県内の大型連休期間中の観光動向等について

2016年6月7日
日本銀行青森支店
県内の大型連休期間中の観光動向等について
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【要 旨】

今年の大型連休(以下、GW)期間中の県内各地の観光動向は、前年に引き続き
堅調だった。すなわち、例年に比べて桜の開花時期が早まったことなどから、桜・
春祭りへの入込みは減少したものの、各観光関連施設(宿泊施設、観光施設<博物
館等>、道の駅)の売上は堅調に推移した。この背景として、①北海道新幹線開業
効果により北海道からの入込みが増加したこと、②外国人観光客の入込みが増加し
たこと、③ガソリン価格の下落を背景に県内や近隣県からの入込みが堅調だったこ
とに加え、④宿泊施設を中心に値上げの実施等により客単価が上昇したことが寄与
した。
 最近の外国人観光客の受入動向をみると、宿泊施設や観光施設では約8割の先
で外国人観光客の入込みが増加している。特に誘客に積極的に取り組んでいる先
ほど、高い増加率となっており、新たな需要獲得に成功している姿が確認された。
 北海道新幹線開業効果は、現状、約3割の先が効果を実感している。先行きにつ
いては、7割以上の先がデスティネーションキャンペーンや東北六魂祭といったイ
ベントに加え、道南地域との交流人口の増加や外国人観光客の流入増加による観光
業の盛り上がりを期待している。こうした中、各観光関連施設では、開業効果を期
待して、誘客強化に向けた取り組みを「実施済」または「実施予定」とする先が前
年に比べて増加しており、半数以上の先が誘客強化に取り組んでいる。具体的には、
宣伝・営業活動の強化や他社・行政等との連携に取り組んでいる先が多いほか、前
年に比べると設備投資や人員の増強・確保など、踏み込んだ施策を行う先が増加し
ている。
1.GW期間中の天候等の状況
○ 今年のGW期間は、曜日構成に恵まれ、休日が2日多かったものの、桜の開花時
期や満開時期が、前年同様、平年に比べて早かったうえ、前年よりも雨天が多く、
特にGW期間前半に集中したことにより桜が散ってしまったことから、見頃が重な
らない地域が多かった(図表1、2)。
(図表1)GW期間中の曜日構成と天候
休日数
4/28
火
0
29
水
0
30
木
0
5/1
金
0
2
土
0
3
日
0
4
月
3.0
5
火
0
6
水
0
7
木
0
8
金
0
降水量
0
0
0
0
0
0
1.5
0
0
0
0
曜日
0
木
17.0
0
金
14.5
0
土
0
0
日
0
0
月
0
0
火
0
0.5
水
2.5
0
木
0
0
金
0.5
0
土
5.5
0
日
0
15.5
12.5
3.0
0
0
0
0.5
0
0
4.0
0
39.0
34.5
0.5
0
0
0
1.0
0
0
0.5
0
曜日
6日
青森市
2015年
弘前市
八戸市
8日
青森市
2016年
弘前市
(降水量、mm)
降水量
八戸市
※シャドーは休日および雨天。
(資料出所)気象庁
(図表2)桜の開花日
■弘前市
開花日
満開日
平年
4/23日
4/28日
2015年
4/16日
4/23日
(資料出所)日本気象協会
■青森市
2016年
4/18日
4/23日
開花日
満開日
1
平年
4/24日
4/29日
2015年
4/14日
4/19日
2016年
4/17日
4/21日
2.桜・春祭りの入込み
○ 県内各地の桜・春祭りの入込み(県内9先を集計)は、前年同様、平年よりも
桜の開花が早くGW期間中に桜の見頃が重ならなかったほか、GW期間前半に雨
天が多く、天候に恵まれなかったことから、多くの先で前年を下回り、全体では
288 万人と前年比▲5.8%減少した(図表3、4)。
(図表3)県内各地の桜・春祭りの入込み状況(県内9先を集計、速報ベース、以下同)
(
)内は集計期間、(単位:千人、前年比%)
2016 年
前年比
144
(4/23~5/5)
▲ 39.7
2,080
(4/23~5/5)
+ 6.1
208
(4/29~5/5)
▲ 32.2
黒石さくらまつり
53
(4/23~5/5)
▲ 7.0
十和田市春まつり
148
(4/20~5/5)
0.0
むつ桜まつり
27
(4/29~5/5)
▲ 15.8
金木桜まつり
208
(4/29~5/5)
▲ 30.0
さんのへ春まつり
8
(4/29~5/5)
▲ 38.5
のへじ春まつり
7
(4/29~5/5)
▲ 24.4
青森春まつり
弘前さくらまつり※
はちのへ公園春まつり
2,883
合計
▲ 5.8
※準まつりを除くベース。
(資料出所)各祭り本部
(図表4)桜・春祭りの入込み客数の推移
(千人)
4,500
4,000
3,412
3,500
3,061
3,076
3,000
2,883
2,500
2,560
2,000
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16年
※2006 年から 2015 年は青森県公表の確報計数、2016 年は各祭り本部の速報計数を集計。
(資料出所)各祭り本部、青森県
2
3.観光関連施設の動向等(以下、当店アンケート結果)
~アンケート概要~
対象期間:4 月 28 日~5 月 8 日
対象先:県内の主要宿泊施設、観光施設(博物館、資料館、物産館、史跡等) 、道の駅
対象先数:103 先(回収先 95 先、回収率 92.2%)
(1)GW期間中の観光関連施設の動向
○ GW期間中の観光関連施設の売上は、宿泊施設や観光施設で前年を若干下回ったも
のの、ここ数年でみると高水準で推移し、概ね堅調であった(図表5、6)。
○ 宿泊施設・観光施設では、客数が減少したものの、客単価が上昇したことから、売
上はわずかな減少に止まった。一方、道の駅では、ガソリン価格の下落等を背景に県
内・近隣県からの車での入込みが好調だったことから、売上・客数ともに増加した。
○ 宿泊施設・観光施設の客数は、北海道新幹線開業効果により北海道からの入込みや
外国人観光客の入込みが増加した先がみられたものの、桜の見頃が重ならなかったこ
とから他の行楽地(北海道など)に観光客が流れたとの声が多く聞かれたほか、一部
で熊本地震を受けた団体客のキャンセルがみられたことから減少した(図表7、後掲
図表)。
○ 客単価は、宿泊施設を中心に、値上げの実施等により上昇する先が多くみられた(後
掲図表)。
(図表5)GW期間中の観光関連施設の売上等 (図表6)売上の水準推移(2010 年=100)
(前年比%、先)
前年比
宿泊施設
観光施設
道の駅
売上
客数
客単価
売上
客数
客単価
売上
客数
客単価
▲
▲
+
▲
▲
+
+
+
▲
0.7
3.8
3.2
0.1
2.0
2.0
4.9
6.8
1.8
130
回答先数
120
増加 横ばい 減少
45
22
1
22 110
45
21
0
24
45
31
1
13 100
11
5
0
6
90
11
3
0
8
11
7
0
4
80
23
16
0
7
23
14
0
9
70
23
15
1
7
115.1
112.8
100.8
宿泊施設
観光施設
道の駅
10
11
12
13
14
15 16年
(図表7)出発地別の観光客の入込み動向(先数の構成比、%)
■県内客・県外客
■県外客の地域別動向
増加―減少
(%P)
20
県内客
64
32
県外客
33
16
34
東北他県
26
関東・首都圏
27
50%
増加
不変
51
54
47
13 +23
20
+6
26
+1
28
▲15
▲2
その他
0%
36
北海道
+4
増加―減少
(%P)
100%
13
58
0%
減少
50%
増加
不変
※図表内の構成比は、四捨五入の関係で全体と内訳の合計が一致しない場合がある(以下同)
。
3
100%
減少
(2)観光関連施設の価格設定スタンス
○ 最近の価格設定スタンスは、全体では 25%の先が値上げを実施または予定してお
り、特に宿泊施設では約4割の先が宿泊料金等について、値上げを実施または予定
している(図表8、9)。すなわち、全体としては、客離れ・売上減少の懸念等か
ら、値上げには慎重な先が多いものの、堅調な需要を背景に、仕入価格や人件費の
上昇等を転嫁すべく、価格を引き上げる動きも相応にみられている(図表 10、11)。
(図表8)最近の価格設定スタンス(先数の構成比、%)
合計
25
宿泊施設
38
観光施設
道の駅
2
73
4
58
変更なし
83
17
4
96
0%
50%
値上げ(予定含む)
値下げ(予定含む)
100%
(図表9)具体的な値上げの事例
具体的な値上げの事例
宿泊施設
観光施設
道の駅
・仕入価格や人件費の上昇を転嫁すべく、宿泊料や飲食メニュー価格を引上げ。
・需要好調を受けて、需要期の宿泊料や外国人観光客向けプランの値上げを予定。
・設備の整備・拡張に伴い入館料を値上げ。
・飲食メニューの品質を高めることによる値上げを予定。
・仕入価格や人件費の上昇を転嫁すべく、加工品や土産物の価格を引上げ。
(図表 10)値上げの理由(先数、複数回答含む)
8
仕入価格上昇を転嫁
6
人件費の上昇を転嫁
4
需要好調を受けて価格引上げ
他社等の値上げに追随
2
サービス・商品の品質向上に伴う値上げ
2
建設コスト上昇を転嫁
2
その他
2
0
2
4
6
8
10 (先)
(図表 11)価格据置・値下げの理由(先数、複数回答含む)
37
客離れ・売上減少を懸念
21
自社努力による経費削減
20
価格競争力の保持・強化
12
仕入価格・人件費の上昇なし
5
その他
0
10
4
20
30
40 (先)
(3)外国人観光客の獲得に向けた取り組み
○ GW期間を含めた最近の外国人観光客の受入状況は、全体では約 7 割、宿泊施
設・観光施設では約8割の先で増加しており、県内の多くの施設で幅広く入込み
が増加している姿が確認された。増加している先では、約4割(宿泊施設では約
5割)が前年比+10%以上増加している。また、約1割の先が同+30%以上の高
い伸び率となっている。国別では、台湾や中国、タイなどのアジア圏を中心に入
込みが増加している(図表 12~14)。
○ 外国人観光客の獲得に向けた取り組みスタンスをみると、積極的であると回答
した先の割合は 35%と、2013 年調査以降、徐々に高まっており、先行きについて
は、積極的とする先が 43%と、さらに増加している(図表 15)。
○ 取り組みスタンス別に外国人観光客の増加率をみると、積極的に取り組んでい
る先の方が、高い伸び率となっている。外国人観光客の獲得に向けて積極的施策
を実施している先が、新たな需要獲得に成功している姿が確認された(図表 16)。
▽最近の外国人観光客受入状況
(図表 12)増加・減少先の構成比(先数の構成比、%)
67
合計
10
23
77
宿泊施設
9
80
観光施設
38
道の駅
7
14
0%
13
48
50%
(図表 13)増加先の増加幅
(先数の構成比、%)
+10%以上増加先:39%
38
観光施設
75
道の駅
75
0%
10
17
8
25
50%
0~+10%
100%
+10~20%台
+30%以上
35
台湾
中国
タイ
米国
韓国
欧州
その他
8
31
52
宿泊施設
100%
(図表 14)増加した外国人観光客の国籍
(先数、複数回答含む)
61
合計
増加
減少
受入なし
14
19
11
8
7
4
1
0
10
20
30
40(先)
(図表 15)外国人観光客獲得に向けた取り組み (図表 16)取り組みスタンス別増加幅
スタンス(先数の構成比、%)
(先数の構成比、%)
2013年調査
25
26
48
2015年調査
32
59
10
今回調査
35
53
12
43
先行き
0%
積極的
67
+10%以上増加
47
9
50%
現状維持
100%
消極的
0~+10%増加
減少または受入なし
5
29
39
8
0%
積極的
55
65
50%
現状維持
5
6
27
100%
消極的
○ 外国人観光客獲得に向けて取り組んでいる内容をみると、「無線LAN等のネ
ットインフラの整備」や「外国人向けHPやパンフレット等の作成」のほか、企
業や行政等との提携・連携について、多くの先が取り組みを進めている(図表 17)。
○ 課題については、前回調査時に比べ、
「外国語に対応できる人材の確保」や「外
国人向けHPやパンフレット等の作成」、
「他社や行政等との連携」の項目を課題
とする先が減少しており、取り組みが進捗している姿が確認された。一方、
「外
国人向けの商品やイベントの企画・開発」を前回よりも課題とする先が増加した
ほか、「補助金や制度融資の活用」、「営業の整備・拡充」を挙げ、設備面の充実
を課題とする先も目立った(図表 18)。
(図表 17)外国人観光客獲得に向けて取り組んでいる内容
(先数、複数回答含む、有効回答先数:93 先)
無線LAN等のネットインフラの整備
60
外国人向けHPやパンフレット等の作成
43
旅行会社・交通機関等との提携
38
他社や行政等との連携
37
25
外国語に対応できる人材の確保
免税カウンターや銀聯カード等の決済体制整備
25
営業施設の整備・拡充
17
補助金や制度融資の活用
17
13
外国人向けの商品やイベントの企画・開発
0
10
20
30
40
50
60
(図表 18)外国人観光客獲得に向けた課題
(先数、複数回答含む、有効回答先数<前回:90 先、今回:93 先>)
外国語に対応できる人材の確保
77
48
外国人向けHPやパンフレット等の作成
53
31
他社や行政等との連携
旅行会社・交通機関等との提携
22
19
21
無線LAN等のネットインフラの整備
外国人向けの商品やイベントの企画・開発
免税カウンターや銀聯カード等の決済体制整備※
70
(先)
33
32
37
51
37
19
営業施設の整備・拡充※
30
補助金や制度融資の活用※
40
0
20
前回調査時の課題
※今回調査より設問に追加した項目。
6
40
60
今回調査時の課題
80
(先)
(4)北海道新幹線開業を受けた誘客強化の取り組み
○
北海道新幹線開業の観光業への効果については、現状、約3割の先が効果を実
感している。また、先行きについては、デスティネーションキャンペーンや東北
六魂祭といったイベントに加え、道南地域との交流人口の増加や外国人観光客の
流入増加等について、7割以上の先が期待していると回答した(図表 19、20)。
○ こうした先行きの期待感から、北海道新幹線開業を契機として誘客強化に取り
組む動きが積極化している。今回調査では誘客強化の取り組みを「実施済」また
は「実施予定」と回答した先の割合が、1年前の調査結果(34.1%)に比べ+17.5%
ポイント上昇の 51.6%と、半数以上の先が誘客強化に取り組んでいる(図表 21)。
(図表 19)北海道新幹線開業の観光業への効果(先数の構成比、%)
現在 2
30
大いに効果がみられている
少し効果がみられている
効果はみられていない
68
先行き 0% 11
62 50%
0%
27
50%
100%
大いに期待している
少し期待している
期待していない
100%
(図表 20)期待している内容(先数、複数回答含む)
49
青森県・函館デスティネーションキャンペーン
41
道南地域との交流人口の増加
34
東北六魂祭
30
外国人観光客の道南地域からの流入増加
23
メディアや旅行代理店等からの注目度向上
2
その他
0
20
(図表 21)北海道新幹線開業に伴う誘客強化への取り組み状況
(先数の構成比%、%P)
13/5 月
14/5 月
15/5 月
16/5 月
(今回)
実施済
変化幅
4.4
12.4
14.3
33.3
+ 19.0
13.2
16.9
19.8
18.3
▲ 1.5
17.6
29.3
34.1
51.6
+ 17.5
検討中
48.4
40.4
42.9
15.1
▲ 27.8
検討なし
34.1
30.3
23.1
33.3
+ 10.2
実施予定
小計
7
40
60(先)
○ 誘客強化の取り組みについて、
「実施済」または「実施予定」と回答した先の具
体的な取り組みをみると、函館地区を中心とした「宣伝・営業活動の強化」や「他
社・行政等との連携」に取り組んでいる先が多くみられた。また、前年に回答が
ほぼ皆無だった「設備投資」や「人員の増強・確保」を実施する先がみられるな
ど、設備・体制面に踏み込んで取り組む先が増加した(図表 22、23)。
○ 今後、こうした取り組みの広がりにより、当県観光業の更なる盛り上がりが期
待される。
(図表 22)実施済・予定と回答した先の取り組み内容
(先数、複数回答含む、有効回答先数<前回:34 先、今回:48 先>)
24
宣伝・営業活動の強化
17
他社・行政等との連携
27
12
新商品の開発
3
設備投資
0
人員の増強・確保
1
その他
0
34
20
前回調査
今回調査
13
8
2
10
20
30
40 (先)
(図表 23)具体的な取り組み事例(実施予定を含む)
・北海道道南地区への営業の強化。
宣伝・営業活動の強化
・WEB における情報発信・宣伝の強化。
・修学旅行生を対象とした PR 活動の強化。
・旅行代理店や鉄道会社と連携したプランの作成や PR の強化。
他社・行政等との連携
・自治体やコンベンション協会、金融機関との連携による各種イベ
ントやキャンペーン、PR 活動への参画。
・地場産品を活用したオリジナル商品の開発。
新商品の開発
・外国人向け等の体験型プランの開発。
・新たな観光コースの開発。
・宿泊施設の拡充(別館新設など)を計画。
設備投資
・客室のリニューアルを実施。
・外国語に対応するための案内板等を整備。
人員の増強・確保
・外国語に対応できる人材の確保。
・飲食店舗拡張に伴う人員増強。
以
8
上