2016 年 6 月 6 日 日華化学(4463) 担当 近藤 浩之 レーティング: NEUTRAL NEUTRAL(2015/8/27)→ 中国・ASEAN でのシェア拡大狙う。足元では円高が重しに。 売上高 伸び率 営業利益 伸び率 経常利益 伸び率 純利益 伸び率 EPS 1 株配 (百万円) (%) (百万円) (%) (百万円) (%) (百万円) (%) (円) (円) 連 13/3 31,651 2.0 1,659 59.0 1,797 63.0 1,260 154.9 71.65 15.00 連 13/12 33,584 22.1 2,941 86.3 3,280 94.4 2,678 134.0 152.20 16.00 連 14/12 39,930 5.8 2,864 -5.2 3,072 -9.4 1,446 -47.6 82.22 16.00 連 15/12 46,526 16.5 2,364 -17.5 2,442 -20.5 1,151 -20.4 70.13 20.00 連 16/12(予) 50,000 7.5 3,000 26.9 3,000 22.8 3,000 160.5 191.19 20.00 第 1 四半期累計期間 連 15/1-3 10,938 14.5 923 0.8 977 11.4 497 -15.9 28.28 連 16/1-3 9,886 -9.6 303 -67.1 366 -62.4 222 -55.2 14.21 株価(2016/6/6) 870 円 発行済み株式数(16/3 末) 17,710 千株 自己株式数(16/3 末) 2,019 千株 時価総額 15,408 百万円 企業価値(EV) 27,398 百万円 ROE(15/12 実績) 6.2 % 今期予想配当利回り 2.3 % 予想 PER 4.6 倍 BPS(16/3 実績) 1,094.17 円 PBR 0.8 倍 CFPS(15/12 実績) 280.3 円 PCFR 3.1 倍 EV/EBITDA(15/12 実績) 7.4 倍 株価チャート(週足) (注) 13/12 期より決算期を 3 月 31 日から 12 月 31 日に変更。13/12 期、14/12 期の伸び率は前年の同一期間に対する増減率。 出所:日華化学、ブルームバーグ、今村証券 昨年12月に東証2部に上場を果たし、名証2部との重複上場となる。 界面活性剤メーカー(資料1、出所:同社決算短信)。主力の化 学品事業の内、約3/4が繊維加工用薬剤(平滑剤、撥水撥油剤、抗菌 防臭加工剤等)であり、①繊維加工の工程(紡績・製織・製編から 精練・漂白・染色・捺染・仕上まで)すべての薬剤を網羅している こと、②繊維加工用薬剤の売上高の8割が海外であることが特徴だ。 その他、クリーニング用薬剤、情報記録用紙用薬剤(感熱紙用顕色 剤)も手掛ける。化粧品事業(美容室向けシャンプー・コンディシ ョナー・スタイリング剤等)は複数のブランドを持つ「マルチブラ ンド戦略」を採用し様々なニーズに対応している。 (資料1) 売上構成比(2015 年 12 月期) 2016年12月期第1四半期は、減収、大幅減益となった(資料2、出所:同社決算短信)。化学 品事業の収益が大幅に悪化した。同事業の売上高は73億13百万円(前年同期比▲16.8%)、営業 利益が2億47百万円(同▲72.5%)だった。主因は①韓国での販売減少、②円高―である。一方 で、化粧品事業の売上高は24億86百万円(同+15.8%)、営業利益は4億74百万円(同+18.4%) と好調だ。近年、ヘアケア剤やスタイリング剤を強化しており、販売が堅調に推移したほか、ODM (相手先ブランドによる生産)事業も伸びた。 化学品事業の収益悪化の主因について、通期への影響を含めて、以下でまとめる。 ① 韓国での販売減少…環境対応型製品への移行に伴ってフッ素系撥水剤の販売が減少した。も っとも、これは会社計画には織り込まれている。下期からは非フッ素系への切り替えが進み、 日華化学(4463) 1 2016 年 6 月 6 日 悪影響は解消される見通しだ。 ② 円高…海外子会社の円貨換算での収益が目減りした。会社計画の前提為替レートは1米ドル =120円であり、現状は前提よりも円高水準で推移している。為替感応度は対米ドルで1円の 円高で売上高年▲1-2億円、営業利益年▲20百万円程とされる。期中平均レートを1米ドル= 110円程と仮定すると、売上高で10-20億円、営業利益で2億円程のマイナス要因となる。 通期では営業増益ながら、会社計画(30億円)には届かないとみる(資料3、出所:同社決算 短信)。前期に新事業のための技術取得、上場関連や人事制度改革に伴う費用やコンサルフィー、 グループ統一業務基幹システムの導入、M&Aコストなどによって一時費用が嵩んでおり、その 反動が見込まれる。ただ、円高の動向には注意したい。全社的な成長に向けた人員拡充も今期で みると重荷となりそうだ。尚、当期純利益が大幅増加となるのは、台湾の旧工場・旧事務所等の 跡地の売却益の計上を見込んでいるためだ。 (資料2) 業績の推移(四半期) (注) 決算期変更に伴い、13.12 期 1Qは同社・3 月決算であった連結子会社については 4-6 月の 3 カ月間、 従来から 12 月決算の連結子会社等については 1-6 月の 6 カ月間を対象期間としている。 (資料3) 業績の推移(通期) (注) 決算期変更に伴い、13.12 期は同社・3 月決算であった連結子会社については 4-12 月の 9 カ月間、 従来から 12 月決算の連結子会社等については 1-12 月の 12 カ月間を対象期間としている。 13.12 期(調整後)は当社・すべての連結子会社等について、1-12 月の 12 カ月間を対象期間としている。 (資料4) 主要国・地域の化学繊維生産量 経営戦略について、事業別に見ていく。 ・ 化学品事業 化学繊維生産は、中国で急拡大して今では7 割以上の世界シェアを有し、ASEAN、インドも 生産量を拡大している(資料4、出所:日本化 学繊維協会) 。同社は、中国、ASEAN での繊維 生産拡大の動きにいち早く対応し、取引先の近 くに拠点を構え、すぐにサポートできる体制を 日華化学(4463) 2 2016 年 6 月 6 日 整えてきた。そのため、同社の化学品事業における海外比率が8割にまで高まっているというわ けだ。今後は、繊維用薬剤事業の市場シェアを2020年に11%(現在7%)にまで拡大させ、グロ ーバルトップクラスを狙う。具体的には、中国では現地で掴んだニーズ(品質、コスト、価格、 スピード等)をすばやく現地の研究所で研究・開発に活かし、アパレルやスポーツウェアの大手 メーカーへの供給を拡大していく。ASEAN市場への積極的展開も進め、インドやパキスタンへの 新拠点の開設も検討する。 新技術としては、昨年に買収した大智化学産業(石油化学製品(クーラント剤、研磨剤等)、 油蝋等の製造・販売)への期待が大きい。大智化学産業は、電子材料分野で切断加工に用いる薬 剤などで高い技術力を持つ。日華化学は同分野について、台湾で工業技術院など政府機関との共 同研究を行っており、大智化学産業のノウハウを吸収することでビジネス展開をスピードアップ させる。さらに、日華化学の海外拠点を活用して大智化学産業の海外販路開拓を図る。 その他、炭素繊維複合材料向けや、超高速遺伝子解析向けの薬剤も実用化へ研究を進めている。 ・ 化粧品事業 新工場が 2017 年に稼動の見込みだ。生産能力は現在の 2 倍以上となり、外注に回している商 品の自社生産が可能となる。従来からのヘアケアブランド「デミ」による美容室向けの商品販売 に加えて、独自商品と頭皮マッサージなどの施術を組み合わせた「イーラル」、30 代女性向けス キンケア商品をネット販売する「アンサージュ」というブランドの拡販を進め、次のブランドの 投入も計画する。海外では、好調の韓国に続き、中国では今年 1 月に美容室向けの販売を開始、 来年には ODM 事業での販売も始める。 株価は、昨年12月の東証2部上場日前後に上昇し1994年以来の高値を付けた。その後、下げに 転じ、上昇前の水準に戻った。今期業績達成への不透明感から、投資判断はNEUTRALを継 続するが、東証1部への指定替えを視野に入れており、現実となれば、物色される場面がありそ うだ。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------アナリストによる証明 本資料に示された見解は、言及されている発行会社とその発行会社等の有価証券について、各アナリストの個人的見解 を正確に反映しており、さらに、アナリストは本資料に特定の推奨または見解を掲載したことに対して、いかなる報酬 も受け取っておらず、今後も受け取らないことを認めます。 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------レーティングの定義 O U T P E R F O R M:今後 12 ヶ月間のトータルリターンが TOPIX の予想リターンを 10%超上回ると予想される。 N E U T R A L:今後 12 ヶ月間のトータルリターンが TOPIX の予想リターンの+10%と-10%の間に入ると予想される。 U N D E R P E R F O R M:今後 12 ヶ月間のトータルリターンが TOPIX の予想リターンを 10%超下回ると予想される。 トータルリターン:株価変動率+配当利回り 目標株価は 12 ヵ月間の投資を想定しており、将来発行されるレポートで修正されることもあります。 日華化学(4463) 3 2016 年 6 月 6 日 ---------------------------------------------------------------------------------------------------------本資料に記載された意見及び予想は、記載された日付における今村証券の判断であり、これらは予告なく変更される場 合があります。今村証券は本資料の記載された日付以降に内容の変更・修正を行う義務を負いません。本資料はお客様 への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券売買に関する申込または勧誘を意図するものではなく、お 客様に対して投資の助言を提供するものでもありません。また、本資料に記載されている情報もしくは分析がお客様に とって適切であると表明するものでもありません。投資に関する最終決定はあくまでもお客様ご自身の判断でなさいま すようお願い申し上げます。 本資料に記載された内容は、信頼できると思われる情報、または信頼できる情報源から得た情報を基に今村証券が作成 しておりますが、機械作業上データに誤りが発生する可能性があります。当社はその内容の正確性や妥当性、適時性ま たは完全性を保証するものではありませんし、本資料における過誤又は遺漏に対して何らの責任を負うものでもありま せん。本資料でインターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている 場合を除き、アドレス等の内容について当社は一切責任を負いません。本資料は、当然にお客様の投資結果を保証する ものではございませんので、今村証券は、本資料の内容について第三者のいかなる損害賠償の責任を負うものでもあり ませんし、お客様が本資料に依拠した結果としてお客様が被った損害または損失については一切責任を負いません。ま た、今村証券は本資料に関するお客様からのご質問やご意見に対して、何ら対応する責任を負うものではありません。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社 および関係会社は、本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買い または売りのポジションを有している場合があり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係 会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘 を行う場合があります。 日本および外国の株式・債券への投資は、株価の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評 価の変化、金利・為替の変動などにより、投資元本を割り込むリスクがあります。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承認なく、また電子的・機械的な方 法を問わず、本資料の全部もしくは一部引用または複製、転送等により使用することを禁じます。 日華化学(4463) 4
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