少花粉ヒノキコンテナ苗の植栽後の生育 畑

〔少花粉ヒノキにおけるコンテナ育苗技術の確立〕
少花粉ヒノキコンテナ苗の植栽後の生育
畑
尚子・中村健一・新井一司
(緑化森林科)
-------------------------------------------------------------------------------【要
約】植栽後のコンテナ苗の生長状況を把握するため,裸苗の生長と比較した結果,
コンテナ苗は裸苗に比べ,4月植栽,8月植栽共に活着率の優位性が示唆された。また,
植栽初年では,コンテナ苗は,樹高生長より根元径生長を優先することが示唆された。
-------------------------------------------------------------------------------【目
的】
林業の低コスト化が求められているなか,活着が良いとされているコンテナ苗が注目され
ている。また,東京都では森林循環促進事業の一環として,少花粉品種による苗木植栽が
行われている。ここでは,少花粉ヒノキの裸苗とコンテナ苗を林地に植栽し,生長量およ
び活着率を比較することで,植栽後の少花粉ヒノキのコンテナ苗の特性を明らかにする。
【方
法】
調査は,日の出町内の試験地(標高 250m,傾斜 25°,西向き斜面)にて行った。2015
年4月に少花粉ヒノキのコンテナ苗(マルチキャビティコンテナ 300cc で育成),対照とし
て裸苗(路地の苗床で育成)をそれぞれ 15 本植栽した。8月にはコンテナ苗 12 本,裸苗
15 本を植栽した。調査は,活着状況,樹高,根元径の3項目について行い,4月に植栽し
た苗については植栽直後(活着状況については植栽 13 日後),8月,11 月の3回,8月に
植栽した苗については植栽直後(活着状況については植栽 18 日後),11 月の2回行った。
【成果の概要】
1.活着率:4月,8月植栽苗のいずれも,裸苗よりコンテナ苗が 11 月時点での活着率が
高かった(図1)。これは,コンテナ苗は根鉢をつけたまま植栽するため,根に対する損
傷が少ないことや,根鉢に含まれる培地が乾燥を防ぐことが理由として考えられる。
2.樹高,根元径生長:4月植栽の苗について,コンテナ苗,裸苗とも同等な樹高生長,
根元径生長を示した(図2,3)。8月植栽の苗についても,コンテナ苗,裸苗は同等の
樹高生長,根元径生長を示した(図4,5)。
3.樹高と根元径の比較樹高(H/D):4月,8月植栽の苗の H/D の推移を図6と図7に示
す。4月植栽の苗の H/D は,植栽時にはコンテナ苗の値が高かったが,11 月には転じて
コンテナ苗の方が低くなった。8月植栽の場合も,コンテナ苗の H/D が裸苗より低くな
った。コンテナ苗は裸苗に比べ徒長気味だったが,樹高生長より根元径生長が上回った
結果,値が逆転したと考えられる。また,4月植栽の苗はコンテナ苗,裸苗とも H/D が
高くなったのに対し,8月植栽では両者とも H/D が低くなった。8月植栽時の水分不足
等のストレスが,樹高生長より根元径生長へと資源投資に影響を与えたと考えられる。
4.まとめ:少花粉ヒノキについて,コンテナ苗は裸苗に比較し,活着率が高いことが示
唆された。また,植栽当年において,コンテナ苗は,樹高生長より根元径生長を優先す
ることが示唆された。コンテナ苗の生長特性を明らかにするため,今後も生長量の調査
を継続する必要がある。
100
活着率(%)
100
73.3
80
58.3
60
40.0
40
20
0
コンテナ苗
裸苗
コンテナ苗
4月植栽
裸苗
8月植栽
90
90
80
80
70
70
60
60
樹高(cm)
樹高(cm)
図1 11 月時点での苗の活着率
50
40
50
40
30
コンテナ苗
30
20
裸苗
20
裸苗
10
10
0
0
4月
8月
4月
11月
図2 4月に植栽した苗の樹高の推移
11月
12
10
8
8
根元径(mm)
10
6
コンテナ苗
4
6
4
コンテナ苗
裸苗
裸苗
2
2
0
0
4月
8月
11月
4月
図4 4月に植栽した苗の根元径の推移
80
80
75
75
70
70
65
60
8月
11月
図5 8月に植栽した苗の根元径の推移
H/D
H/D
8月
図3 8月に植栽した苗の樹高の推移
12
根元径(mm)
コンテナ苗
65
60
4月植栽 コンテナ苗
55
8月植栽 コンテナ苗
55
4月植栽 裸苗
50
8月植栽 裸苗
50
4月
8月
11月
図6 4月に植栽した苗の樹高/根元径
(H/D)の推移
4月
8月
11月
図7 8月に植栽した苗の樹高/根元径
(H/D)の推移