平成 28 年熊本地震で被災された方々に心よりお見舞い申し上げ ますとともに、被災地の一日も早い復旧・復興を祈念いたします。 藤戸レポート 「5月/11月アノマリー」の裏にヘッジファンドの影 2016 年 6 月 6 日 胡散臭い「薄商い下の株価上 昇」 5月末は特別な日 キャリアの浅い投資家ほど、株価の騰落に執着する傾向が強い。投資 で、「儲かった・ヤラレた」の源泉となるのが株価であるため、それは当然で もある。日々の株価に一喜一憂する気持ちも分かる。これはメディアの記者 でも同様で、「何連騰」とか、「いつ以来の上げ幅」といった小見出しが躍る ことが多い。しかし、相場で幾星霜の艱難辛苦を経験したベテランは、その 株価の強弱に持続性があるのか否かに、注目を集中する。この持続性を勘 案するうえで、最大の材料になるのが、出来高・売買代金といった市場エネ ルギー指標である。ノーマルな相場では、株価上昇は市場エネルギーの拡 大で裏付けられる。株価が上がれば、当然利益確定売りが増え、「売り板」 (売りの注文)が厚くなる。その売り物を、さらに買う投資主体が現れれば、 必然的に出来高・売買代金は増加する。つまり、自然な相場ならば、株価 上昇と共に、市場エネルギーの拡大が共存するはずなのだ。ところが、ヘッ ジファンドの運用資産が膨張し、市場での存在感が増加するにつれて、特 定の意図に基づいた思惑的な売買が株価を左右する展開が多くなってき た。例えば、重要なイベントに絡めた売買や、彼らの都合(評価基準日・決 算等)で、恣意的な株価が形成されるケースが、しばしば目に付く。日経平 均は、5/25~31 の間に 5 連騰を達成し、上げ幅は 736 円となった。この株 価の動きだけを見ていると、「新しいブル相場が始まったのか」と思う方も多 いことだろう。ところが、東証一部の売買代金は 5/25~30 の間に、1 日平 均で 1.7 兆円しか出来ていない(グラフ 1)。5/31 は、MSCI(モルガン・スタン レー・キャピタル・インターナショナル)指数のリバランスがあったため、表面 上の売買代金は 2.8 兆円に膨らんだが、おそらく実商いは 2 兆円割れと思 われる。つまり、異常とも思える薄商いで、日経平均が 5/31 高値 17,251 円 まで上昇した胡散臭い相場だった。 どうも、この MSCI 指数をベンチマークとし、売買を行うファンドが増加し ているように思える。多くの欧米ファンドは、12 月本決算・6 月中間決算だ が、11 月本決算・5 月中間決算のファンドも少なくない。つまり、5 月/11 月 末は、日本で言えば 3 月/9 月末決算と同様に、株価意識が高まる傾向に ある。5/31 の日経平均の引けは 17,234 円だったが、日銀政策決定会合が 不発に終わった 4/28 以来、久々の高値水準だ。MSCI のリバランスにかか わる売買は 3,000 億円程度との予測もあったが、5/31 の大引けに向けての 1 分間で実に 9,798 億円の大商いとなった(グラフ 2)。この事実は、単純に MSCI のリバランスに絡めて行う売買だけではなく、思惑的な売買が肥大化 していることを意味している。昨年 11/30 の日経平均も 19,747 円と高かった が、9/29 安値 16,930 円からの急速な戻りだった。株式先物が牽引した異 様な相場だったが、12/1 高値 20,012 円から急反落したのは記憶に新し い。 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 1) 薄商い下の上昇となった 5 月末相場 (兆円) 日経平均と東証1部売買金額 9.00 (円) (出所) AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成 17572 (4/22) 8.00 日経平均(右メモリ) 17251 (5/31) 19,000 18,000 7.00 17,000 6.00 16,000 15975 (5/2) 5.00 15471 (4/8) 15,000 4.00 14,000 東証1部売買金額(左メモリ) 3.00 13,000 2.00 1.00 12,000 1/12 (グラフ 2) MSCI 指数リバランスで 5/31 は大引で大商い 2/2 2/24 3/16 4/7 4/28 5/25 日経平均(5分足)と東証1部売買金額(5/31) (億円) 50,000 (円) 17,300 (出所) AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成 17251 45,000 17,250 40,000 17,200 35,000 17,150 30,000 28,740 日経平均(右) 17,100 25,000 17,050 20,000 17,000 15,000 東証1部売買金額(左) 16,950 10,000 16,900 5,000 0 16,850 09:00 「5月/11月アノマリー」 10:00 11:00 12:30 13:30 14:30 ここ数年の日本株相場では、この 5 月/11 月のアノマリー(季節的特性) が、新たに定着しつつあるように思える。5 月/11 月が、相場のターニング・ ポイントになるケースが増加しているのだ。日本にとっての 5 月/11 月は平 常月であり、兜町にしても特別なイベントがあるわけでもない。やはり、ヘッ ジファンドの運用資産膨張と同時に、この「5 月/11 月アノマリー」が顕在化 したと見るベきであろう。英調査会社プレキンによると、ヘッジファンドの資産 運用額(2015 年)は、1 位レイ・ダリオ氏率いる米ブリッジウォーター1,695 億 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 ドル(約 18.5 兆円)・運用形態(以下同)は「グローバル・マクロ」、2 位米 AQR キャピタル・マネジメント 649 億ドル(約 7 兆円)・「グローバル・マク ロ」、3 位英マン・インベストメンツ 500 億ドル(約 5.5 兆円。マン・グループ 全体では、今年 3 月末時点で 786 億ドル)・「CTA」、4 位米オクジフ・キャ ピタル 472 億ドル(約 5.1 兆円)・「マルチ・ストラテジー」、5 位英スタンダー ド・ライフ・インベストメンツ 353 億ドル(約 3.8 兆円)・「マルチ・ストラテジ ー」、等々モンスター級のファンドが並んでいる。他には、日本でも御馴染 みの英ウィントン・キャピタル・マネージメント(CTA)も、311 億ドル(約 3.4 兆 円)で 7 位に顔を出している。この資産運用額に、数倍から時には 10 倍以 上のレバレッジをかけて、世界中で有利な投資を求めて蠢き続けているの だ(グラフ 3)。昨年 11 月の反騰相場では、「ブリッジウォーターの仕掛け」と の噂が兜町で広まっていた。真偽の程は定かではないが、こうしたモンスタ ーが、世界の市場でインパクトを与えているのは間違いない。 (グラフ 3) 世界を駆け巡る ヘッジファンド・マネー ヘッジファンド資産運用額(2015年末) ブリッジウォーター・アソシエイツ 1,695 AQRキャピタル・マネジメント 649 マン・インベストメンツ 500 オクジフ・キャピタル 472 スタンダード・ライフ・インベストメンツ 353 ブラックロック・オルタナティブ 318 ウィントン・キャピタル・マネージメント 311 バイキング・グローバル・インベスターズ 303 ミレニアム・マネージメント 292 ローン・パイン・キャピタル 290 (出所)プレキン社のデ゙ータよりMUMSS作成 0 苦闘するヘッジファンド 以下の会社等による株券(優先出資証券、外国株預託証 券及び外国株信託受益証券を含む。)、新株予約権証券 又は新株予約権付社債券の募集若しくは売出し又は特定 投資家向け取得勧誘若しくは特定投資家向け売付け勧誘 等に関し、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社が 主幹事会社(金融商品取引業等に関する内閣府令第 147 条第 3 号に規定する主幹事会社をいう。)となり、当該募集 若しくは売出しに係る有価証券届出書、発行登録追補書類 若しくは有価証券通知書の提出日又は特定投資家向け取 得勧誘若しくは特定投資家向け売付け勧誘等に係る特定 証券情報の提供若しくは公表が行われた日から 1 年間経 過しておりません。:ソニー (億ドル) 500 1,000 1,500 2,000 2016 年 1~3 月期の相場は、そのヘッジファンドにとっても難しいもので あったようだ。ヘッジファンド・リサーチによると、同期の解約額は 150 億ドル (約 1.6 兆円)に達した。この解約の規模は、リーマン・ショック後の 2009 年 4~6 月期の 430 億ドル以来のものである。業界全体の資産運用額も、2.9 兆ドルから 2.86 兆ドル(約 311 兆円)に減少した。各旗艦ファンドのパフォ ーマンスも、ブリッジウォーター▲7%、リーマン・ショック時に空売りで大儲け したポールソン・ファンドが▲15%、タイガー・マネジメントも▲22%と苦戦が続 いている。日本でも、ソニー、ファナック、7&I-HD 等への介入で名を上げた ダニエル・ローブ氏のサードポイントも▲2%と冴えない。ローブ氏は、「ヘッ ジファンド業界は足下の壊滅的なパフォーマンスを経て、『崩壊』の初期段 階にある」とシビアな見解を開陳している(グラフ 4)。また、大御所ウォーレ ン・バフェット氏は、「株価指数連動ファンドよりも、低いリターンしか上げら 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 4) 2016/2 にかけて急落した グローバル・ヘッジファンド指数 (P) グローバル・ヘッジファンド指数の推移 1,280 1259 (2015/4) 1,260 1,240 1,220 1,200 1189 (2014/12) 1,180 1,160 1,140 1,120 1117 (2016/2) (出所)AstraManagerのデータよりMUMSS作成 1,100 2014/1 2014/5 2014/10 2015/2 2015/7 2015/12 2016/4 れないヘッジファンドに支払う手数料に、投資家は不満を感じるべきだ」と 指摘している。ヘッジファンドは、預かり資産の 2%の管理手数料、運用成果 に対する 20%の成功報酬を収益源としているものが多い。この高い報酬が あるだけに、成績不振を何とかしたいというのが本音だ。 現代の貴族か失業者か そこでパフォーマンス向上のためには、少々荒っぽいやり方でもトライす る傾向が強い。決算期末や基準価格算定の重要なスケジュールに対して は、「何とかしたい」のが本音である。20%の成功報酬を獲得するためには、 プラスのパフォーマンスを達成するのが必須である。マイナスに沈めば、成 功報酬は一文も獲得できなくなる。しかも、成績の悪いファンドから、投資家 はどんどん資金を引き揚げる。こうなれば、負の連鎖だ。ヘッジファンドで、 ファンドクローズや解散が少なくないのは、いったん傷ついたファンドを修 復するよりも、新たなファンドを立ち上げた方が成功報酬を獲得するのが容 易なためだ。したがって、ヘッジファンド業界は新陳代謝が激しい。既述の ような超弩級の大型ファンドは別だが、新ファンドはうまくいけば成長顕著と なるが、まずくなると直ちに退場となる。この業界は広いようで狭く、「あの成 績の悪かったファンド・マネージャー」とのレッテルを貼られると、復活は難し い。成功すれば現代の貴族のような生活だが、失敗すれば新規失業保険 申請件数が 1 件増加することになる。したがって、彼らの勝負は、常に白刃 をかいくぐるような緊張感を伴う。 一気に進んだ円買いポジション オーバー・グラウンドでは中々姿を見せないヘッジファンドだが、CFTC (米商品先物取引委員会)のデータから、彼らの足跡を辿ってみよう。今回 の 5 月末株高の要因には、円安の進行が大きかったのは言うまでもない。 彼らのドル/円相場の先物ポジションは、4/19 には 71,870 枚の円買い越し だった。これは、史上最高の円ロング・ポジションである。その後、ドル/円相 の巻き戻し 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 4 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 場は 5/3 高値 1 ドル=105.5 円まで円高に振れる局面があった。ヘッジフ ァンドの円買い戦略は、大きな成果をもたらすことになった。ただし、何度か トライしたけれども、結局 105 円ブレークは短期的には困難な情勢となっ た。そこに、俄に「米 6 月利上げ説」が台頭し、利益確定売りに転じたわけ だ。5/31 時点では、14,837 枚に円買い越しポジションはシュリンクした。約 1 ヵ月で 6 万枚の縮小である(グラフ 5)。5/30 には 111.45 円まで円安が進 行したが、彼らのポジションの巻き戻しが大きく作用したものと思われる。 CFTC の発表にはタイムラグがあるため、ほぼニュートラル近辺にまで利益 確定売りが進行した可能性が高い。この為替相場の円安転換が、日経平 均の上昇にも大きく寄与した。ドル/円相場と日経平均の日中足は、ほとん どパラレルに動いている。株式市場では「円安になったための株高」、為替 市場では「株高になったための円安」という安直な市況解説が横行している が、「円買い=株売り」、「円売り=株買い」のポジションを採っているのは、他 ならぬヘッジファンドである。同一の投資主体が、同じタイミングで HFT(高 速高頻度取引)のペア・トレードを行っているわけで、相関係数が異常に高 まるのは至極当然のことだ。 (グラフ 5) 円買いポジション 巻き戻しに動いたファンド筋 「米6月利上げ説」の台頭がト リガー ただし、ヘッジファンドが円買いポジションの圧縮を急いだ背景には、「米 6 月利上げ説」があったわけだが、多くの投資家は懐疑的に見ているよう だ。フェデラルファンド・レート(FF レート。短期の政策金利)先物の推移を 見ると、5/16 時点では 6 月利上げの確率が僅か 4%に過ぎなかった。この マーケットの安閑とした状況に、最も危機感を抱いたのは FRB(連邦準備制 度理事会)だった。マーケットが、ほぼ確実に利上げはないと想定している 状況で利上げを実施すれば、株式市場はクラッシュすることになる。この状 況では、FRB が利上げカードを抜くことは事実上不可能である。そこで、政 策の裁量余地を確保するためにも、「利上げ警戒」を呼びかけるキャンペー ンを張ったものと思われる。各地区連銀総裁や、理事が一斉に「年 2~3 回 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 5 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 の利上げが妥当」と言い始めたのも、この流れに沿ったものだろう。昨年 12 月の利上げもそうだったが、FF レート先物が 70%前後に上昇し、市場の利 上げに対する体制が十分確保できた所で、FRB は政策発動を実施してい る。この傾向は、「セオリー」と言っても良い。FRB は、市場の混乱を招くリス クを低減したいわけだ。このキャンペーンが奏功し、5/24 には FF レート先 物の 6 月利上げ確率が 34%にまで上昇する局面もあった(グラフ 6)。「円高 シナリオ」で、円買いポジションを過去最高にまで積み上げていたヘッジフ ァンドにすれば、利益確定売りに転じるのは必然だった。 (グラフ 6) FRB 関係者の「タカ派」発言で 6 月利上げ確率が一時急上昇 米国の利上げ確率(2016年内)の推移 (%) 6月利上げ確率 9月利上げ確率 12月利上げ確率 (%) 100.0 78.0% (5/24) 80.0 60.0 63.0% (5/24) 40.0 34.0%(5/24) 20.0 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 0.0 15/10/1 利上げを急ぐ情勢ではない 15/11/10 15/12/18 16/1/27 16/3/7 16/4/14 16/5/24 問題は、「6 月利上げが実際に行われるのか?」という点だ。自動車販 売、住宅は堅調を持続し、1~3 月に停滞感が強まった個人消費も、4 月以 降は改善を見せている。雇用に関しても、大きな流れで改善傾向が続いて いることは間違いない。しかし、製造業は再び勢いを失くしている。5 月のニ ューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀の製造業景況指数(グラフ 7)や、シカ ゴ PMI(購買担当者景況指数)は悪化を辿った。中には、ダラス連銀の製造 業活動指数のように、原油反発で回復が期待されたにもかかわらず、▲ 13.9→▲20.8 と急悪化したものもある。ISM(供給管理協会)製造業景況指 数も、表面上は 51.3 と前月の 50.8 から若干上昇したものの、内訳は生産 54.2→52.6、新規受注 55.8→55.7、雇用 49.2→変わらず、受注残 50.5→ 47.0 と芳しくない。また、設備投資の先行指標となるコア資本財受注は、3 ヵ月連続でマイナスを記録している。FRB の物価のベンチマークである PCE(個人消費支出・4 月)コア・デフレーターも、前年比 1.6%と前月から横 ばいで、目標とする 2%にはなお遠い(グラフ 8)。つまり、どうしても利上げを急 ぐ情勢ではない。おまけに、6/23 には「Brexit」(英国の EU 離脱)の賛否を 問う国民投票も控えている。当初は、「残留確実」と見られていたが、直近の 世論調査でも、「離脱」がリードか両者が拮抗している。英ポンドは再び軟 化しており、楽観していた投資家も「離脱リスク」を織り込み始めた。 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 6 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 7) 米製造業景況感の低迷続く 米景気指標の推移 (P) (P) 40.0 50.0 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 40.0 30.0 30.0 20.0 20.0 ▲1.8% (2016/5) 10.0 0.0 10.0 0.0 -10.0 10.0 ▲9.02% (2016/5) 20.0 -20.0 -30.0 NY連銀造業景気指数(左) 30.0 -40.0 フィラデルフィア連銀製造業景況指数(右) 40.0 2007 -50.0 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 (グラフ 8) 目標の 2%には遠い PCE コア・デフレーター ポジション調整が終われば 「そこまで」 こうしたことから、FF レート先物の 6 月利上げ確率は、6/2 時点で再び 22%にまで低下している。「マーケットは 6 月利上げへの耐性を強めた」との 論調もあるが、利上げ確率 22%で政策発動となれば、米株の大きな下押し 要因となろう。あれだけ慎重に運んだ昨年 12 月の利上げに際しても、「利 上げは織り込み済」との見方があったにもかかわらず、ダウ工業株 30 種平 均は 11/3 高値 17,977 ドルから 1/20 安値 15,450 ドルまで 14%の下落を余 儀なくされた(グラフ 9)。バーナンキ前 FRB 議長以来、「超緩和策の継続」が 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 7 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 9) 利上げを挟んで 調整となった NY ダウ NYダウとFF金利誘導目標の推移 (%) (ドル) 2.00 19,000 (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 1.75 18167 (4/20) 17977 (11/3) 18,000 1.50 17,000 1.25 NYダウ(右) 1.00 16,000 0.75 15450(1/20) 15,000 0.50 FF金利誘導目標(左) 14,000 0.25 利上げ開始 (12/16) 0.00 2015/9 13,000 2015/10 2015/11 2016/1 2016/3 2016/4 2016/5 最大の株価サポート要因だけに、「利上げ=株高」の奇怪なロジックの持続 は難しい。しかも、米株式のバリュエーションは割高感が否定できない。 S&P500種指数の予想PERは17.9倍に達している(6/2時点。ブルームバー グ)(グラフ10)。時期尚早の6月利上げとなれば、株価大幅下落のトリガーと なろう。 つまり、ヘッジファンドは、史上最高の円買いポジションをニュートラルに 向けて縮小したけれども、新たに円ショートを積む可能性は極めて低い。し たがって、このポジションのアンワインド(巻き戻し)が終われば、「円安もそ こまで」となろう。ドル/円相場が 5/30 の 111.45 円で止まり、再び 108 円台 にまで円高に振れたのは、その証左と思われる。 (グラフ 10) 18 倍に接近した S&P500 の予想 PER S&P500株価指数と予想PERの推移 (P) 29.00 2,300 2134 (5/20) (出所)BloombergのデータをもとにMUMSS作成 27.00 2111 (4/20) 2,100 25.00 S&P500(右) 1,900 23.00 (倍) 1,700 21.00 18.04 (4/24) 19.00 17.90 (6/2) 1,500 17.00 1,300 15.00 予想PER(左) 1,100 13.00 11.00 2012/2 900 2012/11 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 8 2013/9 2014/6 2015/4 2016/1 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 暗躍する「CTA」 (グラフ 11) 欧州系証券の先物売買に 翻弄された日経平均 日経平均の 5 連騰には為替の円安が最大の材料だっただけに、円高に 振れれば、自然に株価は反落することになる。しかも、既述のように、「5 月 末に向けた思惑的な買い」が一巡してしまえば、買い上がる要因は消えて しまう。今度は、株式先物の手口からアプローチしてみよう。5/31 の日経平 均先物の手口で目立ったのは、欧州系 A 証券だった。日経平均先物で 1,058 枚、TOPIX 先物で 3,237 枚、計 4,295 枚の突出した買い越しを見せ た。この A 証券は、兜町では「CTA」(既述のヘッジファンドの運用形態)の 受注が多いと認識されている。巨大ヘッジファンドのランキングを見ていた だければわかるが、「グローバル・マクロ」は米国勢、「CTA」は英国勢が圧 倒的だ。5 月末相場の「円安・株高」を演出した主役の香りが漂う。そして、 今度は日経平均が 393 円安となった 6/2 の手口を見てみよう。欧州系 A 証券は、日経平均先物▲1,158 枚・TOPIX 先物▲2,517 枚で、計▲3,675 枚の売り越しだ。つまり、5/31 に買い上がったポジションの大半を 6/2 に投 げていることになる(グラフ 11)。この「高値で買って・安値で売る」奇怪なトレ ードを解く鍵は、「5/31 という特殊日」である。こうしたヘッジファンドを中心 とした思惑的な売買の影響もあって、6/1 から日経平均は急落に転じた。 6/1~2 の下げ幅は 672 円に達したが、何のことはない 5 連騰の上げ幅 736 円を帳消しにしたのだ。下げのメカニズムは、このヘッジファンドの売り が衝撃波を与え、日経レバレッジ投信愛好の個人目先筋が投げて仕上げ となる。この 2 日間は、国内大手証券の日経先物の売りも目立った。 日経平均と欧州系証券の先物売買動向 (枚) 24,000 (円) 17,500 17251(5/31) 20,000 17,000 日経平均(右) 16,000 12,000 16,500 16525 (6/2) 8,000 16,000 4,000 欧州証券先物売買高 (日経平均・TOPIXの合計:左) 0 15,500 -4,000 (出所)AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成 -8,000 現状での増税実施は「経済・ 金融的自殺行為」 5/2 5/10 5/13 5/18 5/23 5/26 5/31 15,000 「薄商い下の株価上昇」には、こうした胡散臭いメカニズムが機能してい ることが多い。こうした背景の認識がない向きは、「日経平均の大幅下落 は、安倍総理が消費増税を先送りしたため」という珍妙な市況解説を行って いる。敢えて言うまでもないが、主要メディアの報道で、市場は増税先送りを 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 9 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 *CDS スプレッドはブルームバーグ (グラフ 12) 日本の破綻リスクは低いとみる グローバル投資家 100%織り込んでいた。総理の正式発表で、株式を売るようなナイーブな投 資家は存在していない。逆のケースを想定してみよう。もし、安倍総理が急 転直下、「増税を予定通り行う」と表明したらどうなったか?いまだに 2014 年 4 月の増税の悪影響は尾を引いており、日本経済は景気後退に陥ること が必定である。おそらく、日経平均は 2 月安値 14,865 円に向けて一気に 急落したことだろう。つまり、「増税先送りで下落」というのは、完全な「SF 小 説」である。もう一つ注目すべきは、日本の財政に関するコメントである。経 済団体の一部では、「財政破綻」という厳しい文言を使っている向きもいた。 これに対して、世界の投資家はどう見ているのか?日本国債の信用力を表 す CDS スプレッドは、6/2 時点で 36.5 ベーシス・ポイント(bp)である。これ は、イタリア 129.5 bp、スペイン 96.7 bp は言うに及ばず、ベルギー47.6 bp、フランス 37.2 bp よりも、日本の信用力が高いことを意味する。さすがに ドイツ 17.8 bp、米国 20.7 bp には劣っているが、グローバル投資家で日本 が破綻すると見ている向きはほとんどいない(グラフ 12)。時系列で見ても、 前政権時の 2011 年 10 月 4 日には 154.7 bp まであったのだ。したがって、 日本の「財政破綻」もフィクションである。「増大する社会保障費はどうする のか?」という当然な疑問もある。しかし、景気動向を無視して税率を上げ ても、税収増にはつながらないのだ。橋本龍太郎政権が実施した 1997 年 の消費増税(3%→5%)のケースを見ると、1997 年度の税収は 53.9 兆円だっ たが、98 年度 49.4 兆円、99 年度 47.2 兆円と、「税率は上げたが税収減」 の惨状に見舞われている(グラフ 13)。誤った増税判断が景気を急悪化さ せ、日本経済は大手金融機関が事実上破綻した深刻なリセッションに突入 して行った。社会保障の充実どころではなく、公債発行額は 97 年度の 18.5 兆円から 99 年度には 37.5 兆円に急膨張した。まずは、停滞した景気 を浮揚させるのが第一だ。この状況での増税は、「経済・金融的自殺行為」 である。 各国のCDSスプレッド(6/2時点) イタリア 129.5 スペイン 96.7 ベルギー 47.6 フランス 37.2 日本 36.5 イギリス 32.0 米国 20.7 (出所)Bloombergのデ゙ータよりMUMSS作成 17.8 ドイツ 0.0 20.0 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 10 40.0 60.0 80.0 100.0 120.0 140.0 (bp) 2016 年 6 月 6 日 ストラテジー マーケット分析 (グラフ 13) 消費税増税が 税収減に繋がった 1997 年 消費税増税(1997年度)を挟んでの税収と公債発行 (兆円) 75.0 (兆円) 40.0 37.5 (出所)財務省のデータをもとにMUMSS作成 35.0 70.0 税収(左) 公債発行(右) 65.0 34.0 33.0 30.0 消費税増税 (1997/4~) 25.0 60.0 19.9 18.5 18.4 55.0 20.0 53.9 51.9 52.1 15.0 50.7 49.4 50.0 10.0 47.2 45.0 40.0 ボックス相場は続く (グラフ 14) ボックス相場に有効な テクニカル指標 5.0 1995 1996 1997 1998 1999 2000 基本観として、ボックス相場が続いている。5 連騰前後には、またも兜町 軍楽隊から「2 万円」が高らかに謳われた。この相場で、高値買いは致命的 な結果をもたらす。常々ご紹介しているストキャスティックスは、5/31 にファ ースト 93.13・スロウ 83.47 で、強い利喰い売りのサインを示していた(グラフ 14)。ぜひトレードの参考にしていただきたい。今後も 6/14~15FOMC、15~ 16 日銀政策決定会合、23「Brexit」投票とイベントが続く。CFTC 残高、先 物手口に十分注意しないと、「マーケットの魔術師」にしてやられるだろう。 日経平均とストキャスティクス 350.0 20,012 (12/1) 17,905 (2/1) 17,291 (3/14) 17,613 (4/25) 19,000 17,251 (5/31) 17,000 日経平均(右) 150.0 (%) 23,000 21,000 250.0 200.0 (円) (出所) AstraManagerのデータをもとにMUMSS作成 300.0 藤戸 則弘 投資情報部長 0.0 15,000 ストキャ・ファースト(左) ストキャ・スロウ(左) 100.0 13,000 50.0 11,000 0.0 15/9/1 9,000 15/10/26 巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 11 15/12/16 16/2/9 16/3/31 16/5/25 【重要な注意事項】 (本資料使用上の留意点について) ・ 本資料は当社が信頼できると考える情報ベンダーから取得したデータをもとに作成されておりますが、機械作業 上データに誤りが発生する可能性があります。当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。ここに 示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示しているに過ぎません。本資料は、お客様への情報提供の みを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的としたものではありま せん。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に 関するアドバイスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは 今後発行する可能性があります。本資料でインターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自 身のアドレスが記載されている場合を除き、アドレス等の内容について当社は一切責任を負いません。本資料の 利用に際してはお客様御自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 (利益相反情報について) ・ 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合がありま す。当社および関係会社は、本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品 について、買いまたは売りのポジションを有している場合があり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、 当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、その他サービスを提供 し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 ・ 当社の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう。)が、以下の会社の役員を 兼任しております。:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫 (外国株に関する注意事項について) ・ 外国株式に関する資料は、Form 10-K 等当該外国法に基づく「有価証券報告書」と同等の公的書類、年次報告 書(Annual Report)、四半期報告書、アーニングリリース等の会社発表による公開情報をもとに作成しております。 当社によるレーティング、投資判断、業績予想等は含みません。また、データの取得・入力時期の違い等により、 本資料と外国証券情報の数値等が異なる場合があります。 ・ 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