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第273回 「インストラクションデザインの理論とモデル」輪読
第1章 教授理論の理解
チャールス・M・ライゲルース&アリソン・A・カー=シェルマン
この章の目的:インストラクションに関する共通知識基盤と共通言語の構築
インストラクションの定義:目的をもって学習を促進させるために行うことすべて
インストラクションに関連す
教育改革における教授理論
る理論の性質
の役割
設計理論:目的志向で規範的。 工業時代のパラダイムでの
何らかの目的を達成する支援
学校教育は時代遅れ
ID理論は設計理論の集合
→新しいパラダイムは実現
•教授事象設計理論
可能か?
•(教授分析設計理論)
•教授計画設計理論
•教授構築設計理論
•教授実施設計理論
•教授評価設計理論
その他の種類の理論
デザインレイヤー
©2016 平岡斉士
学習者中心の教授との関係
学習者中心の教授パラダイムを統
合・集約する試み
•米国心理学会
•米国学術研究会議
•グリーンブック第2巻でのライゲルー
スによるまとめ
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ランチョンセミナー
教授理論の特質:構成概念
と用語
教授理論の本質をなす構
成概念とそれを表す用語に
ついての合意形成
デルファイ法での調査(2
回) 結果:テキストP.23
推奨された構成概念と用語
(図1.2)
平岡の感想
この章の目的
教授理論を記述し理解するために用いられている概念や用語を点検する。
• インストラクションの定義をする。
• インストラクションの定義とIDの全領域についての理解に基づいて、共通の知識基盤が必
要であることを述べる。
• それらを設計理論、ID理論、学習者アセスメント設計理論、カリキュラム設計理論、学習理
論、教授のための学習理論と関連付ける
•
•
•
•
ID理論にはいくつかの側面(事象、分析、計画、構築、実施、評価)があることを
指摘する。
各側面をデザインレイヤーの概念に関係づける。
教育の改革には新しいパラダイムが必要で、そこでは学習者中心になる必要が
あることを述べる。
デルファイ調査を踏まえて、共通言語の基礎をつくるためには、共通の用語につ
いてのコンセンサスを得る必要が有ることを述べる。
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インストラクションに関する
共通知識基盤と共通言語の構築
• 1.インストラクショナルの定義
– インストラクションに関する共通知識基盤を構築する必要性についての議
論
– インストラクションに関連する他の種類の理論との比較
– デザインレイヤーと教授理論との関連性
• 2.教育改革における教授理論の役割、特に学習者中心のイン
ストラクションとこの本との関係
• 3.インストラクションに関する共通の知識基盤について、具体
的な構成概念と用語を提案する
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インストラクションの定義
• ありがちな解釈
– instruction 教える:学習者は受動的
– construction 学ぶ :学習者は能動的
しかし、学習は受動的には起こらない
• instruction ―支援→ construction
– インストラクション:目的をもって学習を促進させ
るために行うことすべて
• 構成主義的手法、自学自習、講義、直接教授法なども
含む
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設計理論
設計理論
記述的理論
目的志向で規範的
因果関係
何らかの目的を達成するために適し
た方法を明らかにする
その関係は確率的なもので、ある原
因が必ずしもその因果関係で示され
る結果をもたらすわけではない
生成的成果の促進が目的。何かを
生み出すことの支援
既に起こったことの記述
– 記述的・道具的という2つの基本的知識分類→理論
– インストラクションに関するもの→設計理論
• 方法(手法、モデル、テクノロジ、テクニック、方略、ガイダンス、経験的知識)+「
いつ使うべきか?」
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ID理論
• ID理論:インストラクションの様々な側面に関連する設計理論の集合
• 教授事象設計理論、教授プログラム設計理論、教材設計理論
– インストラクションはどうあるべきか
• 教授分析設計理論
• 教授計画設計理論
– 教授計画の作成プロセスはどうあるべきか
• 教授構築設計理論
– 教授資源の作成プロセスはどうあるべきか
• 教授実施設計理論
– インストラクションの実施準備プロセスはどうあるべきか
• 教授評価設計理論
– インストラクションの評価プロセスはどうあるべきか
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ID理論
• ID理論:インストラクションの様々な側面に関連する設計理論の集合
教授事象設計理論、教授
プログラム設計理論、教材
設計理論
インストラクションはどうあ インストラクション自
るべきか
体のガイダンス
教授分析設計理論
教授計画設計理論
連結
教授計画の作成プロセス
はどうあるべきか
教授構築設計理論
教授資源の設計プロセス
はどうあるべきか
教授実施設計理論
インストラクションの実施準
備プロセスはどうあるべきか
教授評価設計理論
インストラクションの評価プロ
セスはどうあるべきか
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教授システム設計
(もしくは開発)プロ
セスと呼ばれるもの
についてのガイダン
ス
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連結
ID理論ではない他の種類の理論
• 学習者評価設計理論
– 学習者の学習活動を評価するためのガイダンス。6種類全ての教授理論と組み合わさ
れる。
• カリキュラム理論
– 「何を学ぶべきか」(教授事象理論「その内容をどのように学ばせるか」)、それをどう教
えるかと相互依存する限り、6種類すべての教授理論と結びつけることに意味はある
• 学習理論
– 学習プロセスについての記述的理論。ある教授法がうまく機能する理由を説明する。
vs.教授事象設計理論:そのプロセスを発生させることを助ける手法を特定する
• 学習科学・教授科学
– 学習理論と教授事象理論を含む混合分野。計画、開発、実施、評価、カリキュラムに
は興味を持っていない。
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ID理論とデザインレイヤー
•
ギボンズとロジャース:教授を設計する際に重要と彼らが考える7つのレイヤー
(第14章参照)
– コンテンツレイヤー
– 方略レイヤー
– メッセージレイヤー
– 制御レイヤー
– 表現レイヤー
– メディア論理レイヤー
– データ管理レイヤー
•
ギボンズとロジャースのレイヤーの概念と6種類の教授理論との間には相互関係
がある。
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B. Hokanson and A. Gibbons (eds.), Design in Educational Technology, Educational
Communications and Technology: Issues and Innovations 1, Springer International
Publishing Switzerland 2014, 15-36
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教育改革における教授理論の役割
• 工業時代のパラダイムでの学校教育は時代遅れ→新しい教育のパラダ
イムが求められている
– 早く学べる子は動機付けと機会を逃す、学ぶのが遅い子はわからないことが蓄積され
て悪循環
• 新しいパラダイム(個別の達成度ベース)は実現可能か?
– 1.新しいテクノロジ
– 2.学習者を中心とした心理学的な原理と教授法が発展した:アクティブラーニング、協
調的問題解決型学習
• 教育改革を実現するために発展すべき知識の分野は何か?
– 1.学習者中心の教授法についての知識
– 2.学区レベルまで含めた情報時代の教育パラダイムへの変革を支援するための知
識
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学習者中心の教授との関係
• 学習者中心の教授パラダイムを統合・集約する試み
– 米国心理学会が行ったプロジェクト
• 研究に基づいた学習者中心の心理的原理を明らかにすることを目標
→12の原理+その証拠
– 米国学術研究会議
• どうのようにして人が学ぶかについての知識の現状をまとめた→多くの
人々が重要な内容領域についての理解を深めることを可能にするため
の新しい教授のアプローチを提案(学習の科学 science of learning)
– グリーンブック第2巻でのライゲルースによるまとめ
• 学習者中心の教授パラダイムに適した幅広いID理論の要約と比較→人
間の学習と発達を促進する設計理論が幅広く含まれている
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教授理論の特質:構成概念と用語
• 教授理論の共通知識基盤を構築する一歩と
して、教授理論の本質をなす構成概念とそれ
を表す用語についての合意形成
– デルファイ法での調査(2回) 結果:テキストP.23
• 質問の例
– どの用語を「人間の学習と開発を促進するあらゆ
る方法」ということを広く表すのに用いるべきだと
思いますか?(複数選択可)
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推奨された構成概念と用語(図1.2)
• 教授方法(instructional method)
– 学習や人の発達を意図的に促進されるために行
われるすべてのもの
• 教授状況(instructional situation)
– ある教授方法を使うべきか使わざるべきかを判
別するときに有用な、教授の文脈(instructional
context)のあらゆる側面。
詳細はテキストの図1.2を参照
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平岡の感想
• 面白かったところ
– 設計理論=道具的理論+いつ使うか
• =教授方法+教授状況
– 教授方法だけだとバカの一つ覚え
– 教授状況だけだとKKD(の達人)
– 新しいパラダイム=達成度ベース
– デルファイ法のプロセス
• プロセス自体が構成概念を明確にしていく
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