2016/ グローバル・マクロ・ トピックス 6/2 投資情報部 シニアエコノミスト 吉川 健治 中国製造業PMIの内容良くない。株価上昇は限定的か 2016年5月の国家統計局製造業PMIと財新製造業PMIに異なる動き。前者は横ばいも大企業 の悪化等、内容は良くない。後者は2ヵ月連続低下で15ヵ月連続の50割れ。不動産市場(沿 海の主要都市)や鉄鋼業界の過熱感の反動には留意が必要だ。人民元建てA株はMSCI新 興国市場指数の採用観測で上昇も、株価判断指標から投資妙味に欠け、上昇は限定的か。 5月国家統計局の製 造業PMIは大企業が 悪化。財新指数は 1 5 ヵ 月連続の 5 0 割 れ、市場需要は弱い 2016年5月の国家統計局の製造業購買担当者指数(統計局製造業PMI)と財新製 造業購買担当者指数(財新製造業PMI)に異なる動きがみられる。 統計局製造業PMIは前月比横ばいの50.1と50台を維持した。規模別内訳では、 大企業PMIが前月比▲0.7ポイントの50.3と2ヵ月連続低下し、製造業PMI全体を押 し下げた。中型企業PMIは同+0.5ポイントの50.5と3ヵ月連続改善し50台を維持、小 型企業PMIが同+1.7ポイントの48.6と再び上昇も22ヵ月連続の50割れとなった。 一方、財新製造業PMI(中小企業が主な調査対象)は同▲0.2ポイントの49.2と2ヵ 月連続低下で15ヵ月連続の50割れ。5月は新たな業務量に再び減少の動きがみら れ、市況の弱含みや顧客需要の低下等を受けて、在庫や雇用の面で慎重姿勢に ある中小企業の動きを反映している。また、国家統計局は今回の製造業PMIについ て、「市場の需要は依然弱く、製造業の経営基盤の不安定さが注目される」とコメン トした。なお、鋼材や鉄鉱石の市況はインフラ投資の拡大や不動産開発投資の底 打ちを受けて過熱感が強まったが、5月以降、調整の動きがみられる。 中国の製造業PMIと企業規模別PMI (1994年12月 =100) (1トン=ドル) (月次:2010/1~2016/5) 58 国家統計局製造業PMI うち、大企業PMI 56 150 鋼材価格指数 うち、中型企業PMI うち、小型企業PMI 財新製造業PMI 54 130 うち、ホットコイル価格指数 (板幅2.75mm) 52 110 50 90 48 46 中国の鉄鋼市況 (週次:2014/1/3~2016/5/27) 鉄鉱石の平均輸入価格 (鉄分含有量62%) 70 [景気拡大・後退の分岐点50] 50 44 10 11 12 13 14 15 16 (年) (注) 国家統計局製造業PMIの企業規模別PMIは2012年2月から 出所:中国国家統計局資料、マークイット資料、ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成 30 (年/月) (注)週間平均価格、鋼材とホットコイルは1994/12=100とする価格指数 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 1 2016/6/2 グローバル・マクロ・トピックス 4月の固定資産投資はやや鈍化した。内訳をみると、インフラ投資は底堅く、不動 主力の 民間投資の 不振が続く等、景気 支援策の 波及効果 が限定的。過熱ぎみ の 不動産市場や 鉄 鋼業界に先行き懸念 産開発投資が持ち直し、国有企業は堅調であるが、主力の民間企業の不振が続い ているため、中国政府は民間投資に関する現地調査を実施、景気支援策の限定的 な波及効果に苦心している。一方、住宅市場は新規着工面積が1~4月累計の前年 同期比で+18%、販売面積が同+38.8%と増勢の動き。1級都市の市場過熱感が2級都 市にも波及の兆しにあるが、3級都市以下等は在庫圧力が依然強く、二極化の動き が顕著である。また、非合法な頭金融資が不動産市場で投機的な行動を促してい ることに留意が必要であり、住宅市場の先行きには依然、楽観できる状況ではな い。粗鋼・鋼材生産は日量で5月も過去最高の勢い、依然、過熱感が続いている。 中国の固定資産投資 (%) 中国の粗鋼・鋼材生産(日量推定) (日量=万トン) (月次:2008/1~2016/4) 50 40 30 325 粗鋼生産(日量換算) 300 鋼材生産(日量換算) 275 2016/5も月次 過去最高を更 新する勢い 250 政府目標 20 (旬次:2013/1上旬~2016/5中旬) 350 固定資産投資 うち、国有企業 うち、民間投資 うち、インフラ投資 うち、不動産開発投資 225 10 200 175 0 08 09 10 11 12 13 14 15 150 16 (年) 13 (注)毎年1月から累計の前年同期比、インフラ投資は2014年4月から(2014 年12月は未公表)、民間投資は2011年1月から 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 工業企業は増益も回 復力は弱い。増収率 は伸び悩む。1~4月 累計の 鉄鋼の 大幅 増益は一時的か 14 15 16 (年) (注)2014年4月下旬~2015年7月下旬、2015年8月~9月と2016年2月の一部数値が未公表 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 工業企業の利益総額が2016年に入り増加に転じたが回復力は依然弱く、主要業 務収入も依然伸び悩んでいる。生産者物価指数PPIは商品市況の持ち直し等によ り回復も、50ヵ月連続のマイナス伸び率となった。 ここで、鉄鋼企業の業績をみると、粗鋼・鋼材生産の数量拡大や市況の過熱化 等を受けて、1~4月累計の利益は前年同期比+41.9%と大幅増益に転じた。しかし、 今後は市況の過熱感や生産の急拡大に対する調整が想定され、留意が必要だ。 中国の工業企業の売上高・利益と物価 (%) 40 利益総額の増減率(左目盛) 30 中国の鉄鋼企業の売上高・利益と赤字企業割合 (%) 8.0 (月次:2011/1~2016/4) (%) 100 主要業務収入の増減率(左目盛) 2016年4月 は大幅増益 に転換 60 4.0 40 2.0 20 生産者物価PPI(右目盛) 20 2013/2:1,701.7 2013/3: 333.9 80 6.0 (%) 30 (月次:2011/1~2016/4) 25 20 0 10 0.0 右目盛のゼロ ▲ 2.0 0 ▲ 4.0 ▲ 10 11 12 13 14 15 16 ▲ 6.0 (年) ▲ 20 ▲ 40 15 ▲ 60 利益総額の増減率(左目盛) 主要業務収入の増減率(左目盛) 赤字企業割合(右目盛) ▲ 80 ▲ 100 11 (注)主要業務収入と利益総額は年初来の前年同期比、毎年1~2月は累計の前年同期比 生産者物価PPIは前年同月比 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 12 13 14 15 10 16 (年) (注)主要業務収入と利益総額は年初来の前年同期比、毎年1~2月は累計の前年同期比 赤字企業割合は毎年2月からの数値で2016年3月まで 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 2 2016/6/2 グローバル・マクロ・トピックス 5/31の上海総合指 数はMSCI新興国市 場指数の採用観測で 上昇。ただし、各指 標から投資妙味に欠 け、上昇は限定的か 上海総合指数は5/31に、人民元建てA株がMSCI(米モルガン・スタンレー・キャ ピタル・インターナショナル)の新興国市場指数に採用されるとの観測が広がり、前 営業日比+3.3%と比較的大きく上昇、1日当たり売買代金も2,395億人民元(5/3~30 の1日単純平均:1,480億人民元程度)と高まった。しかし、2015年5~6月の1兆人 民元以上の1日当たり売買代金に比較すると、依然として薄商いの水準であり、株 価上昇率も大きくない。また、上海市場と香港市場の株式相互取引が2014/11/17 にスタート、その後の香港市場からの上海株投資枠使用率の動きをみると、5/31に 29%にまで上昇したが、その水準は相対的に高くない。 中国株式投資の魅力が低下し、沿海の主要都市の不動産物件の投資意欲が高 まっているようだ。上海総合指数は経済ファンダメンタルズや企業収益の改善期待 難、米利上げ観測の再燃による人民元の先行き不安、6月末に向けた金利高懸念 等、を背景に、当面は弱含みの相場展開が想定される。 上海総合指数と上海株式市場の1日当たり売買代金 (億人民元) (日次:2006/1/4~2016/5/31) (ポイント) 7000 15,000 1日当たり売買代金(左目盛) 13,500 6000 12,000 上海総合指数(右目盛) 10,500 5000 9,000 4000 7,500 6,000 3000 4,500 2000 3,000 1,000億人民元ライン 1000 1,500 0 0 (年) 出所:上海証券取引所資料、CEICデータよりみずほ証券作成 上海総合指数、香港市場からの上海株投資枠使用率 (ポイント) (日次:2014/11/3~2016/5/31) 6000 (%) 100 香港市場から上海株投資枠の使用率(右目盛) 上海総合指数(左目盛) 5000 80 60 4000 40 3000 20 0 (年) 2000 (注)上海と香港市場の株式相互取引は2014/11/17からスタート 出所:上海証券取引所資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 3 2016/6/2 グローバル・マクロ・トピックス 中国の製造業PMIの構成指数 (月次:2011/1~2016/5) 60 生産 新規受注 原材料在庫 雇用 サプライヤー納期 55 50 [景気拡大・後退の分岐点50] 45 11 12 13 14 15 16 (年) 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 中国の製造業PMI(その他指数) 69.3(2011/1) 70.1(2011/2) 68.3(2011/3) 66.2(2011/4) 60.3(2011/5) 60 (月次:2011/1~2016/5) 購入量 新規輸出受注 原材料購買価格 輸入 製品在庫 55 [景気拡大・後退 の分岐点50] 50 45 40 11 12 13 14 15 16 (年) 出所:中国国家統計局資料、CEICデータよりみずほ証券作成 この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する 最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全 性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随 時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。 4 2016/6/2 グローバル・マクロ・トピックス 金融商品取引法に係る重要事項 ■国内株式のリスク リスク要因として株価変動リスクと発行者の信用リスクがあります。株価の下落や発行者の信用状況の悪化 等により、投資元本を割り込むことがあり、損失を被ることがあります。 ■国内株式の手数料等諸費用について ○国内株式の売買取引には、約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託手数料 をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税 込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○株式を募集等により購入する場合は、購入対価のみをお支払いいただきます。 ○保護預かり口座管理料は無料です。 ■外国株式のリスク ○外国株式投資にあたっては、株価変動リスク、発行者の信用リスク、為替変動リスク(平価切り下げ等も含 む)、国や地域の経済情勢等のカントリーリスクがあります。それぞれの状況悪化等により投資元本を割り込 むことがあり、損失を被ることがあります。 ○現地の税法、会計基準、証券取引に関連する法令諸規則の変更により、当該証券の価格に大きな影響を与 えることがあります。 ○各国の取引ルールの違いにより、取引開始前にご注文されても、始値で約定されない場合や、ご注文内容が 当該証券の高値、安値の範囲であっても約定されない場合があります。 ○外国株式において有償増資等が行われた場合は、外国証券取引口座約款の内容に基づき、原則権利を売 却してお客さまの口座に売却代金を支払うことになります。ただし、権利売却市場が存在しない場合や売却市 場があっても当該証券の流動性が低い場合等は、権利売却ができないことがあります。また、権利が発生し ても本邦投資家が取り扱いできないことがあります。 ○外国株式の銘柄(国内取引所上場銘柄および国内非上場公募銘柄等を除く)については、わが国の金融商 品取引法に基づいた発行者開示は行われていません。 ■外国株式の手数料等諸費用について ○外国委託取引 国内取次手数料と現地でかかる手数料および諸費用の両方が必要となります。現地でかかる手数料および 諸費用の額は金融商品取引所によって異なりますので、その金額をあらかじめ記載することはできません。 詳細は当社の担当者までお問い合わせください。国内取次手数料は、約定代金 30 万円超の場合、約定代金 に対して最大 1.08%+2,700 円(税込み)、約定代金 55,000 円超 30 万円以下の場合、一律 5,940 円(税込み)、 約定代金 55,000 円以下の場合、約定代金に対して一律 10.8%(税込み)の手数料をご負担いただきます。 ○国内店頭(仕切り)取引 お客さまの購入単価および売却単価を当社が提示します。単価には手数料相当額が含まれていますので別 途手数料および諸費用はかかりません。 ○国内委託取引 当社の国内株式手数料に準じます。約定代金に対して最大 1.134%(税込み)、最低 2,700 円(税込み)の委託 手数料をご負担いただきます。ただし、売却時に限り、約定代金が 2,700 円未満の場合には、約定代金に 97.2%(税込み)を乗じた金額を委託手数料としてご負担いただきます。 ○外国証券取引口座 外国証券取引口座を開設されていないお客さまは、外国証券取引口座の開設が必要となります。外国証券 取引口座管理料は無料です。 外貨建商品等の売買等にあたり、円貨と外貨を交換する際には、外国為替市場の動向をふまえて当社が決 定した為替レートによるものとします。 商品ごとに手数料等およびリスクは異なりますので、当該商品等の契約締結前交付書面や目論見書または お客さま向け資料等をよくお読みください。 商 号 等 : 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