総合取引所:再論 ~早期実現に向けて~ 報告書

「総合取引所:再論」
~早期実現に向けて~
2016 年 6 月 14 日
株式会社
野村総合研究所
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
目次
0.要旨 .................................................................................. 3
1.未だに実現しない我が国の「総合取引所」................................................. 4
2.先細りの状況にある我が国の商品デリバティブ市場........................................ 10
3.商品分野単独による市場活性化の限界 ................................................... 18
4.総合取引所の必要性 ................................................................... 21
5.総合取引所が実現しない理由 ........................................................... 27
6.今こそ求められる総合取引所の早期実現 ................................................. 34
用語集 ................................................................................... 37
図表一覧 ................................................................................. 39
索引 ..................................................................................... 40
2
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
0.要旨
1.世界規模の取引所間競争により、世界規模で、現物とデリバティブ、原資産の種類を
超えて市場のグループ化や合併等が行われている。我が国では、証券・金融分野での
統合が実施され、効率的かつ効果的な市場運営を目指している。一方で、証券・金融
から商品までの分野を超えた総合的な市場については、過去 10 年にわたって議論さ
れつつも、未だ実現する見込みは立っていない。
2.海外の商品市場が取引規模を拡大し続ける中、我が国の商品デリバティブ市場は先細
りの状況にある。その結果、取引を手掛ける投資家数や委託手数料も減少を続け、業
者数等も減少している。さらに、商品デリバティブ取引を担う東京商品取引所自体の
経営状況も悪化しており、近年は慢性的に営業損失を計上する状態にある。
3.商品分野では、総合エネルギー市場構想を掲げ、LNG 先物や電力先物等の新商品上場
や、海外からの投資家・取引参加者呼び込み等の努力がなされている。しかし、世界
との競争環境は厳しく、我が国の商品デリバティブ市場が今後も存続できるかどうか
については疑問符が付く状況である。
4.国益という観点からいえば、商品分野の価格形成機能を国内に維持すべきである。商
品分野の価格形成機能を国内に維持するためには、国内外から多様な投資家を呼び込
み、流動性を確保していくことが必要となる。その手段の一つとして、すでに国内外
の多様な投資家と流動性を有する証券・金融分野との一体化という方法がある。
5.2 度の金融商品取引法改正を経てもなお、規制・監督を一元化するための手段は依然
として限定されている。さらに、
「商品所管官庁」は、
「総合エネルギー市場」を確立
することを優先課題として位置づけ、総合的な取引所の実現はその次の段階としてい
るため、議論から 10 年以上が経過し、世界的な競争環境が激変する中にあっても、
実現の目処すら立っていない
6.内外の現状を踏まえると、今後時間が経てば経つほど、国内商品デリバティブ市場の
再活性化が難しくなる可能性が高い。これまでの複数回にわたる閣議決定や成長戦略
等への記載、そして過去の金融商品取引法改正における立法趣旨を踏まえれば、強力
な政治的リーダーシップの下で総合取引所化を推進すべきであり、これは我が国全体
の国益に直結するものである。
3
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
1.未だに実現しない我が国の「総合取引所」
世界規模の取引所間競争により、世界規模で、現物とデリバティブ、原資産の種類を超えて市場のグ
ループ化や合併等が行われている。我が国では、証券・金融分野での統合が実施され、効率的かつ効
果的な市場運営を目指している。一方で、証券・金融から商品までの分野を超えた総合的な市場につ
いては、過去 10 年にわたって議論されつつも、未だ実現する見込みは立っていない。

世界規模での取引所統合・グループ化の流れ
近年、IT 化の急速な発達と金融・資本市場のグローバル化を背景としながら、世界規模で取引所の
統合やグループ化が進行している(図表 1)
。
欧米を中心に、2007 年から 2008 年にかけて取引所の統合が相次いだ。CME による CBOT のグループ
化(2007 年)と NYMEX/COMEX のグループ化(2008 年)により誕生した CME グループや、ドイツ取引所
傘下のユーレックス(Eurex)による米 ISE の買収(2007 年)、ニューヨーク証券取引所(NYSE)とユ
ーロネクストの合併(2007 年)
、Nasdaq と OMX の経営統合(2007 年)など、大陸を越えた統合が一気
に進行した。
その後も、ドイツ取引所による Eurex の完全子会社化(2011 年)や、ICE による NYSE ユーロネクス
トの買収(2013 年)が行われている。先日も、欧州の有力取引所運営会社であるドイツ取引所とロン
ドン証券取引所グループが、両社が新たに設立する持株会社の傘下で経営統合することに合意したと
正式に発表された 1。世界では依然として取引所の統合・グループ化の流れが続いていることの証であ
る。
これらの統合・グループ化事例を見ると、近隣の同種の取引所が手を組む、または合併するという単
純な話ではない。大陸や国などの物理的な地域を超えた統合・グループ化はもちろんのこと、現物市場
とデリバティブ市場をまたぐ統合・グループ化も行われており、これも世界的な流れである。
また、世界の主要なデリバティブ取引所では、証券・金融分野と商品分野という原資産の種類を超え
た取扱いがなされており、また、その種類で規制・監督が異なることはない。
このように、世界的な市場間競争の下で取引所の統合・グループ化が繰り広げられた結果、世界の主
。今後、我が国の市
要な取引所は証券・金融分野と商品分野を超えて総合取引所化している(図表 2)
場がグローバルに競争していくためには、総合取引所化が必須であるといえる。
1
2016 年 3 月 16 日にドイツ取引所(Deutsche Boerse AG: DBAG)とロンドン証券取引所グループ(London Stock
Exchange Group plc: LSEG)により発表。合併後はドイツ取引所の株主が新会社の 54.4%、LSE の株主が 45.6%を保有す
る。合併は 2016 年末あるいは 2017 年初めまでに完了するとの見通し。
4
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表1)世界の取引所における統合・グループ化とデリバティブの取扱高
米国
1
欧州
アジア
その他
CMEグループ
3,531
CME
CBOT
NYMEX/COMEX
2007年グループ化 2008年グループ化
3,500
2
NSE
(インド)
3,031
3,000
2,500
ドイツ
取引所
2011年完全子会社化
2,000
4
3
2007年買収
ISE
ICEグループ
ロンドン
証券取引所
Eurex
2013年買収
ICE
NYSE
2016-17年経営統合
2,272
1,998
ユーロネクスト
5
2007年合併
モスクワ
取引所
1,659
BM&FBovespa
(ブラジル)
1,358
1,500
6
2016年買収合意
7
NASDAQ
CBOE
2007年経営統合
1,173
OMX
8
大連
商品取引所
1,116
9
鄭州
商品取引所
1,070
10
上海
先物取引所
1,050
韓国
証券先物取引所
794
BSE
(インド)
614
11
1,045
1,000
12
13
500
15
BATS
14
397
16
2012年買収
ロンドン
金属取引所
17
18
300
日本取引所
グループ(JPX)
361
香港
証券取引所
359
中国
金融先物取引所
321
30 東京金融取引所
48
35 東京商品取引所
24
(TFX)
JSE
(南アフリカ)
488
(TOCOM)
※図表中の数値は 2015 年の各取引所デリバティブ取扱高(単位:百万枚)
、白抜き数字は順位を示す。
出所)報道記事、Futures Industry Association 統計より野村総合研究所作成
5
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表2)世界の主要なデリバティブ取引所における収益構成(2015 年)
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
証券・金融
80%
90%
100%
商品
CME
CMEグループ
グループ
株式,
19%
金利,
31%
為替,
7%
エネルギー,
23%
農産物,
15%
金属,
5%
その他, 1%
ICE
グループ
ICEグループ
エネルギー,
25%
金融,
67%
農産物・金属,
7%
その他, 7%
ドイツ取引所ドイツ取引所
グループ グループ
株価指数,
36%
金利,
15%
オプション(ISE), その他金融,
20%
7%
商品,
15%
出所)各社年次報告書より野村総合研究所作成
6
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~

東証と大証の経営統合により誕生した日本取引所グループ
一方の我が国に目を向けると、同様に世界的な競争力確保の観点から、取引所の統合・グループ化が
進んできた。
証券・金融分野では、2008 年の大阪証券取引所によるジャスダック子会社化や、2013 年の東京証券
取引所と大阪証券取引所の経営統合による日本取引所グループ(JPX)の誕生など、国内の市場は統合
。その後、東京証券取引所と大阪証券取引所がそれぞれ有していた現
され、再編されてきた(図表 3)
物市場とデリバティブ市場とを整理し、効率的かつ効果的な市場運営を目指している。
2014 年、デリバティブ市場の運営に特化する大阪証券取引所は、その名称を「大阪取引所」と変更
し、必ずしも証券に限定しないデリバティブを扱う姿勢を明示している。現在、デリバティブでは世界
16 位 2の出来高であり、外国人投資家の比率は 78% 3に達している。
このように、国際的に競争力を有する取引所としての位置づけを維持すべく、統合・グループ化の取
り組みが行われてきている。
(図表3)日本取引所グループの発足と市場の統合・再編
2013/1/1
・日本取引所グループの発足
2013/7/16
・大阪証券取引所の現物市場を
東京証券取引所に統合
2014/3/24
・大阪証券取引所を「大阪取引所」に
商号変更
・東京証券取引所のデリバティブ市場を
大阪取引所に統合
日本取引所
グループ
日本取引所
グループ
日本取引所
グループ
東京証券取引所
大阪証券取引所
東京証券取引所
大阪証券取引所
東京証券取引所
現物
市場
現物
市場
現物
市場
現物
市場
現物
市場
デリバティブ
市場
デリバティブ
市場
デリバティブ
市場
デリバティブ
市場
デリバティブ
市場
大阪取引所
デリバティブ
市場
出所)野村総合研究所作成
2
Futures Industry Association 調べ(2015 年)
3
日経 225 先物(委託)の取引高に占める海外投資家の比率(2015 年)
7
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~

我が国における総合取引所に関する長年の議論
では、証券・金融から商品までの分野を超えた取り組みについてはどうか。
我が国においては、総合取引所に関する議論が長年行われてきた経緯がある(図表 4)。2006 年の金
融商品取引法制定時へ向けての議論の過程では、幅広いデリバティブ取引概念を採用して商品取引所
を金融商品取引法の規制の下に取り込むことも検討されたほか、2007 年 4 月には、経済財政諮問会議
グローバル化専門委員会の金融・資本市場ワーキンググループが、
「真に競争力のある金融・資本市場
の確立に向けて」と題した報告書の中で、総合的な取引所の設立を可能にする制度整備を行うよう提言
した。
その後も、幾度となく「国家戦略」としての位置づけで議論が重ねられ、段階的かつ部分的ではある
が、関連法規制の改正も行われてきている。また、最近でも「日本再興戦略」において総合取引所の推
進が本文に明記され、その意義と速やかな実現が提起されている(図表 5)
。
しかしながら、当初の議論からもうすぐ 10 年が経過しようとしている現在に至っても、我が国では
未だ総合取引所が実現する見込みは立っていない、というのが現実である。
(図表4)総合的な取引市場に関する検討の経緯
年
政府方針
研究会・WG 等
2006 年
法改正、取引所再編等
金融商品取引法施行
(平成 18 年)
2007 年
経済財政改革の基本方針
(平成 19 年) 金融・資本市場競争力強化プラン
2008 年
(平成 20 年)
工業品先物市場の競争力強化
に関する研究会
農産物商品市場の機能強化に
関する研究会
金融商品取引法等の一部を改正
する法律
経済産業省 産業構造審議会
商品取引所分科会
東京工業品取引所が株式会社化
2009 年
大証のジャスダック子会社化
商品先物取引法改正
(平成 21 年)
2010 年
新成長戦略
金融庁
チーム
新成長戦略実現 2011
経済産業省 産業構造審議会
商品先物取引分科会
(平成 22 年)
2011 年
(平成 23 年) 日本再生のための戦略
総合的な取引所検討
大証・ジャスダック経営統合
日本再生の基本戦略
2012 年
日本再生戦略
金融商品取引法等の一部を改正
する法律
(平成 24 年)
2013 年
日本経済再生に向けた緊急経済
(平成 25 年) 対策
規制改革実施計画
日本取引所グループ発足
東京穀物商品取引所解散
東京商品取引所へ商号変更
東証・大証の市場再編
2014 年
日本再興戦略
(平成 26 年)
2015 年
日本証券業協会 総合取引所
制度等への取組みに関する特
別委員会
大阪取引所へ商号変更
日本再興戦略
(平成 27 年)
出所)野村総合研究所作成
8
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表5)政府方針等における総合取引所に関する主な記載
年
政府方針等
2006 年
経済財政改革の基本方針
2007
取引所の競争力の強化
金融・資本市場競争力強化
プラン
取引所の相互乗入れのための枠組みの整備
新成長戦略
21.総合的な取引所(証券・金融・商品)の創設の推進
(平成 18 年)
2007 年
(平成 19 年)
2010 年
内容
取引所において株式、債券、金融先物、商品先物など総合的に幅広い品
揃えを可能とするための具体策等を検討し、結論を得る。
我が国取引所の国際競争力を強化する観点から、取引所間の資本提携を
通じたグループ化等によって、株式、債券や金融デリバティブに加え、
商品デリバティブまでのフルラインの品揃えを可能とするための制度
的土台を整備することが必要である。
「新金融立国」に向けた施策として、証券・金融、商品を扱う取引所が
別々に設立・運営されているという現状に鑑み、2013 年度までに、こ
の垣根を取り払い、全てを横断的に一括して取り扱うことのできる総合
的な取引所創設を図る制度・施策の可能な限りの早期実施を行う。
(平成 22 年)
総合的な取引所においては、市場としての機能を再生・発展させるため、
投資家・利用者の利便性を第一の仕組みとし、
「国を開き」
、世界から資
本を呼び込む市場を作り上げるための具体的な対応をできるだけ速や
かに実行することにより、アジアの資金を集め、アジアに投資するアジ
アの一大金融センターとして「新金融立国」を目指す。
2011 年
日本再生の基本戦略
2012 年
(平成 24 年)
総合的な取引所(証券・金融・商品)の創設の推進
総合的な取引所の実現に向け、取引所や規制・監督の在り方等の論点に
ついて方針を取りまとめた上で、2012 年の通常国会に向けた所要の法
案の提出準備を行う。
(平成 23 年)
総合的な取引所検討チーム
取りまとめ
総合的な取引所の実現に向けては、これまでの法改正を踏まえつつ、当
面、証券・金融と商品を一体として取り扱う総合的な取引所(商品取引
所が金融商品取引所と合併・事業譲渡により統合した場合等)について、
規制・監督を一元化するとともに、相互連携を確保するため、制度の整
備を行う。
さらに、行政上の相互連携を確保するため、金融庁、農林水産省、経済
産業省は、緊密に連携して対応する。
2013 年
(平成 25 年)
2014 年
日本経済再生に向けた緊急
経済対策
アジア No.1 市場の構築
日本再興戦略
金融資本市場の利便性向上と活性化
海外の金融センターにおいて、取引所間の厳しい国際的競争の下で合従
連衡が進み、金融・証券デリバティブ市場と商品デリバティブ市場の統
合が進んでいる状況等も踏まえ、総合取引所を可及的速やかに実現する
とともに、電力先物・LNG 先物の円滑な上場を確保するよう、積極的に
取り組む。
(平成 26 年)
2015 年
日本再興戦略 2015
(平成 28 年)
金融資本市場の利便性向上と活性化
海外の金融センターにおいて、取引所間の厳しい国際的競争の下で合従
連衡が進み、金融・証券デリバティブ市場と商品デリバティブ市場の統
合が進んでいる状況等も踏まえ、引き続き、総合取引所を可及的速やか
に実現するとともに、電力先物・LNG 先物の円滑な上場を確保するよう、
積極的に取り組む。
(平成 27 年)
2016 年
「日本総合取引所」の創設に向けた取組の促進
日本再興戦略 2016
活力ある金融・資本市場の実現 ⑤金融資本市場の利便性向上と活性化
市場参加者の利便性の向上や日本の取引所の国際競争力の強化といっ
た観点から、引き続き、総合取引所を可及的速やかに実現するとともに、
電力先物・LNG 先物の円滑な上場を確保するよう、積極的に取り組む。
出所)野村総合研究所作成
9
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
2.先細りの状況にある我が国の商品デリバティブ市場
海外の商品市場が取引規模を拡大し続ける中、我が国の商品デリバティブ市場は先細りの状況にあ
る。その結果、取引を手掛ける投資家数や委託手数料も減少を続け、取引参加者の経営を圧迫してお
り、業者数等も減少している。さらに、商品デリバティブ取引を担う東京商品取引所自体の経営状況
も悪化しており、近年は慢性的に営業損失を計上する状態にある。

成長する世界の商品市場
世界の商品市場に目を向けてみると、昨今の原油価格に代表されるように、
「スーパーサイクル」と
呼ばれるリーマン・ショックまでの長期的上昇相場とその後ピークを打って停滞・下落相場という展開
になっているが、商品デリバティブ市場の取引規模は比較的順調に拡大し続けていることがわかる(図
表 6)
。
その構成内容を見ても、特定の種別が規模拡大を牽引しているというよりは、農産物、エネルギー、
貴金属など、いずれの種別においてもそれぞれ出来高が拡大していると言える。
、商
証券・金融分野との対比で見ても、世界のデリバティブ取引が拡大する中であっても(図表 7)
品分野の出来高が占める割合は拡大し続けている(図表 8)
。世界の先物取引市場における商品分野の
割合は、2015 年に約 3 割を占めるまでに至った。これは 10 年前の 2006 年の構成比からみれば約 3 倍
の比率である。
商品分野は、もはやオルタナティブな(代替的な)投資先ではなく、メジャーな投資先の 1 つである
と言っても過言ではない規模である。
(図表6)世界の商品デリバティブ取引 出来高推移とその内訳
5,000
4,500
4,000
出来高(百万枚)
3,500
3,000
卑金属
2,500
貴金属
エネルギー
2,000
農産物
1,500
1,000
500
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年)
出所)Futures Industry Association
10
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表7)世界のデリバティブ取引(全体)
出来高推移
30,000
出来高(百万枚)
25,000
20,000
オプション
15,000
先物
10,000
5,000
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年)
出所)Futures Industry Association
(図表8)世界のデリバティブ取引
種目別割合推移
100%
90%
80%
その他
卑金属
70%
貴金属
60%
エネルギー
農産物
50%
為替
40%
金利
個別株
30%
株価指数
20%
10%
0%
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年)
※2014 年以降は、Equity Index と Individual Equity の定義が変更されている
出所)Futures Industry Association

我が国商品デリバティブ市場の出来高激減
一方の我が国に目を向けると、商品デリバティブ市場は風前の灯といった状況にある。
東京商品取引所における工業品と農産物等を含めた商品デリバティブ市場全体の出来高は、2000 年
代の前半までは拡大していたが、2003 年の 154.1 百万枚をピークに減少し続けており、2015 年には
24.8 百万枚にまで縮小している。これは 2003 年のおよそ 6 分の 1 の規模であり、世界の商品デリバテ
ィブ市場とは逆の動きをしていることがわかる(図表 9)。
直近 5 年程度の出来高は、およそ 25~30 百万枚の水準で下げ止まっているものの、ここから大きく
復活する兆しは見られず、低位安定している。
11
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表9)日本の商品デリバティブ取引 出来高推移
180
農産物等
160
出来高(百万枚)
140
120
100
80
工業品
60
40
20
0
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
(年)
(出所)日本商品先物振興協会

商品別に見た優位性をも失った商品デリバティブ市場
その結果、かつて我が国の商品デリバティブ市場が出来高において世界の上位を争っていた商品が、
他市場との比較において見劣りするようになってしまった。
「金」は、かねてより東京商品取引所における出来高上位の代表的な商品であり、2000 年代前半ま
では世界でもトップクラスを誇っていたが、金ミニ取引の導入にも関わらず、現在では NYMEX や上海
商品取引所の足元にも及ばない規模になってしまっている(図表 10)
。
「白金」は、現在においても東京商品取引所が出来高において世界のトップを誇る商品である。しか
しながら、近年は第二位の NYMEX の出来高との差が肉薄してきており、直近 5 か月間である 2016 年 1
~5 月の実績を見れば、ついに今年は NYMEX と逆転する見込みとなっている(図表 11)
。
これらの傾向は貴金属に限らず、農産物分野、エネルギー分野でも同様である。
例えば「ゴム」は、東京がアジア地域における価格指標として用いられるとされているが、その取引
量自体は減少し続けており、上海商品取引所の 10 分の 1 にも満たない水準にある(図表 12)。
また、
「ガソリン」の例を見ても、2006 年時点では同商品としては世界で最も多い出来高を誇ってい
たが、現在では NYMEX にやはり 10 倍近い差をつけられている(図表 13)。
市場全体の出来高低迷もさることながら、商品別の強みも失われつつあり、厳しい局面を迎えてい
る。
12
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表10)商品デリバティブ取引 主要市場の出来高推移(金)
60
金先物, NYMEX
金先物, 上海先物取引所
50
出来高(百万枚)
金先物, 東京商品取引所
40
30
20
10
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015 (年)
出所)Futures Industry Association、東京商品取引所公表データより野村総合研究所作成
(図表11)商品デリバティブ取引 主要市場の出来高推移(白金)
12
白金先物, 東京商品取引所
10
白金先物, NYMEX
出来高(百万枚)
8
6
NYMEX 2016/1-5 1,458,777
4
2
TOCOM 2016/1-5 1,179,296
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016 (年)
※2016 年 1-3 月データをもとに、2016 年の年間出来高を推計して記載
出所)CME Group、東京商品取引所公表データより野村総合研究所作成
13
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表12)商品デリバティブ取引 主要市場の出来高推移(ゴム)
180
ゴム先物, 上海先物取引所
160
ゴム先物, 東京商品取引所
出来高(百万枚)
140
120
100
80
60
40
20
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
(年)
出所)Futures Industry Association、東京商品取引所公表データより野村総合研究所作成
(図表13)商品デリバティブ取引 主要市場の出来高推移(ガソリン)
45
RBOBガソリン先物, NYMEX
40
ガソリン先物, 東京商品取引所
出来高(百万枚)
35
30
25
20
15
10
5
0
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015 (年)
出所)Futures Industry Association、東京商品取引所公表データより野村総合研究所作成
14
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~

市場の縮小とともに減少する商品デリバティブ市場の市場参加者
我が国の商品デリバティブ市場の出来高減少は、すなわち、商品デリバティブ取引を手掛ける投資
家数や委託手数料の減少をも意味する。
業界の統計によれば、委託者数 4は、2003 年の約 12 万人から 2015 年の約 8 万人へと減少している
(図表 14)。また、取引の結果生じる委託手数料は、2003 年の約 3,500 億円から 2015 年の約 330 億円
へと 10 分の 1 の規模になっている。商品デリバティブ市場の出来高縮小と同時に、業界の市場規模自
体が縮小していることがわかる(図表 15)。
また、これらは取引参加者の経営を圧迫している。国内の商品デリバティブ取引を扱う業者数は、
2003 年の 97 社から 2015 年の 30 社へと減少し、3 分の 2 の企業が撤退を余儀なくされている(図表
16)
。同時に、外務員数も減少している(図表 17)
。
(図表14)日本の商品デリバティブ取引 委託者数推移
140,000
120,000
委託者数(人)
100,000
80,000
60,000
40,000
20,000
0
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
(年度)
(出所)日本商品先物振興協会
(図表15)日本の商品デリバティブ取引 委託手数料推移
350
300
委託手数料額(十億円)
250
200
150
100
50
0
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
(年度)
(出所)日本商品先物振興協会
4
日本商品先物取引協会の定める「会員の企業情報の開示に関する規則」に基づき情報開示された会員各社の「顧客数」
を合計したもの。
15
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表16)日本の商品デリバティブ取引 業者数推移
100
90
80
業者数(社)
70
60
50
40
30
20
10
0
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
(年度)
※2015 年度のデータは 2015/12 末現在
(出所)日本商品先物振興協会
(図表17)日本の商品デリバティブ取引 外務員数推移
16,000
14,000
外務員数(人)
12,000
10,000
8,000
6,000
4,000
2,000
0
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
(年度)
※2015 年度のデータは 2015/12 末現在
(出所)日本商品先物振興協会
16
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~

営業損失の状態が続く東京商品取引所
さらに、商品デリバティブ取引市場を担う東京商品取引所自体の経営状況も芳しくない。その財務
。有価証券の利息や売却によ
数値を見ると、近年は慢性的に営業損失を計上する状態にある(図表 18)
ってかろうじて経常黒字を計上している年度があるものの、最近の出来高水準では構造的な営業赤字
を脱することができない。このように、もはや業界全体が風前の灯であると言っても過言ではない。
(図表18)東京商品取引所 収支状況(営業収益、営業利益、経常利益)
4,000
営業収益
営業利益
経常利益
3,000
1,000
132
109
0
▲29
▲959
▲876
2013.3期
▲1,358
▲597
2012.3期
▲556
▲20
▲728
▲568
▲1,170
▲1,139
▲1,400
▲2,000
▲969
▲1,000
▲237
(単位:百万円)
2,000
▲3,000
2009.3期
2010.3期
2011.3期
2014.3期
2015.3期
2016.3期
(出所)東京商品取引所
17
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
3.商品分野単独による市場活性化の限界
商品分野では、政府が総合エネルギー市場構想を掲げ、LNG 先物や電力先物等の新商品上場や、海外
からの投資家・取引参加者呼び込み等の努力がなされている。しかし、世界との競争環境は厳しく、
我が国の商品デリバティブ市場が今後も存続できるかどうかについては疑問符が付く状況である。

商品市場活性化にむけた独自の動き
我が国の商品デリバティブ市場が低迷し、既存商品は世界の取引所の後塵を拝する中、東京商品取
引所は、今年度からの中期経営計画(2016 年度~2018 年度)
(図表 19)において、総合エネルギー市
場(LNG 先物、電力先物等)の実現をその最重点施策としている(図表 20)
。
(図表19)東京商品取引所 「中期経営計画(2016 年度~2018 年度)」
項目
内容
1.外部環境に左右されない構造
的に安定した経営基盤の構築
(1) 収益拡大に向けた施策
(2) 財務基盤の強化に向けた取組み
(3) 商品先物取引の認知度及びイメージ向上に資する広報活動の
強化
(4) 利便性及び信頼性向上に向けた取組み
(5) リスク管理に係る規制強化に向けた取組み
(1) 電力市場の創設
(2) 総合エネルギー市場の構築
(3) JOE 市場の活性化
(4) 取引所ビジネス領域の拡大
(5) 将来の事業展開に向けた研究開発の推進
(1) JPX との連携強化
(2) 海外取引所等との連携強化
2.総合コモディティ市場整備に
向けた取組みの推進
3.他取引所等との連携強化
(出所)東京商品取引所
(図表20)東京商品取引所 2016 年度事業計画における最重点施策
項目
内容
(1) JPX との次期取引システム共同
利用の円滑な実施
• JPX との連携により、次期取引システムへの円滑な移行を実
現し、金融・証券市場のプレーヤーの当社参入を促す起爆剤
とする。
• 2016 年 4 月の電力自由化を見据え、電力市場を創設すること
で、新たな当業者、投資家の市場参入を促し、電力業界に対
してリスクヘッジインフラを提供する。
• LNG、LPG 及び石炭など新たなエネルギー商品の上場に向けた
調査を継続し、総合エネルギー市場の整備に取り組む。
• 取引所のビジネス領域を従来の「先物・オプション市場」か
ら「店頭市場」
、
「現物市場」まで拡大することで「総合コモ
ディティ市場」の創設を目指す。これにより、価格発信機能
をより強化することによって産業インフラとしての充実に努
める。
• 「TOCOM スクエア」を商品先物取引の中核的な情報発信基地
と位置付け、関係団体及び取引参加者と連携したリアル及び
バーチャルな情報発信を通じて個人投資家の参入促進を図
る。
• 国内の個人投資家に加え、アジア(特に中国経済圏)の個人
投資家の市場参入促進を図る。
(2) 電力市場の創設
(3) 総合コモディティ市場の創設
(4) 個人投資家の市場参入促進に向
けた取組みの強化
(出所)東京商品取引所
18
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~

LNG 先物取引の可能性
天然ガス輸出入をその形態別に見ると、パイプラインガスは 69%、液化天然ガス(LNG)は 31%を占
めている。特に、パイプラインの行き届かないアジア地域は LNG 輸入量の 69%を占める消費地であり、
中でも最大の輸入国は日本である 5。
我が国における LNG の価格は、長期契約で原油価格に連動する価格決定方式が通常であり、東日本
大震災後の調達価格の高騰(あるいは最近の急落)が象徴するように、LNG そのものの需給を反映しな
い価格での調達となる点が課題となっている。一方で、米国や欧州では、原油価格に連動する価格決定
方式ではなく、ガスそのものの需給を反映した価格の影響力が増しており、原油価格の動向にもよる
が、我が国の LNG 輸入価格は、欧米における価格よりも割高な価格となってしまっている。このような
課題を解決し、低廉かつ安定的な LNG 調達を進めていくために、中長期的にはアジアにおける指標ガ
ス価格が形成されることが望まれている。
そのような中、シンガポール証券取引所(SGX)は 2016 年 1 月に LNG 先物(SLInG)の上場を先行さ
せ、国を挙げてアジアにおける LNG 市場のハブとなるべく、取り組みを始めている 6。
我が国においても、LNG の店頭先物市場として 2013 年 11 月にジャパン OTC エクスチェンジ(JOE)
を設立し、2014 年 9 月に取引を開始している。しかしながら、取引は 2015 年 7 月に 1 件行われたのみ
となっていた。そこで 2016 年 2 月には、CME グループが NYMEX に DES ジャパン LNG(RIM)先物を上場
し、また、同商品は、CME ClearPort システムでも取り扱われ、JOE や OTC ブローカーを経由した取引
について清算機関である CME Clearing に取引を送ることができるようになった 7。
さらに、我が国が流動性の高い LNG 市場を構築し、2020 年代前半までに日本を LNG の取引や価格形
成の拠点(ハブ)としていく事を目指す方向性が「LNG 市場戦略」 8として表明されるなど、LNG 市場
の形成にむけての戦略が推進されている。
このように、我が国における LNG 市場戦略の主旨自体は評価でき、実現を目指すべきである。しか
しながら、現状では LNG スポット取引の数量や、売り手・買い手の数も限定的であることを考えれば、
現実的には、LNG 先物取引が市場として活性化するまでに相当な時間を要するものと考えられる。

電力先物取引の可能性
2016 年 4 月 1 日より、電力の小売が全面自由化された。これを受けて、2016 年度中に電力先物取引
を開始するべく準備が進められている。
電力先物市場の制度については、経済産業省が設置する「電力先物市場協議会」において概要が検討
されている。
その報告書によれば、最も標準的な取引として、ベースロード電力の上場が検討されている。また、
平日の日中については、ベースロードとは別の需給やヘッジニーズ等が存在すると考えられるため、事
業者のヘッジニーズ等を勘案し、日中ロードとして、平日 8 時から 18 時までの電力の上場も検討され
ている。
5
アジア・太平洋及び大西洋市場の天然ガス需給動向調査報告書(2014 年 3 月)一般財団法人日本エネルギー経済研究所
6
SGX FOB Singapore SLInG LNG Futures を上場(2016/1/25)
7
CME グループが DES ジャパン LNG(RIM)先物の新規上場を発表(2016/2/22)
8
「LNG 市場戦略 Strategy for LNG Market Development ~流動性の高い LNG 市場と“日本 LNG ハブ“の実現に向
けて~」経済産業省(2016/5/2)
19
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
決済期限については、商品取引所における電力先物の約定のしやすさや、電力の需給の見通しの容
易さの観点から、1 ヶ月単位で、最長 15 ヶ月先までとされている。
取引の種別については、日本卸電力取引所のスポット取引(1 日前市場)におけるシステムプライス
の「月間平均価格」を最終決済価格とした現金決済先物取引とされている。
現物市場という点では、日本卸電力取引所における年々入札量は増加し、取引の機会は増大してい
る。さらに 2016 年 4 月の電力小売完全自由化以降、自家発電以外の電力確保が主となる電力小売業者
の参入が相次いでいることから、潜在的な取引需要はある程度見込まれている。しかしながら、入札
量・取引量における絶対量の水準は未だ小さいものにとどまるため、さらなる取組が必要とされてい
る。

総合エネルギー市場がすべてを解決してくれるわけではない
いずれの商品についても、先物市場ができたからといって、新たな当業者や投資家の市場参入や、流
動性の確保が簡単に実現できるわけではない。奇しくも「電力先物市場協議会」報告書の末尾に記載さ
「現物取引の活性化が重要であり、現物取引の厚みの増加に向けた取組が期待され
れている 9ように、
る」という側面もある。また、そもそも、商品分野の取引参加者の信用度、清算基金の十分性、システ
ムの使い勝手等に不安があれば、市場の広がりは期待できない。
総合エネルギー市場へむけた LNG 先物や電力先物等の施策が、我が国商品デリバティブ市場の起死
回生の一手となるとまでは言い難く、その他の施策も含めて総合的に取り組んでいく必要がある。しか
しながら、世界的な競争環境や、アジア勢の台頭を念頭に置けば、残された時間はそう多くない。
9
「2016 年に、電力システム改革の第二段階として電力の小売・発電の全面自由化が行われた後は、諸外国の状況を踏
まえ、電気事業者や新規参入するプレーヤー等のリスクヘッジのニーズ等に適切に対応するため、可能な限り速やかに、
電力の先物市場への上場がされるべきである。そのためにも、我が国の電力の現物取引の活性化が重要であり、現物取引
の厚みの増加に向けた取組が期待される。
」
(「電力先物市場協議会」報告書 15 ページ)
20
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
4.総合取引所の必要性
国益という観点からいえば、商品分野の価格形成機能を国内に維持すべきである。商品分野の価格
形成機能を国内に維持するためには、国内外から多様な投資家を呼び込み、流動性を確保していく
ことが必要となる。そのためには、証券・金融分野と商品分野の一体化が必要であり、それこそが総
合取引所の目指す姿である。

国内の商品デリバティブ市場を維持する意義
我が国の商品デリバティブ市場は、ひきつづき対策を行って流動性や投資家を増やしたとしても、
世界の市場との比較感からすれば、その先行きが危ぶまれるであろう。また、投資家から見ても、必ず
しも流動性の低い国内の商品デリバティブ市場を優先して利用し続ける義務はなく、それぞれ商品ご
とに流動性の高い海外市場で取引をすれば事足りるということになりかねない。実際に、国内の商社に
代表される実需筋や海外の CTA(商品投資顧問業者)やファンドからは、我が国の商品デリバティブ市
場の流動性の低さや清算機関に対する不安等があるため、流動性の点から、既に海外での取引が中心と
なっている中、このままではさらに国内から海外の取引所にシフトせざるを得ない、という声まで出て
きている 10。このような状況下で、果たして国内に商品デリバティブ市場は必要であろうか。
国益という観点からいえば、単にグローバルな価格に追随していくようなサテライト市場ではなく、
真に価格形成機能のある商品デリバティブ市場を国内に維持していくべきである。やはり、市場が国内
にあることによる物理的な取引の利便性や、日本のタイムゾーンでの取引が可能であるなど、国内の利
用者にとってのメリットは大きい。仮に国内に価格形成機能のある市場が存在しない場合、海外市場の
価格乱高下や海外当局による意図的かつ政治的な介入・規制等により商品価格が影響を被るリスクが
あり、それは、投資家のみならず実需を持つ日本の製造業等へも悪影響を及ぼす恐れがある。
我が国の商品デリバティブ市場を維持することは、単純にそれ自体の存続を危惧して行う対策とい
うのではなく、産業インフラとしての必要性や、海外との競争基盤維持の観点からも重要なものである
ということができる。そして同時に、これは我が国の金融センター機能の強化にもつながり、経済全体
への波及効果も大きいものである。

証券・金融分野と商品分野の一体化メリット
そこで、商品分野の価格形成機能を国内に維持するためには、国内外から多様な投資家を呼び込み、
充分な流動性を確保していくことが必要となる。そのためには、証券・金融分野と商品分野の一体化が
必要であり、それこそが総合取引所の目指す姿である。総合取引所化にあたっては、単に取引所や市場
が一体化することだけではなく、証券・金融と商品分野の各基盤を相互に活かすことが重要である(図
表 21)
。
ここでは、
「総合取引所化のメリット」について、
「流動性」
「投資家」
「清算機関」
「システム」
「取引
業者」の複数の視点から考察したい。
10
「1,000 億規模のファンドであっても、取引コストやトレーディングの手間を勘案すると、日本で取引することの意味
がなくなってきている」
(総合的な取引所検討チーム 第 8 回 委員発言)
21
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表21)証券・金融分野と商品分野の一体化
商品分野
証券・金融分野
監督機関
農林水産省・経済産業省
金融庁
法規制
商品先物取引法
金融商品取引法
取引所
持株会社
金融商品取引所
持株会社
取引所
商品取引所
金融商品取引所
金融商品取引所
取引市場
商品市場
金融商品市場
(派生)
金融商品市場
(現物)
取引内容
商品デリバティブ
金融デリバティブ
清算機関
商品取引清算機関
システム
取引システム
取引業者
商品取引業者
信用
現物
金融商品取引清算機関
取引システム
(JPXではJ-GATE)
当業者
取引システム
(JPXではarrowhead)
金融商品取引業者
代金受渡
委託証拠金/
代用担保
委託証拠金/
代用担保
委託保証金/
代用担保
取引口座
商品デリバティブ取引口座
先物・オプション口座
信用口座
投資家
投資家
当業者
預り金・MRF
証券総合口座
投資家
出所)野村総合研究所作成
ⅰ)流動性
我が国の証券・金融分野は、商品分野と比較して、相対的に豊富な流動性を有している。例えば、商
品分野の出来高が 2003 年から 2015 年にかけて 6 分の 1 に縮小する一方、証券・金融分野の出来高は
同期間で 8 倍に拡大している(図表 22)
。2011 年の商品先物取引法改正で導入された不招請勧誘の禁
止により、商品分野の出来高が減少したという意見もあるが、それ以前からの減少傾向や金融分野との
対比を見れば、必ずしも規制だけが要因であるとは言えないであろう。直近の 2015 年には証券・金融
分野の出来高が商品分野の 14.6 倍にまで達しており、総合取引所化によって一部が商品分野に影響し
たとしても、そのインパクトは大きいことがわかる。
加えて、一つの取引所で証券・金融と商品分野間での裁定取引ニーズに対応できるため、総合取引所
化によって生み出される流動性があることも期待できる。
22
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表22)我が国のデリバティブ出来高推移(上場または取引所取引)
400
日本取引所グループ
350
東京金融取引所
東京商品取引所
出来高(百万枚)
300
250
200
→FXのレバレッジ規制強化
150
→店頭FXの税制変更
100
50
→不招請勧誘禁止
0
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
(年)
※日本取引所グループについては、大阪取引所への統合前の東京証券取引所における取引分を含む
※東京商品取引所については、東京商品取引所への統合前の東京穀物取引所における取引分を含む
出所)各取引所公表の統計情報より野村総合研究所作成
ⅱ)投資家
その流動性を支えているのが、証券・金融分野における国内外の投資家層である。証券・金融分野で
は、金融機関や、事業会社、海外投資家、個人投資家等の様々な投資家層が活発に売買を行っている。
とりわけ、金融デリバティブにおける海外投資家比率はおよそ 75~80%を維持しており
11
、現物市場
以上に、国外からの売買が活発に行われていることがわかる(図表 23)。
また、海外の主要な取引所においては、商品デリバティブの取引に対してファンドや金融機関等の
。特に金や原油等、金融市場と連動性の高い商
証券・金融分野の投資家が多数参加している(図表 24)
品などでは相対的に証券・金融分野の投資家比率が高くなっている。
市場に参加する投資家の視点からは、証券・金融分野のデリバティブ取引と商品分野のデリバティ
ブ取引との間に本質的な違いがあるとは言えず、総合的な取引所の存在は取引の利便性向上につなが
るものとなっている。
11
日経 225 先物(ラージ、ミニ)に占める海外投資家比率の推移
23
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表23)日経 225 先物(ラージ、ミニ)に占める海外投資家比率の推移
委託に占める海外投資家比率(%)
90
80
70
60
50
40
30
20
日経225先物
10
日経225mini
0
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
(年)
出所)日本取引所グループ公表の統計情報より野村総合研究所作成
(図表24)主要商品における投資家比率(2016 年 5 月 10 日現在の建玉ベース)
電力 - NYMEX
天然ガス - ICE
とうもろこし - CBOT
原油 - NYMEX
金 - COMEX
0%
10%
生産者、商社、加工者、利用者等
20%
30%
40%
スワップディーラー
50%
ファンド
60%
70%
80%
その他要報告者
90%
100%
報告不要者
※電力:PJM WESTERN HUB RT OFF 5 MW、天然ガス:ICE HENRY HUB、原油:CRUDE OIL, LIGHT SWEET
出所)CFTC/Commitments of Traders (COT)report より野村総合研究所作成
24
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
また、投資家にとっては、証券・金融分野と商品分野との一体化によって、口座管理や資金効率、投
資効率等においてメリットが大きいと考えられる。
個人投資家に関して言えば、証券総合口座(株式現物、債券、投資信託等)に対する追加口座として、
商品デリバティブ取引口座開設をスムーズに行うことができれば、利便性が高い。
また、証券・金融分野(MRF、預り金、信用委託保証金、先物・オプション委託証拠金)と商品分野
(委託証拠金)の間で投資資金の機動的な振替ができるようになり、市場の状況に応じた効率的な資金
運用が可能になるであろう。
さらに、証券・金融分野と商品分野の間でポジション管理を一元化することで、相互の値動き特性を
踏まえたポートフォリオを構築することや、相互のヘッジを考慮したストラテジーを組むことも比較
的容易になり、投資効率を高めることができる。
ⅲ)清算機関
流動性と投資家以外にも、清算機関やシステム、取引業者といった基盤も重要な要素である。
現状、清算機関としては、証券・金融分野では日本証券クリアリング機構(JSCC)、商品分野では日
本商品清算機構(JCCH)がその役割を果たしている。このように、取引所と同様に各々が別の法規制・
監督下に位置づけられていることで、分野に応じて別の清算機関を利用する必要があり、不効率が生じ
ている。さらに言えば、商品分野の清算機関については、近年の国内商品デリバティブ市場の低迷もあ
いまって、財務基盤や国際基準対応 12等の信頼性において不安を感じざるを得ない 13。
市場参加者からすれば、すべてのデリバティブ取引において、信頼性の高い 1 つの清算機関を利用
するに越したことはない。
ⅳ)システム
我が国においては、OSE が 2016 年 7 月 19 日に次期デリバティブ取引システム(次期 J-GATE)を稼
働させる予定であるが、当該次期 J-GATE については OSE が TOCOM に利用サービスを提供することとな
っており、同年 9 月 20 日に利用開始の予定である 14。
IT の進歩により、アルゴリズム取引や高頻度売買(HFT)等の取引が一般化する中、デリバティブ市
場の運営におけるシステム投資負担は非常に重くなっている。現行システムの維持・運用のみならず、
次期システムの企画・開発や更改、システム仕様と取引制度の調整等、中長期的な期間を見据えた対応
も要求される。証券・金融分野と商品分野とで共同利用することで、我が国のデリバティブ市場全体で
見た今後のシステム対応コストを効率化することができ、唯一具体的に前進した領域であると言える。
ⅴ)取引業者
証券・金融分野の取引業者には、国内外の大手証券会社が名を連ねているが、商品分野へ参入してい
12
例えば日本証券クリアリング機構(JSCC)は、2015 年 3 月より「清算機関のための定性的な情報開示基準」に基づい
て定性的な情報を開示している。加えて、2015 年 12 月より「清算機関のための定量的な情報開示基準」に基づいて定量
的な情報開示を開始するなど、国際的な基準 に対応した情報開示を行うなどの取り組みを進めている。
13
「特に商品の場合は、財政的な基盤をもうちょっと大きくしないと、クリアリングハウスの意味自体がなくなってし
まう」総合的な取引所検討チーム(第 8 回) 委員発言
14
次期システムの本番稼働予定日:2016 年 9 月 20 日(火)
25
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
る企業は少数にすぎない。金融商品取引業を主とする証券会社にとっては、規制・監督が二重であるこ
とにより、商品分野へ参入すると書類開示や報告等もそれぞれの所轄官庁に行う必要があって負担が
大きいため、商品分野への参入障壁は非常に高いものとなっている。
もちろん、規制・監督が一元化されるだけですべての証券会社が直ちに商品分野の取り扱いを開始
するとは思えないが、少なくともその障壁を下がることで、取引業者による相互参入のハードルを下げ
ることができると考えられる。
これにより、証券・金融分野の投資家層のうち一定割合の口座開設を促し、低迷する商品デリバティ
ブ取引の顧客数拡大の一助とすることができる(図表 25)。
(図表25)商品デリバティブ取引業者の顧客数および出来高(2015 年 3 月期)
商品デリバティブ取引業者※1
出来高※2
顧客数※2
うち、委託
うち、自己
楽天証券
41,790
3,548,067
3,547,993
74
日産証券
4,975
8,248,901
8,248,751
150
北辰物産
4,293
2,651,274
2,642,310
8,964
第一商品
3,882
712,643
678,747
33,896
フジフューチャーズ
3,705
994,984
962,098
32,886
EVOLUTION JAPAN
3,126
836,000
836,000
※3
岡藤商事
2,421
1,938,520
1,854,762
83,758
岡地
1,804
2,756,907
1,574,621
1,182,286
フジトミ
1,794
513,453
504,298
9,155
岡安商事
1,753
3,281,967
3,279,535
2,432
サンワード貿易
1,563
1,094,638
996,892
97,746
豊商事
1,158
1,145,818
942,616
203,202
コムテックス
957
2,120,570
2,048,269
72,301
カネツ商事
933
244,405
225,494
18,911
セントラル商事
760
140,620
140,256
364
KOYO 証券
692
98,155
98,155
0
大起産業
436
101,301
101,065
236
アルフィックス
384
196,472
171,373
25,099
ローズ・コモディティ
311
59,996
59,996
0
※1 個人対象の商品デリバティブ取引業務を行う企業のうち、国内商品市場取引の顧客数が 300 名以上の企業。
※2 2015 年 3 月末の国内商品市場取引における顧客数(単位:名)
、2015 年 3 月期の出来高(単位:枚/年)
。
※3
EVOLUTION JAPAN の自己取引分については開示資料への記載なし。
出所)各社(日本商品先物取引協会会員企業)開示資料より野村総合研究所作成
26
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
5.総合取引所が実現しない理由
2 度の金融商品取引法改正を経てもなお、規制・監督を一元化するための手段は依然として限定され
ている。
「商品所管官庁」は、
「総合エネルギー市場」を確立することを優先課題として位置づけ、総
合的な取引所の実現はその次の段階としているため、議論から 10 年以上が経過し、世界的な競争環
境が激変する中にあっても、総合的な取引所は実現の目処すら立っていない。

なぜ我が国において総合取引所が実現しないのか
先述の通り、我が国では約 10 年にわたり総合取引所の構想が議論され、その過程で金融商品取引法
は 2 回の改正がなされているが、現時点において、総合取引所化は実現される計画すら立っていない。
なぜ今日に至るまで総合取引所が実現していないのであろうか。
金融商品取引法は、金融商品取引所という概念を導入し、従来の証券取引所と金融先物取引所とを
一つの法的概念の下に統合したが、商品取引所は、まったく別のものという位置づけになっている。
この背景には、商品取引所における取引は商品現物の市場とも密接に関わり、金融商品として取り
扱うことは適切ではないという考え方があるものとされるが、金融商品取引法を所管する金融庁と商
品取引所法を所管する経済産業省及び農林水産省との利害対立が背景にあり、利用者の立場に立った
判断に基づくものではないとの批判もなされている。
この点に関しては、証券・金融や商品といった原資産の種類に依らず、デリバティブはデリバティブ
として規制を一元化しているのがグローバルスタンダードである。我が国の 2007 年の議論の中でも
「総合取引所や証券取引所における商品デリバティブ取引については、商品取引所法(現商品先物取引
法)の適用除外とし、金融商品取引法の下で規制を行なうべきである。なお、こうした規制の対象にな
るのは、市場規制としての共通項を有する事柄であり、上場商品の組成農産物・エネルギー等自体に対
する政策的観点の意義と矛盾するものではない」 15と結論づけられている。

2009 年金融商品取引法改正
こうした中、商品市場の活性化を図るためには、経営基盤が安定し、投資家の信任も厚い金融商品取
引所による市場運営を認めるべきとの考え方が提起され、2007 年 4 月には経済財政諮問会議のワーキ
ンググループが、実現への道筋を示す報告書 16をとりまとめた。
この報告書の提言を受ける形で、2009 年の金融商品取引法改正
17
では、金融商品取引所と商品取引
所が、共通の持株会社の下でグループ会社化したり、子会社化したりすることが認められた(図表 26)
。
しかしながら、その場合に適用される規制や監督の主体は、従来通りとされることとなった。つま
り、仮に既存の金融商品取引所が商品取引所を子会社やグループ会社とすることで総合的な取引所へ
の発展を志向すれば、金融庁に加えて、経済産業省や農林水産省の監督に服することになってしまう。
取引所の側からすれば、デリバティブ市場の運営という一つの事業の遂行をめぐって、複数の官庁
に対する報告を行ったり、検査や監督を受けたりすることは極めて煩雑で、コストもかかる。これを嫌
15
経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会
第一次報告 20p(2007 年 5 月 8 日)
16
経済財政諮問会議グローバル化改革専門調査会 金融・資本市場ワーキンググループ第一次報告「真に競争力のある
金融・資本市場の確立に向けて」
(2007 年 4 月 20 日)
17
2009 年 6 月成立、2010 年 6 月施行
27
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
う取引所は、改正法の施行後も目立った動きを見せなかった。抜本的な法改正が実現しなかったため、
実現にはつながらなかった。
(図表26)金融商品取引法改正内容の概要(2009 年)
商品分野
証券・金融分野
監督機関
農林水産省・経済産業省
金融庁
法規制
商品先物取引法
金融商品取引法
取引所
持株会社
商品取引所
持株会社
取引所
商品取引所
金融商品取引所
持株会社
2
3
金融商品取引所
1
取引市場
商品市場
商品
市場
金融商品
市場
金融商品市場
取引内容
商品デリバティブ
商品
デリバ
金融
デリバ
金融デリバティブ
清算機関
商品取引清算機関
4
金融商品取引清算機関
取引業者
商品取引業者
当業者
金融商品取引業者
投資家
投資家
当業者
投資家
NO
項目
内容
1
金融商品取引所による商品
市場の開設
株式会社金融商品取引所は、認可を受けて商品市場
の開設を行うことができる
第 87 条の 2 第 1 項
2
金融商品取引所と商品取引
所のグループ化
金融商品取引所又は金融商品取引所持株会社は、認
可を受けて商品取引所を子会社として保有できる
第 87 条の 3 第 1 項、
第 106 条の 24 第 1 項
商品取引所及び商品取引所持株会社は、金融商品取
引所を金融商品取引法上の認可を受けることなく子会
社として保有できる
第 103 条の 2、
第 106 条の 6、7、10、
第 109 条
金融商品取引清算機関は、承認を受けて商品取引債
務引受業を行うことができる
第 156 条の 6
3
4
金融商品取引清算機関によ
る商品取引債務引受業の実
施
条文
出所)金融庁資料より野村総合研究所作成
28
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~

2012 年金融商品取引法改正
その後、2010 年 6 月に策定された政府の「新成長戦略」では、改めて「総合的な取引所(証券・金
融・商品)の創設推進」がうたわれ、総合取引所構想が金融分野における国家戦略プロジェクトとして
位置づけられた。これを受けて 2010 年 10 月には、関係省庁の副大臣及び政務官をメンバーとする総
合的な取引所検討チームが発足した。途中、内閣の交代や改造等により議論が長引き、とりまとめには
1 年以上の年月を要したが、2012 年 2 月になってようやく制度概要がとりまとめられた 18。
この制度概要を具体化した 2012 年の金融商品取引法改正 19では、2009 年改正によって規定された金
融商品取引所と商品取引所の相互参入に加えて、金融商品取引所と商品取引所を当事者とする合併に
。これにより、金融商品取引所が商品取引所を吸収合併した場合
ついての規定が整備された(図表 27)
の取り扱いが明確となった。
また、金融商品等の定義を拡大することで、金融商品取引所の市場において、商品先物取引法の規制
を受ける商品のうち、一定の要件を満たすものに係るデリバティブ取引を行うことが認められた。
その場合、商品デリバティブの取り扱いを第一種金融商品取引業と位置づけることで、金融商品取
引所の取引参加者である第一種金融商品取引業者(証券会社)に加えて商品取引員も取引に参加するこ
とが可能になる。
さらに、これらの監督は内閣総理大臣(金融庁)が行うことが明記され、一見、総合的な取引所につ
いては規制・監督の一元化が実現したかのように見えた。

商品市場所管官庁による「協議等」
2012 年金融商品取引法改正では、
「商品に係る市場デリバティブ取引を取扱う「総合的な取引所」に
ついて、金融所管官庁が一元的に監督し、二重規制・監督による非効率を解消」との謳い文句 20は響き
が良いが、規制・監督の一元化には大前提となる「条件」がついていた。
金融商品取引所による商品関連市場の開設や、個別商品デリバティブの上場廃止など、総合的な取
引所を成立・運営するための様々な要件において、商品所管官庁たる経済産業省や農林水産省による
「同意」が条件として残されているのである。つまり、総合的な取引所の業務変更の都度、経済産業省
や農林水産省に対する通知・報告・協議と同意の取り付けが必要であり、事実上、結局規制・監督は一
元化されていない(図表 28)
。
この点に関し、2012 年金融商品取引法改正当時の議論では、
「石油の場合の受渡等の商品特性や、国
民生活に影響が出るような商品価格の急激な乱高下等の場合の緊急時対応、取引所への商品の上場審
査など、商品市場の産業政策的な観点を踏まえ、物資所管省庁の役割を維持することが必要ではない
か」との意見が示されている。
この結果、我が国の「総合的な取引所」において一元化されたのは規制・監督の「窓口」にすぎず、
そもそも「総合的な取引所」を成立させるかどうかは「商品所管官庁」の采配次第となってしまってい
る。確かに、
「窓口」の一元化によって取引参加者の監督・報告が効率化されるという側面はあるもの
の、
「アジアナンバーワンの金融・資本市場の構築」を目指して市場運営や規制整備を機動性かつ柔軟
18
総合的な取引所検討チーム
19
2012 年 9 月成立、2014 年 1 月施行
20
金融商品取引法等の一部を改正する法律案に係る説明資料(2012 年 3 月)金融庁
「とりまとめ」
(2012 年 2 月 24 日)
29
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
に行っていくというスケールからすれば、いかにも中途半端な形であると言わざるを得ない。
加えて、商品先物取引法では、株式会社商品取引所を当事者とする合併は主務大臣の認可事項とな
っており 21、統合の場合にはこの認可もあわせて満たす必要がある。
21
商品先物取引法(第 96 条)
「次に掲げる事項は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
(中略)
二 株式会社商品取引所を全部又は一部の当事者とする合併(第百四十五条第一項の合併を除く。
)」
、商品先物取引法
(第 145 条第 1 項)商品取引所を全部又は一部の当事者とする合併(合併後存続する者又は合併により設立される者が商
品取引所であるものに限る。
)は、主務大臣の認可を受けなければ、その効力を生じない。
30
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表27)金融商品取引法改正内容の概要(2012 年)
商品分野
監督機関
証券・金融分野
農林水産省・経済産業省
規制・
監督
協議等
金融庁
5
法規制
商品先物取引法
取引所
持株会社
商品取引所
持株会社
取引所
商品取引所
認可
金融商品取引法
金融商品取引所
持株会社
商品
取引所
1
金融商品取引所
総合的な取引所
商品
市場
取引市場
商品市場
取引内容
商品デリバティブ
清算機関
商品取引清算機関
3
2
商品
デリバ
金融商品市場
金融デリバティブ
金融商品取引清算機関
取引業者
商品取引業者
当業者
投資家
投資家
当業者
4
金融商品取引業者
投資家
NO
項目
内容
1
金融商品取引所と商品取引
所の合併
株式会社金融商品取引所及び株式会社商品取引所
を当事者とする合併についての規定を整備する
第 142 条第 5.項、
第 142 条第 9 項
条文
2
金融商品取引所による商品
関連市場デリバティブに関す
る規定
金融商品取引所は、定款又は業務規程の定めるとこ
ろにより、商品関連市場デリバティブ取引のみを行う
ための取引資格を与えることができる
第 112 条第 2 項、
第 113 条第 2 項
3
金融商品等の定義
第 2 条第 21 項、第 24 項
4
取引参加者の規定
5
農林水産大臣及び経済産業
大臣との協議等
金融商品の定義に、商品先物取引法に規定する商品
の一部を追加し、商品等に係る市場デリバティブ取引
(「商品関連市場デリバティブ取引」)を金融商品市場
において行えることとする
商品関連市場デリバティブ取引の媒介、取次ぎ若しく
は代理、又はその委託の媒介、取次ぎ若しくは代理、
及び商品関連市場デリバティブ取引の有価証券等清
算取次ぎを第一種金融商品取引業と位置付ける
内閣総理大臣は、金融商品取引所、金融商品取引清
算機関等に対し、次に掲げる処分を行う場合には、あ
らかじめ、商品市場所管大臣と協議し、その同意を得
なければならない
第 28 条第 1 項
第 194 条の 6 の 2、
第 194 条の 6 の 3
出所)金融庁資料より野村総合研究所作成
31
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
(図表28)農林水産大臣及び経済産業大臣との「協議等」の内容
項目
内容
要同意
条項
内閣総理大臣は、金融商品取引所、金融商品取引清算機関等に対し、次に掲げる処分を行う場
合には、あらかじめ、商品市場所管大臣と協議し、その同意を得なければならないこととする。
①
商品関連市場デリバティブ取引を行う金融商品市場を開設しようとする者に対する免許
②
金融商品取引所に対する、商品等に係る上場廃止命令等
③
金融商品取引所に対する、商品関連市場デリバティブ取引の種類及び期限、商品の受渡
しに関する事項並びに商品関連市場デリバティブ取引の種類ごとの商品等に関する細則
に係る業務規程の変更の認可
金融商品取引所に対する、商品関連市場デリバティブ取引に関し、取引証拠金に関する
事項等について定款等に定める必要な措置を講ずることの命令
④
要通知
条項
条文
⑤
金融商品取引所に対する、商品関連市場デリバティブ取引に係る取引停止命令
⑥
金融商品取引所に対する、商品関連市場デリバティブ取引に係る取引証拠金に関する事
項についての業務規程の変更命令等
⑦
商品関連市場デリバティブ取引について金融商品債務引受業を行おうとする者に対する
免許・兼業承認
⑧
商品取引債務引受業等を行わない金融商品取引清算機関に対する、商品関連市場デリ
バティブ取引に係る商品の受渡しに関する事項に係る業務方法書の変更の認可
⑨
商品取引債務引受業等を行う金融商品取引清算機関に対する、商品関連市場デリバティ
ブ取引に関する事項に係る業務方法書の変更の認可
⑩
金融商品取引清算機関に対する、商品関連市場デリバティブ取引に係る取引証拠金に関
する事項についての業務方法書の変更命令
内閣総理大臣は、次に掲げる処分を行う場合には、商品市場所管大臣に対して、あらかじめ、通
知することとする。
①
金融商品取引法第 161 条の規定による内閣府令であって商品関連市場デリバティブ取引
に関する事項を定めたものに違反した金融商品取引業者等又は取引所取引許可業者に
対し、業務停止命令等を行う場合
②
金融商品取引所に対し、金融商品取引法第 161 条の規定による内閣府令であって商品
関連市場デリバティブ取引に関する事項を定めたものに違反した商品取引参加者の取引
資格の取消し等を命じる場合
第 194 条
の6の2
第 194 条
の6の3
出所)金融庁資料より野村総合研究所作成
32
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~

総合的な取引所の実現を阻むもの
このように、2 度の金融商品取引法の改正を経てもなお、デリバティブ取引に対する規制・監督を一
元化するための手段は依然として限定されているとともに、結局は「商品所管官庁」の采配次第となっ
ている。
さらに「商品所管官庁」では、まず前述した「総合エネルギー市場」を確立することを優先課題とし
て位置づけ、総合的な取引所の実現はその次の段階としている。
こうして、議論から 10 年以上が経過し、世界的な競争環境が激変する中にあっても、総合的な取引
所は実現の目処すら立っていないというのが今日の姿なのである(図表 29)。
(図表29)現在の状況(2016 年 6 月)
商品分野
監督機関
農林水産省・経済産業省
法規制
商品先物取引法
取引所
持株会社
商品取引所
持株会社
取引所
商品取引所
証券・金融分野
×
協議等
×
認可
総合エネ
ルギー市場
取引内容
電力先物
LNG先物
清算機関
金融庁
金融商品取引法
金融商品取引所
持株会社
商品
取引所
優先
取引市場
規制・
監督
未実現
商品市場
未実現
商品
市場
商品
デリバ
商品デリバティブ
日本商品清算機構
(JCCH)
金融商品取引所
金融商品市場
金融デリバティブ
日本証券クリアリング機構
(JSCC)
取引業者
商品取引業者
当業者
金融商品取引業者
投資家
投資家
当業者
投資家
システム
次期J-GATE
(2016/9より導入予定)
次期J-GATE
(2016/7/19更改予定)
出所)金融庁資料より野村総合研究所作成
33
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
6.今こそ求められる総合取引所の早期実現
内外の現状を踏まえると、今後時間が経てば経つほど、国内商品デリバティブ市場の再活性化が難
しくなる可能性が高い。これまでの複数回にわたる閣議決定や成長戦略等への記載、そして過去の
金融商品取引法改正における立法趣旨を踏まえれば、強力な政治的リーダーシップの下で総合取引
所化を推進すべきであり、これは我が国全体の国益に直結するものである。

今こそ総合取引所の早期実現を
先述のとおり、現状では、我が国は総合エネルギー市場の設立・活性化後にようやく総合取引所化を
目指す方向になっており、依然としてその道のりは長い。しかしながら、当初の議論からおよそ 10 年
が経過し、その間に世界の商品市場は活況を呈していく中、我が国の商品市場はすでに低迷の一途をた
どってきたという事実は重い。総合エネルギー市場の完成を待ってから総合取引所化を進めたのでは、
時すでに遅しという事態にもなりかねない。具体的に言えば、国内の商品デリバティブ市場を「救済」
せざるを得ない状態になってから総合取引所化を進めたとしても、これまでに述べたように、総合エネ
ルギー市場を含めて国内の商品デリバティブ市場全体としての活性化ができる可能性は低いものとな
ってしまう。
つまり、これまでの動向からすれば、今後時間が経てば経つほどさらに再活性化が難しくなる可能
性は高く、いずれ総合取引所化の流れを進める方向性がすでに一致されているのであれば、合併・営業
譲渡、単独での参入、いずれの形でも可及的速やかに総合取引所を実現すべきである。
そして、内外の投資家や取引参加者に対して、証券・金融分野から商品分野までワンストップで安心
して参加できる環境・インフラを提供し、我が国の市場全体を活性化させていく方向性を示すことで、
逆に電力先物や LNG 先物等の総合エネルギー市場活性化にも寄与することになるのではないだろうか。

具体的な対応策
そのためには、早急に総合取引所を実現し得る具体的な対応が必要となる。これまでの複数回にわ
たる閣議決定や成長戦略等への記載、そして過去の金融商品取引法改正における立法趣旨を踏まえれ
ば、強力な政治的リーダーシップの下であれば総合取引所化の推進はすぐにでも可能であり、我が国全
体の国益に直結するものである。
仮に総合取引所化の推進が難しいのであれば、制度的、法律的な改正を行ってでも推進すべきであ
り、この場合は、金融商品取引法における農林水産大臣及び経済産業大臣との協議等に関する規定 22に
おける同意条件の緩和などが視野に入るであろう。商品市場の産業政策的な観点など、その趣旨自体は
否定するものではないが、物資所管官庁が役割を発揮した結果が、民間企業たる TOCOM、JPX の経営の
自由度やスピードを制限することとなり、結果として我が国の商品市場が消滅する結果となってしま
っては本末転倒ではないか。
世界の競争環境や市場環境が速いスピードで変化する今、総合取引所化への道筋を一意に限定する
22
金融商品取引法 第 194 条の 6 内閣総理大臣は、次に掲げる処分をするときは、あらかじめ、商品市場所管大臣(商
品先物取引法第三百五十四条第一項 各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める大臣をいう。以下同じ。
)に協議し、そ
の同意を得なければならない。ただし、第二号ハからホまで、第四号ロ又は第五号ロに掲げるものについては、公益又は
投資者保護のために急を要するときは、あらかじめ、必要な措置の概要を、商品市場所管大臣に通知すれば足りる。
34
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
必要はなく、例えば、JPX 単独による商品市場の開設も認めたうえで、TOCOM による総合エネルギー市
場の開設や海外取引所との提携などの活性化策は同時並行で進めながら、我が国全体の市場活性化を
図る道筋を探るほうが賢明ではないか(図表 30)
。
(図表30)総合エネルギー市場と総合的な取引所との両立
商品分野
監督機関
証券・金融分野
協議等
農林水産省・経済産業省
規制・
監督
金融庁
協議の
推進
法規制
商品先物取引法
取引所
持株会社
商品取引所
持株会社
取引所
商品取引所
認可
合併の
認可
優先
取引市場
総合エネ
ルギー市場
取引内容
電力先物
LNG先物
清算機関
金融商品取引法
商品市場
総合的な
取引所
の実現
将来
統合 商品デリバティブ
金融商品取引所
持株会社
商品
取引所
金融商品取引所
商品
市場
金融商品市場
商品
デリバ
日本商品清算機構
(JCCH)
金融デリバティブ
金融商品取引清算機関
取引業者
商品取引業者
当業者
投資家
投資家
当業者
金融商品取引業者
投資家
出所)野村総合研究所作成

我が国の市場が世界規模でのプレゼンスを保つために
仮に総合的な市場が誕生したとしても、これだけですべての証券会社が商品デリバティブ取引を取
り扱い、証券会社の顧客層が積極的に取引に参加し、市場の裾野が一挙に拡大する、と楽観することは
できない。投資家の利便性を向上させるためには、取引口座の総合化を進めることに加えて、取引制度
や税制上の配慮も必要である。また、証券・金融分野の流動性を活用するといいつつも、我が国の金融
デリバティブ自体がすでに安泰というわけではなく、常にグローバルな競争にさらされており、これは
これで施策を講じて拡大を図る必要がある状況であるというのは言うまでもない。
このように、証券・金融分野と商品分野の一体化が実現したからといって、直ちにすべての課題が解
決されるわけではなく、あくまでも一つの通過点にすぎない。我が国のデリバティブ市場が現状では世
界規模のプレゼンスに乏しいなか、今後我が国経済や金融資本市場の規模に相応しい市場となるべく、
35
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
流動性を獲得していくためには、証券・金融分野と商品分野が一体となって課題解決の糸口を見出し、
施策を講じることこそが重要なのである。
以上
36
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
用語集
NO
項目
略称
名称
01
シカゴ・マーカンタイル取引所
CME
Chicago Mercantile Exchange (CME)
02
シカゴ商品取引所
CBOT
Chicago Board of Trade (CBOT)
03
COMEX
COMEX
COMEX(Commodity Exchange)
04
NYMEX
NYMEX
NYMEX(New York Mercantile Exchange)
05
ドイツ取引所
06
ユーレックス
07
インターナショナル・セキュリテ
ィーズ取引所
ISE
The International Securities Exchange (ISE)
08
ロンドン証券取引所
LSE
London Stock Exchange, LSE
09
インターコンチネンタル取引所
ICE
Intercontinental Exchangse, Inc. (ICE)
10
ニューヨーク証券取引所
11
ユーロネクスト
Euronext
Euronext
12
ナスダック
NASDAQ
NASDAQ(National Association of Securities Dealers
Automated Quotations)
13
OMX
OMX
OMX exchanges
14
日本取引所グループ
JPX
株式会社日本取引所グループ
(Japan Exchange Group, Inc.)
15
東京証券取引所
TSE
株式会社東京証券取引所
(Tokyo Stock Exchange, Inc.)
16
大阪取引所
OSE
株式会社大阪取引所
英訳名, Osaka Exchange, Inc.
17
東京金融取引所
TFX
株式会社東京金融取引所
Tokyo Financial Exchange Inc.
18
東京商品取引所
TOCOM
19
日本証券クリアリング機構
JSCC
株式会社 日本証券クリアリング機構
(Japan Securities Clearing Corporation)
20
日本商品清算機構
JCCH
株式会社日本商品清算機構
(Japan Commodity Clearing House Co.,Ltd.)
21
日本卸電力取引所
JEPX
一般社団法人 日本卸電力取引所
(Japan Electric Power Exchange,略称 JEPX)
22
ジャパン OTC エクスチェンジ
JOE
JAPAN OTC EXCHANGE 株式会社
英文名:JAPAN OTC EXCHANGE, Inc.(略称 JOE)
Deutsche Börse
Eurex
NYSE
Eurex(ユーレックス)
New York Stock Exchange (NYSE)
株式会社東京商品取引所(Tokyo Commodity Exchange,
Inc. 略称 TOCOM)
37
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
NO
項目
略称
名称
23
上海先物取引所
SHFE
Shanghai Futures Exchange (SHFE)
24
シンガポール取引所
SGX
Singapore Exchange (SGX)
38
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
図表一覧
(図表 1)世界の取引所における統合・グループ化とデリバティブの取扱高 ................... 5
(図表 2)世界の主要なデリバティブ取引所における収益構成(2015 年) ..................... 6
(図表 3)日本取引所グループの発足と市場の統合・再編 ................................... 7
(図表 4)総合的な取引市場に関する検討の経緯 ........................................... 8
(図表 5)政府方針等における総合取引所に関する主な記載 ................................. 9
(図表 6)世界の商品デリバティブ取引 出来高推移とその内訳 ............................ 10
(図表 7)世界のデリバティブ取引(全体) 出来高推移 .................................. 11
(図表 8)世界のデリバティブ取引 種目別割合推移 ...................................... 11
(図表 9)日本の商品デリバティブ取引 出来高推移 ...................................... 12
(図表 10)商品デリバティブ取引 主要市場の出来高推移(金) ........................... 13
(図表 11)商品デリバティブ取引 主要市場の出来高推移(白金) ......................... 13
(図表 12)商品デリバティブ取引 主要市場の出来高推移(ゴム) ......................... 14
(図表 13)商品デリバティブ取引 主要市場の出来高推移(ガソリン) ..................... 14
(図表 14)日本の商品デリバティブ取引 委託者数推移 ................................... 15
(図表 15)日本の商品デリバティブ取引 委託手数料推移 ................................. 15
(図表 16)日本の商品デリバティブ取引 業者数推移 ..................................... 16
(図表 17)日本の商品デリバティブ取引 外務員数推移 ................................... 16
(図表 18)東京商品取引所 収支状況(営業収益、営業利益、経常利益) ................... 17
(図表 19)東京商品取引所 「中期経営計画(2016 年度~2018 年度)
」 .................... 18
(図表 20)東京商品取引所 2016 年度事業計画における最重点施策 ......................... 18
(図表 21)証券・金融分野と商品分野の一体化 ........................................... 22
(図表 22)我が国のデリバティブ出来高推移(上場または取引所取引) ..................... 23
(図表 23)日経 225 先物(ラージ、ミニ)に占める海外投資家比率の推移 ................... 24
(図表 24)主要商品における投資家比率(2016 年 5 月 10 日現在の建玉ベース) .............. 24
(図表 25)商品デリバティブ取引業者の顧客数および出来高(2015 年 3 月期) ............... 26
(図表 26)金融商品取引法改正内容の概要(2009 年) ..................................... 28
(図表 27)金融商品取引法改正内容の概要(2012 年) ..................................... 31
(図表 28)農林水産大臣及び経済産業大臣との「協議等」の内容 ........................... 32
(図表 29)現在の状況(2016 年 6 月)................................................... 33
(図表 30)総合エネルギー市場と総合的な取引所との両立 ................................. 35
39
「総合取引所:再論」~早期実現にむけて~
索引
CBOT .................................... 4
高頻度売買(HFT) ....................... 25
CME ............................. 4, 13, 19
ジャスダック .......................... 7, 8
CME Clearing ........................... 19
ジャパン OTC エクスチェンジ .............. 19
CME グループ ......................... 4, 19
上海商品取引所 .......................... 12
COMEX ................................... 4
商品先物取引法 ....... 8, 27, 29, 30, 31, 34
Eurex ................................... 4
商品デリバティブ3, 9, 10, 11, 12, 13, 14,
ICE ..................................... 4
15, 16, 17, 18, 20, 21, 23, 25, 26, 27,
ISE ..................................... 4
29, 34, 35
JOE ................................ 18, 19
シンガポール証券取引所 .................. 19
JPX ..................... 7, 18, 23, 34, 35
総合エネルギー市場3, 18, 20, 27, 33, 34, 35
LNG 先物 ................. 3, 18, 19, 20, 34
電力先物 .............. 3, 9, 18, 19, 20, 34
Nasdaq .................................. 4
ドイツ取引所 ............................. 4
NYMEX ........................... 4, 12, 19
当業者 .............................. 18, 20
NYSE .................................... 4
東京証券取引所 ....................... 7, 23
OMX ..................................... 4
東京商品取引所3, 8, 10, 11, 12, 13, 14, 17,
OSE .................................... 25
18, 23
OTC .................................... 19
日本卸電力取引所 ........................ 20
SGX .................................... 19
日本証券クリアリング機構(JSCC) ........ 25
TOCOM .................. 18, 23, 25, 34, 35
日本商品清算機構(JCCH) ................ 25
大阪証券取引所 .......................... 7
日本取引所グループ .................... 7, 8
大阪取引所 ....................... 7, 8, 23
ニューヨーク証券取引所 ................... 4
金融商品取引法3, 8, 27, 28, 29, 31, 32, 33,
ユーレックス ............................. 4
ユーロネクスト ........................... 4
34
金融デリバティブ ................ 9, 23, 35
ロンドン証券取引所グループ ............... 4
原資産 ....................... 3, 4, 20, 27
次期 J-GATE ............................. 25
40