インド改革に手間取るナレンドラ・モディ政権

2015年のインド
改革に手間取るナレンドラ・モディ政権
こん
どう
のり
お
おお
た
ひと
し
近 藤 則 夫・太 田 仁 志
概 況
2014年の連邦下院選挙では単独過半数を制し,人々の期待が集まったインド人
民党
(BJP)率いる国民民主連合
(NDA)政権であったが,最重要課題としていた経
済改革が思うように進んでいない。また,州議会選挙での敗北,ヒンドゥー民族
主義の広がりに伴う紛争の顕在化など,NDA の政治は停滞気味である。原油安
などに支えられた物価の安定,経済成長の回復によってナレンドラ・モディ首相
の人気はまだ高いものの,選挙直後の「ハネムーン」は終わりつつあり人々は政
権を冷静に評価しつつある。
経済に関しては,成長を高めるための経済のギアシフトにモディ政権はもがき
ながらも,経済改革を進めようとした。経済成長率は7.6%を記録するが,庶民
生活においてはそこまでの実感は持ちづらい。財政健全化は道半ばであるものの,
原油価格の下落もあって,経済ファンダメンタルズはこれまでの歴史に照らせば
決して悪くない。物価も安定して比較的低位で推移しており,政府とインド準備
銀行はインフレ・ターゲッティングの導入に合意した。経済成長にてこ入れすべ
く,外国直接投資に関する規制緩和や「JAM ビジョン」を掲げて金融包摂に引
き続き取り組んでいる。起業を促す「スタートアップ・インディア,スタンド
アップ・インディア」が開始される一方,小規模零細企業の保護育成を目的とす
る生産留保が最後の20品目の廃止をもって終止符を打った。
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