Azure 上で構築されたタブレット向け情報配信システムの

株式会社JR東日本情報システム
Azure 上で構築されたタブレット向け情報配信システムの稼働
情報を収集 / 分析
運用工数とコスト低減を実現すると共に、よりきめ細かい稼働分析
でサービス向上にも貢献
ソリューション概要
社会インフラとして重要な役割を果たすさまざまなシステムの開発・運用を行っている株式会社
○プロファイル
する「情報配信システム 」が、Microsoft Azure 上で構築、運用されています。さらにそのシステ
株式会社JR東日本情報システムは 1989 年に設
立された、JR東日本およびグループ会社のシス
テム開発および運用を担う IT サービス企業です。
鉄 道 運行管理や旅客営業、Suica、View カード
など、社会インフラとして重要な役割を果たす、
さまざまなミッション クリティカルなシステムの
開発、運用を行っています。
○導入製品とサービス
・Microsoft® Azure ™
・Microsoft® Operations Management Suite
(OMS)
・Microsoft® HockeyApp
・Microsoft® Visual Studio® Application
Insights
・Microsoft® Power BI
○導入メリット
・システム稼働情報やアプリケーション利用情報
の収集と分析に必要な作業負担を大幅に軽減
できた。
・これま で把 握 できな かったモ バイル ア プリ
ケーションの稼働状況もわかり、エラー発生時
の原因切り分けも容易になった。
・OMS で IIS へのアクセス ログを収集すること
で、不正アクセスをもれなく発見できるように
なり、セキュリティも強化された。
○ユーザー コメント
「Azure を活用した新規システムの構築は他の部
署でも増えつつあります。今回構築した稼働情報
収集および分析のしくみは、これらのシステムで
も必要なものであり、効果も高いはずです」
株式会社JR東日本情報システム
澤 裕記 氏
JR東日本情報システム。ここではこれらの基幹系システムから情報を抽出し、タブレットに配信
ムやアプリケーションの稼働情報を自動的に収集 / 分析するためのしくみも構築。運用効率を飛
躍的に高めています。これらによってモバイル アプリケーションでエラーが発生した場合の原因究
明が容易になり、利用パターンの把握も可能になりました。今後はこの情報を開発企画にも活かし、
よりユーザーに喜ばれるシステム開発を実現していくことが目指されています。
導入の背景とねらい
手作業で行われていたシステム / アプリケーションの稼働データ集計、
ユーザー端末の急増で人的負担も増大
ユーザーに提供したシステムが問題なく稼働しているのか、そして提供したアプリケーションがど
の程度利用されているのかを知りたいというのは、
企業のシステム部門や IT サービス事業者にとっ
て、当然のニーズだといえます。エラーの発生を迅速に把握し対処できれば、ユーザーの満足度は
向上し、システム担当者の評価も高まります。またアプリケーション利用傾向がわかれば、今後ど
のような機能を企画し開発すべきかの判断も行いやすくなります。ユーザーが潜在的に望んでいる
機能改善を継続的に行うことで、IT 活用の効果はさらに高まることになります。
しかし最近の IT システムは、オンプレミスのアプリケーションだけではなく、クラウド上で稼働する
ものも増えており、モバイル端末上のアプリケーションと連動するケースも珍しくありません。その
ためアプリケーションの稼働状況を的確に把握することは、以前よりもはるかに難しくなっています。
こ の 問 題 を、Microsoft Operations Management Suite (OMS) や Microsoft Visual Studio
Application Insights、Microsoft HockeyApp、Microsoft Power BI を組み合わせて解決してい
るのが、株式会社JR東日本情報システム ( 以下、JEIS) です。同社はJR東日本とそのグループ会社
のシステム開発と運用を担う IT サービス企業。これまでも社会インフラを支える数多くのシステム
を開発してきました。2014 年 12 月にはそれらの基幹システムの 1 つから情報を抽出し、ユーザー
が業務で使用するタブレット端末へと配信するシステム ( 情報配信システム ) の開発に着手、2015
年 3 月から運用を開始しています。そのアプリケーションの利用状況やシステム稼働状況を、前述
の製品やサービスの組み合わせによって、Power BI で集中的に分析できるようにしているのです。
「この情報配信システムは、オンプレミスで動いている基幹システムの情報を Azure 上の SQL
Server® に抽出し、それを Azure Web ロールで稼働するサーバー アプリケーションから、タブレッ
ト端末上のアプリケーションに配信するというものです」。このように説明するのは、JEIS システ
ム開発担当者の澤 裕記 氏です。わずか 3 か月あまりという短期開発だったため、当初はシステム
稼働分析などを自動化するシステムの作り込みまで手が回らず、手作業で稼働状況の分析やレポー
ト作成を行っていたと振り返ります。
「Web ロ ール の ロ グ ファイル は Azure の BLOB ストレ ージ に保 存し、 そこ か らデ ー タ を
Microsoft® Excel® に取り込んで分析を行っていました 」と当時の状況を語るのは、JEIS システム
開発担当者の清水 雅巳 氏。端末ごとの分析を行うため、別に用意している端末台帳の情報も取
株式会社JR東日本情報システム
用回数、レスポンス タイムの推移が把握可能になり、不正アクセスや例
外発生の自動検知とアラート配信が可能になります。また新規プログラ
ムの作り込みが不要であることも大きな魅力です。さらに他のサービス
との連携や運用の多様化など、今後発生すると予測される要件への対
応も容易になると考えました 」。
2015 年 4 月には、Application Insights のプレビュー版を利用した検証
の実施を決定。実際に運用中の情報配信システムに導入することを前提
株式会社JR東日本情報システム
澤 裕記 氏
株式会社JR東日本情報システム
清水 雅巳 氏
に、検証プロジェクトをスタートさせました。ここで最も重視されたのは、
前述の作業が本当に自動化でき、運用時における作業工数が削減でき
るのかという点です。
り込み、データのクレンジングや加工を行ったうえでグラフを作成、そ
れをレポートにまとめていたと言います。これが行われる頻度は月に 1
「まず検証環境に Application Insights SDK を組み込み、問題がないこ
回。そのために毎回 3 日程度の作業時間が必要になり、これが大きな
とを確認しました 」と澤 氏。Application Insights のダッシュボードを
負担になっていました。
「毎月決まった担当者がこの作業を行えるとは限
使った稼働状況の見方については、マイクロソフトの助言を受けながら、
らないこともあり、レポートの内容が月によってばらつくという問題もあ
工夫を重ねていったと言います。
「プレビュー版のレベルで既に、稼働分
りました。人事異動の際には引き継ぎにも時間を取られていました 」。
析の自動化に十分な機能が提供されていると感じました。また Web ア
プリケーションとモバイル アプリケーションの両方に SDK を組み込み
これだけの作業時間を費やしていたにもかかわらず、取得できる情報が
ましたが、そのための作業も実に簡単で、不具合もまったく発生しませ
Web ロールのエラーやアクセス状況に限られていたことも問題でした。
んでした 」。
モバイル アプリケーションで発生するエラーは、把握することができな
かったのです。
また、2015 年 8 月には OMS も検証環境に導入。実際に使っていくう
ちに、IIS のセキュリティ対策としても有効であることにも気づいたと言
この情報配信システムはユーザーからも利便性が高いと評価され、その
います。
利用は急速に拡大していきました。当初は 250 台のタブレット端末に配
信されていましたが、2016 年 1 月には配信端末数が 1,000 台を突破。
これなら高い効果が見込めると判断。情報配信システムへの新機能導入
2016 年 4 月にはその数が 2,000 台に上っています。利用者の急増に伴
のタイミングに合わせ、
2015 年 12 月に本番環境への導入を実施します。
い、当然ながら稼働情報分析の負担も増大していきました。
そのシステム構成は図 1 に示すとおりです。
「手作業による稼働分析レポートの作成に限界があることは、当初から
Application Insights 以外にも、タブレット上で動くモバイル アプリケー
想定していました 」と言う清水 氏。開発や運用にかかわるコストの削減
ション向けに HockeyApp を使用し、アプリケーションの稼働状況やク
が求められる中、アプリケーション運用や今後の機能拡張をより的確に
ラッシュ レポートの情報を、それぞれのダッシュボードへと集約します。
行うには、より幅広い情報を自動的に収集し分析できるしくみが不可欠
その後、Application Insights などのアダプターを使用してこれらの情
だったのです。
報を Power BI に取り込み、豊富なグラフ機能を活用した分析が行える
導入の経緯
ようにしています。
利用情報の収集および分析を自動化できる
Application Insights に着目、手軽に導入できることも
大きな魅力
OMS によって情報を集約。これも OMS と連携している Power BI を利
その実現方法として JEIS が着目したのが、新たに提供されることになっ
導入効果
た Application Insights でした。
「もともとログ収集管理の効率化が可能な OMS に興味を持っており、
その早期評価を目的として米国で開催されたマイクロソフト イベントに
その一方で、サーバーの稼働状況やサーバーに対するアクセス状況は、
用して分析できるようになっています。
OMS と Power BI による自動処理で利用状況や
不正アクセスの把握を迅速化、これまで見えなかった
クラッシュや不正アクセスの詳細も把握可能に
参加したことで、Application Insights の存在を知ることになりました 」
このようなしくみを構築することで、アプリケーション稼働分析の作業
と清水 氏。その内容に興味を持ち、Application Insights についても評
は大幅に効率化されました。以前は 3 日かかっていた Web ロールのロ
価を開始することにしたと語ります。
「これよってユーザー数や機能別利
グ集計とレポート作成は完全に自動化されており、Power BI にアクセス
株式会社JR東日本情報システム
基幹系システム
情報取得・登録機能
ログ
SQL Database
OMS
Storage
Web Role
Azure
稼働状況
情報配信機能
稼働状況
Tablet
Tablet
Tablet
Powr BI
Application Insights/
HockeyApp
Tablet
情報表示機能
JEIS が構築した、システムとアプリケーションの稼働情報収集および分析のしくみ。Azure 上の IIS ログは Operations Management Suite (OMS) 、Web ロールで動くアプリケーションの情報は
Application Insights、モバイル アプリケーションの情報は HockeyApp で収集され、Power BI で分析できるようになっています。
するだけで出力できます。そのために要する時間はわずか数分に過ぎま
アラートを通知する機能も組み込まれており、すぐに対応することも可
せん。
能になっています。
また以前は人手が必要だったため、レポート作成は月 1 回に制限されて
「以前も IIS ログを Excel に取り込んで集計作業を行い、アプリケーショ
いましたが、現在では Power BI のダッシュボードでいつでもアプリケー
ンが用意していない URL へのアクセスを見つけ出すことで、ある程度の
ション稼働状況を確認できます。問題が発生した場合でもすぐに把握で
不正アクセスは把握していました 」と清水 氏。このような不正アクセス
き、これまで以上に迅速かつ的確な対処が可能になっています。
はシステムが「404 Not Found エラー」を返すため問題は発生しません
が、月に 1 件程度は発見されていたと振り返ります。
「現在のしくみでは
「モバイル アプリケーションに HockeyApp を組み込んだことで、これ
これに加えて、マイクロソフトが提供する " 危険な IP アドレス " のリス
まで見えてこなかったことも見えるようになりました 」と澤 氏。その一
トとアクセス元の IP アドレスの照合も行っており、これまで見つからな
例として挙げるのが、モバイル アプリケーションがクラッシュするなど
かった不正アクセスも発見できるようになっています。またお客様社内
のエラーが発生した時の原因です。
「HockeyApp ではモバイル アプリ
システムの IP アドレスのリストとも照合し、安全性を確認するといった
ケーションで発生したエラー状況だけではなく、その端末の OS バージョ
ことも行っています」。
ンなどの情報も取れるのですが、多くのエラーは OS バージョンのミス
マッチで発生していることがわかりました。開発側は特定バージョンの
アプリケーションの利用状況も細かく把握できます。機能別および端末
OS をターゲットにしてアプリケーションを開発しており、お客様にもそ
別の利用状況を日ごとに分析し、その結果をグラフとして表示すること
のバージョンに統一していただくようお願いしているのですが、一部の
も可能です。
端末はターゲットと異なるバージョンの OS を使用しており、それが原
因でエラーが発生しているのです。この場合はお客様にバージョンアッ
「これによって、日常的に利用の多い機能が何なのかが明確になり、ど
プをしていただくよう依頼しています。これによってモバイル アプリケー
のようなイベントが発生するとどの機能の利用が増えるのかといったこ
ションのエラー発生を回避しやすくなりました 」。
ともわかるようになりました 」と澤 氏。開発段階では想定していなかっ
このしくみはセキュリティ強化にも貢献しています。Azure 上の IIS ログ
ンが限定されると考えていたアプリケーションを、メインで使用するユー
を OMS で収集し分析することで、不正アクセスをもれなく把握できる
ザーが想定以上にいたといったケースも見られました。このような情報
ようになったからです。また不正アクセスを検知した時点で、メールで
が得られれば、今後のシステム改善や機能追加を、より的確に進めるこ
たアプリケーションの利用ケースも把握できたと指摘します。
「利用シー
株式会社JR東日本情報システム
とが可能になります。どこに注力すべきかを判断しやすくなるため、限
られた予算を最大限に活用できるようになるからです。現在、既に開発
Web ロール
ログファイル
端末台帳
者も Power BI による稼働状況の分析が行えるようにしています」
。
今後の展望
HockeyApp
OMS
Excel
ハイブリッド システムに適用できることも検証済み、
他の部署にも紹介し社内全体へと展開したい
現在このしくみによる情報収集の対象は、Azure 上のクラウド システ
クレンジング
3日
自動化
Power BI
データ加工
グラフ作成
ムとサーバー アプリケーション、モバイル アプリケーションですが、今
Application
Insights
数分
稼働分析
レポート
後はオンプレミス システムの稼働情報も集約していく計画です。
「オン
プレミス システムは Microsoft System Center Operations Manager
®
稼働分析
レポート
(SCOM) でシステム監視を行っているのですが、この監視データをクラ
ウド上の OMS と連携して管理を一元化できることは既に検証済みです」
「稼働中のシステムに手を入れることは困難ですが、今後オ
と清水 氏。
ンプレミス システムとクラウドが連携するハイブリッド クラウド型のシ
ステムを構築する場合には、両方の稼働情報を一元的に収集し分析する
しくみが実現できると考えています」。
導入前後の作業時間の比較。以前はデータ集計を 3 日間かけて行いレポートを作成していまし
たが、現在では完全に自動化され、Power BI にアクセスするだけでレポートを出力できるよう
になっています。
さらに、Power BI による稼働状況やアプリケーション利用状況の分析
機能を、顧客側の担当者に提供することも検討されています。顧客側
これに加え、ア プリケーション内のユーザー行動を 分析可能にする
と分析データを共有し、それをベースにコミュニケーションを行うこと
Azure Mobile Engagement の活用も視野に入っていると言います。こ
で、アプリケーション開発の企画をより的確に行えるようになると期待
れによってアプリケーション内の機能から機能への遷移状況が把握で
されています。
き、アプリケーション内の動線最適化が容易になるからです。また今後
タブレットのプラットフォームが複数になってくる場合には、タブレット
「Azure を活用した新規システムの構築は、他の部署でも増えつつあり
向けのモバイル アプリケーション開発に、クロス プラットフォーム アプ
ます」と澤 氏。今回構築した稼働情報収集および分析のしくみは、他
リケーション開発ツールである Xamarin の活用も進めていく予定です。
のシステムでも必要なものであり、効果が高いはずだと語ります。
「これ
をぜひ他部署にも紹介し、社内全体に展開したいと考えています」。
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