(宇宙地球物理系)での研究と教育

大学院協力講座 素粒子宇宙物理専攻(宇宙地球物理系)での研究と教育
■ 宇宙地球環境研究所と協力講座
宇宙地球環境研究所では,物理学教室の協力講座として,素粒子宇宙物理学専攻(宇宙地球物理系)の大学院教育を行っ
ています.大学院入試は物理学教室と一緒に行ない,素粒子宇宙物理学専攻(素粒子宇宙物理系)および物質理学専攻(物
理系)の研究室との併願が可能です.
本研究所は,地球・太陽・宇宙を相互に影響を及ぼし合
う一つのシステムとしてとらえ,そこに生起する多様な現
象のメカニズムや相互関係の解明を通して,地球環境問題
の解決と宇宙に広がる人類社会の発展に貢献することを目
指して研究を進めています.平成27年10月にそれまでの学
内の 3 機関,太陽地球環境研究所,地球水循環研究センター,
年代測定総合研究センターを統合して設立された新しい研
究所です.太陽フレアやCMEと呼ばれる爆発現象や太陽風
の加速,宇宙嵐,オーロラ,超高層大気波動,オゾンホー
ルの形成など未だに解明されていない興味深い現象を研究
しています.本研究所は東山キャンパス内の本部のほか,
全国に4つの観測所と複数の観測施設を持っています.ま
た,ノルウェー,インドネシア,カナダ,チリ,アルゼン
チン,ニュージーランド,ボリビア,南極などに観測装置
を設置し,国外の研究者とも活発な共同研究を行っていま
す.40名以上の常勤研究者のほか,年間 5 ~ 7 名の外国人客員教授,平均60名程度の外国からの短期来訪者があります.
卒業後は民間企業の他,官公庁,教員などに多数就職しています.また,博士後期課程修了後は研究職(アカデミック
ポスト)につくことを目指すこともできます.
■ 大学院入試と大学院教育
大学院の入試は,物理学教室と同じく自己推薦入試と一般選抜入試の 2 つがあります(合格者数の状況に応じて,冬
期に 2 次募集が実施される年度もあります).日程も物理学教室の入試と同じで志望研究室の併願が可能です.自己推薦
入試は学部 3 年生までの成績と「自己推薦書」をもとに面接試験を行って合否を判定するというものです.物理学の基
礎知識も試問されます.一般選抜入試は筆記試験と面接試験による選抜方法です.筆記試験では(志望研究室に拘わらず)
物理学 4 問を解答します.詳細は別冊パンフレット「宇宙地球環境研究所 大学院案内」および大学院募集要項をご覧
ください.(パンフレットの請求は〒464-8601 名古屋市千種区不老町 名古屋大学宇宙地球環境研究所事務部総務課ま
で250円分の切手を同封の上郵送でお申し込みください.問い合わせ先:TEL 052-747-6303)
宇宙地球物理系の講義は宇宙地球環境研究所の教員が担当します.同じ専攻の素粒子宇宙物理系の講義や工学研究科
の関連する講義を受講することも可能です.また,博士課程教育リーディングプログラムで導入した基礎教育カリキュ
ラム,宇宙理工学Minima AおよびBの受講ができます(博士課程教育リーディングプログラムに参加した場合,Minima
AおよびBは,博士号取得の必要要件となります.その実績は,リーディングプログラムにおける研究・経済支援に考慮
されます.)
SSt研究室 太陽宇宙環境物理学
地球は太陽と宇宙の影響を絶えず受けています.太陽宇宙環境物理
学(SS t)研究室は,太陽と地球の織りなす広大なシステムの謎を総
合的に探ることができる世界的にも数少ない研究室です.SS t研では
最新の観測データとスーパーコンピュータを駆使したシミュレーショ
ンの融合によって,太陽宇宙環境を多角的に解き明かすことを目指し
ています.その研究は太陽ダイナモ,フレア爆発,太陽風,オーロラ,
宇宙嵐,比較惑星科学まで多岐に渡ります.
太陽から地球近傍にいたる宇宙環境の数値実験および
観測データ解析研究の結果の例
GPSなどにより宇宙利用が人々の生活を支える現代社会では,太陽
宇宙環境の変動を予測する宇宙天気予報の重要性が高まりつつありま
す.宇宙天気や宇宙気候の研究も含め,基礎から応用まで多岐にわた
る研究テーマを選ぶことができることはSSt研の特色の一つです.
以下に宇宙地球物理系の 5 つの研究室の研究内容を紹介します.
問い合わせ先:草野 [email protected]
AM研究室 大気圏環境変動
CR研究室 宇宙線物理学
大気環境変動は人類の未来に直接関わる問題です.将来の環境変動
CR研は宇宙線(Cosmic Ray)を研究対象としています.宇宙線の
を正しく予測するためにも,観測に基づいて大気の姿を正確に捉え,
研究は宇宙と素粒子と地球環境の 3 分野にまたがる広い学問です.
大気変動を引き起こしている自然的・人為的要因とそのメカニズムを
CR研では,Fermi衛星やCTA計画などの高エネルギーガンマ線宇
解明する必要があります.大気圏環境変動(AM)研究室では,レーザー
宙物理学や太陽中性子観測による宇宙線物理学,スーパーカミオカン
技術・ミリ波受信技術などの最先端技術を駆使して開発した大気微量
デでのニュートリノ観測や暗黒物質探索XMASS実験,LHCでの超高
成分やエアロゾル(粒子状物質)の計測装置を,フィールド観測や室
エネルギー宇宙線反応の測定LHCf実験などの宇宙素粒子物理学,過去
内実験に応用し,地球温暖化やオゾン層破壊,大気汚染等の大気環境
の宇宙線強度と太陽活動を調べる宇宙線考古学などの研究を行ってい
変動の諸問題に真正面から迫っています.また,地球大気の理解のた
めの相互比較系として,惑星大気を観測する計画にも着手しています.
AM研で開発したCO2ゾンデによるCO2高度分布観測(左)
およびミリ波分光計による南極でのオゾン観測(右)
問い合わせ先:水野 [email protected]
フェルミ衛星によるガンマ線全天マップ(上)
LHCでのLHCf実験(左下)とMOA1.8 m望遠鏡(右下)
ます.またニュージーランドに専用の広視野1.8 m光学望遠鏡を持ち,
重力マイクロレンズによる太陽系外惑星探査も行っています.
問い合わせ先:伊藤 [email protected]
SSe研究室 宇宙空間物理学観測
SW研究室 太陽圏プラズマ物理学
オーロラ嵐・宇宙嵐が発生する電磁気圏・ジオスペースでの物理素
太陽からは太陽風(Solar Wind)と呼ばれる超音速のプラズマ流が
過程・変動現象解明のため,最先端の科学観測機器を独自に開発し,
吹き出しており,太陽系の惑星はすべてその流れ中に包まれています.
海外・国内での地上フィールド観測と地球・惑星周辺の宇宙空間での
太陽風が支配する空間を太陽圏と呼びます.太陽風は常に変動し,地
探査機・人工衛星による直接観測を両輪とした観測的・実験的研究を
球周辺の宇宙環境や超高層大気に大きな影響を与えます.また太陽圏
行っています.a)北欧において,大型のレーダー装置を含む各種レー
の縁では太陽風と恒星間ガスの相互作用が起こっています.この太陽
ダー,ナトリウム温度・風速ライダー,ファブリペロー干渉計,全天カ
風がどうやって生成されるか,その変動を生む原因は何かについて,
メラなどを用いた国際協力による拠点観測を実施.b)北極圏から日本,
未だよくわかっていません.太陽圏プラズマ物理学(SW)研究室で
赤道域にわたる広い範囲で,可視域の分光・電波機器群による世界に
は,独自に開発した大型電波望遠鏡を使って地上から太陽風の観測を
類を見ない国際ネットワーク観測を展開.c)宇宙空間・惑星大気を満
たすプラズマ・中性粒子を計測するため,地球・惑星探査機,観測ロケッ
トに搭載する分析器を研究・開発し,探査・観測計画を提案・推進.
問い合わせ先:平原 [email protected]
探査機・人工衛星および各種地上観測機器による超高層大
気・極域宇宙空間の統合的観測形態
富士観測所のUHF電波望遠鏡
行い,太陽風の謎を解明しようとしています.我々が観測に用いる手
法は世界的に大変ユニークなもので,従来知られていない太陽風の特
性を調査できます.
問い合わせ先:徳丸 [email protected]
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