第51号(2016年3月発行) 国内外機関投資家の議決権行使動向 <目 次> 2016 年株主総会シーズンに向けた 国内外機関投資家の議決権行使動向について………… 1 コラム-ワンポイント会社法実務(第 46 回)… …………… 12 ※本ファイルは、内容を抜粋して掲載しております。 証券代行コンサルティング部 証券代行ニュース第 51 号(2016 年 3 月) 国内外機関投資家の議決権⾏使動向について 2016 年 株 主 総 会 シ ー ズ ン に 向 け た 国 内 外 機 関 投 資 家 の 議 決 権 ⾏ 使 動 向 に つ い て 2016 年 の 株 主 総 会 シ ー ズ ン に 向 け て 、 国 内 機 関 投 資 家 の 議 決 権 ⾏ 使 の ス タ ン ス や 、 ⽶⼤⼿議決権⾏使助⾔会社のISSおよびグラスルイスの議決権⾏使助⾔ポリシーに ついて報告いたします。 2014 年 2 ⽉ に 「 ⽇ 本 版 ス チ ュ ワ ー ド シ ッ プ ・ コ ー ド ( 以 下 S S C )」(「 責 任 あ る 投 資 家 」の 諸 原 則 )が 制 定 さ れ 、2015 年 11 ⽉ 末 ま で に 201 の 運 ⽤ 機 関 が 受 け ⼊ れ 、2015 年 6 ⽉ に「 コ ー ポ レ ー ト ガ バ ナ ン ス・コ ー ド( 以 下 C G C)」 (「 企 業 統 治 の 行 動 規 範 」) の 適 ⽤ が 開 始 さ れ 、2015 年 12 ⽉ 末 ま で に 2,485 社 が コ ー ポ レ ー ト ガ バ ナ ン ス 報 告 書 を提出しました。 2016 年 は CGC 適 ⽤ 後 、 初 め て の 株 主 総 会 シ ー ズ ン と な り ま す が 、 機 関 投 資 家 に よ る 議 決 権 ⾏ 使 の 観 点 か ら は 、C G C に 盛 り 込 ま れ て い る「 社 外 取 締 役 2 名 以 上 の 選 任 」 や 「 政 策 保 有 株 式 」( 資 本 効 率 の 向 上 に む け た 取 組 ) 等 に つ い て 、 取 締 役 選 任 の 議 案 等 において考慮される可能性があります。また、同コードでは、株主との対話が求めら れているため、株主総会に向けて積極的に機関投資家とのコミュニケーションの機会 を設けることは、上場会社のスタンスとして望ましいエンゲージメントの⼿段と⾔え ます。 2015 年 を 振 り 返 る と 、 監 査 役 設 置 会 社 の 取 締 役 選 任 議 案 に お い て 、「 社 外 取 締 役 が 1 名 も 選 任 さ れ な い 場 合 、経 営 ト ッ プ に 反 対 」と す る 基 準 に 変 更 し た 国 内 機 関 投 資 家 が 多 く み ら れ ま し た 。ま た 、I S S が R O E 基 準 を 導 ⼊ し 、 「 過 去 5 期 平 均 の R O E が 5% 未 満 の 場 合 ( た だ し 、 直 近 期 の R O E が 5% 以 上 を 除 く )、 経 営 ト ッ プ に 反 対 」 と す る ポリシーに改定したことが話題を集めました。 2016 年 は 、2 ⽉ か ら I S S が「 社 外 取 締 役 が 複 数 名 い な い 場 合 に 、経 営 ト ッ プ に 反 対 ( た だ し 、 独 ⽴ 性 を 問 わ な い )」 と す る ポ リ シ ー に 変 更 し て い る こ と や 、 C G C で も 「社外取締役 2 名以上の選任」が求められているため、国内機関投資家の中にも追随 する動きが予想されます。 機関投資家による持株⽐率の上昇や議決権⾏使基準の厳格化が進む中で、 本年も株 主 総 会 シ ー ズ ン を 迎 え る に あ た っ て 、⾃ 社 の 株 主 構 成 や 実 質 株 主 の 保 有 状 況 を 把 握 し 、 国内外機関投資家の議決権⾏使ガイドラインを確認していただき、上程する議案内容 について予め⼗分に検討したうえで、株主総会の準備を進めていただければ幸いに存 じます。 (注)無断転写を禁じます。 1 証券代行ニュース第 51 号(2016 年 3 月) 1.国内機関投資家の議決権⾏使ガイドライン 公的あるいは企業年⾦や投資信託の資⾦を運⽤する機関投資家の保有分は、株主名 義上では「⽇本トラスティ・サービス信託銀⾏」等の資産管理専⾨銀⾏の名義に含ま れ、国内機関投資家(信託銀⾏および投信投資顧問会社)は、基本的に資産運⽤の受 託者として責任を果たす観点から議決権を⾏使しています。また、⼀部の外資系を除 いて、独⾃に定めた議決権⾏使ガイドラインに基づき判断を⾏います。(ガイドライ ンは各社ウェブサイトに開⽰されています。) 国 内 機 関 投 資 家 の ガ イ ド ラ イ ン は 、通 常 毎 年 4 ⽉ 〜 5 ⽉ 頃 に ⾒ 直 し が ⾏ わ れ ま す が 、 本年は「社外取締役 2 名以上の選任」を検討している傾向がみられます。 各議案の主なチェックポイントと変更点は以下のとおりです。 取締役選任(監査役会設置会社) 主なチェックポイント ① 業績・株価パフォーマンス ② 社外取締役の⼈数 ③ 社外取締役の独⽴性 ④ 社外取締役の取締役会への出席率 ⑤ 取締役の増員、取締役会の規模 ⑥ 企業不祥事 ① 業績・株価パフォーマンス 2015 年 2 ⽉ よ り I S S が R O E 基 準 を 採 ⽤ し た た め 、2015 年 は R O E へ の注⽬が⾼まりました。国内機関投資家の多くはROE基準を既に導⼊済で あり、数値基準に⼤きな変更はない模様です。ROEの⽔準は投資家によっ て様々ですが、毎年絶対的な⽔準を定める場合や、市場全体の状況を考慮し つ つ 、 相 対 的 な ス ク リ ー ニ ン グ 基 準 ( 例 え ば 業 種 別 下 位 25% に 該 当 す る 等 ) で判断する場合もあります。 株価パフォーマンスについても業種別の相対基準やTOPIX等のベンチ マークとの乖離度合いで判断するケースがあります。 対象となる期間は直近年度の数値のみでなく、例えば 3 年間の平均値や 3 年連続で該当した場合等、機関投資家によって異なります。なお、個別・特 殊事情等による業績悪化は、例外的に考慮されることもあります。またRO Eも含めて総合的に判断する投資家もみられます。 (注)無断転写を禁じます。 2 証券代行ニュース第 51 号(2016 年 3 月) ② 社外取締役の⼈数 2015 年 に 機 関 投 資 家 の 多 く が 社 外 取 締 役 1 名 の 選 任 を 必 須 と す る 基 準 に 変 更しました。⼈員確保の問題等もあり、多くの機関投資家は、最低基準を 1 名 と す る 傾 向 が あ り ま し た が 、本 年 は 複 数 名 の 選 任 を 必 須 と す る 基 準 に 変 更 を 検討している機関投資家がみられます。 ③ 社外取締役の独⽴性 独⽴性の基準は、機関投資家によって異なります。東京証券取引所の独⽴ 役員の要件を満たしたからといって機関投資家がその独⽴性を認めるとは限 り ま せ ん 。社 外 取 締 役 に 独 ⽴ 性 が な い と 判 断 さ れ る ケ ー ス と し て は 、親 会 社 ・ ⼤ 株 主( 主 に 持 株 ⽐ 率 10% 以 上 ま た は ⼤ 株 主 上 位 10 位 )、主 要 借 ⼊ 先 、主 要 取 引 先 、あ る い は 顧 問 契 約 締 結 先( 弁 護 ⼠ ・ 会 計 ⼠ ・ 税 理 ⼠ 事 務 所 等 )、 親 族 等が挙げられます。 ただし、機関投資家によっては、出⾝⺟体を退職してから⼀定の経過年数 (クーリングオフ期間)を考慮する場合もあります。 なお、社外取締役の独⽴性基準は各機関投資家が出⾝⺟体との取引状況等を 勘案し、個別に判断するケースもあることから、場合によっては機関投資家 との⾯談を通じて考え⽅をヒアリングすることも必要です。 ④ 社外取締役の取締役会への出席率 社外取締役の実効性をチェックするために出席率基準を設けているケース が多くみられます。グラスルイスのように社外役員の兼職社数の上限を設け るケースもあります。 ⼀ 般 的 な 社 外 取 締 役 の 出 席 率 の 基 準 は「 75% 以 上 」で す が 、半 数 以 上 、2/3 以 上 の 場 合 や 、 ⾼ い と こ ろ で は 80% 以 上 と す る 機 関 投 資 家 も あ り ま す 。 仮に社外取締役の独⽴性が認められても、出席率を理由に反対⽐率が上昇 するケースもありますので注意が必要です。 ⑤ 取締役の増員、取締役会の規模 社内取締役の増員について、 「 合 理 的 な 理 由 が な い 」場 合 に は 否 定 的 に 判 断 されるケースが⾒られます。例えば、単に「経営基盤強化のため」を理由と した増員は否定的にみられる可能性があります。 また、取締役会の規模については企業規模に応じた⼈数が望ましいとされ て い ま す が 、 ⼈ 数 枠 の 基 準 を 設 け て い る 場 合 も あ り 、 上 限 を 15〜 20 ⼈ と す る機関投資家もいます。 (注)無断転写を禁じます。 3
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