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カレント・トピックス No.16-25
平成28年6月23日
16-25号
カレント・トピックス
独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構
第 3 回 Smelter & Processing Summit Conference 参加報告
<ジャカルタ事務所 山本耕次、ファジャール・ヒダヤティ
報告>
はじめに
インドネシア政府は、鉱業事業契約の改正交渉、鉱業許可(IUP)のクリーン&クリア判定作業、
2009 年鉱業法改正作業を行っている状況であり、この東南アジアの鉱業国がどのようなアクション
を取っていくのか注目されている。未処理鉱物の輸出禁止は 2014 年 1 月 12 日に開始されたが、製
錬所建設へのコミット等の条件によって、輸出税を課された状態での精鉱輸出は認められている。
一方、これら経過措置は 2017 年 1 月には全て終了し、製錬・精錬・加工された鉱業製品のみがイン
ドネシアから輸出されることとなっている。したがって、同国内で生産される鉱石は、同国内の製
錬所にて精製・加工する必要が生じることになる。
Smelter & Processing Summit Conference は、インドネシアの選鉱・製錬に関するカンファレンスで
あり、2016 年 5 月 11~12 日の 2 日間開催され、今年で第 3 回目となる。参加者はインドネシア鉱業関
係企業、法律事務所、政府関係者が多く、今回の出席者は 80 名程であった。このカンファレンスでは、
インドネシア国内での製錬プロジェクトの紹介、情報交換が行われており、同国における製錬プロジ
ェクトの情報を把握するにはキーとなるものである。本稿では、その講演概況等について報告する。
1. 電力供給と製錬所
第 1 日目の午前中では、製錬所建設・操業に大きな影響を及ぼす電力供給に関する講演があった。
国営アルミ公社 PT Inalum の Dante Sinaga 部長から、アサハンアルミニウムの現状報告と北カリ
マンタン州での発電所建設プロジェクトの現状について報告があった。2015 年の Inalum のアルミ
ニウム生産量は、約 26 万 t であるが、2020 年には 50 万 t の供給力を確保する計画(表 1)となっ
ており、2025 年には 100 万 t を達成する予定としている。50 万 t の達成は Kuala Tanjung での既存
アルミニウム製錬所の最適化及び新製錬所建設で対応する予定であり、電力は石炭火力発電所の増
設で賄う計画とのこと。また、2025 年に向けてのアルミニウム生産増強のため、安価な電力調達を
模索しており、北カリマンタン州での潜在的ダム水力発電量に期待を寄せており、新規製錬所候補
地の一つとして同州に注目しているという。
カンファレンスでは、国境を超えた電力融通についての紹介もあり、Sawarak Energy Berhad 社
の Nick Wright 副社長より、マレーシア~インドネシア間の電力供給の協力について紹介があっ
た。Sarawak Energy 社は、マレーシア・サラワク州を中心に電力を供給している電力会社で、主
な電源は水力発電で、石炭火力発電所やガス発電所も保有している。電力は通常用のみならず、
サラワク州に存在する工業用電力として使用されている。一部は国境を越えてインドネシア側に
電力が供給され、インドネシア国営電力会社 PT PLN と電力の融通に関する協定を締結したことか
ら、今後も西カリマンタン州及び北カリマンタン州方面に送電網が拡張されていく計画である。
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表1
年
PT Inalum のアルミニウム生産量(実績及び計画)
2015(実績)
2016(計画)
257,149
244,400
アルミニウム生産量(t)
2017
2018
2019
233,500
226,500
316,000
2020
500,000
(出典:PT Inalum 講演資料より)
2. インドネシア鉱業の趨勢
(1)PT Vale Indonesia
PT Vale Indonesia(PT Vale)の Steven Brown 部長からは、インドネシア鉱業、特にニッケ
ル鉱業の今後の展望についてのプレゼンテーションが行われた。PT Vale の 2016 年 1~3 月期
のニッケルマット生産量は 16,894t で、昨年の同時期と比較して 3%減少している。PT Vale は
現在、ニッケルマット生産能力の拡大を計画しており、現行の 8 万 t/年から 9 万 t/年に増強
する予定。Brown 氏は、中国の NPI プラント閉鎖とニッケル輸入量の増加によりニッケル価格
は再び上昇すると予測しており、インドネシアにおけるニッケル製錬所建設への投資は、将来
的に利益をもたらすとの見解を示した。同氏は、インドネシアにおいて最適なニッケル製錬法
は、初期投資費用の安さからロータリーキルン電気炉方式(RKEF)であろうと述べた。一方、
インドネシアの長期的な成長を確実にするためには、政策の不確実性を無くす必要があり、乱
立した規則の整理や賄賂などの腐敗をなくすことが重要であると指摘している。
(2)Gulf Manganese Co. Ltd.
インドネシアでは、ニッケル以外にも製錬所建設の計画は進んでおり、Gulf Manganese Co.
Ltd.(Gulf 社)のマンガン製錬プロジェクトがその一つである。Gulf 社は、東ヌサトゥンガ
ラ州西ティモール Kupang において、マンガン製錬所を建設している。同社最高経営責任者
Hamish Bohannan 氏は、講演においてプロジェクトの進捗状況を報告した。Kupang に建設中の
プラントでは、Mn 78%のフェロマンガンを製造する計画。プラントは 8 基の高炉から構成さ
れ、製錬所完成予定は 2016 年後半、生産開始は 2016 年第 4 四半期を予定。建設コストはおお
よそ 10 百万 US$で、2017 年後半にはキャッシュフローがプラスになる見込み。プラントは南
アフリカのフェロマンガンプラントを改装したもので、解体完了後に建設予定地に搬入し現
地で組み立てを行う予定。技術的には南ア Samancor 社とほぼ同じものとのこと。生産能力は、
当初は 1.35 万 t/年であるが、最終的には 15.5 万 t/年に拡大する計画。なお、鉱石の第 1 陣
は 2016 年第 4 四半期に南アから輸入される予定。
(3)インドネシア製精錬協会(ISPA) R.Sukhyar 会長
ISPA 会長 Sukhyar 氏からは、現在インドネシアで建設中の製錬所及びこれから建設予定の
製錬プロジェクトについて紹介があった。同氏は、エネルギー鉱物資源省の前鉱物石炭総局
長で、現在は ISPA 会長のポジションである。
Sukhyar 氏は講演において、2009 年鉱業法の施行以降、製錬所の建設及び稼働により、高付
加価値化が順調に進んでいるとアピールした。ISPA によると、2017 年の鉱業製品輸出額は
216 億 4,300 万 IDR になると予想され、輸出禁止前の鉱業製品輸出額を超える見込みだという。
ニッケルに関しては、現在 10 社がフェロニッケルまたはニッケル銑鉄プラントの建設・拡張
を行い、生産を拡大しており、34 社がニッケル製錬所を建設中であるという。ニッケルの年間
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生産量は現在約 12 万 t(Ni 量)であるが、2020 年には 30
万 t まで拡大すると予測、政府は 2025 年には 50 万~60 万
t にまで上昇すると考えているとのこと。
アルミナ製造に関しては、現在西カリマンタン州 Tayan
で稼働中の ICA(ケミカルグレードアルミナ)があり、
2016 年 6 月には同州 Ketapang において PT Well Harvest
(Harita グループ)のアルミナ工場が生産開始予定となっ
ている。それ以外にも、PT Borneo Alumindo、PT Antam
Mempawah(西カリマンタン州)、PT Bintan Alumina などが
アルミナ工場の建設を進めているという。
錫は、これからのインドネシアの経済発展に伴い需要が
増加すると見込んでいることから、国内での下流工程への供給を優先する政策を取っている。
また近い将来には、錫残渣からのレアアース、タングステンなどの回収を計画しているという。
銅については、銅精鉱の生産は PT Freeport Indonesia と PT Newmont Nusa Tenggara の 2
社で 350 万~400 万 t となり、銅製錬所の受入れ・生産能力を超えていることから、ISPA は銅
製錬所の建設を急がなければならないとしている。さらに、ISPA は政府に対し、銅鉱山会社
(COW 保持者)が 2017 年 1 月までに製錬所を建設できない場合、銅精鉱の輸出にはさらなる
高率の輸出税を課するべきだとの助言を行なったとのこと。
(4)PT Antam
PT Antam の Johan N.B. Nababan 部長からは、同社
が現在実施している製錬所建設プロジェクトに関す
るプレゼンテーションが行われた。同社はインドネ
シア全土で 4 つの製錬所建設及び拡張プロジェクト
を推進している。
東ジャワ州 Gresik において金アノード製錬所プロ
ジェクトを立ち上げ、PT Smelting 及び PT Freeport
と MOU を締結した。建設は 2019 年に完了予定。ニッ
ケル製錬に関しては、マルク州東ハルマヘラにおい
て 2.7 万 t/年(Ni 量)のフェロニッケル製錬所プロ
ジェクトを開始し、80MW の石炭火力発電所建設のため、PTBA と MOU を取り交わした。また、
南東スラウェシ州 Pomalaa のフェロニッケルプラント拡張(年産 2.7 万~3 万 t)は 2016 年中
に完了見込み。アルミニウムについては、西カリマンタン Mempawah でスメルターグレードア
ルミナ工場プロジェクト(100 万 t/年)を行っており、PT Inalum とジョイントベンチャーを
形成、こちらは 2019 年に完成予定である。
(5)SSEK Michael Carl リーガルアドバイザー
同氏から、鉱業法に関するコメント及び問題点が提示された。同氏は、現在の政策的状況
から鑑みて、高付加価値化されてない資源(ニッケル、ボーキサイト、錫、金、銀、クロム
など)の輸出禁止は、予定通り 2017 年 1 月 12 日に開始され、例外事項は存在しないだろうと
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述べた。また、改正鉱業法案についても言及し、高付加価値化と国内製錬の方針は変わらな
いとの見通しを示した。同氏はまた、インドネシア鉱業法制の問題点等についても言及し、
製錬所建設や鉱業操業において、現行法制では多くの障害が横たわっていると指摘した。例
えば、財政的・非財政的を問わず鉱山会社の製錬所建設へのインセンティブを与えていない
こと、地元独自の慣習法により土地取得に障害があり、調整、手続き及び費用がかさむこと、
などを挙げた。
(6)北カリマンタン州 Irianto Lambie 知事
北カリマンタン州知事が、同州における資源及びエネルギーの取組について、同州のアピー
ルも兼ねてスピーチを行った。
北カリマンタン州政府の基本方針は、「人民の経済」を標榜し、収入増大のための人民ベー
スの農業・ツーリズム、持続的鉱業の競争力強化、を挙げている。同州内では、石炭、金、石
油及び天然ガスなどの鉱業資源のポテンシャルがあり、投資対象として魅力的である。例えば、
同州では既に PT Sago Prima Pratama が金採掘を行っており、最終製品として金地金を製造し
ているとのこと。
まとめ
Smelter & Processing Summit も 3 回目を迎え、出席者もほぼ固定されてきている。常連として
は PT Vale、PT Antam、PT Indoferro であるが、今回は、これらに加え PT Inalum 及び Gulf
Resources が参加し、ニッケルのみならず、アルミニウムやマンガン製錬所建設の概況を把握する
ことができた。
カンファレンスでの講演を聞いた限りでは、昨今の金属価格低迷にも係らず、製錬所(特に NPI)
建設は順調に進んでいるように見受けられる。中国企業の参加も多く、ニッケル調達のために NPI
プラントをインドネシアにシフトしている印象を受けた。
一方、第 1 日目講演にあったように、インドネシアの抱える電力不足は、製錬所建設の障害の
一つとなっている。現政権は 35GW の発電所建設計画を挙げており、電力消費が多い製錬業もこの
恩恵を受けるはずであった。しかし、当初完了予定の 2019 年までにそれほどの電力供給能力を構
築することは、かなり困難であると思われる。マレーシア Sawarak Energy との電力融通は、その
懸念を払しょくするための一つの方策であると考えられるが、送電線延長については将来的なプ
ロジェクトであることを鑑みれば、電力不足は製錬所プロジェクトに少なからず影響を与えるも
のと思われる。
なお、鉱業法改正については、鉱業許可や高付加価値化の義務化の課題も含め、本カンファレ
ンスでも注目されていた。しかし、当初予定されていたインドネシア政府関係者からの講演はキ
ャンセルされたため、鉱業法改正に関する直接のコメントは得られなかった。
おことわり:本レポートの内容は、必ずしも独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構としての見解を示すものではありません。正確な情報を
お届けするよう最大限の努力を行ってはおりますが、本レポートの内容に誤りのある可能性もあります。本レポートに基づきとられた行動の帰結に
つき、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構及びレポート執筆者は何らの責めを負いかねます。なお、本資料の図表類等を引用等す
る場合には、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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