非鉄金属市況と需給動向 - 金属資源情報

非鉄金属市況と需給動向
 非鉄金属市況(銅、亜鉛、ニッケル、金・白金)
平成28年6月7日
非鉄金属市況(2016.5/16~2016.6/3)
ベースメタル
中国経済への懸念が高まる中、5月以降は追加利上げ観測の再燃に伴うドル高進行が圧迫材料となり軟調な値動きと
なり、当該期間は概ね下落傾向。4月には米国の利上げ時期について先送りされるとの観測が広がっていたものの、5
月に入ると米国で数か月以内に利上げが行われる見通しへと転じたことが下方圧力となった。亜鉛については1,800
US$/t台で軟調に推移していたところ、5月下旬、米国景気回復などから上昇傾向に転じ、6/3には2015年7月以来の高
値となる1,994.5US$/tまで上昇。
貴金属
4月下旬以降、中国の景気改善への期待感から概ね堅調に推移し、同月末はドル安が急激に進行したことに伴い上昇
したものの、5月に入ってからは中国経済に対する懸念やドル高進行が下方圧力となり、軟調な値動きへと転じた。5月
下旬には、一時原油価格の上昇に連動して貴金属価格も反発したものの、再び下落傾向となり越月した。
米国経済
5月の製造業PMIは50.7。 労働省発表の5月非農業部門雇用者数は前月比+3.8万人(前月修正値:+12.3万人)と市場予想の+16.0
万人を大きく下回り、6年ぶりの低い伸びにとどまった。失業率は4.7%(前月:5.0%)と低水準を維持した。
中国経済
5月製造業PMIは、国家統計局発表が50.1(前月:50.1)市場予想を若干上回ったものの、財新/Markit発表の速報値では49.2(前月:
49.4)と景況改善と悪化の分かれ目となる50を15カ月連続で下回った。
欧州経済
5月製造業PMIは51.5(前月:51.7)と小幅に上昇。
9.00
鉛
8.00
7.00
6.00
銅
金
亜鉛
ニッケル
51.5
50.7
50.1
49.2
アルミニウム
5.00
錫
4.00
3.00
2.00
1.00
Jun-03
Oct-03
Feb-04
Jun-04
Oct-04
Feb-05
Jun-05
Oct-05
Feb-06
Jun-06
Oct-06
Feb-07
Jun-07
Oct-07
Feb-08
Jun-08
Oct-08
Feb-09
Jun-09
Oct-09
Feb-10
Jun-10
Oct-10
Feb-11
Jun-11
Oct-11
Feb-12
Jun-12
Oct-12
Feb-13
Jun-13
Oct-13
Feb-14
Jun-14
Oct-14
Feb-15
Jun-15
Oct-15
Feb-16
0.00
主要非鉄金属の価格推移
・2003年5月=1とした指数で表示
(JOGMEC作成)
欧米中の製造業購買担当者景況指数(PMI)
1
非鉄金属市況(2016.5/16~2016.6/3)
本報告期
2016年
(当年)
(前年)
ニッケル
LME現物
(US$/t)
LME現物
(US$/t)
LME現物
(US$/t)
金
(US$/oz)
プラチナ
パラジウム
(US$/oz)
(US$/oz)
平均
1,870.5
1,994.5
1,994.5
6月3日
1,821.0
5月25日
1,889.0
8,640.0
8,510.0
8,640.0
5月16日
8,310.0
5月23日
8,448.2
1,283.4
1,225.8
1,283.4
5月16日
1,211.3
5月31日
1,239.5
1,055.5
969.5
1,055.5
5月16日
965.0
6月2日
1,004.7
591.0
546.5
591.0
5月16日
528.0
5月25日
555.0
3か月
4,680.0
2,001.0
8,540.0
-
-
-
12か月
24か月
4,690.0
4,700.0
4,645.0
4,688.0
5,103.0
3月18日
4,310.5
1月15日
4,712.8
6,309.0
4,702.0
6,448.0
5月12日
4,515.5
11月23日
5,493.6
1,992.0
1,952.0
1,600.0
1,994.5
1,994.5
6月3日
1,453.5
1月12日
1,757.3
2,183.5
1,600.0
2,405.0
5月6日
1,487.0
11月19日
1,927.9
8,750.0
8,855.0
8,515.0
8,510.0
9,555.0
5月3日
7,710.0
2月11日
8,602.2
14,880.0
8,665.0
15,455.0
1月7日
8,160.0
11月23日
11,806.4
-
-
1,077.5
1,225.8
1,295.3
5月3日
1,077.5
1月4日
1,209.2
1,193.6
1,062.3
1,294.1
1月23日
1,053
12月3日
1,159.2
-
-
885.5
969.5
1,082.5
5月3日
815.5
1月21日
954.5
1,108.0
872.0
1,283.0
1月21日
830
11月30日
1,052.1
-
-
550.0
546.5
626.0
4月29日
467.5
1月12日
544.2
775
547.0
829.0
3月5日
528
12月3日
690.1
期初
直近
最高値
最安値
2015年
亜鉛
4,640.5
4,688.0
4725.5
5月27日
4,572.0
5月23日
4,640.5
期初
直近
最高値
最安値
先物
(6月3日)
銅
平均
期初
期末
最高値
最安値
平均
銅市況と需給動向(2016.5/16~2016.6/3)
■LME価格:5/18に公表された4月のFOMC議事録で、経済の改善が続けば6月
【参考】米国の経済統計
利上げが適切との見解示される。その後、下旬にかけて堅調な米国経済統計が発
4月 住宅着工件数
4月 鉱工業生産
4月 新築住宅販売件数
4月 耐久財受注
1-3月期 GDP(前期比年率)
表され、6月利上げの蓋然性が高まり、ドル高進行。このため、銅価は上値重い展開
が続き、5/23には約2ヶ月ぶりの安値水準となる4,572US$/tまで下落。その後は、
原油価格の持ち直しを好感し、徐々に回復。26日には2週間ぶりに4,700US$台回復。
4月 個人消費支出
5月 ISM製造業PMI
6/1発表の5月中国製造業PMI(財新/Markit)及び新規輸出受注指数が低下し、中国
発表値
6.6%
0.7%
16.6%
3.4%
0.8%
1.0%
51.3
予測
3.3%
0.3%
2.3%
0.5%
0.9%
0.7%
50.3
前回
-9.4%
-0.9%
1.3%
1.9%
0.5%
0.1%
50.8
発表月日
5月17日
5月24日
5月26日
5月27日
5月31日
6月1日
(特に断りのない限り、数値は前月比)
経済減速懸念が意識され、同日、対前日比99US$安の4,601US$/tまで落ち込む。6/3はドル安を受け反発し、足元4,688US$/t。
■需給動向:昨年より続いていたSHFE在庫の増加傾向は4月で一旦収束。しかし在庫量は依然高い水準、4月時点でLME在庫の約2倍。
✍ 国際銅研究会の予測では2016年は5.6万tの供給不足。
✍ 主要鉱山操業状況:Glencore・ザンビアMopani鉱山、DRコンゴKatanga鉱山(総年間生産量:28万t)18か月間の操業停止、Anglo/
Glencore・チリCollahuasi銅鉱山で約3万tの削減計画を発表(2015.9)。カナダ・Huckleberry銅鉱山、2016年8月末までケアアンドメンテナ
ンス状態(2016.2)。Anglo、チリ・El Soldad鉱山従業員150名解雇へ(2016.2)。チリSpence鉱山(BHP Billiton)で、5月13日、労組が人員
削減や労働安全対策の不備に抗議し、24時間ストを実施。5月に入って2度目の24時間スト。
4,708
LME在庫
COMEX在庫
SHFE在庫
需給バランス
4
10
7
4
10
7
4
10
7
4
-400
2016/1
4,851
0
2015/1
2016年5月
4,946
-200
2014/1
2016年4月
4,595
2,000
10
2016年3月
4,463
0
2013/1
2016年2月
4,629
4,000
7
2016年1月
4,808
200
4
2015年12月
5,223
2012/1
2015年11月
5,208
10
2015年10月
400
6,000
7
5,089
2015年9月
4
2015年8月
600
8,000
10
5,457
2011/1
2015年7月
800
10,000
7
5,834
4
5,494
2010/1
2015年
2015年6月
10
6,862
需給バランス /
LME在庫(千t) 1,000
銅地金の需給バランスと価格動向
7
2014年
価格(US$/t)
12,000
4
US$/t
2009/1
銅平均価格
3
LME価格(Cash settlement)
亜鉛市況と需給動向( 2016.5/16~2016.6/3)
■LME価格:当該期間は1,870.5US$/tでスタートし、ドル高基調が価格を圧迫しながらも、供給不足懸念が下支えして1,800US$/t後半のレン
ジでの値動きとなった。5月下旬には、米国の景気回復見通しから製造業で亜鉛需要が高まるとの観測から上昇傾向に転じ、亜鉛供給が減
少したことも材料視され、1,924.5US$/tで越月した。6/1の中国製造業PMIが低下したことを受け、同国の経済成長鈍化に対する懸念が広ま
り、1,906.5US$/tまで値を下げたものの、世界的な供給不足が意識され6/3には2015年7月以来の高値となる1,994.5US$/tまで上昇した。
■需給動向:LME在庫は2月中旬約4万t増加したのち減少傾向が続いており、足元は38.0万 t(10.0日分)。
✍ 国際鉛亜鉛研究会(ILZSG) による2016年1-3月の累計需給バランスは4.3万 tの供給過剰。2016年3月単月は1.4万tの供給不足。
✍ ILZSG 2016年春季大会の予測によると、2016年は35.2万tの供給不足。
✍ 主要鉱山操業状況:MMG・豪Century鉱山資源量枯渇により7月末採掘停止、11月選鉱場停止(年間生産量48万t)。Glencore豪・Lady
Loretta鉱山とペルー・Iscaycruz鉱山の生産停止により年間50万tの削減発表(10/9)。中国亜鉛生産者10社が合計55万tの協調減産発
表(11/20)。Nyrstar社、経営改善のため米・Middle Tennessee亜鉛3鉱山操業停止、同社減産は計55万t(12/7)。
US$/t
2014年
2,164
2015年
1,928
2015年6月
2,087
2015年7月
2,002
2015年8月
1,810
2015年9月
1,719
2015年10月
1,728
2015年11月
1,582
2015年12月
1,522
2016年1月
1,512
2016年2月
1,711
2016年3月
1,805
2016年4月
1,862
2016年5月
1,871
亜鉛地金の需給バランスと価格動向
価格(US$/t)
3,000
需給バランス /
LME在庫(千t)
1,800
1,600
2,500
1,400
1,200
2,000
1,000
800
1,500
600
1,000
400
200
500
0
0
(200)
2009/1
3
5
7
9
11
2010/1
3
5
7
9
11
2011/1
3
5
7
9
11
2012/1
3
5
7
9
11
2013/1
3
5
7
9
11
2014/1
3
5
7
9
11
2015/1
3
5
7
9
11
2016/1
3
5
亜鉛平均価格
LME在庫
SHFE在庫
需給バランス
LME価格(cash settlement)
4
ニッケル市況と需給動向(2016.5/16~2016.6/3)
■LME価格:当該期間8,640US$/tでスタートしたニッケルは、追加利上げ観測の再燃に伴うドル高の進行が圧迫材料となり概ね
軟調に推移し、23日には8,310US$/tの安値を付けた。その後は原油相場の回復などを好感して緩やかに上昇し、31日には
8,465US$/tまで値を戻したものの、ドル高基調に伴う下方圧力で上値重く推移。6月初旬は、ドル安に振れたことを好感し小幅に
上昇し、足元価格は8,510US$/t(6/3)。
■需給動向:LME在庫は12月に大幅増加した後、小幅に増減しつつ緩やかに減少を続けており、足元は39.7万t(75.6日分)。
✍ 国際ニッケル研究会(INSG) による2016年1-3月累計の需給はほぼバランス。2016年3月単月は 8.2千tの供給過剰となっ
た。また、INSG 2016年春季大会予測によると、2016年は4.9万tの供給不足。
✍ 主要鉱山操業状況:KGHM社・カナダMc Creedy West鉱山(年産生産量17千t)10/1~操業停止(9/20)。中国主要ニッケル
生産者8社、12月~合計10万tの減産実施の見込み(11/26)。中国フェロニッケル11社、2016年20%減産提議(12/15)。
ニッケル平均価格
US$/t
2014年
16,867
2015年
11,806
2015年6月
12,780
2015年7月
11,386
5,000
50
8,310
LME在庫
需給バランス
LME価格(Cash settlement)
2016/1
10
7
4
2015/1
10
7
4
2014/1
10
7
4
10
7
4
10
SHFE在庫
2013/1
8,689
(50)
7
8,853
0
4
8,704
2012/1
2016年5月
150
2011/1
2016年4月
10,000
10
2016年3月
8,483
250
7
2016年2月
8,692
15,000
4
2016年1月
9,232
350
2010/1
2015年12月
10,344
20,000
10
2015年11月
9,898
450
7
2015年10月
550
25,000
4
2015年9月
10,342
30,000
2009/1
2015年8月
需給バランス /
LME在庫(千t)
一次ニッケルの需給バランスと価格動向
価格(US$/t)
5
金・プラチナ・パラジウム市況(2016.5/16~2016.6/3)
■金市況:ドル安や米国利上げが先送りされるとの観測を背景に4月下旬より上昇し、その後横ばい推移していた金は当該期
間1,283US$/ozでスタート、ドル高基調に転じたことが圧迫材料となり、下落傾向をたどり、5/31には2か月ぶりの安値となる
1,211US$/tまで下落。足元価格は1,225.75US$/oz(6/3)。
■プラチナ・パラジウム市況:中国の景気改善見通しやドル安に下支えされ、5/3に2016年最高値の1,082US$/ozとなったプラチ
ナは、当該期間1,055.5US$/ozでスタートしたものの、ドル高の進行が嫌気され下落傾向が続き、5/25には1,000US$/ozを割り込
む安値となった。足元価格は969.5US$/oz(6/3)。4月中旬以降、600US$/tを挟んで横ばい推移していたパラジウムも、米国の
早期利上げ観測やドル高に下押しされ、当該期間は600US$/ozを割り込む値動きが続き、5/25には528US$/ozの安値を付け
た。その後は、小幅に反発し、足元546.5US$/oz(6/3)。
金・プラチナ
平均価格
金
US$/oz
プラチナ
US$/oz
パラジウム
US$/oz
2014年
1,244
1,423
734
2015年
1,159
1,052
690
2015年6月
1,182
1,090
728
2015年7月
1,131
1,014
643
1,400
1,118
984
595
1,200
1,125
967
607
1,157
976
690
1,087
886
576
1,068
860
551
600
1,097
854
499
400
1,197
919
505
1,246
968
566
1,242
994
573
1,260
1,035
577
2015年9月
2015年10月
2015年11月
2015年12月
2016年1月
2016年2月
2016年3月
2016年4月
2016年5月
2014年1月末
南ア・スト開始
1,800
1,600
プラチナ価格
金最高値
1,923US$/oz
(2011.9.5)
1,000
800
200
金価格
パラジウム価格
2012年8月
Marikana鉱山事件
2014年2月
ウクライナ情勢緊迫化
2014年7月
欧米による対露制裁強化
0
2009/1
2009/4
2009/7
2009/10
2010/1
2010/4
2010/7
2010/10
2011/1
2011/4
2011/7
2011/10
2012/1
2012/4
2012/7
2012/10
2013/1
2013/4
2013/7
2013/10
2014/1
2014/4
2014/7
2014/10
2015/1
2015/4
2015/7
2015/10
2016/1
2016/4
2015年8月
US$/oz
2,000
6