师蔺涛解读社会消费品零售总额数据(国家統計局貿易外経司藺涛高級統計師が社 会消費品小売総額データを解読)」http://www.stats.gov.cn/tjsj/sjjd/201606/t20160613_1366743.html -3- たが、5 月単月の伸び率(+24.2%)は 4 月の+44.1%からは鈍化した。人民銀行による預貸金利引き 下げ(14 年 11 月以降計 6 回実施)、2 軒目の住宅購入時の頭金比率(下限)引き下げ(60%から 40% に。15 年 3 月 30 日)、1 軒目の住宅購入時の頭金比率引き下げ(25%に。同年 9 月 30 日)など当局の 不動産市場テコ入れ方針の効果や、15 年 4 月以降、6 月下旬に下落するまでの間の株高による資産効果 及びその後の株価下落を受けた株式市場から不動産市場への資本流入も、住宅販売回復の背景にある。 自動車販売は 5 月に 209.17 万台、+9.9%と、4 月(212.24 万台、+6.4%)から台数は減少したもの の伸びは加速した(図表 6)。15 年 10 月から実施した小型乗用車向けの減税措置6の効果による回復傾 向が続いている。1~5 月累計では 1073.54 万台、+6.8%(15 年+4.6%。14 年+6.8%)となった(図 表 6)。 ・不動産価格上昇率は一線都市で鈍化 5 月の新築住宅価格は、主要 70 都市のうち 60 都市で前月比上昇した。上昇した都市の数は 4 月より 5 都市減った。前月比で下落した都市は 4 都市で 4 月の 5 都市から 1 都市減、前月比で横ばいであった都 市の数は 4 月の 0 から 5 月は 6 都市になった(図表 7)。前年比で上昇した都市の数は 50 都市と、4 月 から 4 都市増え、前年比で下落した都市の数は 18 都市と 4 月の 23 都市から 5 都市減った。 地域別に見ると、これまでの購入刺激策から制限策へと政策転換が図られた7上海、深圳(5 月上昇率 それぞれ+27.7%、+53.2%)で 4 月のピーク(+28.0%、+62.4%)から鈍化する一方、二線都市、 三線都市では上昇率が高まった8(図表 8)。 住宅販売価格前月比変動都市数 図表 7 70 図表 8 新築住宅販売価格(前年比) 35% (前年比、%) (都市の数) 4 6 一線都市 30% 二線都市 60 25% 三線都市 20% 50 15% 40 35 10% 30 60 5% 0% 20 -5% 前月比下落 (資料)国家統計局、CEIC 16/5 16/1 15/9 15/5 15/1 14/9 14/5 14/1 13/9 13/5 13/1 12/9 12/5 11/1 16/04 16/01 15/10 15/07 15/04 15/01 14/10 14/07 14/04 14/01 13/10 13/07 13/04 13/01 12/10 12/07 12/04 12/01 11/10 11/07 11/04 11/01 0 12/1 -10% 69 前月比上昇 11/9 横ばい 11/5 10 (注)一線都市:北京、上海、広州、深圳。 二線都市:天津、重慶、杭州、南京、武漢、瀋陽、成都、西安、大連、青島、寧 波、長沙、済南、厦門、長春、哈爾濱(ハルピン)、太原、鄭州、合肥、南昌、福州。 三線都市:上記以外の45都市。(資料)CEIC ・輸出は減速、輸入は減少幅が縮小 6 「财政部 国家税务总局关于减征 1.6 升及以下排量乘用车车辆购置税的通知(排気量 1,600 ㏄以下の乗用車購入税引き下げに関する財政 部、国家税務総局通達)」财税〔2015〕104 号(9 月 29 日付)は、10 月 1 日から 16 年末まで、排気量 1,600cc 以下の乗用車を対象に、自動車取得 税の税率を従来の 10%から 5%に引き下げる措置を公表。http://www.chinatax.gov.cn/n810341/n810755/c1827947/content.html 7 3 月 25 日、上海市は 2 軒め住宅購入時の頭金比率をこれまでの 40%から 50~70%に引き上げ。深圳市は 2 軒めの住宅購入時の頭金比率を これまでの 30%から 40%に引き上げ。いずれも、非居住者の取得条件を厳格化。 8 二線都市の住宅価格上昇例:厦門+28.0%、南京+25.6%、合肥+23.2%、杭州+16.9%など。5 月の全国不動産価格変動率は+5.0%(各地 域変動率を筆者が単純平均して算出)。 -4- 5 月輸出は ▲4.1%(1,727.6 億ドル)、輸入▲0.4%(1,272.0 億ドル)、貿易黒字は 499.8 億ドルと、4 月(輸出▲1.8%、輸入▲10.9%)に比べ輸出は悪化、輸入は改善した。1~5 月累計では輸出▲7.3% (8,138.1 億ドル)、輸入▲10.3%(5,963.1 億ドル)、貿易収支+2,175.0 億ドルの黒字であった。貿 易総額は▲8.6%と、1~4 月の▲9.9%からは改善した(図表 9、11、12)。 図表 9 25% 輸出入、貿易収支 図表 10 (億ドル) 1,400 (前年比) 1,200 20% 1,000 15% 800 10% 600 400 5% 200 0 0% -200 -5% -400 -10% -600 -15% -800 収支(右軸) -20% -25% 6 輸出(左軸) -1,000 輸入 -1,200 8 10 13 2* 4 6 8 10 122* 4 14 6 8 15 10 122* 4 16 -1,400 12% 11% 10% 9% 8% 7% 6% 5% 4% 3% 2% 1% 0% -1% -2% -3% -4% -5% -6% -7% -8% -9% -10% -11% -12% (注)*1-2月の前年同期比及び合計。 (資料)中国通関統計 図表 11 CPI PPI PPI:原材料 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 11 12 13 14 15 16 (資料)中国国家統計局、CEIC 主要地域別輸出 図表 12 30% (前年同月比、%) 30% 20% 20% 10% 10% 0% 0% -10% 主要地域別輸入 (前年同月比、%) -10% 輸出計 アジア 米国 日本 欧州 -20% -30% CPI、PPI (前年比%) 5 7 9 11 3 5 7 9 11 3 5 7 9 2013 2014 2015 (注)2月は1-2月合計の前年同期比。(資料)中国通関統計、CEIC -20% 11 3 5 2016 -30% 5 7 輸入計 アジア 欧州 日本 米国 9 11 3 5 7 9 11 3 5 7 9 2013 2014 2015 (注)2月は1-2月合計の前年同期比。(資料)中国通関統計、CEIC 11 3 5 2016 ・CPI上昇率鈍化は野菜価格安定が主因 5 月のCPI(消費者物価指数)上昇率は+2.0%と、4 月(+2.3%)から鈍化した。前月比では▲0.5% と 4 月の▲0.2%からマイナス幅が拡大した(図表 13)。1~5 月平均では+2.1%と、+3.0%の政府目 標を下回っている。CPIの内訳を見ると、食品価格は 5 月に+5.9%と 4 月(+7.4%)から鈍化した (図表 11)。野菜価格上昇幅は低温により生産に影響が出た 4 月の+22.6%から 5 月は+6.4%へと大 幅鈍化、 「野菜価格のCPI上昇率への寄与度は 4 月の+0.56%PTから 5 月は+0.14%PTへと鈍化」 9 した一方、豚肉価格は 5 月に+33.6%と、4 月の+33.5%から伸びを高めた(図表 14)。豚肉は生産量 が 15 年に 5,487 万トンと前年比▲3.3%減少、07、11 年に続き減少、豚周期(ピッグ・サイクル)10の 9 国家統計局 6 月 9 日「国家统计局城市司高级统计师余秋梅解读 2016 年 5 月份 CPI、PPI 数据 (国家統計局都市司高級統計師余秋梅が 16 年 5 月のCPI、PPIデータを解読) http://www.stats.gov.cn/tjsj/sjjd/201606/t20160609_1365944.html 10 豚肉価格が下がってくると畜産家が飼育を少なくする→供給が減少、価格上昇→畜産家が生産増→供給増、価格が安定→畜産課が飼育を 少なくするといった循環を繰り返す。中国証券報 6 月 15 日「全年猪价将维持高位 供求矛盾没有根本改变(豚肉価格は高位を通年維持 需給矛 -5- 上昇傾向が続いている。食品以外の価格は 5 月に+1.1%と、4 月(+1.1%)と同水準であった。 5 月のPPI(工業製品出荷価格)は▲2.8%と 51 カ月連続マイナスであったが、4 月の▲3.4%からは マイナス幅が縮小した(図表 10)。前月比では▲0.5%と 4 月の▲0.7%からマイナス幅が縮小した。「石 油・天然ガス採掘(▲21.5%)、石油化工(▲15.6%)、石炭採掘と洗鉱(▲10.2%)、非鉄金属冶金 製錬と圧延加工(▲7.7%)、化学原料と同製品製造(▲5.4%)の五項目のPPI計への寄与度は計▲ 1.7%PT、寄与率は 60%前後11」(国家統計局)であった。 図表 13 148 146 144 142 140 138 136 134 132 130 128 126 124 122 120 118 116 114 112 110 108 106 104 102 100 98 96 94 92 90 CPI、同品目別伸び率寄与度 図表 14 (前年比%) 7% (2000年12月=100) 擬似CPI(左目盛) 50% 食品価格 (前年比%) (前年比%) 食品(左軸) 食糧(左軸) 80.9% 6% 100% 野菜(左軸) 豚肉(右軸) 40% CPI上昇率 (前年比、右目盛) 住居 娯楽教育文化 食品 医療保健 衣類 日用品 交通通信 除く食品 80% 5% 57.1% 30% 60% 4% 20% 40% 33.6% 10% 20% 0% 0% 3% 2% 1% -10% -20% -18.7% 0% -32.0% -20% -1% 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 6 8 10 12 2 4 11 12 13 14 15 16 (注)項目別寄与度は各項目の前年比上昇率と消費支出統計から当行算出。擬似CPIは2000年12月を基準に 毎月の前月比上昇率を基に当行算出。(資料)中国国家統計局、CEIC 図表 15 07 08 (億元) 10 11 12 13 14 15 16 図表 16 社会融資規模 26,000 金融機関貸出残高対前月増減(右軸) 24,000 金融機関貸出残高前年比(左軸) 22,000 M2(左軸) 09 (注)グラフ内数字は豚肉価格上昇下落時最高・最低値と直近値。(資料)中国国家統計局、CEIC 金融機関貸出、マネーサプライ 35%(前年比、%) 30% -40% 2 4 6 810122 4 6 810122 4 6 810122 4 6 810122 4 6 810122 4 6 810122 4 6 810122 4 6 810122 4 6 810122 4 4,000 (10億元) 外貨貸出(人民元換算) 信託貸付 企業債券 人民元貸出 3,500 20,000 委託貸付 銀行引受手形 (未割引残高) 非金融企業株式 社会融資総額(左軸) 3,000 18,000 25% 2,500 16,000 14,000 2,000 20% 12,000 1,500 10,000 14.4% 15% 1,000 8,000 6,000 10% 500 4,000 0 0 -500 16/4 16/1 15/7 15/10 15/4 15/1 14/7 14/10 14/4 14/1 13/7 13/10 13/4 13/1 12/7 12/1 12/10 -1,000 (注)12年までは四半期末値。グラフ内数字は最新月貸出残高前年比。(資料)人民銀行、CEIC 12/4 5% 09/3 09/9 10/3 10/9 11/3 11/9 12/3 12/9 13/1 13/3 13/5 13/7 13/9 13/11 14/1 14/3 14/5 14/7 14/9 14/11 15/1 15/3 15/5 15/7 15/9 15/11 16/1 16/3 16/5 2,000 (資料)人民銀行、CEIC ・貸出純増額は拡大、社会融資総量は縮小 人民銀行が公表した 5 月のマネーサプライ M2 は+11.8%と、4 月(+12.8%)から 2 カ月連続で減速、 政府目標(+13%)を下回った(図表 15)。人民銀行は「昨年年央の株式市場の異常な変動が M2 を大幅 に引き上げたため、今後数カ月の M2 前年比は比較的明らかに下降する可能性がある」としている12。ま 盾は根本的に変化せず)」 は、湖北、河南、河北、山東、遼寧、福建では、疫病と寒冷気候で子豚の死亡率が過去 3 年来最悪の 30%以上に上 昇しており、豚肉価格の上昇傾向は 17 年末前まで高値が続く可能性が比較的大きいと指摘。 http://finance.sina.com.cn/china/gncj/2016-06-15/doc-ifxszkzy5290780.shtml 11 脚注 9 に同じ。 12 金融時報 6 月 17 日「基数效应致 M2 增速放缓 货币政策维持稳健基调(基数効果で M2 の伸び鈍化 通貨政策は穏健(中立)の基調維持)」 が引用した人民銀行貨幣政策分析小組の文章による。http://www.financialnews.com.cn/yw/gd/201606/t20160617_98773.html -6- た、同月の社会融資規模純増額は 6,599 億元と、4 月の 7,510 億元から縮小した。内訳をみると、人民 元貸出、非金融企業株式は拡大した一方、信託貸付、委託貸付は縮小、外貨貸出(人民元換算)は減少 幅が縮小、銀行引受手形(未割引残高)は減少幅が拡大、企業債券は純増から純減へと転化している(図 表 16)。 5 月の外貨準備高は 3 兆 1,917 億ドルと 4 月比で▲279.3 億ドル減少した(図表 17)。商務部の沈丹 陽報道官は 6 月 17 日の定例記者会見で、 1~5 月期の対外直接投資が 732.5 億ドル (前年同期比+61.9%) と対中直接投資の 541.9 億ドル(同+0.7%。米ドル建て前年比)を大きく上回ったことに関して、「個 別の、短期的な対外投資がもたらす外貨購入需要の激増が、外貨準備や国際収支の均衡に圧力となる可 能性を心配する人もいる。短期的にもたらすリスクについて研究しており、リスクを抑えるための措置 が必要か検討中である」と述べた13。「これらは現状、主要な問題となっていない」(沈氏)としなが らも、将来的な対外投資の規制強化の可能性を示唆する発言として注目される。 外貨準備高 図表 17 45,000 (億ドル) (億ドル) 外貨準備高(左軸) 1500 39,932 40,000 1000 35,000 31,917 30,000 500 113.9 25,000 102.6 70.9 0 -279.3 20,000 -285.7 15,000 -500 -994.7 外貨準備対前月 比増減(右軸) 10,000 -928 -1000 5,000 -1,079 0 -1500 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (注)外貨準備高數値は14年6月ピーク時、最新月値。(資料)中國人民銀行,CEIC 2.トピックス~ゾンビ企業、過剰生産能力、債務問題を巡る動き ・「3 年で 345 社のゾンビ企業を処理」(国有資産監督管理委員会) 5 月 20 日の国務院政策定例ブリーフィングにおいて、「『ゾンビ企業』処理における中央企業の目標 と時間表、生産能力削減に関する計画」について尋ねられた張春武・国有資産監督管理委員会副主任は 「さしあたっての考えとして、3 年の時間をかけ 345 社の『ゾンビ企業』を処理する任務を完成するこ とを考えている。 石炭と鉄鋼の生産量は 2 年をかけ 10%の生産能力を圧縮することに自信を持っており、 達成する決心がある」14と述べた。 2 月 1 日付で公表された、鉄鋼 と石炭産業の「過剰生産能力解消に関する国務院意見」(意見)15で は、鉄鋼は 16 年から 5 年間で1億~1.5 億トンの生産能力を削減することを決定したが、中央企業に対 しては生産能力削減にかける時間を「2 年」に区切っていることが注目される。 13 商務部ウェブサイト 6 月 17 日「商务部召开例行新闻发布会(商務部が定例記者会見を招集開会)」 http://www.mofcom.gov.cn/article/ae/ah/diaocd/201606/20160601340927.shtml 14 中国政府網 5 月 20 日「国务院政策例行吹风会(国務院政策定例ブリーフィング)」http://www.gov.cn/xinwen/2016zccfh/14/index.htm 15 中国政府網 2 月 4 日「国务院关于钢铁行业化解过剩产能 实现脱困发展的意见 国发〔2016〕6 号」 http://www.gov.cn/zhengce/content/2016-02/04/content_5039353.htm みずほ中国政策ブリーフィング(2016/3/15)『鉄鋼業の過剰生産能力解消・苦境脱出・発展実現に関する意見』 アジア調査部中国室 研究員 劉家敏 http://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/china-bri/cb160315.pdf?ad=ml -7- ・「債務問題を一元管理する専門機関を設置」(李揚) ゾンビ企業の処理に伴い生じる債務問題に関して、中国社会科学院の李揚学部委員は 6 月 15 日のブ リーフィング16において、「財政部は政府債務のみしか語れない。(財政部は)中央企業、融資平台の 債務も考慮することはできる。(しかし、)広大な企業債務は管理できない。中国の『一行三会17』も 中国の金融部門の問題を全面的に掌握できない」とし、中国が抱える債務問題を一元管理する専門機関 を将来的に設置する方針について、党中央・国務院(政府)との討論を通じて共通認識ができているこ とを明らかにした。 以 上 【 みずほ銀行(中国)有限公司 中国業務部主任研究員 細川美穂子 】 【ご注意】 1. 法律上、会計上の助言:本資料記載の情報は、法律上、会計上、税務上の助言を含むものではありません。法律上、会計上、税務上の助言を 必要とされる場合は、それぞれの専門家にご相談ください。 2. 秘密保持:本資料記載の情報の貴社への開示は貴社の守秘義務を前提とするものです。当該情報については貴社内部の利用に限定され、そ の内容の第三者への開示は禁止されています。 3. 著作権:本資料記載の情報の著作権は原則として弊行に帰属します。いかなる目的であれ本資料の一部または全部について無断で、いかなる 方法においても複写、複製、引用、転載、翻訳、貸与等を行うことを禁止します。 4. 免責: (1) 本資料記載の情報は、弊行が信頼できると考える各方面から取得しておりますが、その内容の正確性、信頼性、完全性を保証する ものではありません。弊行は当該情報に起因して発生した損害については、その内容如何にかかわらずいっさい責任を負いません。 また、本資料における分析は仮定に基づくものであり、その結果の確実性或いは完結性を表明するものではありません。 (2) 今後開示いただく情報、鑑定評価、格付機関の見解、制度・金融環境の変化等によっては、その過程やスキームを大幅に変更する 必要がある可能性があり、その場合には本資料で分析した効果が得られない可能性がありますので、予めご了承下さい。また、本 資料は貴社のリスクを網羅的に示唆するものではありません。 5. 本資料は金融資産の売買に関する助言、勧誘、推奨を行うものではありません。 16 中国政府網 6 月 15 日「新闻办就中国债务水平等相关情况举行吹风会(国務院新聞弁公室が中国債務水準など関連情況についてブリーフィ ングを挙行)」 http://www.gov.cn/xinwen/2016-06/15/content_5082500.htm 17 人民銀行(一行)、銀行業、証券業、保険業の監督管理委員会(三会)。 -8-
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