分析ニュース「多変量解析を用いたコーヒー豆の香りの評価」

多変量解析を用いたコーヒー豆の香りの評価
コーヒーの『香り』は豆の産地、焙煎の条件、淹れ方などに
よって大きく変わると言われています。芳醇な香りを醸しだす
成分を分析して、データを多変量解析することにより、銘柄・
焙煎度と香りの特徴の関係を調べました。
詳細を分析のステップに沿ってご紹介します。
Step1 サンプルの選定
香りに特徴がある4種類のコーヒー豆(クリエーション、マンデリン、グアテマラ、キリマ
ンジャロ)を選定し、キリマンジャロについては焙煎度が異なるサンプルも用意しました。
このように、多変量解析を行うときには、個性があるサンプルを複数準備します。
Step2 GC/MS分析
挽いたコーヒー豆0.05gをガラス瓶に量りとります。これを50℃で20分間保温し、揮発し
たガス成分をガスクロマトグラフ-質量分析計により分析しました。
各銘柄の分析結果を図1に示します。図のピークの一つひとつが異なる成分になります。
どの成分が香りに強く影響しているかについて、次のステップで解析します。
クリエーション
マンデリン
グアテマラ
キリマンジャロ
(縦軸:ピーク強度
横軸:検出時間)
図1 コーヒー豆の揮発成分のクロマトグラム
Step3 多変量解析 主成分分析「ローディングプロット」による香り成分の特定
図2にローディングプロットを示します。ひとつのプロットはひとつの成分を示し、ロー
ディングプロットではサンプル中の特徴的な成分を見つけ出すことが可能です。
なお、試料間の違いを最もよく表す成分群を第1主成分といい、次いで試料間の違いを表
す成分群を第2主成分といいます。
特に、中心から離れたところにプロットされる成分ほど香りの違いに影響を与えている
ことを意味します。
ビニルメチルピラジン(焙焼香)
グアイアコール
(燻煙香)
ジエチルピラジン(焙焼香)
0.1
マルトール
0
シクロテン
(カラメル香)
フルフラール
-0.1
(アーモンド香)
-0.1
0
0.1
第1主成分
図2 多変量解析結果(ローディングプロット)
図の左側にはカラメルのような香りのマルトールやシクロテン、アーモンドのような香
りのフルフラール、燻製のような香気を呈するグアイアコールなど、甘い香りや燻製感を
特徴付ける成分が多く集まりました。
また、図の上側には焙焼香気を呈するピラジン類が認められました。
この結果より、第1主成分の負の差が大きいほど甘い香りや燻製感が強く、第2主成分の
正の差が大きいほど香ばしさが強い特徴があると考えられます。
このようにローディングプロットを観察することで、香りの違いに影響を与えている成
分が特定できます。また、第1主成分および第2主成分に関連する香りの特徴を明確にでき
ました。
次のステップでは、この香りの特徴と各サンプルを関連付けます。
第2主成分
(カラメル香)
Step4 多変量解析 主成分分析「スコアプロット」によるコーヒー豆の香りの評価
各コーヒー豆のスコアプロットの結果を図3に示します。図には、Step3で解析した
第一主成分=「甘い香り・燻煙香」と、第二主成分=「香ばしさ」の関係も記載しました。
また、コーヒー豆について一般的に言われている香りの特徴を表1に示します。
クリエーション
(ミディアム)
多
マンデリン
(ミディアム)
第2主成分
香ばしさ
グアテマラ
(ミディアム)
キリマンジャロ
(ミディアム)
キリマンジャロ
(ハイ)
キリマンジャロ
(シティ)
少
多
甘い香り・燻煙香
キリマンジャロ
(フルシティ)
第1主成分
図3 多変量解析結果(スコアプロット)
表1 銘柄や焙煎度が異なるコーヒー豆の香り
マーク
銘柄(産地)
焙煎度
香りの特徴
クリエーション
(ミャンマー)
ミディアム
香ばしさとほんのりとした甘い香り
マンデリン
(インドネシア)
ミディアム
甘さとフローラルさを感じられる
香り
グアテマラ
(グアテマラ)
ミディアム
フルーティで芳醇な香り
ミディアム
キリマンジャロ
(タンザニア)
ハイ
上品な甘い香り、
焙煎で風味が変化
シティ
フルシティ
ほんのり、さわやか
浅煎り
深煎り
濃厚で香り高い
図3と表1から、次のように考えられます。
・クリエーションは、浅煎りのミディアムでも香ばしい香りになる
・マンデリンは香ばしさは少なく、ほのかな甘い香り
・浅煎りのミディアムでは、グアテマラの芳醇な香りを引きだせていない
・キリマンジャロは深煎りになるほど、甘い香りとともに香ばしさが増す
このように、多変量解析を用いることで、『サンプル中の特徴成分を見つけること』や『サン
プル間の関係性・傾向を知ること』が可能です。本方法を活用し、農産物の産地・品種特性の把握や
香気・臭気に関する製品の開発をサポートします。
関連技術URL: http://www.hitachi-chem-ts.co.jp/service/analysis/abnormal/odor/index.html
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