6月10日号 経済 中国 2016年5月貿易統計と人民元 (PDF

2016/
グローバル・マクロ・
トピックス
6/10
投資情報部
シニアエコノミスト
吉川 健治
輸出は厳しく再び減少、輸入は資源の数量増が顕著
~中国・貿易統計(2016 年 5 月)と人民元
 2016年5月の貿易動向は、季節調整後では輸出が同▲6.2%と再び減少に転じ、輸入が同▲
4.7%と減少幅は再び縮小も19ヵ月連続の減少。16年1~5月累計では輸出が前年同期比▲
7.3%と2015年(前年比▲2.8%)より悪化、輸入が同▲10.3%と2015年(同▲14.1%)より減少幅が
縮小も、厳しさに大きな変化はない。資源エネルギー商品輸入量は16年1-3月期に回復の動
きが強まり、4月にその反動から調整したが、5月に再び回復の勢いが顕在化。なお、5月の
外貨準備高は中国当局による為替介入により前月比▲279億ドルと再び減少した。
5月は季節調整後の
輸出が再び減少、世
界すべての地域向け
で総じて低調。輸入
は減少幅が縮小
2016年5月の貿易統計をみると、輸出が前年同月比▲4.1%と減少幅が拡大、輸入
が同▲0.4%と減少幅が大幅に縮小した。季節調整後では、輸出が同▲6.2%と再び
減少に転じ、輸入が同▲4.7%と減少幅は再び縮小も、19ヵ月連続の減少。16年1~5
月累計では輸出が前年同期比▲7.3%と2015年(前年比▲2.8%)より悪化、輸入が同
▲10.3%と2015年(同▲14.1%)より減少幅が縮小も、厳しさに大きな変化はない。
5月の主要地域別輸出動向をみると、対米国(前年同月比▲12.0%)と対日本(同
▲5.6%)および対韓国(同▲6.9%)が2ヵ月連続の減少、対EUが同▲2.1%と減少に転
じ、対ASEANが同+3.1%と鈍化した。また、対新興国も対ブラジル、対豪州、対南ア
フリカ(P3下段の左グラフを参照)に低調な動きが続く等、中国の輸出は世界すべ
ての地域向けで総じて低調であったと言えよう。
中国の主な地域向け輸出
中国の貿易動向
(%)
(月次:2011/1~2016/5)
60
輸出
輸入
輸出(季節調整後)
輸入(季節調整後)
50
40
30
(月次:2011/1~2016/5)
(%)
50
対米輸出
対ASEAN輸出
対EU輸出
対日輸出
40
30
20
20
10
10
0
0
▲ 10
▲ 10
▲ 20
▲ 20
▲ 30
11
12
13
14
15
16
▲ 30
(年)
11
(注)前年同月比
出所:中国海関総署資料、CEICデータよりみずほ証券作成
12
13
14
15
(注)前年同月比、毎年1~2月は累計の前年同期比
出所:中国海関総署資料、CEICデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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16 (年)
2016/6/10
グローバル・マクロ・トピックス
資源輸入量が5月に
再び 回復の 勢い が
顕在化。過熱ぎみの
不動産開発投資やイ
ンフラ投資増を反映
主な資源エネルギー商品輸入量は2016年1-3月期に回復の動きが強まり、4月に
その反動から調整したが、5月に再び回復の勢いが顕在化した。
4~5月累計の前年同期比伸び率ベースでみると、石炭(5月:前年同月比
+33.6%)が+10.6%と9四半期ぶりに増加に転じ、鉄鉱石(5月:同+22.4%)が+13.0%と8
四半期ぶりの高い伸びを、また、原油が+21.1%と11四半期ぶりの高い伸びを達成
し、銅鉱石が+32.9%と好調であった。一方、未鍛造銅・銅材が内外価格差を利用し
た裁定取引等にともなう在庫積み増しの反動から4月に前年同月比+5.0%と大幅鈍
化も、5月は同+18.6%と持ち直した。資源等の輸入量の増勢の動きは、過熱ぎみの
不動産開発投資やインフラ投資増への先行き期待を反映したものと言えよう。
中国の固定資産投資
(%)
(月次:2008/1~2016/4)
50
固定資産投資
うち、国有企業
うち、民間投資
うち、インフラ投資
うち、不動産開発投資
40
30
国有企業
政府目標
20
インフラ
投資
固定資産
投資
不動産
民間企業
10
0
08
09
10
11
12
13
14
15
16
(年)
(注)毎年1月から累計の前年同期比、インフラ投資は2014年4月から(2014
年12月は未公表)、民間投資は2011年1月から
出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成
5月の外貨準備が前
月比で3ヵ月ぶりに減
少。人民元安に対
し、当局の為替介入
が実施された模様
外貨準備高は2015年8月の人民元切り下げを受けて、資本流出の動きが強まっ
たが、16年3月には前月比で増加に転じ4月も増加を維持した。しかし、5月は米利
上げ観測の浮上を受けて人民元安の動きに転じたため、外貨準備高が中国当局に
よる為替介入により前月比▲279億ドルと再び減少したようだ。一方、5月の米雇用
統計が予想以上に下振れ、6月利上げの可能性はほぼなくなったとの市場関係者
の見方により、6/6以降、人民元安圧力は弱まったようだ。ただし、6/6のイエレン米
連邦準備理事会(FRB)議長の講演は、過度の悲観ではなく、今後の動向を慎重に
人民元対ドルレートと外貨準備の増減
人民元対ドルレートと米中の金利差
(月次:2011/1~2016/5)
(億ドル)
(1ドル=人民元)
1,500
人民元高
6.00
1,000
6.10
500
6.20
0
6.30
▲ 279
▲ 500
▲ 1,000
2015/8
人民元切り下げ
人民元対ドルレート(月末:右逆目盛)
▲ 1,500
11
12
13
14
15
10
8
(日次:2008/1/1~2016/6/8)
中国の国債利回り(10年物 左目盛)
米債利回り(10年物 左目盛)
中国の貸出基準金利(1年物 左目盛)
人民元対ドルレート(右逆目盛)
(1ドル=人民元)
人民元高
5.50
6.00
6
6.50
4
7.00
2
7.50
6.40
6.50
▲ 939
外貨準備の増減(左目盛)
(%)
0
6.60
米中金利差が拡大から縮小
16
8.00
(年)
(注)外貨準備の増減は前月比、人民元対ドルレートは月末レート
出所:中国人民銀行資料、CEICデータよりみずほ証券作成
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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2016/6/10
グローバル・マクロ・トピックス
中国政府は低調な輸
出を適度な内需拡大
で補完し安定成長の
維持を図る方針。資
源輸入量は当面、底
堅く推移しよう
分析し判断するとの内容であるため、人民元対ドルレートは引き続き、米雇用・イン
フレ等の指標や米金融当局の発言に敏感に反応する相場展開となろう。
なお、中国政府は外需の回復力の弱さや輸出競争力の低下等にともなう輸出の
低調さを、適度な内需拡大により補完し安定成長の維持を図る方針である。不動産
市場の過熱感の高まりや鉄鋼生産(日量)の過去最高更新、等が懸念されるもの
の、市場原理と政府のマクロコントロール(積極財政の強化と金融の政策調整、等)
のバランスが図られ、資源エネルギーの商品輸入量は当面、底堅く推移しよう。
ただし、中国政府は低調な民間投資の問題に直面するなか、過熱ぎみの不動産
市場に対し的確な政策が適時に実施、コントロールされなければ、市場の深い調整
と商品市況への大きな影響の可能性が高まるため、リスク要因として留意が必要だ。
中国の粗鋼・鋼材生産(日量)
(日量=万トン)
(旬次:2013/1上旬~2016/5中旬)
350
325
粗鋼生産(日量)
300
鋼材生産(日量)
275
2016/5も月次
過去最高を更
新する勢い
250
225
200
175
150
13
14
15
16
(年)
(注)2014年4月下旬~2015年7月下旬、2015年8月~9月と2016年2月の一部数値が未公表
出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成
(%)
30
25
20
15
10
5
0
▲5
▲ 10
▲ 15
▲ 20
中国の主な品目別輸出額
中国の主な地域からの輸入
(%)
(四半期:2011/3~2016/6)
60
50
40
30
20
10
0
▲ 10
▲ 20
▲ 30
▲ 40
機械電機(左目盛)
繊維品(左目盛)
靴類・玩具(左目盛)
鋼材(右目盛)
(月次:2011/1~2016/5)
(%)
40
2013/4 66.6
2013/5 55.7
米国
EU
30
日本
ASEAN
20
台湾
10
0
▲ 10
▲ 20
▲ 30
2014/4 ▲32.9
11
(年)
(注)前年同期比、直近は2016年4~5月累計の前年同期比
出所:中国海関総署資料、CEICデータよりみずほ証券作成
12
13
14
15
16(年)
(注)輸入は前年同月比、毎年1-2月は累計の前年同期比
出所:中国海関総署資料、CEICデータよりみずほ証券作成
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グローバル・マクロ・トピックス
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