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ギアチェンジのとき
わが子と
どうかかわる?
中学生から高校生へと1つ上のステージに上がり、期待に
胸をふくらませる子どもたち。これからの3年間で、自立に
高校生活3年間で
で見てきた、4人の高校の先生方にお話をうかがいました。
援するとよいのでしょうか。さまざまな高校生の成長を間近
取材・文/藤崎雅子 撮影/清水一也 イラスト/山口尚美
椿▼本 校の市 立 松 戸 高 校は、大 学 進
学から就 職 まで多 様 な 進 路が見ら
1年 生のゴールは﹁ 高 校 生になる﹂こ
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for
れる中堅校です 。私の担当は生物で、
生物部の顧問、そして進路指導部長
を務めています。進路指導歴は 年。
鈴木▼静岡県立の進学校のなかでも
とだと話しています 。通学時間や通
ま え た 指 導 を さ れている 先 生 方か
歴 史の古い韮 山 高 校で、地 理の教 員
学 手 段 、人 間 関 係 、勉 強 方 法 な ど、
● 全 国から 多 様 なタイプの高 校の
をしています。部活はずっとバレー部
環境が大きく変わりますから、
まず
ら見て、高 校 生 活のスタート地 点と
にかかわっていて、今は副 顧 問 兼コー
は先 輩の観 察や 自 分 な りの試 行 錯
先 生 方にお集まりいただきました。
チをしています。校務分掌は進路課
誤から、
高校生活に慣れることが第一
鈴木▼受 け 持ったクラスの生 徒には、
が長いですね。
のハードルです。ちなみに、
2年生には
はどのよう な ものでしょうか。
森口▼私 が 勤 務 す る 京 都 市 立 堀 川
森口▼新 入 生はやる気に満 ちている
きる﹂を目指すように伝えています。
吹 奏 楽 部 顧 問です 。今は教 務 関 係
一方で、新 入 生アンケートでは多 くの
﹁自立する﹂、
3年生には
﹁主体的に生
の主 任 をしていま すが、数 年 前 まで
生 徒 が﹁ 不 安 ﹂とも 答 えていま す 。
高 校は、難 関 国 公 立 大 学 進 学 希 望
は進路部に所属していました。
者の多い高校です 。担当は家庭科で、
自 身について簡 単にお教 え ください。
ばれています 。今 後の長い人 生 をふ
も ちで、河口先 生はコーチングを 学
はキャリアカウンセラーの資 格 をお
で す ね 。さらに鈴 木 先 生 と 椿 先 生
● 皆 さん進 路 指 導のご経 験が豊 富
う経験を2回しました。
ら6年 間、同じ生 徒たちを 見るとい
ま す 。また、学 年 主 任 として中1か
卓球部顧問、進路部副部長をしてい
という 私 立 中 高一貫 校で、国 語 担 当、
河口▼渋 谷 教 育 学 園 渋 谷 中 学 高 校
バブル期の就職指導も経験しています。
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ま ずは 、そ れ ぞ れの学 校 と 先 生 ご
やる気もあるが不安定な新入生
まずは﹁高校生になる﹂が大事
子どもはどう成長するの?
向けてどう歩んでいくのでしょうか。それを保護者はどう支
「保護者」 から「自立支援者」 へ
高校生になった
に
現役の先生
聞きました!
実 際、 月 当 初の課 題テストの結 果
が高校生活の学習習慣の確立につな
不 安なことを 伝 え、入 学 時のやる気
りません。しかし、
みんな同じように
にショックを 受 ける生 徒 も 少なく あ
生 活の基 盤づく りについては保 護 者
かと思いま すが、家 庭における高 校
活リズムの変 化に対 応 するのが大 変
生 徒 も 通 学 時 間が長 くなったり、生
護者の方はお弁当作りが始まったり、
次々と負 荷がかかっていき ま す 。保
がるように声かけをしています。
のご協力をお願いしています。
ですね。学 区が狭い市 立 高 校で、も
とからの顔 見 知 りが多いことも あっ
けを行っています。
なったんだ ﹂という 体 験 的 な 意 識づ
の特 別 講 座 を 実 施 して、
﹁ 高 校 生に
は、入 学してす ぐマナーや学 習 方 法
になってしまうことも。そこで学校で
んです 。放っておくと﹁中学4年生﹂
成 長って植 物が伸びていくようにゆ
されるかもしれませんが、子 どもの
したよ うに突 然 変 わること を 期 待
鈴 木▼あ る きっか けでスイッチを 押
のように成長していくのでしょうか。
えます。高校生活で子どもたちはど
生の先 輩 たちはとても 大 人 びて見
● 新 入 生に比べると 、高 校2、3年
て、高 校 進 学の新 鮮 味が薄れがちな
河口▼本校のような中高一貫校も、や
は異 なりますが、高 校 生としての意
● 学 校によって高 校スタートの状 況
という宣言はしていますね。
人 間 として尊 重して任せていくよ﹂
﹁ 義 務 教 育が終わったのだから一人の
いう 言い方 は していないので す が 、
一概に﹁ 高 校1年はこう あるべき ﹂と
強そっちのけで部 活や文 化 祭に打ち
の体 験でフッと 伸びる、それを 繰 り
じっと動かないなと思っていると何か
とに小さく 刻みながら進むように、
河口▼そ う 、ちょう ど分 針 が1分ご
れ、
変わったな﹂と感じるものです。
けに久 しぶりに生 徒に会 う と、
﹁あ
気づかなくても、私たちは夏 休み明
込んでいると、保 護 者は不 安になる
返 していく イメージでしょう か 。勉
森口▼なんとかペースをつかむまでに、
でしょうが、そういう時がフッと伸び
識や生 活ペースをつくることの大 切
月の連 休 くらいまではかかるでし
さは共 通しているようですね。
での成 長ペースは人 それぞれなので、 っくりなんですよね。毎日見ていると
はり境 目が見えにくいです 。6年 間
植物のようにゆっくり成長
苦しい時こそぐんと伸びる
椿▼本 校はちょっと違 う 注 意が必 要
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定 期 考 査に向かわなくてはならず、
せん。そのころに高 校では初めての
ょう 。いや、もっとかかるかもしれま
ったり ⋮ 落 ち 込 むよう な 出 来 事 も
り、学校行事をうまく進められなか
る瞬間です。ときには試合に負けた
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のではないか﹂と自 分で動かず、誰か
があるのに、﹁誰かが解決してくれる
に、少し注 意が必 要だと考 えていま
森口▼私は、
進路選択へのかかわり方
ってほしいんです。
して行 動 す るよ うになる 基 本 的 な
に頼ろうとする生 徒が増えているよ
のに周りがいつも助けてあげると、
手
生 活 習 慣ならば、少しくらい依 存し
す 。今はできていなくても自ら自 覚
を 差しのべてもらうことに慣れてし
ても 問 題 ないと 思いま す 。しかし、
うに感じていま す 。頼 まれもしない
まって、行 動 を 起こす 力 を 奪 うこと
大 き な 意 思 決 定やそのための行 動
あるでしょう 。そんな挫 折や失 敗を
なたらしく挑戦したことはすばらし
を押し、もし失敗してしまったら﹁あ
ね。
﹁ 失 敗してもいいんだよ﹂と背 中
朝 子ども を 起こす ﹂
﹁ 子どもの部 屋
● 日 常のかかわり方 を 見ると 、
﹁毎
とに、自 分の意 思 はないで す よね 。
するからと起こされて学 校へ行 くこ
で起 きてほしいところですね 。遅 刻
く 主 体 性の問 題でも あるので、自 分
河口▼朝の起床は生活習慣だけでな
すいんでしょうね。
● 高 校 生になったのを 機に、少し子
立するでしょう。
ば 減 ら すほど、その分 、子 どもは自
と自 立のうち、依 存の割 合を減らせ
るべく 減らしていただ き たい。依 存
護者の方には依存させる度合いをな
判 断 しながら 歩いていけるよう 、保
らないですよね。自 分で地 図を見て
いつまでもひとりで行 けるようにな
を知っている人についていくだけだと、
張りです 。ある場 所に行 くとき、道
のは、﹁手放してあげましょう﹂の一点
の保 護 者の皆 さんにお 願いしている
河口▼同 感です 。私がいつも 高 校 生
いくとよいのではないでしょうか。
も 自 身 が 考 えて動 くように促 して
望校や学部を自分で決めたり、子ど
体的に進路の情報収集をしたり、志
経 験や 知 識 が 必 要にな り ま す 。主
ものではないですよね 。ある程 度の
などは、必 要に迫られて急にできる
になるのではないでしょうか。
鈴木▼保護者の方には、
ぜひ﹁失敗さ
せる勇気﹂と﹁挑戦に対する称賛﹂を
乗 り 越 えたときは、﹁1分 ﹂よりもっ
セットでもっていていただきたいです
と成長するかもしれませんね。
はその失 敗 経 験を糧にできるでしょ
鈴木▼痛みや苦しみがあるときこそ、 い﹂と認めることで、きっとお子さん
ぐっと伸びる。
﹁ 成 長 痛 ﹂みたいなも
うから。
ではよくないの?
中学までと同じかかわり方
のですね。
失「敗させる勇気﹂が
子どもの成長を促す
● とはいえ 、わが子には失 敗させた
く ないのが親 心でしょう 。
椿▼自分も高校生の子どもをもつ保
森口▼つまずきから、
自らの力で立ち
を 掃 除 する﹂という 保 護 者は多いよ
護 者の一人なので、よくわかりま す 。
上がることができたときの成長は大
うです︵p 7・p
椿▼勉 強 面などに比べて生 活 面は保
校する﹂
を選ぶんだ、
という意識をも
ある中で、自 分は﹁ 時 間 を 守って登
﹁ 休む﹂
﹁ 遅 刻 する﹂などの選 択 肢が
与を今 後は一切やめてください、とい
河口▼だからといって、これまでの関
うがよさそ うですね。
ど も とのかかわり 方 を 見 直 したほ
コラム参 照 ︶。
護者のテリトリーなので、
かかわりや
のためにはならないんですよね。
避に動いてしまうと、
かえって子ども
きいですよね。例えば、
何かの活動で
自信や決断力が育つよう
少しずつ手放しを
失敗してしまったとき、どうやって解
しかし、
だからといって周囲が失敗回
鈴木
先生
決 したらいいか、自 分で考 え 動 くこ
担当科目は地理、バレー部副
顧問、
進路課。日本キャリア教
育学会認定キャリア・カウンセ
ラー、スクールカウンセリング
推進協議会認定ガイダンスカ
ウンセラー。
「一人ひとりの心
に灯をともす」
がモットー。
椿 仁三千先生
担当教科は家庭科、吹奏楽
部顧問、学務部長。同校が学
校改革を推進した時、進路指
導 主 事として難 関 国 公 立 大
学合格実績に貢献。常に「生
徒のキラっと光る何かをみつ
ける」
を意識。
担 当 科目は生 物 、生 物 部 顧
問、進路指導部長。日本キャ
リア教育学会認定キャリア・カ
ウンセラーの資格をもつ。進
路指導歴 26 年で培ったノウ
ハウを、後輩の先生に継承し
ていくことが目下のテーマ。
韮山高校
(静岡・県立)
鈴木映司先生
堀川高校
(京都・市立)
森口安紀先生
松戸高校
(千葉・市立)
子どもの成長は、
植物が伸びていくように
ゆっくり。毎日見ていると
気づかないかもしれません。
とで力がつき ま す 。しかし、潜 在 力
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頼まれもしないのに
周りがいつも助けてあげると、
行動を起こす力を奪うことに
なるのではないでしょうか。
セルフチェック!
わが子にどこまでかかわる?
わが子に中学までやっていたことと、
これからも
やろうと思うことをチェック してみましょう。
生活編
中学まで これから
森口
先生
●毎朝子どもを起こしている
●子どもの部屋を掃除している
●子どもが出かける前、忘れ物や服装の寒暖調節などを
気遣っている
●子どもが就寝するまで自分も起きている
うわけではないですよ。お子さんと
ろ子どもを成長させることもあるん
護者がサポートしにくい状況はむし
いい﹂と結 論しか言わないと、意 見や
はないでしょうか。
﹁こうしたほうが
椿▼進路の保護者会で、
私はよく﹁家
はだいぶ違うと思います。
の間に少しずつ余 白 をつくるイメー
● 高 校 生へのアンケートから も 、親
価 値 観の押し付 けになってしまいま
離 れに向 けた 胎 動がうかがえ ま す 。
族 会 議 ﹂をお勧めしていま す 。進 路
だなあ、
と感じますね。
進 路 を 考 える時に保 護 者に望 むこ
のような大 事な話は、保 護 者が子ど
人ぐらい
ジで、本 人に任せる範 囲 を 徐々に増
ます 。空いた余 白を埋める力になる
できたときは、達 成 感と自 信をもて
とで、最 も 多いのは、﹁ 私の考 えを 尊
もに﹁話す﹂というより、﹁話し合う﹂
やしていけばいいんです。人に言われ
でしょう。
重してほしい﹂でした︵p 8コラム参
ことが大事です 。日常の会話の延長
て 何 かがで きて も 本 人の気 持 ち は
いるのです が、日 常 生 活はも ちろん
照 ︶。保 護 者はどんなコミュニケーシ
で何 とな く 話 すのではな く 、
﹁何月
40
動 き ませんが、自 分で決めたことが
自 己 管 理していま すし、
ケガや病 気
ョンを心がけるとよいでしょうか。
何日何 時から進 路について話し合お
鈴木▼本校には下宿生が
をしたとき も 生 徒 同 士で助 け 合 う
森口▼もしお 子 さんに何かアドバイ
●勉強や勉強方法について、子どもに指導している
こともあるようです。たくましく成
勉強編
う﹂と決めて﹁家族会議﹂を開いてみ
●子どもの外出先や週末の予定を常に把握している
スするときは、﹁なぜそう 考 えたか﹂
●子どもの嫌いなメニューや食材は出さない
長して、
リーダー的 存 在になっていく
●子どもの携帯をチェックしている
てはどうでしょうか 。お 互いの意 見
●子どもの衣類は主に親が買いに行っている
をしっかり 伝 えると、より 効 果 的で
●用もないのに子どもの部屋をのぞきに行く
生徒もいます。彼らを見ていると、
保
●「何時までに○○
(TV、食事、
ゲーム等)
しなさい」
と
いう会話をよくする
●時間割を細かく把握している
●今学んでいる単元など、勉強の進度をチェックしている
●子どもに質問されてもいいように自分も勉強している
科目がある
●子どもの教科書やノートをチェックし、
勉強への取り組み態度を確認している
●勉強しなさいと毎日のように言っている
●文房具はほぼ親が買いに行っている
●定期テストや模擬試験の結果を子どもよりも
分析・理解している
●定期テストや模擬試験の結果が悪いと、子どもを叱る
●先輩保護者から情報収集している
●子どもに希望の進路を尋ねたり、早く進路を
決めなさいと促している
●親が希望する特定の進路を、子どもに勧めている
●子どもに向く仕事や学校を検討し、
子どもに勧めている
●子どものために大学の資料などを取り寄せたことが
ある
●ある特定の進路・職業について、親は反対だと
子どもに伝えている
す 。同じ結 論の話でも、その結 論 を
●進学先
(高校・大学)
の見学に行った(行こうと思う)
裏づけるご自 分の経 験 談や 考 え 方
●進学先
(高校・大学)
を調べている
も 話 すことで、相 手の受 けとる印 象
進路選択編
意見や価値観を押し付けず
子どもの考えを尊重
●塾選びを保護者主導でしている
●子どもの選んだ進路やなるための方法を研究している
●向いている科目や文理選択などは親が判断し
アドバイスしている
それぞれどれぐらいありましたか?
P10で先輩保護者にとった
アンケート結果と比べてみましょう。
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中学まで
これから
個
個
合計
渋谷教育学園渋谷中学高校
(東京・私立)
河口竜行先生
担当教科は国語、卓球部顧
問、進路部副部長。学年主任
としての経験も豊富。コーチン
グを学び、
コーチングバンク登
録コーチに。生徒への決め台
詞は「迷ったらアクティブなほ
うを選ぼう」。
高校生から見た保護者の干渉度別に見てみましょう。まず、
「してほしいこと」は、
【 干渉】
【 無関心】に「私の考えを尊重してほしい」
「私の話を
ちゃんと聞いてほしい」の多さが目立ちます。
【ちょうどよい】は、
「してほしいことはない」が3割を超え、保護者への依存度は低めのようです。
一方の「やめてほしいこと」は、
「 望みを高く持ちすぎる」
「勉強や成績の話ばかり」が、いずれの干渉度でも上位にきています。
50
50
40
40
30
30
20
20
10
10
【進路を考える上で保護者にやめてほしいこと】
【進路を考える上で保護者にしてほしいこと】
を 出 し 合 う 雰 囲 気 が 自 然につく ら
れますよ。話し合いでは早 くに結 論
を 求め過 ぎ ず 、じっと待つ時 間 も も
てるといいですね。
鈴 木▼本 校では毎 年 、
3年 生に﹁ 保
護 者に言ってもらってよかった 言 葉・
言われたくなかった言 葉 ﹂についてア
げようね﹂といった、子ども本人を軸
ンケートをとっています。言われたく
なかった言葉には、﹁○大より下は勘
おそらくそんな言葉がけになるんで
してほしい﹂という思いに応えるには、
った ﹂と他 人 と比べたり する言 葉が
しょう ね 。よい言 葉 を もらった 生 徒
にした言 葉です 。
﹁ 私の考 えを 尊 重
並びます 。一方の言われてよかった言
は、入 試の結 果 がど うであ れ、前 向
弁 してよ﹂と世 間一般の尺 度 を 押 し
葉にあがるのは、﹁あなたらしく頑張
きな姿勢で進学していきます。
距離感とは?
がいらっしゃいま す 。でも 、子 どもの
がすべて代 弁してしまうことがあり
き たいのですが、たまに保 護 者の方
森口▼三者面談では生徒の本音も聞
る保 護 者の言 動はありますか。
るのは簡 単ではありません。気にな
● 急に﹁ 高 校 生の保 護 者 ﹂の顔にな
子 育てしてきて、保 護 者は子 どもの
鈴木▼これまで自 分の人 生 を 削って
ててしまうのも避けたいですね。
うに感じて、何かあった時に一緒に慌
椿▼子 どものことを 自 分のことのよ
と思います。
ら、そんなに小さくなる必 要はない
成 績は保 護 者のせいじゃないんだか
ますね。
人 生の全 責 任 を 負っているような気
子「どもの人生は本人のもの﹂
との認識をベースに
成績が悪くて ⋮﹂と居づらそうな方
子どもとのちょうどよい
って﹂
﹁ 自 分のやりたいことをやり 遂
付けたり、﹁○○ちゃんは△大に受か
椿先生
河口▼保護者会や面談で、﹁うちの子、
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放っておくのは
やめてほしい
就職が有利というだけで進
路や学科を勧めないでほしい
﹁ 好きなことをしなさい﹂だ
けで終わらないでほしい
思いつきで
アドバイスしないでほしい
夢や進 学 先を
バカにしないでほしい
お金の話ばかりするのは
やめてほしい
自 分の経 験だけをもとに
話さないでほしい
頭ごなしに夢や進 学 先の
希 望を否 定しないでほしい
自 分の考えを
押しつけないでほしい
プレッシャーばかり
かけないでほしい
勉 強や成 績の話ばかり
するのはやめてほしい
■ 保護者が干渉だと感じている高校生(456人)
■ ちょうどいいと感じている高校生(1187人)
■ 保護者が自分に無関心だと感じている高校生(206人)
■ 保護者が干渉だと感じている高校生(456人)
■ ちょうどいいと感じている高校生(1187人)
■ 保護者が自分に無関心だと感じている高校生(206人)
望みを高く持ちすぎない
でほしい
私の考えを尊 重する
具 体 的にアドバイスする
私の話をちゃんと聞く
進 路について私よりも
詳しく情 報 収 集する
あたたかく見 守っている
励ましてくれる
私の進 路について
関心を持っている
放っておいてくれる
相 談にのってくれる
今の進 路や進 学に
ついて知っている
してほしいことはない
(%)
0
(%)
0
保護者の態度別 高校生が進路を考える上で保護者に望む行動・態度とは?
データをチェック!
一般社団法人全国高等学校PTA連合会・株式会社リクルートマーケティングパートナーズ合同調査 第7回「高校生と保護者の進路に関する意識調査」2015
小学生は「リード」、中学生は「同調」、
高校になると自立に向けて
「距離感をもった信頼」
が大事になります。
大切なのは
そこに﹁信頼﹂があるか
方もあるかもしれませんね。
倫理観を教わりました。そんなやり
保 護 者の生 き 様 を 通 して社 会 性や
セージでした。言葉で伝えなくても、
をサボっちゃいかん﹂
という無言のメッ
事をしている親の姿は、﹁簡単に学校
屋の息 子で、体 調が悪 くても毎日仕
うあるべきかも大事です 。私は八百
何をするかも大 事ですが、自 分はど
かもしれませんね。子どもに対して
めて確認し、子離れを覚悟する時期
の人 生は本 人のもの。その事 実を改
持ちにもなるでしょう。でも、
子ども
思いますよ。上からの目線で指示す
上に離 れるぐ らいがちょう どいいと
河口▼いずれにしても 、思っている以
はないでしょうか。
の基 準にとらわれなくてもよいので
意識しています 。保護者の方も、
一律
教員も、その子に応じた言葉がけを
ところで問 題 ないでしょう 。私 たち
もっている子にいくらアドバイスした
護かもしれませんが、自 分の考 えを
るのは子 どもの主 体 性 を 奪 う 過 保
何 も 考 えていない子にアドバイスす
況により ま すから。例 えば、自 分で
動が過 保 護かどうかは、子どもの状
ン﹂なんてないと思いますよ。その行
森口▼すべての親子に共通する﹁ライ
頼に足るまで成 長 するのを 待つので
が難しいかもしれません。そこで、
信
知っているだ けに信 頼 して任せるの
方にしてみれば、子 どもの未 熟さを
生までと違 うところです 。保 護 者の
り受け止める力がある。そこは中学
河口▼高校生なら、その信頼をしっか
も 、﹁ 信 頼 ﹂
の有 無が大 切なんですね。
● 何 を するか、どこまでするかより
しょう。
動は似ていても まったく 違 う もので
い放 任 ﹂と﹁ 信 頼して見 守る﹂は、行
も同じでは ? ﹁ 任せきって見ていな
かそうと思えるのです。親子関係で
からこそ、失 敗 を 次へのステップに生
頼されているという 気 持ちを感じる
お子さんにそのまま﹁迷っている﹂﹁わ
り 方がわからなかったりして当 然 。
ます。でも、
保護者だって迷ったり、
や
レスを感じているのではないかと思い
者になれているだろうか﹂というスト
よいんだろう ﹂
﹁ちゃんと理 想の保 護
ていくと、
皆さん﹁本当はどうあれば
河口▼こうして保 護 者の立 場で考 え
で支援していきます。
学 校で勉 強が大 変なのに﹁ハードな
解 してくれま す 。
﹁親
高 校 生 は ちゃん と 理
からない﹂
と伝えたっていい。無理して
でしょうね。
部 活に入 りたい﹂と子 どもが言った
もわからないなりに自
﹁ 偉い親 ﹂でいる必 要はないんです 。
椿▼わかり ま す 。保 護 者の子 どもへ
時、﹁今はうまく両立できていないけ
分のことを気にかけて
してみてはどうでしょう。例えば、
進
のかかわりは発 達 段 階によって変 化
れど、きっとこの子はやっていける﹂と
く れているんだ な ﹂と
はなく、﹁成長﹂
より先にまず﹁信頼﹂
していく もので、小 学 生には﹁ リー
ま ず 信 頼してあ げる。すると、子ど
子 ど も が 知 る だ けで
して任せる﹂がポイントになってくる
不 安 ⋮ と 、保 護 者 も 揺れる時 期だ
ド ﹂、中 学 生には﹁ 同 調 ﹂、そして高
もは失 敗しながらも、その信 頼に沿
も、両 者の信 頼 感は増
るのではな く 、対 等 な 目 線で﹁ 信 頼
と 思いま す 。過 保 護 と 放 任 の間に
校 生には﹁ 距 離 感 を もった 信 頼 ﹂が
うように変 わっていく ものです 。高
すのではないでしょう
●いつまで も 過 保 護 ではいけ ない、
ある﹁ ちょうどよい距 離 ﹂は、どこに
子 どもの成 長 を 促 すのだ と 思 うん
校 入 学 を 機に、
﹁ 今 後は信 頼して任
そ うはいっても 急に手 放しするのも
あるのでしょうか。
です 。保 護 者はあまり手 出し・口出
● 高 校 生 の保 護 者 と
してのギアチェンジの
か。
鈴木▼そ うですね 。高 校 生 活 とは、
しかたについて 、た く
するのも手ですね。
森口▼私 も﹁ 信 頼 ﹂は大 事 だと 思い
保護者から受けた信頼を、
3年間か
さんのヒントをいただ
せるよ﹂と 保 護 者のスタンスを 宣 言
ます 。もし失 敗をしたときも、その
けてつくりあげる過 程だともいえる。
きました。ありがとう
きているのでしょう。
後の方 向 性がまったく 違ってき ま す
その過 程 を、保 護 者の皆さんにも 支
ございました。
し をせず 、信 頼 して待つべき 時 期に
から 。私 自 身 、
チームで仕 事 を する
えていただくし、ぼくら教 員 も 全 力
Parent 2016
for
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ときに感じるのですが、仲 間から信
河口
先生
保護者だって迷ったり
わからなかったりして当然。
そのまま子どもに伝えても、
理解してくれるのが高校生。
ま と め
自立支援者になるためのヒント
「保護者」から
「自立支援者」へ||高校生のわが子とのかかわり方をどのようにギアチェンジしたらよいか、
座談会の内容と先輩保護者の実態を基に整理してみました。
勉強編
勉強や勉強方法について、
子どもに
指導している
勉強しなさいと毎日のように言っている
文房具はほぼ親が買いに行っている
定期テストや模擬試験の結果を子どもよりも
分析・理解している
定期テストや模擬試験の結果が悪いと、
子どもを叱る
進路選択編
0
進学先
(高校・大学)
を調べている
進学先
(高校・大学)
の見学に行った
(行こうと思う)
先輩保護者から情報収集している
も た ちは 、
﹁ 私 の 考 え を 尊 重 して ほし
今学んでいる単元など、
勉強の進度を
チェックしている
子どもに質問されてもいいように自分も勉強
している科目がある
子どもの教科書やノートをチェックし、
勉強への取り組み態度を確認している
い﹂と 望んでいます 。過 剰 な 手 出し・口
塾選びを保護者主導でしている
その際に大 事 なのは 、信 頼して 任せ
ること 。精 神 的にも 成 熟してきた子ど
時間割を細かく把握している
子どもの可能性を信じることから始めよう
子どもの嫌いなメニューや食材は出さない
子どもの外出先や週末の予定を常に
把握している
出しは逆 効 果かもしれません。今はま
子どもの携帯をチェックしている
強への関 与の度 合いを 減らしています 。
子どもの衣類は主に親が買いに行っている
先 生 方からも 、保 護 者の手 放しの必 要
用もないのに子どもの部屋をのぞきに行く
現 役 先 生の座 談 会から、高 校 時 代は
単 なる﹁ 次の進 路への通 過 点 ﹂ではない
100%
子どもが就寝するまで自分も起きている
「何時までに○○
(TV、
食事、
ゲーム等)
しなさい」
という会話をよくする
だ頼りな くても 、保 護 者の信 頼は子 ど
80
子どもが出かける前、
忘れ物や服装の
寒暖調節などを気遣っている
性が指 摘されました。
60
子どもの部屋を掃除している
ことがわかりました。失 敗や 挫 折 を 含
40
毎朝子どもを起こしている
めたさまざまな 経 験 を 通して 、社 会で
20
も に とって 自 立への 励 みに な る は ず 。
適 切 な 距 離 感の
﹁ 自立支援者 ﹂
では、
になるにはどうしたらよいのでしょうか。 ﹁3年 間でできるようになればいい﹂と
100%
自 立して生きていくための力 を 養 う 大
80
とらえ 、まず 保 護 者が子 どもを 信じる
60
﹁これをやったら過 保 護 ﹂﹁これをやらな
40
事 な 時 期のようです 。
20
ことから始める方 法 も 提 案されました。
0
﹁ 信 頼 ﹂をキーワードに、自 立 支 援 者へ
100%
いと 放 任 ﹂という一律の基 準はないとの
80
のギアチェンジ を 試みてはいかがでしょ
60
こと 。子 どものタイプやご家 庭の状 況
40
そんな 高 校 生 活の意 味 を 考えると 、
保 護 者 も 立 ち 位 置 を 見 直 すタイミン
20
うか。
0
に合 わせて 、それぞれが適 切 な 距 離 感
生活編
■ 高校入学後もやっていた(やっている) ■ 中学生までやっていた
■ 小学生以下ではやっていた ■ やったことがない
グかもしれません。先 輩 保 護 者の皆 さ
P7のチェックシートと同じ内容を、先輩保護者にも聞いてみました。そ
の結果はグラフのとおり。 高校生になってからはだいぶ手離れが進ん
でいるようです。 生活面では「毎朝子どもを起こしている」
「子どもの部
屋を掃除している」など半数超の保護者がかかわっている項目もありま
すが、勉強面は全項目の関与が2割以下。 進路選択においても、子
ども本人が中心になって動いていることがわかります。
を 探っていく 必 要がありそうです 。
先輩保護者はこうしています!
んは、子 どもの高 校 進 学 後に生 活や勉
データをチェック!
子どもに希望の進路を尋ねたり、
早く進路を
決めなさいと促している
親が希望する特定の進路を、
子どもに勧めている
子どもに向く仕事や学校を検討し、
子どもに勧めている
子どものために大学の資料などを
取り寄せたことがある
ある特定の進路・職業について、
親は反対だと子どもに伝えている
子どもの選んだ進路やなるための方法を
研究している
向いている科目や文理選択などは親が
判断しアドバイスしている
アンケート概要:高校1∼2年生の子をもつ全国の保護者400人にインターネットで調査
調査期間:2013年12月下旬 調査協力:株式会社マクロミル
for
Parent 2016
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Special Message
一方 、﹁ 子どもが学 校の手 紙をち
ゃんと出さない﹂などで困っている
ではお互いを 認め合える家 族にな
﹁つらい思いをさせてしまって ごめ
講 座 を 受 講 することに。 その後 、
ジ ﹂だったんだと目から鱗が落ち、
のが保 護 者 なら 、 問 題の 所 有 者
■﹁わたしメッセージ﹂で伝える
と 、 反 発 や 抵 抗 を 生 むだけで な
ていない者が解 決 策 を 押し付ける
は保護者になります。その場合は、 りました。
﹁ 親が変われば、子ども
るのですが、そこで問 題を所 有し
みや困 難から救 助してあげたくな
もしお子さんが﹁ 勉 強したく な
いな ﹂とこぼしたら 、 皆 さんはど
く、 自立心や自尊心を奪いかねま
﹁ わたし ﹂を 主 語にして困っている
■その﹁問題﹂は誰のもの?
う 返しますか。
﹁ なぜやりたくない
助 ﹂ではなく﹁ 援 助 ﹂でしょう。
せん。 保 護 者 にでき るのは 、
﹁救
は変わる﹂は本当だったのです。
んね﹂と 娘に謝ることができ 、 今
と 質 問 攻 めしたり 、
﹁ もう 高 校 生
状況を伝えましょう。
らせを見るのが遅くなると、 仕 事
はな く 、
﹁ 大 事 な 保 護 者 会のお知
への見 方 もシビアになるもの。 子
れど自 分はどうなの ?﹂と保 護 者
いになると 、﹁ 人にあれこれ言うけ
もしれませんね。
したほうが、いい関 係が築けるか
ではないでしょうか。 高 校 生 ぐら
では、 どう﹁ 援 助 ﹂するか。 そ
れには 、 ま ず 困っているという 子
の調 整が大 変で 困るのよ ﹂という
生 き るかの 問 題にシフトチェンジ
ど もの 問 題 より も 、 自 分 がど う
お子さんの高 校 入 学は、かかわ
り 方 を 見 直 すのによいタイミング
ど ものサインをキャッチする 必 要
具 合に、 事 実を指 摘するのです。
﹁いつもだらしないんだから !﹂
と 子 ど も を 非 難 、 批 判 す るので
があります。 そのための話の聞き
これ を 親 業 では﹁ わたしメッセー
■まず子どもの話を聞く
の ? 授 業についていけ ないの ? ﹂
なんだから、やりたくなくてもや
① 繰り返す「勉強したくないのね」
② 言い換える「勉強のやる気が出ないのね」
③ 気持ちをくむ「気分がのらないみたいだね」
方について、 親 業では2種 類 を 紹
実﹂
﹁ 私が受ける影 響 ﹂
﹁ 私の正 直
ジ﹂と呼びます。
﹁ 相 手の行 動・事
※「親業」
って何?
るべき でしょう ﹂と 説 教 し たり 、
あ∼あ、
勉強したくないな
介しています。
な 感 情 ﹂の3つの要 素で構 成 する
す。わが家はステップファミリー
︵再
カウンセリング、学習・発達心理学、教育学など、いわゆる行動科学の研究成果を基礎に、米国の臨床心理学者トマ
ス・ゴードン博士が開発したコミュニケーションプログラム。
「相手の気持ちを受け止める聞き方」
「私の気持ちを上手
に伝える語り方」
「 対立を解決する方法」について、
ロールプレイ
(役割演技)
を交えた講座が全国で開催されている。
﹁ 文 句 言っていないでちゃんとやり
なさい﹂と指 示したりしていません
か。
﹁ 親 業 ﹂では、 悩みや問 題は本
人に所 有 権があるという﹁ 問 題 所
有 の 原 則 ﹂を 大 事にしていま す 。
んうん﹂
﹁ なるほど ﹂と相 槌 をうつ
1つは﹁ 受 動 的な聞き方 ﹂といっ
て 、 保 護 者の意 見は言 わ ず 、
﹁う
のがポイントです。
私が親 業と出 合ったのは今から
約 年 前 。 娘 が成 人 したころで
■親から変わろう
程 度にする方 法 。 もう1つは﹁ 能
動 的 な 聞 き 方 ﹂といって 、 相 手が
言ったことをそのまま繰り返した
り、 言い換えをしたり、その発 言
婚 家 庭 ︶で 、 私は初 婚でいきなり
ゴードンメソッド「親業」
を用いたコミュニケ
ーションのコツについて、保護者や教師、
企業などを対象に講師活動を行っている。
ゴードン・メソッドの各種講座を提供する親
業訓練協会では企画室主任。著書に『あ
っ、こう言えばいいのか!ゴードン博士の親
になるための16の方法: 家族をつなぐコミ
ュニケーション』など多数。CAP(子ども
への暴力防止プログラム)
スペシャリスト、
日本アンガーマネジメント協会ファシリテー
ターの資格ももつ。
2女1男の母。
を 裏 付 ける 気 持 ち を 確 認 したり
する 方 法︵ 上図︶。 子 ど もの言 葉
娘2人の母 親になりました。 よい
母 親になりたいと頑 張ったはずが、
どもは本音を話しやすくなります
娘は思 春 期になるにつれ反 抗 的な
に耳を傾けることに徹すれば、 子
し、自分で考えたり問題解決して
そんな ある 時 、 書 店 で 親 業 の
書 籍を発 見 。 娘への言 葉は﹁ あな
係はどんどん悪化していきました。
態 度 を 取 るようになり 、 親 子 関
いこうとするでしょう。
また 、 会 話 だけで な く 、 日 常
の表 情や態 度からもサインはキャ
てあいさつする習 慣 を 大 切にする
たが悪い﹂という﹁ あ なたメッセー
Parent 2016
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ッチできます。 毎日相手の顔を見
ことをお勧めします。
親業シニアインストラクター
瀬川文子先生
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愛 情があるからこそ、 子どもを悩
「能動的な聞き方」の例
自立支援者として子どもにどう接する
とよいか、
「 親業」メソッド
(※)
を伝え
るインストラクターにインタビュー。子
どもとの会話に、今日から取り入れら
れるポイントも教えていただきました。
自立心を育てる
親子コミュニケーションのススメ