経済産業省東北経済産業局「UIJターン研究会」 地方創生×東北UIJターンシンポジウムにおける主な議論 第1回 地方創生×ダイバーシティ経営 ―企業の成長力につながる人材活用戦略とは―(2015.7.28,仙台市内) ○企業におけるUIJターン人材を受入れる素地 ・自社は新しいことに取り組んでいこうという企業文化であり、UIJターン人材の採用によって、組織が活性 化すると捉えている。 ・理念やビジョン、新たな取組みを進めるという目標が従業員に共有されており、それに集う優秀な人材がいる からこそ、それがまた人材を引き寄せるという好循環が生まれているのではないか。 ○長期でのキャリアイメージ、働く価値の変化 ・日本人は十分に能力発揮できていないのではないか。定年は 65 才まで延長された一方で、役職定年は若年齢 化している。育児・時短勤務による女性のキャリア断絶もある。 ・役職定年になるような年頃で、地方に場所を変えてもう 1 ラウンド働く人生二毛作の仕掛けができれば、地方 にとって消費のプールがもう1つ増える。 ・被災地の離半島部で活動する 30~40 代と話すと、 “わくわくする働き方”の考えが変化してきている。人口が 減少しても、 「わくわく」して仕事をする人が集まってくれば地域は支えていける。 「わくわくできる地域」をど う考えていくかが重要ではないか。 ・実際にUターンしたことで収入は減少したが、結局は「わくわくする仕事」がやれるかということ。給料以外 のメリットがあれば、選択する人も増えてくるのではないか。また、そうした職場を提供することが大事。 【事例発表企業】 (株)佐藤金属 代表取締役 (株)電通 電通ダイバーシティ・ラボ事務局長 佐藤克己 氏 【パネルディスカッション登壇者】 明治大学グローバル・ビジネス研究科教授/(一社)社会人材学舎塾長 野田稔 氏 東北大学大学院経済学研究科 教授 (株)三栄機械 代表取締役社長 齊藤民一 氏 (株)舞台ファーム 常務取締役 伊藤啓一 氏 経済産業省東北経済産業局 局長 伊藤義博 氏 守本憲弘 大滝精一 氏 第2回 地方創生×東北UIJターンシンポジウム ―UIJターンのリアル、東北の創造―(2015.9.13,東京都内) ○UIJターンのきっかけは人それぞれだが、決め手は納得感・使命感・能力発揮や自己成長の機会 ・請われて家業を継ぐためにUターン。仕事はどこでやるかではなく自分が何をやるのかが大事だと思った。 ・人との縁でIターン。興行やスポーツビジネスに携わってきた自分のキャリアを活かしたいと思い、ちょうど 球団を立ち上げようと活動している人を雑誌で知り、自ら連絡を取った。 ・最初は特に志があったわけではなく、インターンシップが縁で地域林業の衰退に直面。何とかしたいと起業。 ○UIJターン後の地域とのつながり、しがらみ ・相談相手の存在は重要。商工会議所青年部や大学の同窓会に参加して経営上の悩みを共有できる仲間ができた。 今はUターンし、頑張る若い人達を誘って勉強会や交流会に参加。人脈づくりやビジネス戦略づくりを支援。 ・メディアで取り上げてもらうことも多かったが、I ターン者ゆえに地元との繋がりが薄く、ネガティブな反応 が聞こえてきづらかった。創業期にはむしろプラスだったかもしれない。今は多くの地元の方に助けられている。 ・自分が地域を変えてやるなどと思い移住すれば、きっと失敗する。定住する覚悟なら、謙虚さと誠実さを心掛 け、あまり肩に力を入れないこと。 ・移住には準備期間が必要。地域の人たちと関係を築き、プロセスを経て移住した人たちは定着率が良い。 ・地域のしがらみの中でやっていくことの楽しさをわかってもらえた人が定着する。地域の仲間とIターン者と が一緒に住民として様々な場面で「楽しさ」を作り出せば、結果、魅力的な街として域外に発信されるはず。 ○地域企業に関する情報不足 ・地方の企業でも、Iターンの若者を多く雇用している企業がある。彼らが就職した理由は、その会社で働きた いからで、立地条件は二の次だった。地方にはユニークな中堅・中小企業が多くある。企業の魅力が人を惹きつ けることも事実。それがなかなか情報として伝わっていない。今は企業の規模だけで仕事をする時代ではない。 ・チャレンジ出来て面白い仕事が出来る中堅・中小企業の情報を発信し、地方移住希望者とうまくマッチングで きれば、地方への人の流れが進むのではないか。 【パネルディスカッション登壇者】 (株)磐城高箸 代表取締役 東北大学大学院経済学研究科 教授 今野印刷(株) 代表取締役社長 大滝精一 氏 高橋正行 氏 (特活)遠野山・里・暮らしネットワーク 会長 橋浦隆一 氏 菊池新一 氏 ジョブカフェいわて プロジェクトマネージャー 秋田プロバスケットボールクラブ(株) 専務取締役 高畠靖明 氏 経済産業省東北経済産業局 局長 牛崎志緒 氏 守本憲弘 第3回 地 方 創生 ×東 北U IJ ター ン シン ポジ ウム ―U IJ タ ーン 者と 共創 する 地域 の 未来 ―( 2015.11.26,福 島 市内 ) ○繋がる場づくり ・移住を考える人はロールモデルに出会いたい。移住をした人は地縁・血縁のない、あるいは薄い中で繋がりを 求めている。実際に移住した人の暮らしぶりに目を向け、移住を考える人・移住をした人の繋がりを生む取組み を進めている。 (京都移住計画「移住茶論」 、プラットフォームあおもり「あおつな」「あおもり 1000 人会議」) ○広域地域で発信を行う効果、潜在的UIJターン者のパイをつくる ・移住者を奪い合うのではなく、潜在的なUIJターン者を共につくっていくことを大切にする。移住検討中の 人(特にIターン)の中で、最初からピンポイントで移住先を決めている人は少ない。一方で、日本海側の暮ら しはどうなのだろうと探している移住検討中の人は多い。ユーザーに選択肢を提示するため、京都・石川・富山 3県で日本海側の暮らしを伝えるツアーを共同企画した。 ・○○町と言っても、その土地に縁のない人にはわからない。点ではなく線、1個の小さな星を星座にすること で、情報としての厚みが出てくる。 ○Uターン予備軍へのアプローチ ・毎年実施しているUターンの意向調査では、将来地元に戻ると思う層が3割、戻りたいけど戻れない層が2割 いる。戻りたいけど層がキーだと考えており、彼らにUターンする理由をつくること、そのためにキャリアカウ ンセリングや数年スパンで寄りそうことが大事。 ・地域の側に、 「待っているよ」と送り出し、 「帰ってこい」と引っ張ってくれる人がいることが大切。 ○受け皿となる主体のゆるやかなネットワーク ・空き家やインフラ整備は民間・NPOではできない。キーワードはゆるいネットワーク。 ・移住促進をミッションに掲げる団体が地域内にいない場合でも、地域に対する感度の高い団体を取っ掛かりと し、小さな取組みに歩み寄り、それは芋煮会のようなものでもよく、そこから移住の広がりをつくっていく。 ○地域をより深く知る機会や誇らしく思えるような気づき ・学生の時に地域に関わる原体験があれば、地元の仕事や暮らしに関心を持つことが出来たり、UIJターンし たちょっと面白い大人の生き方を知ることが出来、キャリア選択をする際に、東京に出ていく選択肢だけでなく、 地元に残る、いつかUIターンするという選択肢も出てくる。 ・地域の大人自身が地域を否定的に捉えている。地域に仕事がない、魅力がないと言うのは、本当にないのか、 知らないだけなのか。地域の外にいる人から評価を受けることで、自尊心が芽生えたり自信を持つ。 【基調講演】 (株)ツナグム 代表取締役 福島県商工労働部 雇用労政課長 田村篤史 氏 (株)ツナグム 代表取締役 田村篤史 氏 (株)MTS&プランニング 専務取締役 【パネルディスカッション登壇者】 (特活)プラットフォームあおもり 理事長 東北大学大学院経済学研究科 教授 菊地清則 氏 米田大吉 氏 大滝精一 氏 辺見俊彦 氏 (株)キャリアクリエイト/ヤマガタ未来Lab代表 田中麻衣子 氏 経済産業省東北経済産業局地域経済部 産業人材政策室長 遠藤憲子 第4回 地方創生×東北UIJターンシンポジウム ―人材が活躍するフィールドを創るー (2016.2.16,仙台市内) ○キャリア形成とUIJターン、地域における人材の育つ仕組みづくり ・UIJターンを躊躇させているのは、絶対に失敗したくないという意識や東京で手に入れたものを失う不安。 ・不安の原因を明確化すれば課題に変わる。起点は不安や不満といった感情であっても、自分のキャリアや人生 を考え、不安を課題に変えて自ずと導き出された答えがUIJターンだったという論理的な思考の中には、キャ リアチェンジのプロセスとして定式化できる要素がある。 ・大学はUターンのアンカーの1つ。UIJターンにおいて“時”と“人”は大切な要素。大学は次のキャリア に向けた準備期間としてのモラトリアムと、人との繋がりという役割を持っている。 ・大学等の教育機関を活用してUIJターンのアンカーやクッションをつくり、キャリアチェンジの場とする工 夫をもっと進めていく必要がある。大学以外にも地域には人を育てる組織がある。起業塾やまちづくり等次々に アンカーをつくり、人の流れを生み出していく。アンカーのつくり方は様々あるので、知恵出しのポイント。 ○もう“復興”で人は呼べない、必要なのは東京レベルの採用力 ・被災地を取り巻く環境はこの2,3年で著しく変化した。被災地あるいは東北に来て何ができるのか、どんな スキルが身に付くのかということが重要になっている。 ・地域に人材を呼び込もうとする時、大事なのは仕事の話をすることと気軽に地域を訪れる機会を提供すること。 地域の人はどうしても地域の話をしがちだが、UIJターンを考えている人は仕事を求めている。仕事の魅力を 伝えることが重要。一方でいきなり転職を決めるのは難しいので、ゆるやかに地域に関るきっかけを提供してほ しい。 ・大事なのは経営者。東京レベルの採用力とは、1つはメールのレスポンスを1日以内にすること。もう1つは 地域の外に出掛けて人に会いに行くこと。経営者の情熱や本気度をどう伝えるかが重要。 ・地域に人を呼び込むときに、地域の中でこの人が重要であるという“固有名詞”を持っているか。地域の中に 既にいる素晴らしい人を見つけることがカギ。 ○地域企業における多様な人材(UIJターン・女性・シニア等)の受入れと活用 ・採用においては大企業と戦わなければならない。経営者自ら前線に立ちリクルートしている。夢を語り、それ を実現するよう努めている。魅力づくりが大事であり、会社のビジョンや価値観と社員 1 人 1 人の価値観とを尊 重しながら、1つになっていった会社が本当に魅力ある会社だと思う。 ・大企業を定年した豊富な実務経験や専門知識を有するシニアが埋蔵資源になっている。そうしたシニア人材と、 信用金庫の取引先である中小企業の経営課題をマッチングさせる取組みを進めている。最近では九州地域でも取 組みを展開しているが、首都圏等のシニア人材が九州まで自費で来ている。定年後も働きたいというシニア人材 は実に多い。故郷にどんな企業があるのか、UIJターンの準備運動になるだろう。問題なのは、シニア人材が 一体どこに行けば中小企業と会えるのかが分からないということ。そのための仕組み・仕掛け・組織づくりが望 まれる。 ・自分が役に立てるというリアリティあるイメージを持てるか。働くイメージを明確にして、それを伝えていく。 ○東北地域へのUIJターンを大きなうねりにするために ・徐々に移行していく仕組みがつくれないか。例えば週末起業やそろそろ定年という年頃での副業兼業の奨励等。 ・きっかけの間口を広げ、関り方のバラエティを増やしていく。定住人口だけに拘泥せず、活動人口を増やす。 ・自治体単位で小さく施策を展開するのではなく、近隣地域が連携し、面として見せていく取組み。 ・UIJターンはイリュージョン対リアルの戦いのようにも思われる。東京には何かいいことがありそうだとい うイリュージョンがあり、だからこそUIJターンした後の仕事や生活について、どこまでリアルを見せられる かが大事ではないか。特にお給料問題は避けて通れない。 ・地域の仕事を可視化する。UIJターン施策という大括りの施策を進めるのではなく、地域にある1件1件の 仕事について要件定義(5W2H)を行うことで、地域の仕事が見えている状態をつくる。 ・窓口を置くこと。行政の担当者は 2,3 年で異動するため、可能であれば民間が良い。UIJターンの受入を上 手く進めている地域には、窓口になっている人がいる。その土地へのUIJターンといったらこの人という象徴 的な人である。行政とその人とで組むと良い。 ・地域には採用力のある組織が必ずあるが、会社や組織として単体で存在しており、地域に広がっていない。組 織を超えた地域内同期会などは、メンバーのケアの場にも、各社のノウハウの共有の場にもなる。こうした取組 みが地域力につながっていく。 ・わくわくする仕事をリアルに伝えることが非常に大事。そのわくわくする仕事をしているのが誰なのかをセッ トで提示する。1つには首都圏等のUIJターンの対象者に伝えるということだが、もう1つには地域の中にい る人たちに伝えるということ。地域の中にいる人たちが、それを知らないことが往々にしてある。 ・小手先でただ人を呼び込むのではなく、働き方自体を変えながら、地方で働くことの魅力をどう見せていくか が重要。併せて人材の受入に関する仕掛けもつくっていく。 【パネルディスカッション登壇者】 (一社)RCF 代表理事 明治大学グローバル・ビジネス研究科教授/(一社)社会人材学舎塾長 野田稔 氏 (特活)アスヘノキボウ 東北大学大学院経済学研究科 教授 大滝精一 氏 (特活)プラットフォームあおもり 理事長 アイデアプラント 代表 渡邉一馬 氏 白川佑希 氏 (株)保志 代表取締役社長 保志康徳 氏 中小企業庁委託事業「地域中小企業・小規模事業者人材確保等支援事業」 全国事務局シニア交流会アドバイザー 保田邦雄 氏 石井力重 氏 リファインアカデミー(株) 代表取締役 (一社)ワカツク 代表理事 米田大吉 氏 藤沢烈 氏 重巣敦子 氏 経済産業省東北経済産業局 局長 守本憲弘
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