マイナス金利下の アベノミクス マイナス金利下の アベノミクス

Vol.217
2016
6
マイナス金利下の
アベノミクス
○景気の停滞局面が続いていることもあり、日銀は今年1月末の金融政策決定会合
において「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入を決定した。
○マイナス金利政策の導入により、金融市場参加者に量的・質的金融緩和の限界を
意識させ、更なる円高の流れを作ってしまった。
○安倍政権が発足した2012年末以降、公共投資の水準は高まったものの、供給制約
から公共投資の実行が後ずれする傾向が生じ、景気押し上げ効果は限定的になり
つつある。
○選挙対策としての社会福祉拡大政策にも見えるが、今回の「ニッポン一億総活躍プ
ラン」等が労働市場改革に繋がる可能性は高い。金融・財政政策の限界が見えつ
つある中で、安倍政権による構造改革、成長戦略の本気度が問われる局面にある
と言えるだろう。
図1 90年代以降の日本の金融政策
マイナス金利を付加
(%)
9
8
7
6
無担保コール
翌日物レート
ゼロ
金利
政策
量的緩和政策
量的・
包括
質的金融
緩和政策
緩和政策
5
4
3
2
1
0
-1
90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 (年)
(出所) 日本銀行資料より野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
1
Vol.217 2016.6
投資の視点
マイナス金利下のアベノミクス
てしまうことにも繋がり、更なる円高の流れが生じてしまっ
た。これは、サプライズを含む様々な形で期待に働きかけ
ることに主眼を置いてきた日銀にとって、市場参加者との
対話に失敗したケースといえるだろう。
●停滞局面が続く日本経済
2016年1-3月期の実質国内総生産(GDP)成長率の速
報値は、前期比年率+1.7%と昨年10-12月期のマイナス
成長からプラスに転じた(図2参照)。個人消費も前期比年
率+1.9%と前期の同▲3.3%からプラスに転じた。しかし、
1-3月期の実質個人消費は閏年の影響を含んでおり、そ
の効果を調整すると個人消費は年率でもゼロ%台半ば程
度の伸びに留まると推測される。すなわち、昨年からの個
人消費の弱含みは続いていると判断されるのだ。また、
4-6月期の実質GDP成長率も、4月中旬に発生した熊本地
震の影響により低迷する可能性が高い。
その後4月下旬には、日銀はマイナス金利の効果を見
極めるのに時間を要するとし、追加緩和を行わなかった。
金利低下により貸出金利が低下し、貸出が増加するとい
った経路は通常半年程度の期間を要すると見られ、日銀
によるマイナス金利政策の評価は6月或いは7月の金融
政策決定会合において示されよう(図3参照)。マイナス金
利による効果が予想外に小さいと評価されたり、外部環
境の変化による円高の再燃や基調物価の低下が生じたり
した場合、日銀が追加緩和を行う可能性は高い。ただし、
日銀が追加緩和を行うほど、金融緩和の手段や効果の限
界を意識させてしまう点には注意が必要だ。
●「マイナス金利付き」緩和政策の導入
景気の停滞が続いていることに加えて、昨年12月以降
に円高が進んだこともあり、日銀は、今年1月末に開催さ
れた金融政策決定会合において、2%の「物価安定目標」
を出来るだけ早期に実現するため、「マイナス金利付き量
的・質的金融緩和」の導入を決定した。国債購入によるマ
ネ タ リ ー ベ ー ス の 拡 大 を 目 指 す 「 量 的 緩 和 」 、 ETF や
J-REITなどの購入による「質的緩和」に加え、「マイナス金
利」による三次元での緩和が可能となる政策だ(図1参照)。
●財政の景気押し上げ効果は限定的
安倍首相は、2016年度予算が成立した後、景気減速を
背景に同予算の前倒し執行による景気下支えを指示した。
実際、4月の公共工事前払金保証額は大幅に増加した。
安倍政権が発足した2012年末以降、アベノミクス2本目
の矢である「機動的な財政政策」により、公共投資の水準
は高まった。しかし、2014年以降は景気対策として公共投
資の発注が増加したとしても、供給制約から公共投資の
実行が後ずれする傾向が生じている。事実、公共工事の
発注額が増加しても、実際の公共投資額は23~24兆円前
後と概ね横ばい圏で推移している(図4参照)。また、建設
関連の就業者数も2010年以降、500万人前後で推移して
おり、民間部門も含めて人手不足の状況が続いている。
黒田総裁就任後の日銀は、国債やETFなどの購入によ
る量的・質的金融緩和(QQE)の拡大こそが期待インフレ
率を高めると共に金利低下効果を生み出し、早期のデフ
レ脱却を可能にすると喧伝してきた。しかし、円高の進展
に対応する形で新たにマイナス金利政策を導入したことに
より、金融市場参加者の間では日銀の金融政策は為替
水準を目標にしているとの見方が強まった。また、同時に
金融市場参加者がQQEによる金融緩和の限界を意識し
図2
日本の実質GDP成長率・寄与度の推移
図3 国内銀行の企業向け新規貸出金利の推移
(%)
1.1
(前期比年率、%)
15
10
1.0
5
0
0.9
-5
-10
個人消費
設備投資
政府消費
外需
-15
-20
10
11
住宅投資
在庫投資
公共投資
実質GDP
12
13
0.8
0.7
14
13/1
15
16
(年)
(出所) Datastreamデータより野村アセットマネジメント作成
13/7
14/1
14/7
15/1
15/7
16/1
(年/月)
(注) 3ヵ月移動平均値
(出所) 日本銀行データより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
2
Vol.217 2016.6
立たない状況になりそうだ。また、政権発足以降に増加し
ている税収を活用すれば良いとの意見もある一方で、借
金を増やす形での財源確保に慎重な意見も根強い。
公共投資の拡大による景気押し上げ効果は限定的だ。
今後も同様に景気押し上げには繋がらないと見られる
ものの、景気の下支えは可能だろう。今年度の公共投資
は前倒しで執行される上、年度後半にも第二次補正予算
が編成されると見られ、投資が切れ目なく行われるためだ。
また、政府の予算編成の指針となる「基本方針(骨太の方
針)」では鍵として「分配」が掲げられており、補正予算で
は従来型の公共投資に加えて、分配政策を意識した施策
が導入されることとなり、アベノミクスの恩恵が広範囲に広
がることも期待される。
また、「同一労働同一賃金」に関する制度改正についても、
労働契約法などの改正は検討段階に留まり、具体的な改
正の時間軸には触れられていない点が不安材料だ。待遇
格差に関するガイドラインについては早期に作成されそうだ
が、これにより具体的な施策の実行を伴って安倍政権の目
指す『成長』から『分配』への流れを作れるかが鍵となろう。
7月の参議院議員選挙前でもあり、一連の施策は選挙
対策としての社会福祉拡大政策に聞こえる側面もある。し
かし、これが労働市場改革、ひいては生産性の向上に繋
がる可能性は高い。女性や高齢者の就業率が上昇してき
ている中、具体的な施策が更に強化されれば、労働人口
を増やすとともに生産性向上への取り組みにも繋がる(図
5参照)。事実、政府は「子育てや介護と仕事が両立しや
すくなることなどにより、様々な人材が参加することで、社
会に多様性が生まれる。それが労働参加率の向上だけで
なく、イノベーションを通じて生産性の向上を促し、経済の
好循環を強化する」としている。
●構造改革がアベノミクスの本流
5月中旬には安倍政権が掲げる「一億総活躍社会」の実
現に向けた中長期計画である「ニッポン一億総活躍プラン」
がまとめられた。そこでは「強い経済、『成長』の果実なくし
て『分配』を続けることはできない」と明記され、日本経済が
抱える高齢化と人口減少という問題を解決し、経済成長を
続けるための方策が示されている。中心となる施策は、子
育て・介護支援と働き方改革である。子育て・介護支援は、
人手不足が問題となっている保育士と介護職員の確保の
ための賃金の引き上げだ。働き方改革では、労働関係法
案の改正により非正規社員と正規社員の賃金格差を是正
する「同一労働同一賃金」への動きを目指す内容である。
今後は、労働環境の改善とともに、税制改革等を通じて
働くインセンティブが強化されるような施策を補完することが
期待される。これは、アベノミクスが当初より目指していた方
向性のはずだ。財政健全化が求められるなかで拡張的な
財政政策を際限なく続けられる訳ではなく、また金融政策の
限界が見え始めているなかで、安倍政権による構造改革、
成長戦略の本気度が問われる局面にあると言えるだろう。
しかし、政策の実効性には課題が残る。5月末の主要国
首脳会議(伊勢志摩サミット)では、現在の世界経済の状
況が2008年のリーマンショック直前と似ているとの分析が
示された。来年4月の消費税率引き上げにより日本経済
が急速に悪化する可能性があり、増税を再延期する方針
となった。これにより様々な政策の財源を手当する目途が
図4
公共投資と公共工事前払金保証額の推移
(兆円)
30
28
古澤 智裕(経済調査部)
公共投資(年率値、左軸)
図5 日本の15~74歳の女性の労働参加率の推移
(兆円)
17
公共工事前払金保証額 (年率換算
値、2四半期先行、右軸)
(%)
60
16
59
15
26
58
14
57
13
24
56
12
22
55
11
20
18
10
54
9
53
91 93 95 97 99 01 03 05 07 09 11 13 15
(年)
(出所) Datastreamデータより野村アセットマネジメント作成
04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17
(年)
(注) 2016年4-6月期の公共工事前払金保証額の数値は
4月季節調整を年率換算した値。
(出所) 内閣府、Datastreamデータより野村アセットマネ
ジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
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投資環境レポート
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為替レート
円
ユーロ
2016年5月末の対米ドルの円相場は1米ドル=
110.7円となり、4月末の106.4円に対して4.0%の円
安となった。円は月間を通じて概ね円安基調で推
移した。
2016年5月末の対米ドルのユーロ相場は、1ユ
ーロ=1.11米ドルとなり、4月末の1.14米ドルに対し
て2.8%のユーロ安となった。月間を通じて概ねユ
ーロ安基調での推移となった。なお、対円では、米
ドル高(円安)の影響もあり、1ユーロ=121.9円か
ら123.3円へ1.1%のユーロ高となった。
米国の利上げ観測の変化や経済指標が円の
対米ドル相場の主要な変動要因となった。4月の
米サプライマネジメント協会(ISM)非製造業景況
感指数が前月と市場予想を上回ったことなどを受
け、月初に米ドル高・円安傾向となった。その後、4
月の米雇用統計において非農業部門雇用者数は
市場予想を下回る伸びに留まり、早期利上げ観測
が後退したものの、ニューヨーク連銀総裁が年内2
回の利上げは依然として「妥当な予想」であると述
べたことで円高にはならなかった。また、麻生財務
相などによる円高牽制発言も為替相場に影響を
与えた。月半ばには4月の米小売売上高が市場予
想を上回ったことや4月の米連邦公開市場委員会
(FOMC)議事録発表を受け、6月の利上げ観測が
高まると米ドル高・円安が一層進んだ。
米国の利上げ観測の変化や経済指標がユーロ
の対米ドル相場の主要な変動要因となった。4月
の米国の雇用拡大ペースに対して金融市場は失
望したものの、多くのFOMC参加者は経済見通し
をこれによって修正しておらず、年内2回程度の利
上げが妥当だと見方を示した。4月のFOMC議事
録も6月利上げを意識させる内容であり、米ドル
高・ユーロ安が進んだ。なお、22日にギリシャ議会
は増税等を含む改革案を可決し、25日にユーロ圏
財務相会合はギリシャに対する追加融資を承認し
た。これを受けて7月のギリシャ国債償還を巡る不
確実性は大幅に低下したと言える。
今後のユーロ相場を見る上では、米欧の金融
政策と政治リスクの行方が重要だ。年央に米国の
利上げが見込まれる一方、ユーロ圏では6月から
四半 期ごとに 目的を絞った 長期資金供 給オ ペ
(TLTRO2)を実施する。また、6月23日に英国で欧
州連合(EU)離脱を巡る国民投票が、6月26日にス
ペインで総選挙が実施される。政治的な不透明感
の高まりが為替相場に与える影響についても留意
しておきたい。
今後の円相場を見る上で、引き続き日米の金
融政策が重要だ。6、7月に米国で利上げが決定さ
れるとの観測が高まりつつある中、同時期に日本
銀行の金融緩和を見込む市場参加者が多い。日
米金融政策格差が拡大する可能性があり、注意し
ておきたい。
円
ユーロ
(円/ユーロ)
150
120
130
1.30
115
120
1.20
110
110
1.10
円高
105
2015/5
2015/8
2015/11
2016/2
100
2015/5
2016/5
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
2015/8
2015/11
2016/2
ユーロ安
140
円安
125
(米ドル/ユーロ)
1.50
対円(左軸)
対米ドル(右軸)
1.40
ユーロ高
(円/米ドル)
130
1.00
2016/5
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
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豪ドル
ブラジル・レアル
2016年5月末の対米ドルの豪ドル相場は、1豪ド
ル=0.72米ドルとなり、4月末の0.76米ドルに対し
て4.9%の豪ドル安となった。豪ドルは、月間を通じ
て概ね下落基調で推移した。なお、対円では、米ド
ル高(円安)の影響もあり、1豪ドル=81.0円から
80.1円へ1.1%の豪ドル安となった。
2016年5月末の対米ドルのレアル相場は、1米ド
ル=3.61レアルとなり、4月末の3.43レアルに対し
て5.1%のレアル安となった。レアルは月初に大き
く下落した後、上昇する場面も見られたが、月末に
かけて再度下落した。なお、対円では、1レアル=
31.0円から30.7円へ1.0%のレアル安となった。
月初は、豪州準備銀行(RBA)が市場予想に反
して約1年ぶりに利下げしたことを受けて、豪ドル
は急落した。その後も、中国の景気回復期待の後
退から、鉄鉱石をはじめとする商品価格が軟調に
推移したことや、米連邦準備制度理事会(FRB)が
18日に公表したFOMC議事録がタカ派的な内容だ
ったことを受け、米ドル高が進んだことで、豪ドル
安の流れが続いた。
月初のレアルは、当局が米ドル買いに相当する
為替介入を実施したこともあって下落したものの、
堅調な原油相場や、ルセフ大統領の職務停止に
伴い就任したテメル暫定大統領への期待感から
月前半は底堅く推移した。しかしその後は、予算
企画相が汚職捜査の妨害疑惑で一時的に職務離
脱となるなど、暫定政権を巡る不透明感が高まっ
たことや、米ドル高が進んだことで、レアルは下落
に転じた。
今後の豪ドル相場を見る上では、引き続き米国
の金融政策が注目される。金融市場では、6月の
米国の利上げ実施を巡って不透明感がくすぶって
いる。仮に利上げが実施されれば、米ドルが上昇
し、豪ドル相場を一層下押しする恐れがある。また、
豪州の金融政策の動向も注目される。金融市場
ではRBAが追加利下げに踏み切るとみる向きが
多い。しかし、5月3日に開催された金融政策決定
理事会の議事録で示されたように、利下げの是非
を巡ってはRBA内部で見解が割れていた模様だ。
今後RBA関係者の金融政策に関する発言などが
豪ドル相場を左右する展開も想定される。
今後のレアル相場を見る上での注目点はブラ
ジルの政治動向だ。テメル暫定大統領は社会保
障改革を含む構造改革に積極的に取り組む姿勢
を示しており、金融市場の期待は強い。ただし、足
元で検察が与野党の議員に対し汚職捜査を進め
ていることで政局は混乱しており、乱立する中小
政党を暫定政権が束ねることができるかには不透
明感も残る。また、ルセフ大統領は職務停止に強
く抗議しており、弾劾阻止に向けあらゆる手段を講
じるだろう。ブラジル金融市場は暫定政権の見通
しを巡って不安定な動きが続くことが見込まれる。
豪ドル
90
(米ドル/豪ドル)
1.00
対円(左軸)
対米ドル(右軸)
0.90
80
38.0
3.35
70
0.70
34.5
3.65
60
0.60
31.0
3.95
2015/11
2016/2
豪ドル安
2015/8
0.50
2016/5
(年/月)
27.5
2015/5
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
2015/8
2015/11
2016/2
レアル安
0.80
豪ドル高
41.5
(レアル/米ドル)
2.75
対円(左軸)
対米ドル(右軸)
3.05
50
2015/5
(円/レアル)
45.0
レアル高
(円/豪ドル)
100
ブラジル・レアル
4.25
2016/5
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
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株式・債券
先進国株式
先進国債券
2016年5月末のTOPIXは、1,379.80ポイントとな
り、4月末から2.9%上昇した。月初は、前月末の日
銀の金融政策現状維持を受けて一時円高が進行
したことや新年度業績の減益見通しなどにより下
落した。その後は一進一退の推移となったが、月
末にかけては主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)
を受けて消費増税再延期や財政政策への期待が
高まったことなどから上昇した。
2016 年 5 月 末 の 日 本 の 10 年 国 債 利 回 り は
-0.11%となり、4月末から0.03%低下した。米国の
早期利上げ観測の高まりや、消費税増税の再延
期への懸念などが利回りの上昇要因となる一方、
日銀の長期国債買い入れオペによる良好な需給
環境や、日銀の追加緩和観測などを背景に、月間
では利回りは低下した。
2016年5月末の米国の10年国債利回りは1.85%
となり、4月末から0.01%上昇した。月前半は、中
国やユーロ圏の弱い経済指標を受け、利回りは低
下基調で推移した。しかし、中旬に発表された4月
のFOMC議事録で、経済の改善が続けば、6月の
追加利上げが適切になるとの認識が大半の政策
担当者から示されたことが明らかになると、利回り
は上昇に転じた。その後も、イエレンFRB議長を含
む複数のFOMCメンバーが近い将来の利上げの
可能性に言及したことなどから、月間では利回り
は小幅に上昇した。
2016年5月末のS&P500は、2,096.96ポイントとな
り、4月末から1.5%上昇した。月初は、4月の米
ISM製造業景況感指数が市場予想を下回ったこと
などが嫌気され下落した。その後、中旬にかけて
は、軟調な大手小売企業の決算などが嫌気され、
上値の重い展開となった。下旬には、FRBによる
利上げ観測が高まったものの、堅調な住宅販売な
どが好感され上昇し、月間では上昇となった。
2016年5月末のDAXは、10,262.74ポイントとなり、
4月末から2.2%上昇した。月初は、欧州の経済成
長見通しの引き下げなどが嫌気され下落したが、
その後中旬にかけて横ばい圏での推移となった。
下旬には、ユーロ圏財務相会合でギリシャへの追
加融資が暫定合意に至ったことや、英国のEU離
脱に関する世論調査で、残留派が過半数を維持
しているとの報道などが好感され上昇し、月間で
は上昇となった。
2016 年 5 月 末 の ド イ ツ の 10 年 国 債 利 回 り は
0.14%となり、4月末から0.13%低下した。月前半
は、欧州委員会がユーロ圏のインフレ率見通しを
下方修正したことを受け欧州中央銀行(ECB)が緩
和策を拡大するとの観測が高まったことや、複数
の経済指標が市場予想を下回ったことなどを受け
て利回りは低下した。その後は、米国の金利上昇
に連れて、利回りが上昇する局面も見られたもの
の、レンジ圏での推移が続いた。月間では利回り
は低下した。
株価指数
10年国債利回り
(ポイント)
2,500
(ポイント)
15,000
(%)
1.00
2,200
13,000
0.75
1,900
11,000
0.50
2.4
1,600
9,000
0.25
2.1
7,000
0.00
1.8
1,300
1,000
2015/5
TOPIX(左軸)
S&P500(左軸)
DAX(右軸)
2015/8
2015/11
2016/2
5,000
2016/5
(年/月)
-0.25
2015/5
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
日本(左軸)
ドイツ(左軸)
米国(右軸)
2015/8
2015/11
2016/2
(%)
3.0
2.7
1.5
2016/5
(年/月)
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
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投資環境レポート
6
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データ・グラフ集
新興国株式
新興国債券
(ポイント)
1,200
(ポイント)
750
JPモルガン新興国債券指数
1,000
700
800
650
MSCI新興国(米ドルベース)
600
2014/5
2014/11
2015/5
2015/11
600
2014/5
2016/5
(年/月)
2014/11
リート
2015/5
2015/11
2016/5
(年/月)
コモディティ
(ポイント)
300
(ポイント)
(米ドル/バレル)
(ポイント)
400
3,000
200
ロイター/ジェフリーズCRB商品価格指数(左軸)
WTI原油スポット価格(右軸)
250
2,500
300
150
200
2,000
200
100
1,500
100
50
150
S&P先進国リート指数(左軸)
東証リート指数(右軸)
100
2014/5
0
2014/5
1,000
2014/11
2015/5
2015/11
2016/5
(年/月)
0
2014/11
2015/5
2015/11
2016/5
(年/月)
金融市場の動き
<変化率、%>
■株式
日経平均(日本)
TOPIX(日本)
日経ジャスダック平均(日本)
NYダウ工業株(米国)
S&P500(米国)
NASDAQ(米国)
FTSE100種(英国)
DAX(ドイツ)
ハンセン指数(香港)
上海総合(中国)
S&P/BSE SENSEX(インド)
MSCI新興国(米ドルベース)
<変化率、%>
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月 1年
3.4
7.5 -12.7 -16.2
2.9
6.3 -12.7 -17.6
3.7
8.7 -4.8 -4.3
0.1
7.7
0.4 -1.2
1.5
8.5
0.8 -0.5
3.6
8.6 -3.1 -2.4
-0.2
2.2 -2.0 -10.8
2.2
8.1 -9.8 -10.1
-1.2
8.9 -5.4 -24.1
-0.7
8.5 -15.3 -36.8
4.1 15.9
2.0 -4.2
-3.9
9.1 -0.8 -19.6
■為替
円/米ドル
円/ユーロ
米ドル/ユーロ
円/英ポンド
円/豪ドル
円/カナダ・ドル
円/ブラジル・レアル
円/トルコ・リラ
円/南アフリカ・ランド
1ヵ月
4.0
1.1
-2.8
3.1
-1.1
-0.2
-1.0
-1.8
-5.7
3ヵ月
-1.7
0.6
2.3
2.3
-0.5
1.6
9.3
-1.2
-0.7
6ヵ月
-10.1
-5.2
5.3
-13.5
-10.0
-8.2
-3.7
-11.1
-17.3
1年
-10.8
-9.6
1.2
-15.5
-15.6
-15.2
-21.5
-19.5
-31.0
(注) マイナスは円高方向に動いたことを示す
(米ドル/ユーロの場合は米ドル高)
<変化率、%>
<変化率、%>
■商品・リート
1ヵ月 3ヵ月 6ヵ月 1年
ロイター/ジェフリーズCRB商品価格指数
0.8 14.1
2.0 -16.6
WTI原油スポット価格
6.9 45.5 17.9 -18.6
東証リート指数
-1.5
1.2
8.2
1.6
S&P先進国リート指数
0.4
8.6
6.3
4.4
■債券
米国ハイイールド債券指数
JPモルガン新興国債券指数
1ヵ月
0.5
-0.3
3ヵ月
9.1
5.0
6ヵ月
5.2
5.3
■債券利回り
日本10年国債
米国10年国債
ドイツ10年国債
4月末 5月末 前月差
-0.08 -0.11 -0.03
1.83
1.85
0.01
0.27
0.14 -0.13
1年
-0.9
4.5
<%>
記載されている市場データは野村アセットマネジメントのホームページでご覧になれます(一部掲載されていない場合があります)。
(注) 変化率は2016年5月末を基準として算出している。
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
当資料は情報の提供を目的としており、当資料による何らかの行動を勧誘するものではありません。当資料は信頼できると思われる情報に基づいて
作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに示された意見などは、当資料作成日現在の当社調査部の
見解であり、事前の連絡無しに変更される事もあります。投資に関する決定は、お客様御自身の判断でなさるようにお願いいたします。
投資環境レポート
7
Vol.217 2016.6
経済カレンダー
SUN
6/
19
MON
TUE
20
(日)5月貿易収支
26
2016年6月19日~ 2016年7月16日
WED
21
22
(独)6月ZEW景況感指数
(トルコ)金融政策発表
27
THU
28
23
4
29
5
10
11
(中)6月
(日)5月機械受注
消費者物 (日)6月マネーストック
価指数
(中)6月
生産者物
価指数
(中)6月マ
ネーサプ
ライ(7/10
~15)
12
24
7/
30
(日)5月鉱工業生産指数
(日)5月新設住宅着工戸数
(ユーロ圏)6月消費者物
価指数
(メキシコ)金融政策発表
6
(米)5月製造業受注
(豪)金融政策発表
SAT
25
(米)5月中古住宅販売件数 (米)5月新築住宅販売件数 (米)5月耐久財受注
(米)5月景気先行指数
(独)6月Ifo景況感指数
(ブラジル)5月経常収支
(米)1-3月期GDP(確報値) (米)5月個人消費支出
(米)4月S&Pケース・シラ
ー住宅価格指数
(米)6月コンファレンスボー
ド消費者信頼感指数
3
FRI
7
13
2
8
(米)5月貿易収支
(米)6月ADP雇用統計
(米)6月ISM非製造業景況 (独)5月鉱工業生産指数
感指数
14
(日)6月国内企業物価指数 (中)6月貿易収支
1
(日)5月失業率
(日)5月有効求人倍率
(日)5月家計調査
(日)5月消費者物価指数
(日)6月調査日銀短観
(米)6月ISM製造業景況感
指数
(ユーロ圏)5月失業率
(中)6月製造業PMI(購買
担当者景気指数)
(ブラジル)6月貿易収支
9
(日)5月経常収支
(日)6月景気ウォッチャー
調査
(米)6月雇用統計
(ブラジル)6月消費者物価
指数(IPCA)
15
(米)6月生産者物価指数
(英)金融政策発表
16
(米)6月消費者物価指数
(米)6月鉱工業生産指数
(米)7月ミシガン大学消費
者信頼感指数
(中)4-6月期GDP
(出所) Bloombergデータより野村アセットマネジメント作成
※経済カレンダーは作成時点で利用可能な最新の情報を用いておりますが、経済指標等の発表日は変更される可能性があります。
日本・米国・欧州経済指標
<年間>
2013年 2014年 2015年
日
本
米
国
欧
州
日銀短観(大企業製造業)(ポイント)
実質GDP成長率(前期比年率、%)
消費者物価指数(前年同月比、%)
完全失業率(%)
実質GDP成長率(前期比年率、%)
消費者物価指数(前年同月比、%)
失業率(%)
実質GDP成長率(前期比、%)
消費者物価指数(前年同月比、%)
失業率(%)
16
1.4
0.4
3.7
1.5
1.5
6.7
-0.3
1.4
11.9
12
0.0
2.7
3.4
2.4
1.6
5.6
0.9
0.4
11.3
12
0.6
0.8
3.3
2.4
0.1
5.0
1.6
0.0
10.5
<月次>
6月
7月
2015年
8月
9月
10月
15
-1.7
0.4
3.4
3.9
0.1
5.3
0.4
0.2
11.0
-
-
0.2
3.3
-
0.2
5.3
-
0.2
10.8
-
-
0.2
3.4
-
0.2
5.1
-
0.1
10.7
12
1.6
0.0
3.4
2.0
0.0
5.1
0.3
-0.1
10.6
-
-
0.3
3.2
-
0.2
5.0
-
0.1
10.6
11月
12月
1月
-
-
0.3
3.3
-
0.5
5.0
-
0.1
10.5
12
-1.7
0.2
3.3
1.4
0.7
5.0
0.3
0.2
10.5
-
-
0.0
3.2
-
1.4
4.9
-
0.3
10.4
2月
2016年
3月
4月
5月
-
-
0.3
3.3
-
1.0
4.9
-
-0.2
10.4
6
1.7
-0.1
3.2
0.8
0.9
5.0
0.5
0.0
10.2
-
-
-0.3
3.2
-
1.1
5.0
-
-0.2
10.2
-
-
-
-
-
-
-
-
-0.1
-
(注) 欧州はユーロ圏。年間の値について、消費者物価指数は平均値、日銀短観、失業率は期末値。月次の値について、日銀短観、GDPは四半期。
(出所) 日本銀行等、当局データより野村アセットマネジメント作成
※投資環境レポートでは作成時点で利用可能な最新の経済指標を用いておりますが、経済指標等は発表後に訂正や改定が行われることがあります。
商 号:野村アセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第373号
加入協会:一般社団法人投資信託協会/一般社団法人日本投資顧問業協会
www.nomura-am.co.jp/
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投資環境レポート
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Vol.217 2016.6