世界の放熱部材市場に関する調査を実施(2016 年)

2016 年 6 月 3 日
プレスリリース
世界の放熱部材市場に関する調査を実施(2016 年)
―多くのアプリで放熱ニーズが拡大、中でも自動車向けの成長に期待が集まる―
【調査要綱】
矢野経済研究所では、次の調査要綱にて世界の放熱部材市場の将来需要に関して調査した。
1.調査期間:2015 年 12 月~2016 年 5 月
2.調査対象放熱部材:熱伝導性フィラー(アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等)
Thermal Interface Material[サーマルインターフェースマテリアル](放熱シート、フェーズチェンジシート等)
放熱回路基板(アルミ基板、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、窒化ケイ素基板)
3.調査対象企業:放熱部材メーカー、モジュールメーカー等
4.調査方法:当社専門研究員による直接面談、電話・e-mail によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<放熱部材市場とは>
電子機器では小型化・高密度化、高性能化の進展により、電子部品から発生する熱の処理が重要な課題になっ
ている。機器内部で発生した熱は、伝熱・対流・放射・換気(物体移動による熱輸送)により、様々な経路を経て最終
的には全て外気に放出される。
本調査における放熱部材市場とは、筐体への熱伝導を担う Thermal Interface Material(以下、TIM)及び放熱回
路基板、また TIM に放熱性を付与している熱伝導性フィラーを対象として、メーカー販売数量ベースで算出した。
【調査結果サマリー】
‹ 2015 年の熱伝導性フィラー世界市場規模は 8,377t と推計、2020 年は 10,882t と予測
2015 年の熱伝導性フィラー世界市場規模(メーカー販売数量ベース)は 8,377t であった。これらの熱
伝導性フィラーは放熱シートやフェーズチェンジシート、グリース、放熱ゲル、接着剤等の TIM で使用さ
れている。熱伝導性フィラーは、今後も各アプリケーション市場の成長及び各アプリケーションにおける
TIM 需要に牽引されて、需要は増加傾向にあり、2020 年の同市場規模を 10,882t と予測する。
2015 年の放熱シート世界市場規模は 3,726 千㎡、フェーズチェンジシートは 510 千㎡と推計
2020 年の放熱シート世界市場規模は 4,356 千㎡、フェーズチェンジシートは横ばいと予測
2015 年の放熱シート世界市場規模(メーカー販売数量ベース)は 3,726 千㎡、フェーズチェンジシート
世界市場規模(同ベース)は 510 千㎡であった。放熱シートの主な需要先は、民生機器が 30%、自動車
向けが 35%、産業機器は 35%と推計した。各分野での放熱ニーズの増加から使用される箇所が増えて
いる。2020 年の放熱シート世界市場は 4,356 千㎡に増加すると予測するが、フェーズチェンジシート世
界市場は放熱シートとグリースの中間品という特徴により用途が広がっていないことから 2015 年並みの
横ばいになると予測する。
◆
‹
2015 年の世界の放熱回路基板市場規模は 1,894 千㎡と推計、2020 年は 2,571 千㎡と予測
2015 年の放熱回路基板(アルミ基板、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、窒化ケイ素基板)の世界
市場規模(メーカー販売数量ベース)は 1,894 千㎡であった。このうち、アルミ回路基板の構成比率が最
も高く 86.5%を占めているが、アルミ回路基板の 70%が LED TV 向けで利用されている。そのほかアル
ミ回路基板は LED 照明向けや車載電装品向け、パワーモジュール向け等で使用されている。アルミナ
回路基板、窒化アルミ回路基板や窒化ケイ素回路基板は主にパワーモジュール向け基板として利用さ
れている。放熱回路基板は今後、民生機器、産業機器用途、自動車向け等での需要伸長により、2020
年の同世界市場規模は、2,571 千㎡と予測する。
‹ 資料体裁
資料名:「2016 年版 放熱部材市場の現状と将来展望」
発刊日:2016 年 5 月 26 日
体 裁:A4 判 160 頁
定 価:130,000 円(税別)
‹ 株式会社 矢野経済研究所
所在地:東京都中野区本町2-46-2 代表取締役社長:水越 孝
設 立:1958年3月 年間レポート発刊:約250タイトル URL: http://www.yano.co.jp/
本件に関するお問合せ先(当社 HP からも承っております http://www.yano.co.jp/)
㈱矢野経済研究所 マーケティング本部 広報チーム TEL:03-5371-6912 E-mail:[email protected]
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
本資料内容を転載引用等されるにあたっては、上記広報チーム迄お問合せ下さい。
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2016 年 6 月 3 日
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【 調査結果の概要 】
1. 放熱部材市場概況
放熱部材は、スマートフォンやタブレット、ノート PC 等のモバイル機器をはじめとし、エアコンや冷蔵庫
等のインバータ制御部品、新エネルギー分野のパワーコンディショナー、鉄道車両等の駆動モータ制御
部品、携帯電話の無線基地局等の幅広い用途(アプリケーション)で使用されている。
なかでも、現在、放熱部材関連メーカー各社が特に期待を寄せているのが自動車向けである。自動
車では放熱部材を必要とする用途が増加傾向にあり、メーカー各社は自動車での需要獲得に向け開発
を進めている。以下、各市場の動向や今後の予測をまとめた。
1-1.熱伝導性フィラー市場
z 2015 年の熱伝導性フィラー世界市場規模(メーカー販売数量ベース)は 8,377t であった。これらの
熱伝導性フィラーは放熱シート、フェーズチェンジシート、グリース、放熱ゲル、接着剤等の Thermal
Interface Material[サーマルインターフェースマテリアル](以下、TIM)で使用されている。各用途で
の放熱ニーズの増加に伴い、熱伝導性フィラーの市場も右肩上がりの成長となっている。セラミック
系の熱伝導性フィラーとしては、主にアルミナ(微粒アルミナ、球状アルミナ)が使用されており、全
体の 90%以上を占める。その他窒化ホウ素、一部で窒化アルミニウムが利用されている。
z アプリケーション別にみると、民生機器向けでは、ここ数年は PC や TV 市場は低調傾向にあるもの
の、機器の高密度実装化に伴い、これまで使用されなかった部分での TIM 需要が増えており、ア
ルミナを添加した TIM 需要が伸長している。
z 携帯電話の無線基地局向けパワーアンプのうち、小型基地局向けではアルミナを添加した TIM 需
要が、大型基地局向けでは窒化ホウ素を添加した TIM の採用が多い。
z その他熱伝導性フィラーの注目用途として自動車の電装関連が挙げられ、自動車の電装化の進展
に伴い熱伝導性フィラー需要も増加傾向にある。また、電気自動車(以下、EV 車)の生産台数増加
に伴い、LIB 向けの放熱部材に使用される熱伝導性フィラーの需要も好調に推移している。
z その他産業機器向けのパワーモジュール用途では、高い放熱効果が求められるため、窒化ホウ素
フィラーを添加した TIM が使われている。
z 窒化アルミニウムフィラーの販売量は、現状、10t レベルであるが、パワーモジュール向けの絶縁基
板の代替となる放熱シート向けの需要が期待されており、今後の需要拡大が見込まれる。
z 熱伝導性フィラーは、今後も各アプリケーション市場の成長及び各アプリケーションにおける TIM 需
要に牽引され、需要の増加を見込む。2020 年の熱伝導性フィラー世界市場規模(メーカー販売数
量ベース)を 10,882t と予測する。
図表 1 熱伝導性フィラー世界市場規模(2015 年及び 2020 年予測)
10,882
(単位:t)
(単位:t)
2015年
微粒アルミナ
球状アルミナ
高純度アルミナ
窒化ホウ素
窒化アルミニウム
合計
5,149
2,733
344
141
10
8,377
8,377
12,000
2020年予測
6,760
3,448
464
171
39
9,000
6,000
3,000
10,882
39
171
464
10
141
344
3,448
2,733
6,760
5,149
0
2015年
微粒アルミナ
球状アルミナ
2020年予測
高純度アルミナ
窒化ホウ素
窒化アルミニウム
矢野経済研究所推計
注 1.メーカー販売数量ベース
注 2.2020 年は予測値
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1-2.Thermal Interface Material(TIM)市場
z 2015 年の放熱シート世界市場規模(メーカー販売数量ベース)は 3,726 千㎡、フェーズチェンジシ
ート世界市場規模(同ベース)は 510 千㎡であった。
z 放熱シートの主な需要先は、民生機器が 30%、自動車向けが 35%、産業機器は 35%と推計した。
各アプリケーションでの放熱ニーズの増加から使用される箇所が増えている。
z アプリケーション別にみると、民生機器向けはアプリケーション市場の不調があるものの、機器の高
密度実装化に伴い放熱ニーズ需要が増加しており、TIM需要量は微増傾向にある。
z 自動車向けでは ECU 等の電装化進展に伴う放熱シート需要及び、ハイブリッド車(以下、HEV)や
プラグインハイブリッド車(以下、PHEV)の台数増加によるインバータ/コンバータのパワーモジュー
ル向けや LIB 向けでの放熱シート需要が増加傾向にある。
z 産業用途では太陽電池向け需要が鈍化しているものの、携帯電話の無線基地局やその他無線基
地局市場の拡大に伴い、パワーアンプ向け等での需要が増加している。
z フェーズチェンジシートは放熱シートとグリースの中間品として開発されたものであり、常温では取
扱いが容易なシート状であるが、使用温度下でグリースの様な流動性を持った液相に変化する相
変化材料である。熱抵抗も低く双方の利点を併せ持った製品であるが、その中間的位置づけが故
に、特徴がユーザーに上手く訴求できていないため、使用用途がそれほど広がっていない。
z TIM は各アプリケーションでの放熱ニーズの増加から使用箇所が増えている。2020 年の放熱シート
世界市場(メーカー販売金額ベース)を 4,356 千㎡と予測する。一方で、フェーズチェンジシートは
中間的位置づけが故に用途が広がっておらず、市場は横ばいになると予測する。
図表 2 放熱シート及びフェーズチェンジシート世界市場規模(2015 年及び 2020 年予測)
(単位:千㎡)
放熱シート
5,000
4,000
フェーズチェンジシート
4,356
3,726
(単位:千㎡)
2015年
放熱シート
フェーズチェンジシート
3,726
510
2020年予測 3,000
4,356 2,000
510
1,000
510
510
0
2015年
2020年予測
矢野経済研究所推計
注 3.メーカー販売数量ベース
注 4.2020 年は予測値
1-3.放熱回路基板市場
z 2015 年の放熱回路基板(アルミ基板、アルミナ基板、窒化アルミニウム基板、窒化ケイ素基板)の世
界市場規模(メーカー販売数量ベース)は 1,894 千㎡であった。
z このうち、アルミ回路基板の構成比率が最も高く 86.5%を占めているが、アルミ回路基板のうち 70%
が LED TV 向けである。ただし LED TV 構造のエッジ型から直下型への変化に伴い、同用途での
アルミ回路基板の需要量は減少傾向にある。
z その他アルミ回路基板の用途は、低耐圧~中耐圧のパワーモジュール向けや LED 照明向け、車
載電装品等である。車載電装品向けでは 2012 年頃から高価なセラミック回路基板からアルミ回路
基板への置き換えが進んでいるため、アルミ回路基板の需要が伸長してきた。また、メーカー各社
はアルミナ回路基板からアルミ回路基板への代替加速化を狙い開発を進めており、更なる採用拡
大が期待される。LED 照明向けに関しては LED の高効率化等により、より安価な放熱樹脂基板へ
の代替が進んでいるため、大きな伸びは期待しにくいと考える。
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z
z
z
z
アルミナ回路基板は、他のセラミック基板と比較し価格が安価であり、セラミック基板材料(絶縁基
板)として最もポピュラーである。主な用途(アプリケーション)は、汎用インバータやその他産業機
器、自動車の電装品関連等の低耐圧~中耐圧領域のパワーモジュール基板として利用されている。
アルミ回路基板に置き換えられている部分があるものの、自動車に搭載される電装部品数の増加と
集約化により、従来の樹脂製や金属ベースの放熱基板では対応が難しくなっている。このため、セ
ラミックベースの放熱基板に対する需要も増加傾向にある。
窒化アルミはアルミナと比較し約 7 倍の高い熱伝導性を持ち、鉄道車両等の駆動モータ制御部品
等の電鉄向け、自動車向け、産業機器向けのパワーモジュール基板として使用されている。2015
年は電鉄向けや自動車向けでの需要減少により市場が縮小した。特に自動車インバーターモジュ
ールの設計変更に伴う需要減少の影響は大きく、窒化アルミ回路基板メーカーは、需要が伸長し
ている窒化ケイ素回路基板の開発を進めている。
窒化ケイ素は、そのほとんどが自動車向けで白板の状態で使用されており、回路基板として使用さ
れるのはその一部である。窒化ケイ素回路基板は主に自動車及び産業用のパワーモジュール基
板として使用されているが、窒化アルミ回路基板からの代替や、パワーモジュールの SiC 化に伴う
需要伸長が期待されている。
放熱回路基板世界市場は、民生機器、産業機器用途、自動車向け等での需要伸長により、2020
年の市場規模(メーカー販売数量ベース)を 2,571 千㎡と予測する。
図表 3 放熱回路基板世界市場規模推移(2015 年及び 2020 年予測)
(単位:千㎡)
2015年
アルミ回路基板
アルミナ回路基板
窒化アルミ回路基板
窒化ケイ素回路基板
合計
1,639
170
73
13
1,894
(単位:千㎡)
3,000
2020年予測
2,500
2,287
207
53
24
2,000
2,571
1,500
1,000
1,894
13
2,571
24
53
207
73
170
2,287
1,639
500
0
2015年
アルミ回路基板
アルミナ回路基板
2020年予測
窒化アルミ回路基板
窒化ケイ素回路基板
矢野経済研究所推計
注 5.メーカー販売数量ベース
注 6.2020 年は予測値
注 7.四捨五入のため、合計値が一部異なる
2. 注目すべき動向~用途別概要とアプリケーション市場の動向
¾ デスクトップ PC やノート PC、タブレット、スマートフォン等の民生機器においては、そのほとんどが樹
脂製基板であり、放熱部材としては TIM の使用が中心となる。2015 年から 2020 年にかけて、デス
クトップ PC 市場は減少傾向、ノート PC(コンバーチブル、セパレート含む)やタブレット市場は微増
傾向、スマートフォン市場は安定的な拡大が見込まれる。各機器の高密度実装化に伴い、放熱ニ
ーズが増加しており、TIM や熱伝導性フィラーの需要も更に増える見通しである。
¾
LED TV や照明器具、自動車用ヘッドランプ等の LED 関連製品では、TIM やアルミ基板が使用さ
れている。LED TV 市場は緩やかな成長傾向にはあるものの、構造のエッジ型から直下型への変
化に伴い、エッジ型で使用してきたアルミ基板の需要が減少傾向にある。LED 照明向けに関しては
LED の高効率化等により、より安価な放熱樹脂基板への代替も進んでおり、アルミ基板にとって大
きな伸びは期待しにくいと考えられる。自動車向けの LED ヘッドランプの現状の搭載率は 10%以
下と考えられるが、搭載率の増加に伴い放熱部材の需要増加が期待される。
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¾
自動車向けでは ECU 等の電装化進展に伴い TIM やアルミ基板、アルミナ基板の需要が増加傾向
にある。ECU 向けでは自動車 1 台当りの搭載個数の増加に伴い、搭載箇所がエンジン付近になる
など、放熱シート自体にも耐熱性が要求されるようになっている。その他の自動車向け需要では EV
市場の成長に伴い、LIB での TIM 需要が増加傾向にある。
¾
携帯電話の無線基地局用途では、小型基地局向けではアルミナを添加した TIM 需要が、大型基
地局向けでは窒化ホウ素を添加した TIM の需要が好調に推移している。
¾
エアコンや冷蔵庫、その他一般産業用のインバータ制御部品(パワーモジュール)向けにおいては
アルミナ基板や各種 TIM が利用されている。今後も、世界的にそれらの機器のインバータ化率の
上昇が見込まれることから需要は伸長傾向にあると考えられる。
¾
HEV や EV 車の販売台数増加に伴うインバータ/コンバータのパワーモジュール向け需要では、窒
化アルミニウム基板や窒化ケイ素基板、TIM が利用されている。直近では自動車での設計変更に
より、窒化アルミニウム基板の需要が減少しており、窒化アルミ回路基板メーカーは、自動車以外の
用途への注力や、需要が伸長している窒化ケイ素基板の開発を進めている。
¾
太陽光等の新エネルギー分野のパワーコンディショナーや、駆動モータ制御部品等の電鉄向けの
産業用途では 2015 年は需要が鈍化したものの、長期的には今後も継続した成長が見込めることか
ら、アルミナ基板や窒化ケイ素基板、窒化アルミニウム基板、各種 TIM の需要は今後も増加する見
通しである。
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