日本経済:2016年1~3月期2次QEは小幅上方修正の見込み

Jun 1, 2016
No.2016-024
伊藤忠経済研究所
Economic Monitor
主席研究員 武田 淳
主任研究員 石川 誠
03-3497-3676 [email protected]
03-3497-3616 [email protected]
日本経済:2016 年 1~3 月期 2 次 QE は小幅上方修正の見込み
2016 年 1~3 月期の実質 GDP 成長率は前期比+0.5%(年率+1.9%)へ小幅ながら上方修正さ
れると予想。設備投資が上方修正される一方、在庫投資や公共投資が下方修正される見込み。た
だ、設備投資は横這い程度であり、企業業績の悪化が続けば前向きの循環が途切れる恐れ。
6 月 8 日に発表予定の 2016 年 1~3 月期 GDP2 次速報は、1 次速報値の前期比+0.4%(年率+1.7%)か
ら前期比+0.5%(年率+1.9%)へ小幅ながら上方修正される見込み。本日、発表された 1~3 月期の法
人企業統計季報を受けて民間企業設備投資(1 次速報前期比▲1.4%→2 次速報+0.3%)が上方修正され
る一方で民間在庫投資(前期比寄与度▲0.0%Pt→▲0.2%Pt)が下方修正されるほか、3 月の建設総合統
計を反映して公的固定資本形成(前期比+0.3%→▲0.3%)も下方修正されると予想する。
本予想通りとなれば、設備投資は 3 四半期連続で前期比プラスとなるが、いずれも小幅な増加であり、4
~6 月期の水準は前年同期を 0.8%上回る程度につき、概ね横這い推移という評価が妥当であろう。さら
に、先行指標の機械受注(船舶・電力を除く民需)は 4~6 月期の内閣府予想が前期比▲3.5%と頭打ちを
示唆しており、設備投資の基調は景気の拡大を牽引するほど強いわけではない。
実質GDP成長率の推移(QE予測)
(前期比・%)
2014
1~ 3
2015
4~ 6
7~ 9
1.4
▲ 2.1
▲ 0.7
0.5
1.3
▲ 0.4
0.4
▲ 0.4
0.4
(年率換算)
5.5
▲ 8.1
▲ 2.7
2.1
5.4
▲ 1.7
1.6
▲ 1.7
1.7
1.9
(前年同期比)
2.7
▲ 0.3
▲ 1.5
▲ 1.0
▲ 1.0
0.7
1.8
0.7
▲ 0.0
0.0
1.5
▲ 2.8
▲ 0.7
0.2
1.2
▲ 0.1
0.3
▲ 0.5
0.2
0.3
実質GDP
国内需要
民間需要
10~ 12
1~ 3
4~ 6
7~ 9
10~ 12
2016
1次 速 報 2次 予 測
1~ 3
1~ 3
0.5
2.2
▲ 3.5
▲ 1.1
0.1
1.7
▲ 0.4
0.5
▲ 0.7
0.1
0.2
民間最終消費支出
2.3
▲ 4.9
0.0
0.6
0.2
▲ 0.8
0.5
▲ 0.8
0.5
0.5
民間住宅投資
2.2
▲ 10.7
▲ 7.1
▲ 0.3
2.1
2.2
1.7
▲ 1.0
▲ 0.8
▲ 0.8
民間企業設備投資
5.3
▲ 4.6
▲ 0.5
▲ 0.2
3.8
▲ 1.6
0.7
1.2
▲ 1.4
0.3
(▲0.5)
(1.3)
(▲0.5)
(▲0.2)
(0.5)
(0.3)
(▲0.1)
(▲0.1)
(▲0.0)
(▲0.2)
▲ 0.5
▲ 0.7
0.5
0.3
▲ 0.2
0.9
▲ 0.2
▲ 0.0
0.7
0.6
民間在庫品増加
公的需要
政府最終消費支出
▲ 0.1
▲ 0.2
0.3
0.3
0.3
0.5
0.2
0.7
0.7
0.7
公的固定資本形成
▲ 2.2
▲ 2.7
1.2
1.0
▲ 2.8
3.0
▲ 2.2
▲ 3.5
0.3
▲ 0.3
財貨・サービスの純輸出
(▲ 0.2)
(0.9)
(0.1)
(0.4)
(0.1) (▲ 0.3)
(0.1)
(0.1)
(0.2)
(0.2)
財貨・サービスの輸出
5.9
0.0
1.5
3.4
2.2
▲ 4.8
2.6
▲ 0.8
0.6
0.6
財貨・サービスの輸入
5.9
▲ 4.3
1.0
1.1
1.5
▲ 2.6
1.7
▲ 1.1
▲ 0.5
▲ 0.5
(出所)内閣府、予測は当社による
さらに、1~3 月期の法人企業統計では、製造業の経常利益が前年同期比▲20.4%となり 10~12 月期の▲
21.2%に続いて大幅マイナスとなったことに加え、非製造業も▲4.5%とマイナスに転じ(10~12 月期は
+12.7%)
、企業業績の悪化が広がりつつあることが確認された。
ただ、減益の下でも人件費は 1~3 月期も前年同期比+3.5%と増加を維持(10~12 月期は+0.7%)した
本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、伊藤忠経済研
究所が信頼できると判断した情報に基づき作成しておりますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告
なく変更されることがあります。記載内容は、伊藤忠商事ないしはその関連会社の投資方針と整合的であるとは限りません。
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伊藤忠経済研究所
ため、労働分配率は当研究所試算の季節調整値で 10~12 月期の 61.4%から 62.6%へ上昇した。景気の停
滞や円高進行といった環境の悪化を企業が一旦吸収し家計部門への波及を堰き止めた格好であるが、企業
がこのような後向きの労働分配率の上昇を長期間許容するとは考えにくい。労働分配率の水準は未だ低い
とはいえ、環境の悪化が続けば人件費の削減に踏み切ることとなろう。そして、それは「所得から支出へ
の前向きの循環メカニズム」の消滅に他ならない。企業業績の反転が待たれるところである。
企業の経常利益の推移(前年同期比、%)
労働分配率の推移(季節調整値、%)
60
74
製造業
50
72
非製造業
40
※当社による季節調整値
70
30
68
20
66
10
64
0
62
▲ 10
60
▲ 20
▲ 30
2011
2012
2013
2014
2015
58
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016
2016
( 出所) 財務省
( 出所) 財務省
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