〔少花粉ヒノキの早期実用化に関する研究〕 若齢木から採取した種子由来

〔少花粉ヒノキの早期実用化に関する研究〕
若齢木から採取した種子由来の苗木の生長量
中村健一・畑
尚子・小野仁士・新井一司
(緑化森林科)
-------------------------------------------------------------------------------【要
約】若齢木にジベレリン・ペースト剤を施用し採取した種子由来の少花粉ヒノキ苗
は,東京都産ヒノキ苗と同等の生長を示し,苗木として出荷できる。また,植栽した苗木
も,初期生長において,東京都産ヒノキ苗木と同等の生長を示す。
-------------------------------------------------------------------------------【目
的】
これまでの試験研究により,少花粉ヒノキの若齢木からの採種は,幹の樹皮に切れ目を
入れジベレリン・ペースト剤を注入して着花誘導する方法により可能であることが明らか
になっている。一方,事業化にあたり,若齢木から採取した種子由来の苗木が,障害無く
良好に生長することを確認する必要がある。そこで,若齢木から採取した種子から発芽し
た苗木の生長量を明らかにする。
【方
法】
1.植栽までの生長量調査: 2011 年 10 月に採種した少花粉ヒノキ種子を,
2012 年3月に,
マルチキャビティコンテナ(容量:300cc)に播種した。培地は,ココピート 80%,鹿
沼土(小粒)20%,基肥はマイクロロングトータル 201-100(窒素:リン酸:カリ=12:10:11)
を5g/L とした。追肥は,サニーエッグ((窒素:リン酸:カリ=7:7:7)を3ヵ月に一
度1コンテナに1粒施用した。灌水は,夏は散水装置(4回/日),他の季節は手灌水(2
回/週)で行った。対照区として,東京都産ヒノキ(以下,ヒノキ)を播種した。試験区
は,1区 24 本とした。調査は,播種後植栽までの3年間,定期的に苗長を測定し,植栽
前に根元径を測定した。
2.植栽後の生長量調査:2015 年4月に,上記で育成した少花粉ヒノキ苗木およびヒノキ
苗木を日の出試験林内に植栽した。試験区は,1区4~5本の3反復とし,調査は,植
栽した4月,8月ならびに 11 月に樹高,根元径を測定し,11 月に枯損状況を調査した。
【成果の概要】
1.植栽までの生長量調査:少花粉ヒノキの苗長は,ヒノキと同等の生長を示し,有意な
差は認められなかった(図1)。また,根元径もヒノキと同等の生長を示し,有意な差は
認められなかった(表1)。測定した少花粉ヒノキの苗木は,裸苗における山林用主要苗
木の標準規格3号(苗高 45cm,根元径 7.0mm 以上)に適応しており,苗木として出荷で
きる大きさに生長した。
2.植栽後の生長量調査:少花粉ヒノキの樹高は,ヒノキと同等の生長を示し,有意な差
は認められなかった(図2)。また,根元径もヒノキと同等の生長を示し,有意な差は認
められなかった(表2)
。枯損は,少花粉ヒノキ,ヒノキともにみられなかった。
3.まとめ:植栽までの少花粉ヒノキは,従来のヒノキと同等の生長を示し,苗木生産は
可能であることが明らかになった。また,植栽後の少花粉ヒノキも,ヒノキと同等の生
長を示しており,今後も,生長量の測定を継続する。
図3
植栽後における根元径の推移
2015年12月
2015年11月
2015年12月
200
2015年11月
2015年10月
2015年9月
300
2015年10月
2015年9月
2015年8月
2015年7月
2015年6月
2015年5月
少花粉ヒノキ
ヒノキ
2015年8月
図2
2015年7月
2015年6月
2015年5月
2015年4月
2015年3月
2015年5月
2015年3月
2015年1月
2014年11月
2014年9月
2014年7月
2014年5月
2014年3月
2014年1月
2013年11月
2013年9月
2013年7月
2013年5月
2013年3月
2013年1月
2012年11月
2012年9月
2012年7月
2012年5月
500
2015年4月
2015年3月
根元径(mm)
樹高(mm)
苗長(mm)
600
少花粉ヒノキ
ヒノキ
400
300
200
100
0
図1 植栽までにおける苗長の推移
表1 植栽前における根元径
根元径(mm)
7.2±0.9
7.4±0.7
※ 平均値±標準偏差
900
800
700
600
500
400
少花粉ヒノキ
ヒノキ
100
0
12
植栽後における樹高の推移
10
8
6
4
少花粉ヒノキ
2
ヒノキ
0