Title Author(s) Citation Issue Date URL 金属表面上に吸着した有機分子のラマン散乱 : 吸着ピリ ジンのラマン綿シフトの解析(固体の表面・界面における 電子励起状態と緩和過程の研究,科研費研究会報告) 水谷, 五郎; 坂本, 謙二; 潮田, 資勝 物性研究 (1988), 50(1): A76-A80 1988-04-20 http://hdl.handle.net/2433/93018 Right Type Textversion Departmental Bulletin Paper publisher Kyoto University 金属表面上に吸着 した有機分子のラマ ン散乱 一吸潜 ピ リジンのラマ ン線 シフ トの解析 一 塊北大学電気通信研究所 水谷五郎 ,坂本言 兼二 ,潮悶資勝 § 1 は じめに われわれは、吸着 ピリジンの振動モー ド解析を し、有益な知見を得 たので ここに報告する。 e b aらに 有機分子 ピ リジンが .金属表面に吸着するとSERSを起 こす ことは広 く知 られてお り,U よるまとめがある日.それによると.自由分子の ときの 9 9 2 c ml付近の全対称頒伸縮モー ドは ,Ag 表札 1 二に化学吸着 したときには 1 0 0 8 c n 1 -1付近 に拶勤 しパ 勿理吸着 した時 にはそのエネルギー位置を変 えない .図 1は ,U d a g a waらによる,超高島空中 (UHV)で埠備 したAg( 1 0 0 ) 表面上に吸着 させ た ピ リジンの ラマ ン散乱 スペ ク トルであるL ' '.ピリジン分子が単層吸着するまでは 、1 0 0 4 c t D -I に強 いラ マ ン綿が観測 され、それ以上の吸着度では、油体や気体 と同 じ9 9 2 c mIのモー ドが増 えて きている。 これ と似 た現象は、 ピリジンのカルボ ン酸潜 汲 Hや水溶 消 付 に於 いても兄いだされ る (L 12)。ま J たここでも うーっ注 目 したいのは金属表面吸着の場合にも,カルボ ン酸 溶油の場合にも1 0 3 2 c J D 1 のモ ー ドは ,分裂 もせず シフ トもしていないことである.この様 にこ ピ リジンが 、N原子 を介 して金属や 宿場分子 に吸着 または配位 した時には、一般 に9 9 2 c mI のモー ドは 1 0 0 5 c J D -1付近 にb l u es h i f t するが , 1 0 3 2 c m 1 のモー ドは動かないことが わかる。この理由について詳 しく調べ た例はい ままでな く、吸着 e b aら日が 、金属か らピリジン分子への電子の b a c kd o n at i o nによる力定数の変化によ り、 子の場合にU 増 伸縮モー ドの栃軌数が変化 したと言 っているのみである。もし、ピリジンの分子振動の振動数 をこ nOU) ^ヒ SNuトNI NVMV∝ (Uむ SOO (/SU 980 1 000 1 020 1 040 ) 05 O FREQUENCY SHf FT (cm-1 ) 田 I 図 2 A g (loo)表 面 上 l こ吸 ガ し た ピ リ ジ ン の ラ マ ン 恥 乱 ■oM l yerに あ た る ・ ス ペ ク トル . 5 L相 成 が l a J O3 O J O1 0 9 9 0 97 0c m-I 液 拝 ピ リ ジ ン お よ U・ピ リ ジ ン :酢 は = 4 ; I (b). l: I ( C ) I 1… 4 (d ) の 肌 合 群 の ラ マ ン ス ペ ク トル ・ 肘A Iの 油 状 が 糊 え で 行 くと998 ,-1 の ラ マ ン 枠 が 強 くな っ て ゆ く (7 6) C 分子 をf l 相成 している各原子の虫 さと、その原子 をつな いでいるポ ン ドのバネ定数 によって記述 したな 9 2 c J r l のモー らば 、この様なェ ネルギーの変化 は、分子 内の特淀の部位の力定数の変化 、すなわち9 0 32 c m-1 のモー ドには影響をお よぽ さない力定数の変化 に帰着で きるはすである .わ ドには彩管 して1 れ われは この机点か ら吸着 ピ リジ ンの分子振動 を考 えるため に,ピ リジン分子の分子振動数を計鈴す るプ ログラムを作製 し.振動数の計算 を行 った。 白山な ど リジンの振動状態の計顔は古 くはWi l s o n の方法6Iに したが ったL o n g 71 によるものが ,また o n g or 8)による計算 もある.それ らによると9 9 2 c m11 の I i l近では力走数の非調和項 まセ考 えにいれ たP モ ー ドは γ 1モー ド (図 3a ) ,1 0 3 2 c n ) -1のモー ドは γ 12モー ド (図 3b)である .我 々は ,デー タ へ の フ イッ トは想 いが計鈴が基本的で トレー スが容易な L o ngらの計籍法 を使 い ,この 2つのモー ドの o n gらの方法 を川い ,い ま エ ネルギー 位置が各 力定数の変化 によってど うかわるかを計昇 した.実際 L 関越 にな っているエ ネルギー付近の ラマ ン線の実験 値9 9 2c m-I,1 03 2 c d ) I ,1 06 8c J nI のAl モー ドに計 f T . 値を一致 させ よ うとす る と,これ以外のライ ンのエ ネルギー位置 に孟 呉差 を生ず る.しか し,各モー ドの振動パ ター ンは正 しく計丹 されてお 1 ).特定の力定数の変化 にともな う各モー ドのエネルギーの 変 化を試論 す るには十分伯頼性が あると考 え られ る.なお今回問蛸 としているエ ネルギー損城では i l l -pl a ne モー ドしか虫 安でな いので ,o uトo f -pl a n eのモー ドの計算 はr Jわなか った. §2 ノ J定 数を変化 させ た場 合の各モー ドのエ ネルギー変化 9 2c m 1の γ t モー ドは 1 0 0 4 c J r l へ ,1 0 3 2 c J r l の γ 12モー ドはかわ らずにい ピ リジンが吸着 した時 に9 る現象 を説明す るため に,いろいろな力定数 を変 えて各 ライ ンのエ ネルギーの変化を計辞 した・ピ リ ジ ンの内部座標 には図 4に示 す様 に ,C一Hの伸縮振動 S,骨格の伸縮振動 t.C-C一日の変角振 動 β, C-C-Cまたは N-C-C,C-N -Cの変角振軌の 【 2が ある .それ らの振動 を きめ るJ J定 数の うち ;N原子か らオル ト( o),メタ ( m),パ ラ ( p )の位眉にあるC-Nあ るいは C-Cの † 申縮振動 のノ )定数 ,litnはそれ らの平均値 董至 …Z 7 ∴ Vl : 992c r T T l (d) ( C) 一 一三 二 端. . '1 068。 m・ l 図3 t ノ 二 V .. :1 57 4 . 5trTT' P 4 図 4 ピリジンのi n p l a n 8内部吐頒 ピ リジン分子振動のモー ドパター ン (7 7) l IβO=Hβn;N原子か らオル トおよび メタの位置にある C-Hの変角振軌の力定数 HS 2日 ;C-N-Cの変角振動の力定数 また l I 川 ;N原子の実効的な自足 が ,吸着の際変化す ると予想 され る.図 5が それぞれの力定数を変化 させ たときの99 2c m 1 (γ ・)お 032cm-I(γ I 皇)のモー ドのエネルギーの変化のグラフである.この 2つのモー ドのエネルギー よび 1 o,l it n,Kt p,Kt nの が希望 どお りの軌 き,すなわち前者が大 きくな り後者が一定であるのは ,Kt 変 化による場 合であ る.従 ってピ リジンが銀表面 に吸着 した場 合は ,骨桔振動の力定数の何れか ,あ るいは全部が増加 したと結論づけることがで きる. P Sや E EL Sl・〇日0'によって調べ られている.0・ 4L 以上 , ピリジンが銀 に化学吸着す るときの梯子はU l J i 屑以下の ピ リジンは , .N原子を金属州に向 けその L o n 8P a i r の碍子を金属 に供給 して吸着 t j, '金属 は もらった電子のお返 しにベ ンゼ ン現の 7 r・ 軌道 に電子 を供給すると考 えられている1 ㌧ 椴 に原子同 士の結 合次数は 結合次数 = (( 結合軌迫中の電子の数) -( 反結 合軌道中の電子の数)I/2 とあ らわされ る.埋結合の結 合次数は 1であ り.二虫結 合の結 合次数は 2である・この結合次数が大 Uob aら日が言 っているようにベ ンゼ きくな るほ ど結 合は強 くな り原子間の力定数は増加する.いま , ン規の 7 E・ 軌道 に金属 か ら電子が供給 され るな らばベ ンゼ ン環の名原子の問の結合次数は小 さくな り' 力定数は小 さ くなることにな る.これは我 々の結論 と矛盾するれ 現段階 ではその原因はわか らない・ しか し,ベ ンゼ ン拐 内の力定数の増加の うちどれが一番新著かがわかれば ,電子の移動の分布がわか り,解決の手がか りとな るかも知れない .その検討を次節で行 うことにする・ 5 6 7 8 4 5 6 7 1 5 6 7 Force Const Qnt (・1 05dynel ⊂m) 5 6 7 ( TEU)〓ヱ S Ut >UJロ∝ 1 . 0 1 . 2 1 . 4 1 . 6 0_ 8 1 . 0 1 . 2 1 . 4 cm ) ForCe Const Qnl ( ・ 105dyne/ 1 0 1 5 20 Ni l rogen Mqss(qmu) 図 5 力走数をかえたときの9 9 2 c J -1および 1 0 3 2 C か1の モー ドのエネルギーの変化 ,矢印が白山分子の値 (7 8) § 3 電 臨吸着状偲 お よび水 溶油 中にお けるピ リジ ンの ラマ ン線 シフ トの解析 § 2の点 後 にのべ た趣 旨にそ って現 の l q 噸 振動の力定 数の どれが 変化 しているかを検討 しよ う.そ の ため には ・ §2で検討 して いた 2つのモー ド以外 のモー ドが 吸着の際 にどの棟 にシフ トす るかを検 討 す るのが 一つの方 法で あ る .残 念なが ら,UHVで は その様なデー タはな い .そ こで本桐ではV a n 4' によ る箱樋系 の SERSの実験 を検討す るこ とにす る .またそれ に加 えて水沼液中の ピ リジ D u y n e ンの ラマ ン線 の シフ トも解析 す るこ とにす る .これ を検討す る理 由は , § 1で ものべ た棟 にピ リジン が 金属 に吸 潜 す る効果 と ,溶蛸 分子 に配 位す る効果 は非 常 に期 似 したデー タをだ しているていること で ・描か に どち らの場合 も N原子 の 1 似 た現象 で あ るこ とが 言 える . p ai 昭 子 を相手 に供給 して結合す るこ とを考 えると,よ. く 裁1は .V a nD u y n O による電 梅 吸着 ピ リジ ンのラマ ン線 シフ トのデー ター'と水 溶液中の ピ リジ ンの ラ マ ン線 シ フ ト5'のデ ー タを まとめ たものであ る .両者 の ラマ ン線 の シフ トは非常 に似ている. した が って本桐 で は これ らの現象 で は同 じ力定数の変化が お こっている として解析 す る.さて ,同 じ表 t l l ito,l it■ ' ,l ttp お よび i itnをそれぞれ単独 に変 えて9 9 2 c m-'ライ ンを 1 2 c d -1ず らした時 に ,力定 数 I の 各 ライ ンの シフ トを計鼻 した結果 を まとめ た .表 中各 モー ドの計3 割直の中で実験 値 にもっとも近 い - もの をOで か こって あ る .表 をみれば 1itnにつ いて ,Oの数が一番多 い .また実際 メタの 位置の C C結 合が ほ とん ど振動 しな い 1 0 6 8 c m -tの γ 18.モー ドと1 57 4. 5 c n 1の γ ebモー ド (図 3C . d)にお い て ,ラマ ン線が ほ とん どシフ トしな いの は K tnが変化 している とす る と きのみ説明で き,他の力定 が変化 していると結論 数 の変化で はul 舶 1 ' で きな い .従 って電梅系 ・水溶液系 のデー タか らは ,K tn で きる. i 比 舶州 1 ヨ山分子 欺 の . I 1 4 8 3 3 1 0 2 5 1 7 c m -1 1 0 6 8 1 5 8 2 0 3 6 0 4 . 9 9 2 e 1 4 3 7 1 5 7 4 5 2 2 7. 1 1 4 6 7 1也 シフ t 牧瀬 ト (水 実験 配位 ) 10 -2 12 3 K l○シフ l il ト ■ー ( 計拝 1 ilF t )K tn 3. 6 8 1 9 12. 0. 0 5 . ≦. 9 1 ≦1 i 7 ≦1 2≦4 1 0.6 58 1 12 9 ll . 0 64.33 5 3. 0 1 0 . 0_ 1 1g 12. 0 14. 10. 0 3 12 也 6 1 12 3 12 8 5 4.5 2 1 0 6 1. 5. 9 5 0 22 5 4. 0 10 12 1 7 4. 5 ・ 7 16 ll ll 盤 上 . ^b ,矧 掛炊奈 川. ' E . 一' お よび水 分手 配 比l J S ・ 6' の ど リジ ンの分子肋棚 欺 シ フ トお よU' 9 9 2 c m 1のモー ドが 1 0 0 4 c m 1にな る械 I il 。, l ith. l iI P.l itAを変化 させ た帽の各地棚 数の 計5 7 日 由 (桝 如m 」) (7 9) 94 巧群 §3の結 論 よ り .収着 ピ リジンにお いてはメタの位正の結合次数が大 きくな っていると考 えること が で きる.これほ どの株 に朋釈 され るのであろうか .ここで次の例を考 えてみ よ う.図 6はアニ リン . り基底状膿 にお けるアニ リンのベ ンゼ ン硯 は , の盛底お よび励起肘 L iでの各ポ ン ドの結 合次数であ るI 碍子過多で その電子が螺全体 に一棟 に分相 している. (結合次数 =1 . 6- 1 . 7)ところが ,UV光を吸 収 してl B J J 起 状1 削 こな るとベ ンゼ ン硯 は電子 をアミノ基 との問の結 合 にわた してキノ ン核化 し.メタの I _ 1 ' Li 群の結 合次数が大 きくな る (結 合次数 =1 . 8 2 3). この帖は 当然 メタの 位匠の C-Cの力定数は大 きくな っているで あろ う.一方 .ピ リジンのベ ンゼ ン塀 も電 子過多で ,これは有名な p r o t o na c c e p t o r 37 である. したが って この分子が金属 に吸着す る と,ベ ンゼ ン塀 t ) n OP ai r 福子 を介 して金属 に電子を与 える. は N原子の l その際 にアニ リンの励起状他 の様な状臓 の混在がお こ t Q) 図6 t b ) 基底状J R (8 ) お よ び 助 超 状 凪 (b ) の ア ニ リ ン の 名 ポ ン ドの 結 合 次 敷 リ.メタの 位置の力走数の増加が起 こっているのでは な いだろ うか .この様 な こ とを含めて吸着 ピ リジンの 電子状J L iには誠諭の余地が あ りそ うである. なお また ,電極系 の実験では必然的 に分子 の周囲 に水分子が存在す るので ,シフ トの原因が電極の 銀への吸着 によるものなのか水分子の配 位によるものなのかあい まい性が残 る.U d a g a w a 2)らの UH V の実験 を吸着 ピ リジ ンのすべ てのモー ドにつ いてお こな うことが期 待 され る. 参 考文献 1 )I J ・ U o b ae ta l ・ : S u r f a c oS c i. 吐g i , 4 3 3( 1 9 8 2 ) 迫, 6 8 4 3 ( 1 9 8 1 ) 2 ) H. U d a g a w ae ta 1 . . l P h y s . R e v. 旦 3 ) S u s h c h i n s k i i : " R a E l a nS p e c t r ao Ehl e c u l e sa n dC r y s t a l s "( Ⅰ 8 r a e lP r o g r a m, 1 9 7 2 , N e wY o r k ) 4 ) V a nD u y n 8 ・JI P h y s.( P a r i s ) 3 1, C 5 2 3 9( 1 9 7 7 ) 旦, 1 8 0( 1 9 7 9 ) 5 ) H. D . St i d h a ma l l dD. P. D i L e l l a: J. R a J d a nS p e c t r o s c. 6 ) E . 8 . Wi l s o nJ I ・ . O ta l . : " M o l e c u l a rVi b r a t i o n s " ( H c G r a y H i l l , 1 9 5 5, N e wY o r k ) 7 ) D ・ A ・ L o n ga n dE ・ L ・ T h o D ) a S ・ T r a n s・ F a r a d a yS o c ・ 担. 7 8 3 ( 1 9 6 3 ) 呈 並, 2 7 6 5( 1 9 8 4 ) 8 ) G . P o n g o ro tal . ; J. A J D . C h e m. S o c. 9 ) ∫. E . D 川u t he tal . : C h e D . P h y s. L 8 t t e r ST Ji , 2 0 1 ( 1 9 8 0 ) 2 0 1 姐. 5 7 ( 1 9 8 1 ) 1 0 ) ∫. E . D e n ) u t ha n dP . N. S a n d a: P h y s. R e v. L e t t . 班, 3 1 3 ( 1 9 5 2 ) l l ) C . A . C o u l s o l l ; ∫. P h y s . C h e D ) . (8 0)
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