2016-1 - にっぽん蝶紀行

Jan. 1, 2016 2016 年初日の出:Happy new year at riverside of the Kako river.
太陽が顔を出す直前も、それなりに美しい。そして真紅の初日の出。やがて、加古川の川面へと
光の帯がのびて、キラキラと輝く。初日の出前、南側は休みなく稼働する工場の煙がたなびき、鉄
橋を渡るのは山陽電車で、北側は新幹線が走り抜けていく。
Feb. 25, 2016
播磨灘の夕陽
高砂市あらい浜風公園は、岸壁に沿った遊歩道から播磨灘を広範囲に眺望でき、左手は淡路島、
正面遠くに四国香川県、正面右手に姫路市家島とその背後に小豆島、そして右手はるか彼方に赤穂
岬が望める、そんな素敵な場所だ。ここでは夕陽が海面水平線へと沈む光景が小豆島と赤穂岬のあ
いだのごく狭い海域にのみ限られて観測でき、年に二度だけそのタイミングがあると知ってはいた
が、実際の日にちまでは把握できていなかった。おそらく春は 3 月の春分のころではないかと推測
するだけで確認できないまま数年が経った 2016 年 2 月、ようやくそのタイミングに遭遇できたので
記録しておく。
夕空がきれいなので久しぶりに訪れた 2 月 11 日、夕陽は小豆島の島影にかかる位置だが、水平線
へと沈む日が近いことが推測できた。2 月 13-15 日と雨が降るなど天候のよくない日が続いたが、
ようやく晴れ間が出た 2 月 17 日、海面近くになってわずかに雲が邪魔をしたものの、ついに水平線
へと沈む夕陽をとらえることに成功。左裾部分にわずかにダルマ夕陽の痕跡も記録。そして翌日、
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June 11, 2016
海面近くに雲がない、めったに
ない好天気となり、早く岸壁遊
歩道へと向かいたい気持ちをぐ
っと抑えて、自転車を止めた場
所から風力発電タワーと展望所
を含む景色を記録しておく。そ
して目にした播磨灘は、黄金色
の幅広い光の道が輝き、進みゆ
く漁船が好ましい近景を演出してくれる。雲一つない水平線へと沈みゆく真っ赤な夕陽は、海面に
接する部分でスソをひいて、いわゆるダルマ夕陽を形成してゆっくりと消えていく。再び公園の展
望所を低い位置から望むと、夕陽が沈み切った後なのに、太陽だけを望遠で眺めていた感触からは
意外にまだ空が明るく、ピンクを帯びた残照が美しかった。
Mar. 4, 2016
ツグミが増えた
昼間の散策でみかける野鳥のなかで、ツグミの個体数が増えている。いぜんとして人の気配を感
じるとすぐに飛び逃げるのが残念だが、カメラを固定して望遠でとらえてみる。最も多いのが、広
い草原に斜め前方を見つめるような独特の姿勢でポツンと佇む光景だ。樹木が茂る小高い部分に佇
む景色もいい。
Mar. 5, 2016
今年の初見チョウ:キタキチョウと初めて記録するシロハラ
一気に暖かくなって、今年初めて姿を見せてくれたのは越冬明けのキタキチョウで、隣家のパン
ジーを訪れて一心不乱に花蜜を吸う。厳しい冬を乗り越えた個体とは思えないほどにその黄色は新
鮮そのものでとても美しい。野菜畑からの帰途、ツグミの幼鳥かもしれない、とブッシュへと逃げ
隠れた野鳥を望遠撮影して調べてみると、どうやら筆者にとっては初の出会いとなるシロハラのよ
うだ。ここ数日で出会えた野鳥をリストアップしてみると、連日のように見るスズメ、キジバト、
カラス、ハクセキレイ、ヒヨドリに加えて、ジョウビタキ、カワラヒワ、ツグミ、ムクドリが加わ
り、さらに先日からヒバリ、シジュウカラの姿も見る。いっとき群れていたハッカチョウの姿が見
られなくなったが、どこへ行ったのだろうか。また、メジロもほとんど見かけない。
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June 11, 2016
Mar. 6, 2016
メジロに会え、ルリシジミも飛んだ
昨日みたシロハラにまた会えるかな、と雨が降らないうちにビデオカメラをもって散策。シロハ
ラの姿はないが、複数のメジロが飛び遊んでおり、当方の気配 に注意しながら少しずつ場所を移す
動きについていく。あまり近づくとすぐに飛ぶので望遠モードでしか撮れず、どうしてもフォーカ
スが甘くなる。しばしの追っかけっこを続け、植え込みのツバキの花蜜を吸い始める個体にターゲ
ットをしぼると、つがいで行動
を共にしているのか、すぐに新
たなメジロがやってきてラブラ
ブのツーショットかと思った
が、一羽は飛び去って残された
メジロの目はうつろ。メジロと
遊んでもどる際、足元で休んで
いたらしいルリシジミが美しい
スカイブルーを輝かせて飛び立ち、東風にのってそのまま消えてしまう。山地性のルリシジミを近
隣で見るのはきわめて珍しいが、その光景は脳裏にやきつけるだけでビデオ記録はとれず、児童公
園の広場で遊ぶハクセキレイやムクドリ、ジョウビタキなどの野鳥にカメラを向ける。ジョウビタ
キは、背中の対になった白紋をみせてくれるまで粘ると、期待通りに右 1 回転ひねりを披露してく
れる。ハクモクレンが花を開き始め、ミモザの濃い黄色が目立つ。
Mar. 7, 2016
越冬キタテハの求愛
ポカポカ陽気のもと、午後の散
歩中にすぐ傍を越冬テングチョウ
が飛んで見せてくれたことから、
ほかにもチョウに出会えそうな野
菜畑へといつものコースを変える
と、さっそくテングチョウよりも
大型のオレンジが濃いチョウが出迎えてくれる。キタテハのきれいな♀だ。日向ぼっこは長くなく、
すぐにレンゲが咲く休耕田へと飛んでいくので、追いかける。
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June 11, 2016
すると日向ぼっこをしていたらしい♂個体が飛び掛かり、2 個体がじゃれ合うように追飛翔を見せ
たかと思うと、追われていた♀個体がレンゲ草のあいだで急停止。♂も急降下をしてぴったりと体を
よせて求愛を始める。どうやら♀には♂の求愛を受け入れる気配がなく、それでも♂が強引に迫ると
「しつこいのは嫌い!」とばかり
に♀は飛び去ってしまう。恋の叶
わなかった♂は、しょんぼりと再
び日向ぼっこ。
Mar. 7, 2016
マエアカスカシノメイガ
例年よりも寿命が長く、光沢のある黄色を輝かせ続けるリュウキンカを記録し、散歩の帰路に
は、住宅裏手で妻が世話をする花畑で、この黄色も美しい水仙も撮影記録して、もういいだろうと
歩く目の前を小さな白い蛾が横切って飛ぶ。なんだろうと静止したところでビデオカメラのファイ
ンダーに認めたのは、マエアカスカシノメイガ。数年前に秋に撮影記録をしたことで名前を覚えた
蛾なのだが、帰宅後に確認すると成虫越冬をするとあり、納得。
Mar. 8, 2016
今日の目的はホオジロ
春の陽気にいつもより薄着での散歩の途上、ここ連日、2 羽仲良く飛び遊ぶホオジロを記録しよう
と今日もビデオカメラを携帯。すると、いつもよりずっと近いところで濃いオレンジを見せながら
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June 11, 2016
遊ぶ個体に出会うが、容易には接近できない。ホオジロが飛び逃
げたすぐ傍には赤の濃い桃の花が咲き、桜の開花かと、絵になる
部分を記録して植物名札をみると、ベニスモモ。散歩コースを折
り返してホオジロとの再会をねらうと、案の定、遊歩道沿いで遊
ぶ個体がズームアプ可能な場所に。やがて仲間が呼んだのか飛び
あがってブッシュ奥へと姿を消す。広場に群れていたスズメが、
いっせいに飛び逃げてスズメの成る樹を演出してくれるが、どの
個体も栄養を十分摂れているようで大型でふっくらとしている。
Mar. 16, 2016
今年もケリが
田園地帯にいるはずのケリが今年も海岸近くの工場地帯に遊びにやってきており、その証拠記録
を撮る。この鳥は飛び立つ瞬間の白い羽の色がきれいだが、なかなかそのタイミングでの撮影記録
がとれていなく、散策の帰路に
再会できればチャンスを待つこ
とにして先へと歩くと、少し開
花が進んだベニスモモにメジロ
がやってきている。羽ばたきな
がら蜜を吸う場面もビデオカメ
ラならではの記録だ。別の場所
で、木の枝先できれいな声でさえずるメジロもいて、あまりみられないお尻のふさふさとした黄色
い羽毛をみせてくれる。そして再び出会えたケリの動きにカメラを向けて、飛び立つ瞬間を待つ。
やっと念願の撮影記録をとった
あとは、広い草原で得意のポー
ズをとるツグミ君のとぼけた顔
を正面から狙ってみる。最後
は、もはや散り始めた白モクレ
ンのきれいな映像を記録して、
明日以降は暖かくなることを願
う。
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June 11, 2016
Mar. 20, 2016
ギフチョウ保護活動スタート
「加古川の里山・ギフチョウ・ネット」のギフチョウ保護活動第一弾は、ギフチョウの生息地に
保護を訴える看板の設置。雨上がりで足元を埋める落葉が濡れている雑木林への小道をたどり、
次々とコナラなどの立ち木に看板をくくりつけて回る。昨年の同時期は小学生の女の子 4 人が中心
となっていて、その華やかさから急な登り道も苦にならなかったが、むくつけき男ばかり 5 名では
その急坂がやけにきつい。辿る道中には越冬明けのテングチョウが多く飛ぶが、しばらくは無視の
連続。やがて新鮮なルリシジミが美しいブルーをきらめかせて登場すると、それを無視するものは
一人もいなく、路面にとまる姿にカメラを向けてひたすら開翅を願うのだが、ルリシジミにサービ
ス精神はなし。次いで現れたメス個体も開翅はしてくれないが、逆光で狙える位置に止まってシジ
ミチョウ特有の後翅すりすり動作をみせてくれ、その際にわずかに後翅翅表がのぞく。雑木林に陽
光が届くところでは越冬明けのヒオドシチョウが飛びだして、高い位置に何か吸汁対象を見つけた
らしく、吸汁に入るまでは翅の開閉を繰り返すが、やがて夢中で
吸い始める。いったん山を下りて次の雑木林へと移る段階で筆者
ら 2 名が離脱するが、その目の前にやはり越冬明けのアカタテハ
が舞い降りる。ただの日向ぼっこではないらしく、熱心に口吻を
伸ばして何かを吸汁し始めたらしい。ところで、10 分ほど前に神
戸ナンバーの車から降りた男性がギフチョウの発生地へと入り込
んで行ったのが気になって、確認目的で雑木林へともどり、タイ
ミングよく戻り下りる男性に話しかけてみる、すると「ここのギ
フチョウというチョウは、先ほど見た看板の黄色ではなくてオレ
ンジなんですか?」と。自然保 護には関心があって様子を見に来
たそうだが、チョウのことは詳しくないらしい。今たくさん目に
つくのはテングチョウでギフチョウは 4 月に入れば飛び始める こ
とを話し、最近の太陽光発電設備の設置は自然破壊が甚だしくと
ても許しがたい傾向だという点で意見が合う。最後にそのテング
チョウを、天狗の鼻がよく分 かる態勢でとまるのを待って撮影記録。
Mar. 24, 2016
ゴマダラチョウ越冬幼虫、オオムラサキもお目覚め
越冬明けのゴマダラチョウ幼虫の一部が目を覚まし、エノキの落葉から離れて動き始めたため野
外エノキの芽吹きを待っていた
が、ようやくその確認ができたと
ころで昨秋幼虫を回収した元のエ
ノキへともどしてみる。一時の春
の陽気から一転して寒風が吹きぬ
ける中、むりやり小枝へと移した
幼虫だが自力で動き始め、枝分れ
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June 11, 2016
部分に落ち着くかと思えばそうでもない。とりあえず強引に戻した 2 個体について、しばらく観察
を続ける。昨秋、友人に分けてもらったオオムラサキの越冬幼虫も目を覚ましそうなので、わずか
に新緑の芽吹きをみせるプランターに植栽しているエノキの幼木の
そばに置いていたら、1 個体が枝先部分までよじ登っている。オオ
ムラサキは 2010 年に母蝶に産卵させて以来の久々の飼育だが、水
揚げのよくないエノキを食樹とするチョウの飼育はまったく気が抜
けない。
Mar. 31, 2016
早春の里山へ
今年初めての里山歩き。目的は早春にしかみられないコツバメだが、薄雲りの天候で雑木林の入口
で見るのは越冬キタキチョウのみ。林道を奥へと進めばわずかの陽光を楽しむ越冬テングチョウが
多く飛び交い、なかには交尾をせまる♂個体を二・三度目にするが成就するカップルはゼロ。昨秋、
環境整備の間伐と下草刈りをした、広く開けた雑木林の林床に
は、ギフチョウが産卵してくれそうなヒメカンアオイの新葉が目
立つ。一方、林床にみられる古い葉っぱは、ここで成育した幼虫
の個体数が少なかったことを暗示していて、喜ばしいことではな
い。雑木林を出て、キタキチョウが飛び遊ぶ様子をカメラで追う
と、多くが止まることなく飛び続け、ようやくヒメオドリコソウ
の花蜜を求める個体がモデルとなってくれる。次いで飛び出した
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June 11, 2016
のが、まばゆいほどに紅色の輝きが美しいベニシジミ。そして、例年同じ場所で飛ぶ待望のコツバ
メのすばやい飛翔が目に入る。飛び立ってもすぐに近くの植物葉先などにとまってくれるので、じ
っと待てば撮影チャンスは訪れる。静止状態では絶対にみせてくれない翅表の美しいスカイブルー
が、飛び立つ瞬間、肉眼では感知できるのだが、逆光となってその色彩を記録はできず。越冬後の
ツマグロキチョウも、その赤味を帯びた濃い黄色でキタキチョウと明確に区別できるが、忙しい飛
翔を追い続けても、ついにとまることなくブッシュの奥へと姿を隠す。きれいなキタテハと、アカ
タテハも登場し、さらにはヒオドシチョウも姿を見せてくれるが、こちらは撮影記録の寸前で飛び
立たれて残念。
April 3, 2016
越冬幼虫 3 題
2015 年 12 月 18 日に観察したツマグロヒョウモンの終令幼虫は、その後全く見なくなっていて、
2016 年 3 月以降、山陽電車踏切そばのスミレの生育具合を見守っていたのだが、本日、野菜畑へと
向かう途上でようやく目覚めて花弁を食べる幼虫を確認。帰宅後にカメラをもって戻り、その撮影
記録をとる。花弁を摂食中の場面は記録できなかったが、どこで越冬していたのか、元気な姿を再
び見られて安心。一方、エノキの新芽が増えてその葉のサイズも
大きくなりつつあるが、ゴマダラチョウの越冬幼虫はまだ眠り続
けている。日当りのいい室内に持ち込んだ鉢植えのエノキの新葉
が伸びてきたが、もっと葉っぱが大きくなってからにしてほしい
のに、もうオオムラサキの幼虫が摂食を始めている。植栽のエノ
キは背丈が 60cm ほどの幼木で、新葉の数は極めて少なく、幼虫
にはむだのない摂食を期待したいが、まだ十分食べられる部分を
残したまま食いちぎるという習性があるのが頭痛の種。
April 4, 2016
ゴマダラチョウも摂食開始
エノキの葉が潤沢にある幼木がすぐ近くにあり、昨年回収したゴマダラチョウの越冬幼虫の残り 4
個体を小枝へと移す。エノキの枯葉からタッパウエアの壁面 にしっかりと糸掛けをしてへばりつい
ていた幼虫たちを、むりやりはがして移したのだが、すぐに目覚めて歩き出したかと思うと、いき
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なり新葉を摂食し始めるのには「寝ていたのでは?」と驚いてしまう。タッパウエア内で「早く食
べたいのに」とじっと我慢していたらしい。美味しい葉っぱを存分に食ってりっぱなチョウとなっ
て飛び立ち、次世代へと次々とつないでほしい。
Apr. 4, 2016
エサキ型が続けて羽化
朝、アオスジアゲハが羽化しているのに気づいたが、なんときれいなエサキ型。まだ翅が固まっ
ていないようなので急ぎ撮影記録を撮る。次いで、4 月 1-2 日と旅行に出かけている間に羽化してい
た個体を、太陽光でしっかり
美しいブルーになるように吹
き流しに入れてつるした際、
中室の紋が少し小さいがこれ
もエサキ型であることに気づ
く。近隣にエサキ型とハンキ
ュウ型の遺伝子をもつタイプ
が生息していることは分かっ
ていて、これまでにも記録があるが、その密度までははっきりつかめていない。アオスジアゲハは
夏の「青少年のための科学の祭典」のチョウアルバム作成用に飼育をしていて、あまり自然を傷め
なくても標本が確保できる方法だと慰めている のだが、この珍しいタイプは自然界へと戻してやる
つもり。
Apr. 5, 2016
ジャコウアゲハの生息地へ
昨秋、幼虫がまだウマノス
ズクサを摂食中という状況下
に、国土交通省による土手の
草刈りがすすめられ、生き残
った幼虫を回収して姫路のジ
ャコウアゲハ保護 団体に引き
取っていただいたが、本日、
生息地でウマノスズクサの芽生えを確認してから、草刈り後に探して見つけられたわずかの越冬蛹
から羽化した♂♀各 1 個体を飛ばしてみた。メス個体は元気よく飛んで行くが、♂個体は気温が高く
ないせいか元気がないので、近くのタンポポの花に止まらせる。16 時過ぎに、様子をみに訪れた際
にはいずれの個体も姿を確認できなかったが、何とか昨年のようなジャコウアゲハの舞を見たいも
のだ。
Apr. 5, 2016
ヒオドシチョウとギフチョウ
そろそろツマキチョウが飛ぶのではと、先日コツバメに会えた雑木林入口を再訪問。すると、い
きなりギフチョウが飛び立つ。路面のどこかで日向ぼっこをしていたらしいが、緩やかな飛翔で新
芽を吹く木々の梢部分をたどるようにして飛び去ってしまい、撮影記録を撮るタイミングはなし。
目的としたツマキチョウは飛ばず、コツバメが素早い飛翔で飛ぶが、あっというまに姿を見失う。
次いでヒラリと現れたオレンジ色のチョウがくぼみとなった路面へと降り立つので、何かと確認す
るとヒオドシチョウだ。遠目にも翅縁がそれほど傷んでいないのでメス個体だと分かる。ゆっくり
とカメラアングルのいい位置へと移動する間もじっとしており、三脚をセットすることもできるの
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で、じっくりとアングルを変えながら存分に撮影記録をとる。すっかり満足をして三脚をかたづけ
ようとしたその時、再び足元のすぐ近くからギフチョウが飛び立つ。いつのまにか再び路面かどこ
かに舞い降りて日向ぼっこ をしていたようだが、このときも近場にとまることなくランダム飛翔で
遠くへと飛び去ってしまう。例年、この場所でギフチョウに出会うことはなく、今年は発 生個体数
が多いのかもしれない。http://chokikoh.net/2aosujiageha.pdf
Apr. 6, 2016
エサキ・ハンキュウ複合型
2016 年 4 月 4 日に羽化したアオスジアゲハが吹き流し内で翅を全開させた状態で休息しているの
をみて、前翅第 2 紋のすぐ横に小さな紋があるのに気づき、これはエサキ型とハンキュウ型の複合
型という珍しい変異であることを知る。吹き流し内では容易に翅を広げた状態でおとなしくしてく
れないため、部屋内へと出して窓際のカーテン上で、ようやく半開状態の記録をとる。あらためて
羽化後の記録をよく見れば、確かに裏面からも第 2 紋が 2 個あるのが分かる。高砂市でのエサキ
型、ハンキュウ型に関する筆者の記録を以下の「にっぽん蝶紀行」に記載しているが、両型の複合
型は初めての記録となる。
雨の翌日、薄日が差す午前中にジャコウアゲハの生息地を確認。スイバが多い土手裾野ではあい
かわらずきれいなベニシジミが飛び遊ぶが、この草地にジャコウアゲハの姿はなく、先日、飼育羽
化させた♂♀を放した、黄色いタンポポが多く咲く用水路を隔てた児童公園へと踏み込んで探してみ
る。するとオス個体がひらひらと飛ぶので、そのあとを追う。先日飛ばした個体かどうかを確認す
べく追い続けると、ようやく草地路面で翅をひろげて休息態勢を
とるので、急ぎ三脚にセットしたビデオカメラで記録をとる。ズ
ームアップをして分かるのは、この個体が先日のオスではなく、
この現地で羽化した新鮮個体だということ。なぜなら、放した個
体は尾状突起が一部欠けていたから。どこかで蛹として越冬して
いたという証で、生息地のウマノスズクサはあちこちに新芽を伸
ばしており、あとはメス個体と出会って世代をつないでくれよと
願う。
Apr. 8, 2016
ベニシジミの美を追求
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June 11, 2016
ベニシジミの翅表が太陽光線を受けて輝く様をじっくりと
ビデオ記録してみた。この美しい金属光沢の輝きは、ヨーロ
ッパに広く分布するベニシジミの仲間にもみられるもので、
日本産の美しさも決して負けてはいないと思う。ビデオの記
録は YouTube にアップしておいた。
https://www.youtube.com/watch?v=rs7O7B8V71o&feature=youtu.be
Apr. 9, 2016 えっ!どこから?
ベランダから室内へと移しておいたエノキの幼木を植栽し
た鉢内に、自然に種が飛んで生えているスミレが数株あるの
だが、その小さな葉裏に黒っぽい幼虫がいるのに気づく。友
人から譲り受けたオオムラサキの越冬幼虫が 2 頭行方不明と
なっており、こんなところにいたのかとよく見ると、体長わ
ずか 12mm のツマグロヒョウモンの幼虫だ。近隣ではまだツマグロヒョウモンは飛んでいなくて母
蝶が産卵したとはとても思えなく、とすれば、昨年か らこの大きさで鉢内のどこかに潜んで越冬し
たことになる。鉢を部屋に取り込んだ時から少なくとも鉢内にその姿を見たことはなく、幼虫は土
の中にもぐって冬を越したのだろうか。
Apr. 9, 2016 ギフチョウ観察会
薄雲りで気温が適度に上昇して風も強く吹かない、絶好のギフチョウ観察会。ときには 3 頭による
追飛翔も展開して、初めてギフチョウを見るというご婦人も美しい春の女神をじっくりと観察され
る。竹内さんが見つけて教えてくれた交尾個体は高い位置から下りて来ず。筆者にとっては初めて
の桜の花蜜を吸うシーンも遠目ながら撮影記録がとれる。その後も、ギフチョウの姿を何度も見る
がなかなか止まってはくれなく、止まったとしてもカメラで近づく人の動きに敏感で、なかなか撮
影のチャンスをくれない。この観察会のしょっぱなにはクロコノマチョウがみられ、初参加のご婦
人方は、チョウの姿にきづくまでかなりの時間を要す。途中の登り道にはアオダモの白い花が目立
ち、コバノミツバツツジもほぼ満開で逆光に透ける濃いピンク色が鮮やか。
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June 11, 2016
Apr. 9, 2016 その他のチョウ
ギフチョウの撮影の合間にも数種のチョウが飛び、ギフチョウが止まれば絵になるスミレにはキ
アゲハしかやってこなく、桜の花を訪れたヒオドシチョウや、アカタテハ、足元で忙しく飛び交う
ミヤマセセリも記録しておく。
山を下りてコツバメが好む林道入口へと土手道を歩くと、ツマ
キチョウのメスがタネツケバナの白い花を訪れるので、急ぎ証
拠の撮影記録を撮る。別ルートで山を下ったメンバーが、今日
はコツバメには会えないというけれど、いやそんなはずはな
い、といつもの小道へと踏み込むと飛び出すのは紛れもないコ
ツバメだ。止まっていた葉が大きく揺れて飛び立った瞬間に翅
表が輝くが、撮影記録はとても満足のゆくものではない。ツバ
メシジミのメスを追ってみると、すでに右後翅が欠けており、青鱗粉の発達度も弱い個体だが、春
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June 11, 2016
型特有の後翅の白化紋とわずかな赤紋はそれなりに美しい。コナラの新芽に産卵行動を示すのはど
うやらトラフシジミのようで、やがて疲れたのか下草へと降りてきて休憩し始める。新たに登場し
たコツバメは小さすぎてフォーカス合わせに苦労する。妻が待
つ車へと戻ると、真上の桜にルリタテハがやってきており、蜜
を堪能したのかブルー色が好みなのか、車のボディーに執着す
るかのようにボンネット上で翅の開閉を繰り返す。晩秋に発生
して越冬した個体なのに新鮮なルリ色がとても美しい。この個
体はおなかが大きく、メスだと思われたのでつて帰り、サルト
リイバラとともにタッパウエアに入れておいたところ、60 卵も
産んでくれた。20 卵をオオムラサキの越冬幼虫をわけてくれた友人に提供し、残りの 40 卵を飼育
して 39 頭を無事にチョウにまで育て上げた。母蝶は元気なうちに、場所が違うが野外へと飛び立た
せ、その子供たちのいくらかも野外へと放してやった。残りはかわいそうだが、外国の蝶友との交
換標本とし、前翅のルリ帯が特に美しい個体と、同じく前翅にわずかにルリ紋が出た珍しい変異個
体も学術標本とした。
Apr. 10, 2016 ギフチョウ継続観察
昨日と同じ山頂部でのギフチョウの継続観察を目的として山登り。途中、越冬明けのヒオドシチ
ョウが出迎えてくれるのでしっかりと撮影記録をとってあげる。気温は低くはないのに、陽射しが
ほとんどないせいか、飛び始めるギフチョウはほとんど同じ新鮮メス個体。昨日訪れてくれた桜の
咲く方へと誘導するが、日向ぼっこをするのに好みの場所があるようでなかなか思うように飛んで
くれない。桜の木の周りで粘っていると、ややくたびれた♂個体が現れてしばらくはあちこちと場所
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June 11, 2016
を変えながら日向ぼっこをしていたのだが、やがてマスミレの花で蜜を吸い始めるので急ぎカメラ
を向ける。いつものことで決して長居をしてくれないが、うれしいことに次いで桜の花へと転飛し
てくれて本日続けて山登りをしてきた甲斐あり。登山を趣味とするというご夫婦が登ってこられた
ところで、ギフチョウというきれいなチョウが日向ぼっこをしていることを紹介してあげたのだ
が、すぐに高く舞い上がり頭上高い位置の桜の花で吸蜜し始める。再び足元に美しいメス個体が止
まるが、ご夫婦は次の登山コースへと歩き始めているのでもう
声はかけない。ギフチョウ以外にはキアゲハが複数頭飛び交う
がいずれも破損個体。昨日もいたベニシジミに今日はカメラを
向けてやり、昨日みなかったヒメアカタテハが現れてタンポポ
の蜜を楽しんでいる。山を下りる途上では、あいかわらず忙し
くメスを探してミヤマセセリのオスが飛び回り、駐車場まで下
りると、ツバキの落花と桜吹雪がきれいなコントラストを形成
している。
Apr. 12, 2016 春山尾根筋のチョウ
恒例の春山:標高 132mの岩山へ単独登山。岩だらけで続く急峻な山道の距離がいくらか知らな
いが、休憩することなく上ると 10 分でピークの尾根道に到着。昨日から花冷えとなり最高気温が
15℃という予報通りで昨春よりチョウが少ないが、いきなりヤマツツジにキアゲハがくる。ビデオ
カメラの準備をしていなく、絶好のシーンを撮り逃がす。ルリシジミやアゲハも飛び出すが路傍に
満開のコバノミツバツツジに止まってはくれない。ツマグロヒョウモンのきれいな♂がのんびりとテ
リ張りをしているが撮影は後回しで、キアゲハの撮影に注力。最初にツツジに止まった個体は翅の
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June 11, 2016
傷みが哀れ。尾根筋を一通り歩いてキアゲハが休息しそうなポイントを探して待つと、期待通り新
鮮な個体が翅を全開して休憩し始める。この撮影記録がとれたことで本日ここにきた目的を達成し
た気分で、その後は翅の傷んだ個体の記録ばかり。その他のチョウも記録しておこうと、まずはオ
レンジがきれいなツマグロヒョウモン。陽光でキラリと輝く翅表の感じを撮り込めないかと、それ
ばかりを考えていたのだが、しばらく経って、このチョウは裏面の赤桃色がきれいなので、そうい
う角度からの記録も撮っておこうかとあらためて迫った時、翅表の先端部 2 個の黒紋が異常に太く
濃いのに気づく。明らかにこれまでにみたことがない変異個体だ。11 時を過ぎて気温が上がるとヒ
オドシチョウが現れる。軽く昼食をとり終える頃になると、ヒオドシチョウの個体が 3-4 頭に増え
て、早くからテリ張りをしているツマグロヒョウモンの♂と縄張り争いが始まったりする。今春初見
となるアオスジアゲハも現れ
て、一定の高さで旋回を繰り返
し、ときにはアゲハやヒオドシ
チョウ、キアゲハなどとの追飛
翔が展開する。ミヤマセセリ、
ツバメシジミの♀、コツバメも
みるが撮影チャンスがないまま
山を下りる。登りの途中では気づかなったヒメハギが岩場に今年もいっぱい咲いていてきれいだ。
降り立った草地には、本年初記録となるヒメウラナミジャノメの新鮮オス個体が、独特の 2 段階開
翅動作を繰り返す。
Apr. 12, 2016 セグロセキレイ発撮影
チョウとの出会いを求めて自転
車を踏む途上、畑地に降り立った
セグロセキレイに気づいて初めて
の撮影記録をとる。ついついホオ
グロセキレイと呼ぶのがふさわし
いのに、と思ってしまう。
Apr. 12, 2016 シルビアシジミの発生を確認
この春はギフチョウなどの発生が早いので、シルビアシジミの生息地へと立ち寄ってみた。ミヤ
コグサがじゅうぶん生育しているのを確認して土手の草地を歩くうち、鱗粉の薄いシジミチョウが
飛ぶので追いかけると、シルビアシジミのスレた♀個体だ。オス個体の発生はどうかと注意深く探
すと、飛び出したのは比較的新鮮度を保った状態のオス。オス個体の発生はどうかと注意深く探す
と、飛び出したのは比較的新鮮度を保った状態のオス。ちょっと太陽が雲に隠れると、もう開翅し
てくれない。陽光がもどると新たなオス個体も混じって 2-3 個体が元気よく飛び始めるので、1 個体
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に絞って小さな青色を見失わないようにとついて回ると、種名が分からないスミレの花蜜を吸うシ
ーンが初記録できる。ちょっと太陽が雲に隠れると、もう開翅してくれない。念のために吸蜜して
いたスミレのみの記録をとって「日本の山野草:ポケット辞典」(NHK 出版,1998)で調べ、シロ
スミレだと思われたが、葉柄と葉の長さの比の違いからアリアケスミレだと判定。次に蜜を求める
スミレもアリアケスミレだ。ズームアップをするまもなく飛び立ってしまうが、その瞬間のきれい
な翅表の色がビデオ記録から切り取れる。黄色い花は広畑政巳・近藤伸一共著の「兵庫県の蝶」
(岩峯社, 2007)に記載のあるニガナ:Ixeridium dentatum ではなくタンポポの仲間で、カンサイ
タンポポのようだが筆者にとっても初記録。この土手では、ベニシジミやモンキチョウも飛び、モ
ンキチョウより少し大きいくらいのツマグロヒョウモンの矮小メス個体もみる。越冬前に食草のス
ミレが野焼きにあって少なかったのだろうか。それでもよく無事にチョウにまで成育できたもの
だ。
Apr. 14, 2016 ルリタテハが産卵
4 月 9 日に連れ帰ったお腹がでっぷりと大きなルリタテハをサ
ルトリイバラ(サンキライ)の新葉と一緒にタッパウエア内に
閉じ込め、スポーツドリンクを水で 2 倍に薄めた液を与えて様
子を見ていたが、5 日を経過した本日、実に 60 個という大量の
産卵をしてくれている。角度を変えると三段重ねという、サカ
ハチチョウの産卵習性を思わせる離れ業がくっきりと観察でき
る。野外では、このような集中産卵はありえないことだが、これらが有精卵かどうかも実は今の段
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階で確信は持てない。この母蝶は、車のボンネットのブルーに執着する行動を観察できたが、一気
に気温が上がった野外へと放すと、元気よく飛び立っていった。
Apr. 16, 2016 ギフチョウ観察会-2
2016 年 4 月、二度目のギフチョウ観察会。天候はまずまずなのに飛ぶギフチョウは 2-3 個体で、
新鮮度が落ちている元気のないメス個体に交尾嚢があるのかどうか、はっきりとは確認できず。ベ
ニシジミも新鮮度が低く、この
あと産卵行動を示すことでメス
個体だったと分かる。アスファ
ルト登山道をゆっくりと歩いて
下る途中、妻が路傍に奇妙なキ
ノコを見つける。Web 検索で、
優秀な食用キノコの一種でアミ
ガサタケだと分かるが、ヒドラ
ジンを含むので生食は避けるべきだと。でもこの異様な姿形ではおよそ食べる気にはならない。妻
は鮮やかな色で開花しているノ
アザミも見つけるが、山頂部で
みたカラスアゲハが来てくれる
と絵になる花だ。染み出し水が
小さな滝となって落ちる水場近
くに、自然発生なのかどうかジ
ュウニヒトエがひっそりと美し
い色で開花しているのを再び妻
がみつける。山を下りた駐車場
傍の高い位置で、ほとんど花の
散った桜の蜜を求めるアゲハチ
ョウが目をひき、ビデオカメラ
で追い続けると首が疲れてしま
う。
Apr. 16, 2016 訪花大サービス
ギフチョウ観察会の帰りにシルビアシジミの生息地に立ち寄り、先日のタンポポがカンサイタン
ポポであることを確認し、ついでに土手斜面を歩いてみる。オス個体の飛翔をみつけて付きまとう
と、黄色いニガナで蜜を吸い始めるので急ぎ撮影しようと迫るとすぐに飛んで、記録が間に合わな
い。ニガナの吸蜜はすでに知ら
れてはいるが、できれば映像記
録をとりたく、しつこく追い続
けると、今度はアリアケスミレ
に執着。先日記録できたばかり
だが、飛ばれないうちとビデオ
カメラでフォロー。いい角度を
求めて近づくと飛び立たれてし
まうが、幸いにもニガナで吸蜜し始める。次いでいきなりヒメハギで吸蜜するが、これにはカメラ
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が間に合わず悔しい。それでもこの個体は花蜜を求めて飛んでいるように見えるので、執拗につい
て回ると、カンサイタンポポにも立ち寄る。この花での滞在は短く、証拠記録をとるのが精いっぱ
いで、さらに追っていくと、悔しい思いをしたヒメハギへの方へ
と飛んで葉っぱに止まる。蜜を吸ってよと願うと、うれしいこと
に花へと移動し、明らかに口吻を伸ばして蜜を吸っている情景が
記録できる。結局、このオス個体はアリアケスミレ、ニガナ、カ
ンサイタンポポ、そして初記録となるヒメハギと、短時間で実に
4 種類の花蜜を求めるシーンの提供という大サービスをしてくれ
た。
Apr. 19, 2016 朝の児童公園で
ジャコウアゲハが生息する児童公園を訪れると、タンポポが咲く草地は朝露でしっぽりと湿って
いてツグミとムクドリが陽だまりに佇んでいる。キリシマツツジが少しだが開花し始めているの
で、このあたりでジャコウアゲハが日向ぼっこをしているのではと探すと、早起きのヤマトシジミ
が翅全開で身体を温めている。この公園で、ジャコウアゲハは朝陽がよく当たるヒバの樹にも好ん
でとまる習性があるので探す
と、後翅の傷んだアゲハがこれ
また翅全開で日光浴中で、背景
には土手上の県道が通勤の車で
渋滞しているのを撮り込む。ジ
ャコウアゲハのいそうな疎水べ
りを歩くと、花の終わりかけた
ユキヤナギの周辺でいきなりジ
ャコウアゲハのオスが飛び出
す。その飛翔を追っていくと、
クスノキの高い位置まで飛びあ
がり、梢部分を縫うように飛
ぶ。どうやら日当りのいい葉上
で休息しているメス個体を探し
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て回っているようだ。そこでじっくりと探してみると、残念ながらオスではあるが、高い位置で朝
陽を受けて始動待ちの個体がみつかる。結局ジャコウアゲハ♂を 2 個体確認できたが、土手の草むら
でどんどん生育するウマノスズクサに、まだ産卵はされていないようだ。
Apr. 19, 2016 ゴマダラチョウの幼虫
ゴマダラチョウの越冬幼虫を回収して、再び戻したエノキで確認できるのは 1 個体だけとなって
いるが、以下に示す観察画像記録が示すように順調に成育している。終令になると、緑が多くなっ
たエノキのどこに陣取っているのかを見つけ出すのに時間がかかる。
Apr. 19, 2016 サトキマダラヒカゲ
サクラの花が終わった春の雑木林まわりで、すばしっこく飛び交う褐色のチョウはサトキマダラ
ヒカゲ。翅表のオレンジを帯びた色が目立つとヒオドシチョウかと勘違いをするが、じっと待って
いるとやがて樹肌に止まってくれる。新鮮個体だと、裏面の胴体部分にきれいな緑色の房毛がみえ
る。後翅の基部に並ぶ 3 個の紋が、それぞれが直線状に離れずに並ぶのがサトキマダラヒカゲで、1
個だけが直線から外れる紋をもつ
のが類縁種のヤマキマダラヒカゲ
だと区別される。カメラで接近し
すぎるとすぐに飛ぶが、やがてす
ぐ近くの別の樹に止まり、しっか
りと撮影モデルを務めてくれる。
静止画像記録では表現しにくい
が、風で揺れる翅の鱗粉が、太陽
光の当たり具合によって微妙に金色に輝いたりするのにはハットさせられる。このチョウは撮影者
の汗ばんだシャツにとまって汗を吸ったり、ときには腕や手指上で素肌に口吻をのばして汗も吸う
愛嬌者だ。
雑木林を出て人工湖沿いを歩くと、全く人怖じをしないヌートリアが足元すぐ近くで草を食って
いる。加古川流域では田植えをしたばかりの稲の苗を食害した
り、土手に穴をあけて堤防の決壊をまねきかねない害獣だとして
駆除の対象種になっているが、この人工平荘湖ではどのような対
応となっているのか、目の前でパンくずを与える者もいて、その
仕草は間違いなく可愛いけれど、ちょっと複雑な気分。健康志向
で平荘湖の湖畔を散策する人を多くみるその遊歩道沿いでプラタ
ナスにぶらさがる実に独特の風情があり、小さいものはヤマモモ
のように美味しそうにみえるものもある。
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Apr. 20, 2016 メス個体を確認
ジャコウアゲハのメス個体が確認できた。きわめて新鮮な個体で、カンサイタンポポの花蜜を求め
て次々と場所を変えて飛ぶのをフォローすると、ときには翅全開姿勢もとってくれる。辺りを飛び
交う 3-4 頭のオスにとっては
待ちに待ったメスの登場なの
に、なかなかアタックするも
のがいないなあと観察してい
たら、やっと飛びかかる♂が現
れる。しかし残念ながらあえ
なく拒否されて、目の前での
交尾は成立せず。キリシマツツジの開花が進むところでは翅の傷んだメスが休息をしており、ここ
での世代継続に心配はなさそう。
Apr. 20, 2016 ルリタテハが孵化
越冬ルリタテハのメスはうれしいことに交尾済みであった。産卵から一週間となる昨日(2016 年
4 月 19 日)、卵が鉛色に変化して孵化の兆候を示していたが、本日(4 月 20 日)の 16 時過ぎにい
っせいに孵化が始まってい
る。合計 60 個の産卵数で、そ
のうちの 20 個を友人に提供
し、なお残る 40 個という飼育
はルリタテハでは初めての多
さだ。機会あるごとにサルト
リイバラの新葉の調達準備を
してきているが、タッパウエ
アの容器内へと移動して動く幼虫をそっと新葉へと移す作業には気を遣う。例えば日本蝶類生態図
鑑(Ⅱ)には孵化した幼虫は卵殻のほとんどを食べるという記載がみられるが、必ずしもすべての
個体でそうとは限らないようだ。
Apr. 21, 2016 オオムラサキ幼虫
暖かい日が続いたかと思うと急に気温が下がったりするせい
で、オオムラサキの幼虫の活動が活発化しないが、1 個体だけ
が 5 令となっている。体長は 28mm。上図の奥に見える個体は
越冬時の褐色のままの 4 令で体長は 12mm。小枝の先端部分で
少し葉っぱを食ってから休息している 4 令幼虫もいる一方で、
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エノキの根元でまだ眠り続けている個体もいる。おそらく成長が早い個体は♂で、遅いのが♀だと思
われる。
Apr. 22, 2016 午後の公園周辺
ジャコウアゲハの生息地にある公園で午後のチョウ観察。ツツジはまだ 3 分咲き程度で、時折ア
ゲハとアオスジアゲハが近くまでやってくるが蜜を吸うことなく飛び去る。ヒバの梢部分に休んで
いたアオスジアゲハにちょっかいを入れて飛び立たせるおせっかいな個体もいる。ドウダンツツジ
周りにジャコウアゲハがいないかと向かう途中で、もう眠りにつく準備を整えているかのように休
息中のアオスジアゲハを見つける。さて、そのドウダンツツジだが、期待通りオス個体が転々と移
動しながら吸蜜を楽しんでい
る。動きが速くてフォーカス合
わせが間に合わない。メス個体
がいないので、産卵具合を確認
すべくウマノスズクサの生える
草むらへと向かうと、遠目にも
紅色が鮮やかなベニシジミが目
立つ。結局、ジャコウアゲハの産卵は確認できなかったが、目の覚めるような美しいベニシジミに
出会えて満足。
Apr. 23, 2016 シルビアシジミ:記録いろいろ
ツマキチョウとの出会いを期待して訪れたフィールドで、意外なことにシルビアシジミを初めてみ
る。既知の生息地はここから約 300m は離れており、ミヤ コグサが 300m ほど連続して群生する草
地ならともかく、途中にミヤコグサが全くない離れたこの場所まで飛んできたのは、筆者の観察デ
ータでは最も遠出をした記録となる。この個体の後翅にみるヤマトシジミとの区別点となる縦に並
ぶ黒紋の下側が横長でやや太い。しばらく粘って見せてくれたわずかな翅表のブルーは相変わらず
美しい。この個体の黒紋が少しだけ変わっていることは、300m ほど離れた位置の既知生息地で確認
できた個体の撮影記録と比べれるとよく分かるが大したことではない。昼食後に、別の生息地で吸
蜜シーンを期待して、花に止まりそうな飛翔個体を追ってみる。路面で開翅する個体は多いが、な
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かなか花や草葉には止まらない。やがて草の種部分で休息する個体がみつかるが当然吸蜜の対象で
はない。花に止まりそうな飛翔をみせる個体を探して追い続けると、花が終わったカンサイタンポ
ポの綿毛部分にとまる。よくみると口吻を伸ばして蜜を吸っているようだ。風に揺られながら、き
れいな翅表の輝きも見せてくれるのがうれしい。次の吸蜜はミヤコグサ。土手の斜面にはニガナの
黄色い花が多く、その周囲を飛ぶ個体を追うと、願いどおり吸蜜し始める。先日に初記録となった
ニガナだが、この日の個体は十分長い時間をかけて蜜を吸ってくれていい映像記録が撮れる。この
草地にはヒナギキョウも多く、この花で吸蜜してくれると新記録の追加となるわけで、そういう個
体はいないかと注意してまわると、いる。すぐにビデオカメラを向けるが、ズームアップで迫る間
もなく飛び立たれる。それでも証拠記録は確保できており、さらにヒナギキョウにターゲットを絞
って歩き回る。やがて遠くにヒナギキョウにとまる個体が目に入り、ファインダーに 小さくしか見
えない段階から撮影モードで近づく間もなく、左中央部に写っている別の個体が近くまで飛んでき
て、吸蜜中の個体が花から離れていってしまう。これも証拠記録でしかないが、吸蜜植物を 1 種追
加できたことが重要。本日、この草地ではカキドオシ、カラスノエンドウ、タツナミソウなどの草
花も確認でき、これらの花蜜を求めるシーンも期待できるかもしれない。
Apr. 23, 2016 ベニシジミが産卵
ベニシジミがスイバに産卵する
場面に遭遇。卵は 1 個だけだ
が、何とか記録できている。
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Apr. 23, 2016 ヒメウラナミジャノメなど
ツマキチョウの観察はできなかったフィールドで、今年初めて見るコミスジが特徴ある飛翔で春の
陽気を楽しんでいるが、撮影記録に好ましい止まり方をしてはくれない。セイヨウタンポポが多い
草地を新鮮なヒメウラナミジャノメが一目 5-6 頭飛び交い、静止個体をじっくりと眺めるとごく普
通種なのに実に美しいチョウだ。セイヨウタンポポに飛来して吸蜜し始めるコチャバネセセリを撮
影していると、ボクもいれてと割り込んできてヒメウラナミジャノメが写り込む面白い光景も展開
する。あらためてコチャバネセセリ単独で吸蜜する場面を探すと、オニタビラコを訪れた個体がい
きなりアクロバティックな翅の全開姿勢をとってくれるが、位置が低すぎて下方からの撮影ができ
ない。本種の新鮮個体は太陽光
の当たり具合で金色の輝きを見
せる。コチャバネセセリにカメ
ラを向けている際、セイヨウタ
ンポポを次から次へと吸蜜して
飛ぶアゲハも目に入るが、こう
した撮影チャンスを存分にくれ
る個体は総じて翅のどこかが傷
んでいる。場所を転じた草地では、ツマグロヒョウモンの母チョウが産卵場所を探しているが、本
種の卵は食草以外の場所に産み落とされることが多く、孵化した幼虫は端から食草を探して移動す
るという試練を受けることになる。
Apr. 24, 2016 シルビアシジミ:粘り勝ち
自画自賛の最高傑作というべき会心の記録画像を冒
頭にアップして話をすすめよう。
シルビアシジミがヒナギキョウに口吻を伸ばして夢
中で蜜を吸う光景である。この個体は実に 3 分以上と
いう異例の長さでこの花とともにモデルとなってくれ
たのだが、その瞬間は劇的なタイミングで訪れたのだ
った。現地を歩き回って 2 時間経ってもヒナギキョウ
を訪れてくれる個体がいなく、どこからか聞こえてく
る正午のチャイムが、もうあきらめて帰ったらと催促
する。それでも足元でチラチラと飛ぶ個体に期待をかけながら妻が待つ車の方へと歩き始める。シ
ルビアシジミが飛び交う草地もあと数メートルでヒナギキョウの花はもう数本しかない。そんな時
点でミヤコグサに止まりそうな飛翔を見せる個体が現れ、見失わないようにフォローすると、いき
なり目の前のヒナギキョウに止まってくれるではないか。しかもすぐには飛ばず、風に揺られなが
ら留まってくれる。小さなファインダー越しには口吻を伸ばしているかどうかが確認できないが、
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アンテナの動きから期待度は大。そしてあとで確認できて大感激という次第。
昨日、ヒナギキョウに止まる個体を初記録しながらも小さな証拠映像だったことから、何とかも
う少しまともな映像を撮りたいとの思いで現地に到着したのが 午前 10 時。そこで驚いたのが、ヒ
ナギキョウが全くまだ開花していなかったこと。ヒバリがすぐ目の前を旋回するのでその撮影で気
を紛らせ、ちょっとばかり肌寒い風がふきぬける草地で、風をよけるように開翅するシルビアシジ
ミを探してカメラを向ける。二番目の個体はやや新鮮度が落ちる個体で、同じような開翅姿勢なの
に微妙に色調が異って見える。すぐには開翅しない気位の高い個体もいるが青鱗粉がいくらか発達
したメスは惜しげなくそのブルーをみせてくれ、やがてミヤコグサの根元近くへともぐりこんで産
卵行動をみせる。産みつけられた卵がはっきりと確認できるが、この広い草地で最初から卵を見つ
けるのは容易ではない。11 時近くになって気温が上がったせいか、ヒナギキョウがようやく開花し
始め、ミヤコグサで吸蜜するシルビアシジミを見るようになる。どうみても吸蜜源としてはミヤコ
グサが優先するようで、混生するヒナギキョウは決して数が少ないわけではないのにほとんどスル
ーされてしまう。オス個体の探雌飛翔と紛らわしいが、花蜜を求めるような飛翔をする個体を探し
て追うと、初めてコメツブウマゴヤシの黄色い花にとまる。これは、シルビアシジミの訪花吸蜜植
物種がまた追加できるという予想外のうれしい展開。その後、ミヤコグサで吸蜜する個体は何度か
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記録し、この花に来てよ、とヒ
ナギキョウのアップ映像をとっ
たりして粘り続け、最後の最後
で目的を達成するという、劇的
な半日であった。
Apr. 26, 2016 黒系アゲハ
ツツジの花があちこちで咲き、この花に最もよく似あう黒系アゲハが飛び始めてもいい季節。そ
こで例年、黒系アゲハとの初の出会いの場にしている岩山の尾根道へと登ることに。約 40 分のサイ
クリングで到着した登り口では青鱗粉をもつツバメシジミのメスがカラスノエンドウ周りを飛んで
いる。産卵目的だろうが、オニタビラコで吸蜜したかと思えばすぐに近くの葉上で休憩する。黒系
アゲハではこの春初見となるナガサキアゲハのオスが頭上を横切り、足元ではヒメウラナミジャノ
メが遊んでいるのを横目にみながら登り始めるが、尾根筋までひたすら急峻な岩道でも、頑張れば
10 分で到着できると分かっているのでさほど苦にはならない。万歩計で 8 千歩だから約 60mか。
たどり着いた尾根道沿いは、4 月 12 日の訪問時に辺り一面に咲き誇っていたコバノミツバツツジ
はもちろん花といえるものは何もない。それでもツマグロヒョウモンのオスが 2 か所に分かれてテ
リ張りをしており、アゲハ、キアゲハ、アオスジアゲハが競うように飛び交っている。さすがに飛
び古した個体が多いが、意外に新鮮な個体もみる。花がないため映像記録がとれなかったが、尾根
筋を蝶道にして飛ぶクロアゲハとカラスアゲハのいずれも新鮮オス個体を観察して山を下りる。そ
の途中、太陽光を受けて映えるヤマツツジが疲れをいやしてくれる。
Apr. 26, 2016 シルビアシジミのいるフィールドへ
岩山で黒系アゲハを確認した後、シルビアシジミの生息フィールドへ転戦。16 時過ぎの時間帯だ
と違った挙動がみられるかも、と考えての訪問だが、飛び交う個体数もその飛び方も、ときたまミ
ヤコグサで吸蜜する行動も、午前から昼過ぎにみる挙動とさほど変わりはない感じ。当然だが日々
新鮮度はおちている。この個体、ニワゼキショウのそばを飛ぶので吸蜜を期待したが完全に無視。
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この場所では 200m ほどを行ったり来たりして観察するのだが、到着した時とは違って、午前中に
比べてミヤコグサで吸蜜する個体が多い印象で、開翅しながら蜜を吸うシーンを期待して歩くう
ち、交尾個体に出会う。交尾個体は 4 月 23 日にも観察記録をしていたのだが、当日は吸蜜植物のこ
とばかりに気をとられ、アップし忘れていた。さすがに 17 時近くなって飛翔個体も減ってきたた
め、引き上げようとすると、
それならと開翅大サービスを
してくれる個体がいるからう
れしくなる。草地を離れる間
際の足元で吸蜜し始める個体
はメスのようだが、もう開翅
はしてくれない。
Apr. 29, 2016 ギフチョウ:産卵調査
「加古川の里山・ギフチョウ・ネット」のギフチョウ保護活動の第 2 弾はギフチョウの産卵状況調
査。小学生 1 名を含む 9 名で、9 時過ぎから 11 時 30 分ま で、全員で主な生息地 6 か所を順番にた
どる。「あった!〇個」と、発見者が声を出して記録係の竹内隆さん(ギフネット代表)に報告す
るのだが、本日の第一 号はなんとすでに孵化している幼虫だった。ギフチョウは孵化後に卵殻を食
べる習性はなく、卵殻がそのまま残っている。ここでは近くの谷筋にもヒメカンアオイがあるとい
うことで足を伸ばすと、シハイスミレの大きな葉っぱと比べてもあまりに小さい食草(右上)が多
く、母蝶はさすがにここには産
卵をしていない。その後の他の
生息地 5 か所ではすべて安定的
に複数の産卵を確認でき、幼虫
がいたのは最初の生息地だけで
あった。産卵調査は、ヒメカン
アオイの葉裏を確認するために
都度かがみこむ姿勢を強いら
れ、場所によってはマムシとの遭遇もありうるなど、決して楽な作業ではない。それだけに卵がつ
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く葉っぱに当たるとうれしいもので、報告する声もつい大きくなる。ときには、次の記録のように
一部がへこんだ卵があったりするが、ダニなどにやられたせいかもしれなく、このあと孵化してか
らも多くの天敵にであうことだろうし、次回の保護活動第 3 弾は 5 月 7 日の幼虫数調査となるが、
どれだけの比率で生き残ってくれているだろうか。
Apr. 29, 2016 ギフ産卵調査中に出会えた自然
ギフチョウの産卵状況調査の途上、何か目新しい自然は決して見逃さない、それが「加古川の里
山・ギフチョウ・ネット」メンバーの面目躍如たるところ。最 初の驚きはノウサギが目の前を走り
逃げて行ったことだが、こればかりは急なことで誰一人証拠記録もとれない、あっという間のこと
だった。次はシルビアシジミのメスがカンサイタンポポ、ニガナと黄色い花を転々と移動して蜜を
吸う光景に、カメラがあちこちから迫る。この日は風が強くて気温も低いせいか、メス個体の活動
度が低かったのが幸いして、ずいぶん長い時間モデルとなってくれた。雑木林を進む途中で、オオ
トモエが飛び出てきて林床に止まるが、邪魔となる草の茎をとれば逃げられるだろう、というわけ
で、実に美しい新鮮個体ながら、この撮影が精いっぱい。ギフチョウの産卵状況が非常に好ましい
という結果に、足取りも軽く雑木林を出た段階で、筆者がヒメウラナミジャノメの交尾個体を発
見。ごく普通種でも交尾シーンにはそんなに簡単に出会えるものではなく、再び複数のカメラが迫
る。手前の草が邪魔だと贅沢をいう御仁がちょっかいを入れて交尾個体に飛び去られてしまうが、
また追いかけてそれなりの映像を記録する。すぐそばにサナエトンボがやってきて休憩し始める
が、名前が分からない。さらには、カンサイタンポポで吸蜜するコチャバネセセリも見逃さない。
なお、林内で静かにオシャレな花を咲かせていたのを記録し
たものの名前が分からず、メンバーの立岩さんがスマフォで
すぐに検索をしてツクバネウツギだと教えてくれた。
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Apr. 30, 2016 ジャコウアゲハの産卵を確認
ジャコウアゲハの生息地で産卵状況を調査。昨日の低い位置でのヒメカンアオイへのギフチョウ
の産卵調査に比べれば、ウマノスズクサの葉裏めくりは楽なもの。数株をめくった段階で 1 個だけ
の卵を確認できてホットする。次いで 2 個、さらに草むら深く入り込むと複数産みつけられた葉が
あちこちに見つかる。そして休息中の新鮮メス個体も。目の前での産卵行動は観察できなかった
が、今にも産みつけそうな挙動を見せながらウマノスズクサ周りを飛び、どこからか現れたオス個
体ともつれあいの飛翔をみせたあとツツジの花で蜜を吸ってやがて大木のクスノキの梢部分へと舞
い上がり、みえない葉上で休息に入った様子。このまま夜を過ごすのかも。
May 1, 2016 オオセンチコガネ
宍粟市山崎に遠征:2014,2015 年の 5 月に目の前を緑色に輝く
コガネムシが飛んで行くのを何度も観察しながら、あっという
間に消えてしまわれるばかりだった。2016 年 5 月 1 日、今年こ
そ手元でその色調を確認したいとの思いで注意していると、期
待通り目の前を飛んで行く光景が二・三度展開するが、いつど
こから現れるか分からない上に、速い飛翔で飛びぬけていくた
め捕獲が難しい。一方、ツツジが咲くコーナーで黒系アゲハの
登場も気になる「二兎を追うもの一兎をも得ず」的状況のなかでやがてチャンスがやってくる。高
台となっている広場を飛びぬけずに筆者の立つそばまでやってきて U ターンをする、その瞬間を逃
さずにゲット。オオセンチコガネで、角度によっては緑色に輝くけれども奈良公園でみるタイプで
はなく、相生の三濃山や南アルプス市のしらびそ高原で観察した赤銅色でもない、微妙なタイプ
だ。しらびそ高原から下栗へと下る途中の「日本のチロル」で有名な眺望地点へとたどる道のそば
では、やや薄紫を帯びるタイプが鹿の糞まわりを多数頭飛び回っていたが、オオセンチコガネの色
調が各地域で微妙に変化する理由は分かっているのだろうか。そこで Web 検索。
http://blogs.yahoo.co.jp/kozoshoku/45379505.html
発色と外表皮構造との関係を解明した例だが、地域差の解明がなされているのかどうかがいぜん分
からない。
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May 1, 2016 宍粟市、5 月のチョウ
ミヤマカラスアゲハの♀個体を採卵用に捕獲する目的で、昨年も通った宍粟市の高台に登る。ヒラ
ドツツジが満開でその濃い赤がまぶしく、やや色あせたアゲハが吸蜜しては一休みをする。やがて
ボロボロのミヤマカラスアゲハが吸蜜し始めたのをネットインして確認するとオス。結局、半日ね
ばって出会えたミヤマカラスアゲハはこの個体だけで撮 影記録もなし。本日の今一つの目的だった
3 年がかりのオオセンチコガネの色調確認は達成でき、太陽光が強すぎて絵にならないが、撮影だけ
はしたよと、カラ スアゲハとクロアゲハが求蜜するシーンの記録を示しておく。
May 1, 2016 夢前町のツマキチョウ
ミヤマカラスアゲハのメス個体を求めて、宍粟市から夢前町へと転戦:2014 年に黒系アゲハが競
うように吸蜜飛来していたコウトクツツジは、2015 年に小規模に切られたことと、午後の時間帯で
は日陰となるせいかチョウが来なく、山際の道沿いを蝶道とするカラスアゲハがたまにみられるだ
け。それでも、もう シーズンが終わったと思っていたツマキチョウが飛んでおり、その飛翔につい
ていくと、うれしいことにヘビイチゴの花で蜜を吸い始める。久しぶりにツマキチョウの撮影がで
きたのはラッキーだったが、路
面で開翅するサカハチチョウへ
のフォーカス合わせが間に合わ
ないうちにモンシロチョウがち
ょっかいを出して飛び去られた
のが残念。あちこちで飛び交う
ヒメウラナミジャノメのなか
で、とりわけ美しい個体を探し
て開翅シーンを記録。もっと絵になる開翅シーンがあったのだが、筆者の接近に対して意外に敏感
で、今にも崩れそうな山肌へとよじ登るなどして追いかけまわし、ようやく記録したのがこの写
真。
May 1, 2016 ジャコウアゲハの里
姫路市はジャコウアゲハを市蝶として保護しているが、夢前
町のヤマサ蒲鉾工場で芝桜とともにジャコウアゲハの舞も楽し
める。この日はいろんなイベントがあって、観光バスも複数台
とまる盛況ぶりで、植木市にあるツツジやハナミズキで楽し気
に吸蜜するジャコウアゲハが多い。もちろん客寄せの芝桜群周
りを飛びまわるジャコウアゲハの数の方が圧倒的に多いのだ
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が、たまにカラスアゲハが混じっているのが遠くに確認できるので、その証拠記録をとってみる。
芝桜を鑑賞するべく、多くの人が行き交う狭い道を歩く過程でゾウムシもみた。ゾウムシの仲間は
それなりに種類も多く、新緑のころに葉っぱや小枝につく小さなものを見る機会が少なくはない
が、このような本格的なこれぞまさしくゾウムシという個体に出会うことは多くない。正式名はず
ばりオオゾウムシで、昆虫少年時代にクワガタなどを求めて探検したカシなどの樹液まわりで目に
したことがある種だ。帰り際にはジャコウアゲハの交尾個体も観察。
May 1, 2016 ナガサキアゲハがどこか変
夢前町のヤマサ蒲鉾工場を訪れた際に、複数台が並ぶ観光バスのすぐ傍にある花壇で撮影記録を
とったナガサキアゲハにとんでもない変異があったことに、ビデオ記録を PC 編集する段階で気づ
く。右後翅に認める小さな白紋はいったい何だろうか。花びらのようにも見えるが、桜の花はとっ
くに散っており、考えられるユキヤナギも近くにはない。この静止画像ではわからないが、吸蜜し
ながら次々と場所を変えていくナガサキアゲハの羽ばたきはか
なりの速さで、その際に振り落とされてはいないわけで、撮影
時に気づいていたならネットインをして確認できたかもしれな
い話で、結局、真相はわからずじまい。
May 1, 2016 夢前川の渓流沿いで
夢前町には山肌斜面に広く群生するシャガの観光スポットがあるのだが、夢前川の渓流沿いにみ
る植物にも目を向けてみる。ポツンと咲くシャガを撮り込んでみるも、フォーカス合わせに失敗。
マムシグサとヒメレンゲはまずまずの出来かな。
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May 5, 2016 ウスバシロチョウとの出会いを求めて遠征
蝶友が 4/30 に見たという情報を参考に、妻に頼んで西播磨の山岳部まで遠征。朝、携帯への電話
で誘ってくれた竹内さんの「そこを右折せずにまっすぐ進んで」との指示にしたがって進むと、遠
目にウスバシロチョウだと分かる飛翔個体が目に入る。3-4 個体が低い位置を飛びまわっているが、
まったくどこにも止まらないのでビデオカメラでフォローするのが精いっぱい。確かに草地に降り
てとまった、と遠くから確認して走り寄っても、その場所がすぐには分からず、ビデオ ON で近づ
くと、いきなり飛び出してしまう。どうやらカキドオシで吸蜜していたらしく、帰宅後に確認し
て、その証拠記録がかろうじてビデオ記録できているのが分かる。
May 5, 2016 ツツジの花に来た黒系アゲハ
ウスバシロチョウを追い回している間に散策に出かけた妻が、1000 歩ほど上方のツツジに黒系ア
ゲハがきていると教えてくれて移動。撮影チャンスをくれなかったオナガアゲハ、次いでクロアゲ
ハの♀と♂、最後には比較的き
れいなミヤマカラスアゲハの
♂が吸蜜にやってくる。ミヤ
マカラスアゲハは太陽光の当
たり具合で、ムラサキを帯び
たルリ色の輝きがあまりに美
しく、ビデオ記録からその瞬
間画像を複数切り取ってみた。
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May 5, 2016 ミツバウツギの花には
ウスバシロチョウの観察場所から転戦した渓流沿いに咲くミツバウツギの花にアオバセセリ、サ
カハチチョウなどがやってきていろんなポーズをとってくれた。ときおりミヤマカラスアゲハも吸
蜜飛来したが、翅の傷んだオスで、採卵のために連れ帰りたいメ
ス個体が現れた際、狭い場所でのネットさばきに失敗して捕獲で
きずに終わる。渓流から離れた高台のミツバウツギでは地味なス
ジグロシロチョウも風に揺れながら夢中で蜜を吸っていた。
May 5, 2016 クリンソウが咲く山間部では
最後に竹内さんが案内してくれた、クリンソウ(九輪草)が咲く山間部で、オナガアゲハ、カラス
アゲハの吸蜜シーンをフォロー。カラスアゲハは一度吸蜜をして、高い位置の杉の葉上で休息を始
め、もう寝てしまうのかとあきらめたのだが、帰ろうかと車にもどりかけたタイミングで再び蜜を
吸いに降りてきてくれて感激。
May 5, 2016 絵にも描けない美しさ
ベニシジミはこの時期どこでもごく普通にみられるチョウだ
が、なかには思わず息をのむ美しい個体に出会う。本日の午後、
風が出たせいかウスバシロチョウの姿が消えた草地で、ヘビイチ
ゴの黄色い花周りを飛び遊ぶベニシジミのなかでひときわ紅色が
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濃く見える個体の飛翔についていき、止まったその翅表をのぞきこんだ瞬間、その奥部分の赤があ
まりに美しく、しばし見とれてしまった。
May 6, 2016 シルビアシジミ採卵
加古川でのシルビアシジミの食草はミヤコグサだが、大阪空港周辺にはシロツメクサで育つ群の
いることが知られている。その
シロツメクサが加古川のシルビ
アシジミを飼育した際、幼虫全
ステージで代用食として利用で
きることを確認しているのだ
が、先日、アカツメグサの方が
いい、という話を聞き、そのこ
とを確かめたく生息地からお腹の大きいメスを連れかえってミヤコグサに産卵してもらった。産ん
でくれた母チョウは元気なうちに元の生息地へと戻した。実は、この母チョウを捕まえに行った日
は暴風注意報が出ていて、土手周り一帯に強風が吹き荒れ、メスらしき個体をネットインした瞬間
にネットが反転してしまうなど、大変な状況。風当たりが少しは弱い側を探すと、やはりチョウは
そこらで強風をしのいでおり、ようやくお腹が大きいメスに出会えたという経緯がある。
May 7, 2016 ギフチョウ:幼虫調査
一週間まえに実施したギフチョウの産卵数調査をフォローする幼虫数調査に参加者 8 名。うち若
者が 3 名というのがうれしく、またありがたい。ところが、わずか一週間で卵数との比較で確実に
幼虫数が減っている。卵殻が 5 個あるのに幼虫は 4 個体で 1 頭はどこへ行ったのか。産卵数調査に
比べれば、ヒメカンアオイの葉に食痕がある部分を調べればいいだけなので、体への負担はやや軽
いが、雑木林を 5 か所以上もまわると天候曇りでも汗がでてくる。今回の調査の最中、幼虫の天敵
だと考えられる、オサムシやハシリグモ類の証拠記録をとっておいたが、ヒメカンアオイの葉っぱ
近くをパトロールするキイロスズメバチらしき蜂とすばしっこく走り逃げたカナヘビの撮影は間に
合わず。
May 7, 2016 ギフチョウの幼虫調査の合間に:ヒメバチの一種が寄生卵を産みつける場面も
ギフチョウの幼虫数調査の最
中、高砂南高校の今井勝彦君が、
シャクトリガの一種の幼虫に針を
挿しこんで寄生卵を産みつけてい
るヒメバチの一種を発見。このヒ
メバチはしっかり産みつけてから
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一度飛び去るように見えたが、再び向きと位置を変えてさらに産みつけようとする。寄生された幼
虫はすぐには死なずに成長し、やがて内部からハチの幼虫に蝕まれていくのだろう。雑木林内には
まだツクバネウツギが咲いていて心が和む。ギフチョウの幼虫調査 4 か所目の雑木林へと入る手前
のクズの葉から移動するシロコブゾウムシがかわいい。雑木林を出た草地周辺には今日もサナエト
ンボの一種が複数頭観察できるが、いぜん種名がわからない。ギフチョウの幼虫調査を終えて、解
散する段階で、汗をかぎつけたのかサトキマダラヒカゲがやってきて、車のまわりを飛び回ったか
と思うと、ヘッドライト部分や
ボンネットにとまって愛嬌をふ
りまく。めったに見せてはくれ
ない翅表が、偶然飛びあがった
瞬間の映像として記録できてい
る。カメラを 10cm ほどの距離
まで近づけても逃げようとはせ
ず、左足を少しあげて態勢を整えている様子が可愛い。おかげでヤマキマダラヒケゲとの差異が明
瞭に判定できる記録が撮れる。
May 8, 2016 西播磨山間部へ再遠征、ミヤマカラスのメスはいたが
ウスバシロチョウの絵になる撮影記録をとりたくて、再度、西播磨の山間部まで遠征。到着時に
は薄雲りで、やや風があるせいかウスバシロチョウの姿がなく、モンキチョウのメスが風をよけな
がらヘビイチゴの黄色い花で蜜を吸っている。接近しすぎて飛び立たれ、アッという間に風に乗っ
て遠くへと消えていく。しばらく草むらを歩いてみると、羽化して間もないのか、あるいはただ翅
を休めているのか、低い位置の草の茎につかまってじっとしているウスバシロチョウが目にとま
る。裏側にまわり込むと、茎にしがみつくようにして風をしのいでいるように見えるが、やがて飛
び立って一段下の草地へと飛んで行くので追いかけると、ウツギらしき葉上で休んでいる別の個体
へと飛びついていく。メス個
体への交尾アタックかと 思わ
れてカメラのフォーカス合わ
せを急ぐが、全く間に合わな
いうちに飛び離れていく。カ
メラを三脚にセットして全く
飛び立とうとしない個体にズ
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ームアップ で迫ってみるが、風に揺られて撮影が容易ではない。かなり時間が経っても、同じ場所
から動く気配がなく、羽化後に翅が固まるのを待っているのかもしれない。結局、最初の個体以外
にモデルとなってくれる個体には出会えず。
ミヤマカラスアゲハのメスを連れ帰って採卵したく、先日と同じウツギの咲く渓流沿いへと向か
う。現場のすぐ近くで、先に来ていてもう帰ろうとするT氏と出会い、まだアオバセセリがみら
れ、タニウツギが咲いていてミヤマカラスが頻度高く訪れていたとの情報を得る。ウツギの一種が
ミツバウツギであると、このときT氏から教えてもらう。そのタニウツギをチェックするとやや日
陰となっていてチョウの姿はなく、少し先の山肌に咲くガマズミの花蜜を求めるサカハチチョ ウに
迫ってみる。残念ながら新鮮個体ではないが、すぐ手元で観察できるチャンスは少ない。
簡単な昼食をとりながらミツバウツギへのミヤマカラスの飛来を待ち、やがてやってきた個体をゲ
ットして確認するとオス。ネットインの前から前翅端が欠けた個体で、メスであればボロでもいい
ところ、このオスのきれいな色を記録してから飛ばしてやる。その後、このポイントを熟知する K
氏が 300mm 望遠レンズを装着したカメラを 1 脚にセットした状態でやってくる。ミヤマカラスが
やってきてメス個体ならばネット優先 OK との合意のもと、急に個体数を増したアオバセセリの撮
影をしながらミヤマカラスの飛来をまつ。比較的新鮮なメス個
体が何度かやってくる が、すべてネットの届かない高い位置で
の吸蜜で、せめてビデオ記録は撮っておこうとネットをカメラ
に切り替えると、そんなときに限ってネットが届くところへと
降りてきたりして、結局ネットを振れるタイミングはなし。そ
の後も同じ個体が何度か飛来するが、ビデオ記録でがまんする
ばかりの高値の花。アオバセセリが好ましい背景の位置で吸蜜
する場面が何度も展開するが、ビデオカメラのオートフォーカス機能が追いつかずにピンボケの連
続で、小さくとらえた映像しか残せず。ミヤマカラスアゲハはオス個体を二度ネットインしてメス
でないと分かって放し、ボロのメス個体がネットの届く位置にやってきたときには、アオバセセリ
の撮 影中という最悪のタイミング。3 時間半も粘ったものの、帰路に「道の駅」に立ち寄って野菜
類を求めたい妻を失望させるわけにはいかないため、未練を感じながら退散。
May 12, 2016 ルリセンチコガネ
宍粟市で 3 年がかりでようやく微妙に緑色に輝くオオセンチコガネを捕獲でき、手元でその色調
をしっかり確認した。その後に同
じ宍粟市で飛翔時に赤紫に輝く
個体を目撃したが、これらの捕獲
には成功していない。赤紫にみえ
る個体の飛翔はしらびそ高原の登
山道沿いでもみているがこの時も
手元での確認はできていない。か
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June 11, 2016
つて 10 月上旬に鹿が多い奈良公園でルリセンチコガネが飛び交う場所に遭遇したことを思い出し、
今の時期にも会える可能性が高いと推定して遠征して みた。10 月のように金緑を帯びたルリ色の
輝きを見せながら飛ぶ個体は全く見られなく、落ち葉をかきわけて腐葉土の中に潜む個体を探す
と、木陰となった林床でキ ラリと光るので見つけやすい。鹿の
コロコロとした糞は至る所で目につくが、そういう現場でみた
ことはなく、今回もルリセンチコガネがいた腐葉土がある場所
は、観光客や一般人が訪れることのない静かな林の中の小道沿
いで、昆虫少年時代から培った勘をたよりに歩いて見つけたと
ころ。この公園でのんびりと過ごしている鹿は風景全景になじ
んでいて、日本のあちこちで野生植物食害の元凶となっている
ことが信じられない感じがする。
May 14, 2016 チョウ観察会
加古川市環境政策課主催の「里山に登ろう! チョウの観察会」に「加古川の里山・ギフチョ
ウ・ネット」のメンバーとして支援参加。場所は加古川市志方町行 常の「しあわせの森」。小さな
お子達 5 名とその親御さんを含む一般参加の約 20 名と、スタッフとして協力される NPO 法人ひょ
うご森の倶楽部・行常チーム、ギフチョウ・ネットメンバー5 名に市役所職員合わせて約 40 名で自
然観察。里山の麓に広がる竹林でいきなりサトキマダラヒカゲが飛びだす。そのすぐそばをヒラヒ
ラと舞うのはコミスジだが右後翅が傷んだ個体。ブッシュ奥ではアサマイチモンジが遊んでいるが
撮影チャンスはなく、登山道ぞ
いに咲くシライトソウの白が目
をひく。水が染み出すところに
はコモウセンゴケが群生してい
て可憐に咲くピンクの花もきれ
いだと、参加者がよってたかっ
てカメラ撮影に夢中となる(筆
者の撮影記録 はなし)。高い位置のカナメモチの白い花ではアオスジアゲハやコアオハナムグリが
蜜を求めており、足元近くで休憩するノシメトンボの姿もみる。「そよかぜ 広場」という立札があ
る開けた山頂部でもサトキマダラヒカゲが出迎えてくれ、涼しいそよ風を体に感じながら昼食タイ
ム。この山頂部まわりのウラジロの新葉が美しく広がる斜面を蝶道として飛び交うクロアゲハ、ア
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June 11, 2016
ゲハ、モンキアゲハ、 ナガサキアゲハが、ときには目まぐるしい追飛翔を展開する。モンキアゲハ
がシダの葉上で休み始めたのに気づき、すぐに飛ぶだろうと狙っていると、案の定近くを飛ぶアゲ
ハに向かってスクランブル飛翔を仕掛ける。その蝶道をみきわめ赤ネットをもって待機すれば、赤
ネットの真上を飛ぶクロアゲハやモ
ンキアゲハを下からすくようにして
捕獲できる。翅をピンセットでつま
んで一般参加者に観察してもらう
と、オレンジや赤の美しい紋を喜ん
でスマフォカメラで撮影をしてくれ
たりする。クロアゲハ♂の後翅前縁
の弦月紋と霜降り様にちらばるきれいな鱗粉もしっかり観察して
もらい、多くの人がカメラ撮影をしてくれる間にも、その美しさ
をビデオ撮影したつもりが、実はひどいピンボケだったことがチ
ョウを放したあとで分かる。カラスアゲハもやってきたが撮影チ
ャンスはなく、最後の締めは、加古川市では多くないクロヒカ
ゲ。下山途上で竹内さんが捕獲して子供たちに観察してもらって
から放した個体がすぐ近くで休憩してくれていいモデルとなって
くれるが、新鮮個体でないのが残念。野外観察の後は、公会堂で「加古川の里山・ギフチョウ・ネ
ット」の活動状況をビデオ記録で紹介し、パワーポイントで総括説明。次いで NPO 法人ひょうご
森の倶楽部・行常チームの荒川さんから、発足後ちょうど 20 年になるという「森を元気にして、人
間生活も元気にする活動」の実態を説明していただき、14 時 15 分に解散。
May 17, 2016 雨上がりに舞うチョウ
本格的な雨のあと好天気になるとチョウが飛び遊ぶ習性に期待して、タニウツギが咲く山岳部の渓谷へと遠征。蝶友
が教えてくれた渓流沿いのあちこちにタニ ウツギが咲き、期待通り黒系アゲハが複数頭舞っている。多くが、山麓部急
斜面の高い位置や、道路急斜面下の渓流沿いや崖部分に咲くタニウツギで蜜を求めて いる。急斜面の上も下も、アクセ
スが容易ではなく、滑り落ちないように足を踏ん張り、支えとなる植物を探して右往左往する。そうした苦労を通して
記録でき たいくつかを整理してみると、新鮮さではクロアゲハだが、新鮮度が落ちる個体でも渓流を背景に羽ばたきな
がら夢中で蜜を吸うミヤマカラスアゲハの輝きに魅了される。オナガアゲハもクロアゲハやミヤマカラスアゲハと追飛
翔を繰り返しながら吸蜜場所を転々
と移動するが、きれいな画像記録は
とれず。途中、適当な木陰に車をと
めてのランチタイムにも、チョウの
動向に注意していると、まだ新鮮な
春型のサカハチチョウがのんびりと
飛び遊ぶので走り寄って撮影。広く
開けた湿り気の残る原っぱでは、ヤ
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June 11, 2016
マかサトか、判定の難しいキマダラヒカゲが路面にとまり、今年初見となるミヤマチャバネセセリが楽し気に吸汁をし
てまわる光景も展開し、長いストローをいっぱいにのばして、実に器用に吸汁をする様子は見飽きない。
May 18, 2016 ミヤマカラスアゲハが産卵
西播磨の山間部から連れ帰ったミヤマカラスアゲハが取り急ぎ
調達したキハダに期待通りの産卵をしてくれた。吹き流しの中に
キハダの苗木と母蝶を一緒に入れて半日もしないタイミングでの
産卵で、それまで入れていた新葉が出たコクサギには全く産もう
とはしなかった。吹き流しの天井部にも複数の産卵を認め、キハ
ダ効果のすごさを実感している。卵の孵化後は、問題なく最後の
チョウにまで飼育ができることを 2014 年に実証済みの代用食:
コクサギでしのぐ予定でいたが、蝶友に姫路近くの山にはカラスザンショウが簡単に採取できると
ころがある、と教えてもらえたので、今回の飼育は楽ができそう。
May 20, 2016 ヒメヒカゲ初見
午後、姫路へと出かけたついでに郊外のヒメヒカゲ生息地を探索。30 分ほど歩いてもヒメヒカゲ
の姿はなく、サトキマダラヒカゲの撮影をしていると、やや遅れてやってきた「加古川の里山・ギ
フチョウ・ネット」の久保さんから声がかかる。「まだ出ていないみたい」と会話を交わして先に
帰ろうかとしたその時、久保さんが「いた!」と声を上げる。今年の 初見個体だ。すぐにビデオカ
メラでフォローするが、なかなか止まってはくれない。いい絵になる止まり方をしてくれた、と近
づくとすぐに飛んでしまう。遠く に飛び去ることはないので、しばらくその飛翔についていくと新
たな個体も飛び出す。草の茎が
じゃまとなった今年最初の記録
個体は、メスかと見間違う美麗
♂だが、すでに後翅がわずかに
欠けている。2 個体目の♂はい
きなり開翅してみせてくれるが
フォーカス合わせが間に合わな
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June 11, 2016
いまま閉じてしまってもう見せてはくれない。翅表には早くも
わずかに鱗粉のはがれがみられるが、翅裏の新鮮度は高くてと
ても美しい。これら 2 個体の観察結果から、発生は数日前だと
推定できる。なお、本日観察記録したサトキマダラヒカゲとサ
ルトリイバラの葉裏に張り付くルリタテハの中令幼虫、およ
び、あいかわらず撮影アングルに悩むソクシンランとツクバネ
ウツギとは少し異なるような正確な種名がわからない花などを
記録しておいた。
May 25, 2016 オオスカシバ
玄関先に植栽しているセイヨウマツムシソウ(スカビオサ)にきれいなオオスカシバが吸蜜飛
来。撮影中には気づかなかったが、けっこう鋭い目つきでこちらの動きを警戒しているかのよう
だ。オオスカシバは、近隣の道路沿いに植栽されているコクチナシでのびのびと育っている。
May 25, 2016 路面に宝石
兵庫県太子町上太田で路上にキラリと輝く緑色の金属光沢が
目に入り、確認すると頭や手足がもげたオオセンチコガネ。こ
の体色は宍粟市山崎町でも観察して おり、相生市の三濃山で
は赤銅タイプを確認している。この体色が何に基づくのか、そ
の色タイプの違い分布域と合わせて非常に興味がわく。少し離
れた路面につぶれた頭部分もあるが、接合しても様にならない
のでそのままにしておいたが、攻撃した犯人の手掛かりはな
し。
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