Special NEWS 適格機関投資家等特例業務制度改正 に関する金融庁照会結果について ~金商法第3章第1節第5款の取扱(アマ成り告知とプロ成り手続)~ 2016 年 3 月 1 日施行の金商法に定める特例業務届出者が、集団投資スキーム持分を有する出 資者から出資され、又は拠出された金銭の自己運用を行う場合における、アマ成り告知及びプロ成 り手続の考え方について、不動産証券化協会から金融庁市場課に照会を行い、以下のとおり回答を 得ましたので、ご報告させて頂きます。 なお、個別案件の判断に関しては、実態に即して実質的に判断されることになりますので、ご承 知置き下さいますようお願い致します。 (不動産証券化協会 業務部) 本稿では、以下の略語を用いています。 金融商品取引法 金商法 金融商品取引業等に関する内閣府令 業府令 金商法第 2 条第 2 項第 5 号又は第 6 号に掲げる権利 集団投資スキーム持分 金商法第 2 条第 8 項第15号に掲げる行為 自己運用 金商法第 34 条の告知 アマ成り告知 金商法第 34 条の 3 又は第 34 条の 4 に定める手続 プロ成り手続 2016 年 3 月 1 日施行時において既に金商法第 63 条第1項第 2 号に掲げる行為(自己運用)に係る適格 機関投資家等特例業務を行っている特例業務届出者 旧法特例業務届出者 May-June 2016 31 Special 時 期 I-1.【新規ファンド】 集団投資スキーム持分について特例業務届出者が、金商法第 63 条第 1 項第 1 号の適格機関投資家等特 例業務として私募を行う場合 (特例業務届出者は、金商法第 63 条第 1 項第 1 号・第 2 号両方(私募・運用)を選択して適格機関投資 家特例業務の届出を行うことを想定) (1)ファンド組成時(私募) 業府令第 53 条第 1 号の「有価証券関連」を「契約の種類」として注 1 、私募 の際に、当該特例業務届出者が、各出資契約締結前に、アマ成り告知又はプ ロ成り手続を行う。 (2)ファンド運用期間中 A. 私募の際に(プロ成りせずとも)特定投資家だった者については、当該特例業 務届出者は、上記(1)の段階にて、自己運用との関係でも特例業務届出者 が行うべきアマ成り告知は完了することとなり、特定投資家として取り扱う。 B. 私募の際に(本来は一般投資家であるが)プロ成り手続をして特定投資家に なった者については、当該特例業務届出者は、 ① プロ成り手続の承諾書において記載した「期限日」(※1)までは、自己 運用との関係でも特定投資家として取り扱ってよい。 ② プロ成り手続の更新を自ら行うことができる。 ※1 金商法第 34 条の 3 第 2 項により、「期限日」は(a)又は(b)である。 プロ成り手続の承諾日から起算して 1 年を経過する日 (a) (b) 当該特例業務届出者が一定の日を定め、業府令第 58 条各号の事項を公 表している場合は、その日 C. 私募の際に一般投資家であった者(プロ成りせず)については、当該特例業 務届出者は、 ① 自己運用との関係でも一般投資家として取り扱うことになる。 ② 自己運用の段階で、新たにプロ成り手続をするには、何らかの金融商品 )の締結を行 取引契約(具体的には、出資契約の変更契約等注 2(※2) う際に、その締結前にプロ成り手続を行うことになる。 ※2 ここでいう出資契約の変更契約は、出資契約の主要条項を変更する内容 である場合に限定されるものではなく、契約条項の変更契約(条項の追加・ 削除を含む。 )であれば広く含まれる。 D. プロ成り手続を行った特例業務届出者は、プロ成り手続に関する同意書面(金 商法第 34 条の 3 第 2 項の書面)について帳簿書類の作成・保存義務を負う。 注1 業府令第 53 条は、「契約の種類」を類型的に 4 つに分けているが、特例業務届出者による自己運用は、 (自身による)私募又は(私募の取扱いの 委託先である第二種金融商品取引業者による)私募の取扱いのプロセスを経て行われるものであることを踏まえると、 同条第 1 号の「有価証券関連」 に含ませて解釈するのが妥当である。この点は、I-1 に限らず、I-2、II、III でも共通の考え方である。 注2 金商法上、「金融商品取引契約」とは、「顧客を相手方とし、又は顧客のために金融商品取引法第 2 条第 8 項各号に掲げる行為を行うことを内容と する契約」と定義されている(金商法第 34 条第 1 項)。これは、最初に締結する契約のみを意味するのではなく、締結された金融商品取引契約の 64 参照)。 一部の変更をする契約もこれに当たると解されている(金商法施行時の金融庁パブリックコメント(2007 年 7 月 31 日公表)283 頁 No. 63、 32 ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.31 NEWS 適格機関投資家等特例業務制度改正に関する金融庁照会結果について 時 期 I-2.【新規ファンド】 集団投資スキーム持分について、特例業務届出者から委託を受けた第二種金融商品取引業者が、私募の取 扱いを行う場合 (特例業務届出者は、金商法第 63 条第 1 項第 2 号(運用)のみを選択して適格機関投資家特例業務の届 出を行うことを想定) (1)ファンド組成時(私募) ① 業府令第 53 条第 1 号の「有価証券関連」を「契約の種類」として、 私募の取扱いの際に、当該第二種金融商品取引業者が、各出資契約の 締結前に、アマ成り告知又はプロ成り手続を行う。 ② 業府令第 53 条第 1 号の「有価証券関連」を「契約の種類」として、 自己運用との関係で、特例業務届出者も、各出資者との間で、各出資契 約の締結前にアマ成り告知又はプロ成り手続を行う。 特例業務届出者は、②の手続を行う事務を、第三者(私募を行う第二種 金融商品取引業者、又はアセット ・マネージャー若しくは事務代行会社など) に委託することができる。 (2)ファンド運用期間中 A. 私募の際に(プロ成りせずとも)特定投資家だった者については、当該特例業 務届出者は、特定投資家として取り扱う B. 私募の際に(本来は一般投資家であるが)プロ成り手続をして特定投資家に なった者については、当該特例業務届出者は、 ① (1)②の特例業務届出者が行ったプロ成り手続の承諾書において記載さ れた「期限日」までは、自己運用との関係で特定投資家として取り扱って よい。 ② プロ成り手続の更新を自ら行うことができる。 C. 出資契約締結時に一般投資家であった者(プロ成りせず)については、当該 特例業務届出者は、 ① 一般投資家として取り扱うことになる。 ② 新たにプロ成り手続をするには、 何らかの金融商品取引契約(具体的には、 出資契約の変更契約等)の締結を行う際に、その締結前にプロ成り手続 を行うことになる。 D. プロ成り手続を行った(1)②の特例業務届出者は、プロ成り手続に関する同 意書面(金商法第 34 条の 3 第 2 項の書面)について帳簿書類の作成・保存 義務を負う。 May-June 2016 33 Special 時 期 II.【既存ファンド】 II-1.集団投資スキーム持分について、旧法特例業務届出者が、改正法施行前に、金商法第 63 条第 1 項 第 1 号の適格機関投資家等特例業務として私募を行っていた場合(旧法特例業務届出者が、金商法 第 63 条第 1 項第 1 号・第 2 号両方(私募・運用)を選択して適格機関投資家特例業務の届出を行っ ていたことを想定) II-2.集団投資スキーム持分について、旧法特例業務届出者から委託を受けた第二種金融商品取引業者が、 改正法施行前に、私募の取扱いを行っていた場合(旧法特例業務届出者が、金商法第 63 条第 1 項 第 2 号(運用)のみを選択して適格機関投資家特例業務の届出を行っていたことを想定) ファンド運用期間中 A. (プロ成りせずとも)特定投資家である者については、当該特例業務届出者は、 ① 特定投資家として取り扱ってよい。 ② 改めてアマ成り告知をする義務はない。但し、改正法施行後、最初に、 当該特定投資家との間で何らかの金融商品取引契約(具体的には、出 資契約の変更契約等)の締結を行う際には、その締結前にアマ成り告知 を要する。 B. (改正法施行前には旧法特例業務届出者に金商法第 3 章第 1 節第 5 款が適 用されていなかったため、改正法施行前に旧法特例業務届出者がプロ成り手続 をしていることは想定されない。 ) C. 一般投資家(※3)については、当該特例業務届出者は、 ① 一般投資家として取り扱うことになる。 ② 改正法施行後にプロ成り手続をするには、 何らかの金融商品取引契約(具 体的には、出資契約の変更契約(※4) )の締結を行う際に、その締結前 にプロ成り手続を行うというプロセスを踏む必要がある(何ら金融商品取引 契約の締結がないにもかかわらずプロ成り手続をすることはできない) 。 ※3 上記 B のとおり、改正法施行前に旧法特例業務届出者がプロ成り手続を していることは想定されないため、上記 A のプロ成りせずとも特定投資家 である者(金商法第 2 条第 31 項)以外は、全て、C でいう「一般投資 家」に当たることになる。 ※4 前述※2 のとおり、契約条項の変更契約(条項の追加・削除を含む。 ) であれば、広く出資契約の変更契約と認められる。例えば、 (i)プロ成り 手続を行い、特定投資家として扱われることを投資家が確認した旨の条項 を追加する変更契約、 (ii)特例業務届出者が、改正法施行日から起算 して 6ヶ月以内に提出した適格機関投資家等特例業務に関する追加届出 の写しを投資家に提出する旨の条項を追加する変更契約、 (iii)特例業 務届出者が提出した事業報告書の写しを投資家に提出する旨の条項を追 加する変更契約、 (iv)改正法により適用されることになった行為規制を遵 守する旨の特例業務届出者の誓約を追加する変更契約、 (v)譲渡制限 規定を修正する旨の変更契約なども、出資契約の変更契約に当たる。 D. プロ成り手続を行った特例業務届出者は、プロ成り手続に関する同意書面(金 商法第 34 条の 3 第 2 項の書面)について帳簿書類の作成・保存義務を負う。 34 ARES 不動産証券化ジャーナル Vol.31 NEWS 適格機関投資家等特例業務制度改正に関する金融庁照会結果について 時 期 III.【共通】 投資家 A が投資家 B に対して、集団投資スキーム持分を譲渡した場合 集団投資スキーム持分の 譲渡時 業府令第 53 条第 1 号の「有価証券関連」を「契約の種類」として、自己運 用との関係で、特例業務届出者は、集団投資スキーム持分の譲受人との間で、 その譲渡に際して何らかの金融商品取引契約(具体的には、出資契約の変更 契約等(※5) )の締結がある場合に、①アマ成り告知を要し、又は②プロ成り 手続を行うことができる。 譲渡時に何ら金融商品取引契約の締結がない場合、当該特例業務届出者は、 ① 譲受時に特定投資家である者のうち、適格機関投資家・国・日本銀行(一 般投資家としての取扱いを申し出ることができない特定投資家)について は、特定投資家として取り扱う。 ② 譲受時に特定投資家である者のうち、適格機関投資家・国・日本銀行以 外の者(一般投資家としての取扱いを申し出ることができる特定投資家) については、一般投資家として取り扱うこととなる。その後、何らかの金融 商品取引契約(具体的には、出資契約の変更契約等)の締結を行う場 合には、その際に、その締結前にアマ成り告知を要する。かかるアマ成り 告知をした後は、当該譲受人を特定投資家として取り扱うことは可能となる。 ③ 譲受時に一般投資家である者については、一般投資家として取り扱うこと になる。その後、何らかの金融商品取引契約(具体的には、出資契約 の変更契約等)の締結を行う場合には、その際に、その締結前にプロ成 り手続を行うというプロセスを踏むことで特定投資家として取り扱うことは可 能となる。 ※5 前述※4と同様。例えば、 (i)アマ成り告知を受けたこと及び特定投資家 として扱われることを投資家が確認した旨の条項を追加する変更契約、 (ii) 譲受人である投資家の表明保証を追加する変更契約、 (iii)譲受人であ る投資家が従前の契約を遵守する旨の誓約を追加する変更契約(集団 投資スキーム持分の譲渡承諾書を兼ねることもありうる)なども、出資契約 の変更契約に当たる。 プロ成り手続を行った特例業務届出者は、プロ成り手続に関する同意書面(金 商法第 34 条の 3 第 2 項の書面)について帳簿書類の作成・保存義務を負う。 May-June 2016 35
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