言語聴覚士教育モデル・コア・カリキュラムの作成に向けて 2016(平成

言語聴覚士教育モデル・コア・カリキュラムの作成に向けて
2016(平成 28 年)年 3 月末現在、我が国の言語聴覚士指定養成校は 70 校を上回り、言
語聴覚士の数は 2 万 5000 人を超えています。言語聴覚士の教育は卒前教育から卒後教育へ
と生涯に渡って継続的に実施されるべきものですが、現状においてはその継続性が必ずし
もうまく機能しているとはいえません。その原因の一つが、卒前教育において「何をどこ
まで身につけるか」が言語聴覚障害学分野全体で共有されていないことにあると考えられ
ています。養成教育で必要な科目と単位数は言語聴覚士学校養成所指定規則で定められて
いますが、修得すべき知識・技能・態度の内容は各養成校の判断に任されています。各養
成校が独自の理念に基づいて特色ある教育を実践することは教育の基本ではありますが、
利用者に対し一定水準以上の言語聴覚療法の質を担保するためには、卒業までに修得すべ
き必要最小限の知識・技能・態度すなわち卒業時の到達目標を養成校のみならず本分野全
体で共有する必要があります。
近年、言語聴覚療法を取り巻く環境の変化は激しく、教育現場ではそれに対応した教育
内容の更新が常に求められています。また、学問やテクノロジーの進歩、臨床技術の高度
化・専門分化に伴い、言語聴覚療法に関連する知識・技術の量は増大し続けています。こ
のように増大する情報のすべてを数年間の養成課程で修得することは不可能であり、卒前
教育においては真に必要な基本的知識・技能を精選して修得し、発展的な知識・技能の習
得は卒後教育に委ねることが重要です。しかしながら、本分野ではまだこのような体制が
十分に整っているとはいえません。
言語聴覚士教育の向上を目指すには、卒前教育において「何をどこまで修得するか」
を明示した言語聴覚士教育モデル・コア・カリキュラムを作成し、本分野全体で共有する
ことが重要と考えられます。モデル・コア・カリキュラムでは言語聴覚士になるために修
得すべきコア(核)となる教育項目とその内容(カリキュラム)を体系的に示すことにな
ります。このような趣旨のもと、2012 年(平成 24 年)秋に言語聴覚士教育モデル・コア・
カリキュラム諮問委員会が発足しました。本委員会は同年 11 月から活動を開始し、次項に
示す取り組みをこれまでに行ってまいりました。現在は具体的なカリキュラムを考案、作
成中です。
言語聴覚療法の質を保証するモデル・コア・カリキュラムを完成させるには多様な形態
の養成校の教員、臨床実習のスーパーバイザー、卒後教育の担当者を始めとして全協会員
の皆様の議論へのご参加とご協力が不可欠です。今後継続的に作業経過を報告し、皆様の
ご意見を収集する場も設けて参りますので、ご協力・ご支援のほどよろしくお願い申し上
げます。
言語聴覚士モデル・コア・カリキュラム諮問委員会メンバー
委員長
藤田郁代
副委員長 内山千鶴子、原 由紀、倉智雅子
委員
深浦順一、長谷川賢一、立石雅子、藤原百合、城間将江、瀬戸淳子、
為数哲司、柴本 勇、鈴木真生、飯塚菜央