資料6(2016年6月2日)

2016 年度 商法第 3 部
2016 年 6 月 2 日
資料6
Ⅴ.運送
1.運送法総論(江頭 277-292 頁、335-338 頁)
1.1.運送取引の分類と適用される法律
1.1.1.運送取引の分類
運ぶ対象:物か、人か
運送手段:陸(道路か鉄道か)か、内水か、海上か、空か、その組み合わせか
国際性:国際運送か、国内運送か
1.1.2.法の適用関係
*商法(運送・海商)関係の改正
2014 年から法制審議会で検討開始、2016 年2月に要綱答申、2017 年通常国会で成立?
(1)陸上運送
商法 569 条→商法施行法 122 条:陸上・湖川・港湾における運送
*湖川・港湾での運送は改正法により海上運送として扱われる予定
貨物運送:商法 570 条以下
旅客運送:商法 590 条以下
*陸上運送に関する国際条約(日本はいずれも未加盟)
貨物の国際道路運送契約に関する条約:CMR
国際鉄道運送に関する国際条約:COTIF-CIM(貨物)、COTIF-CIV(旅客)
貨物の国際内水運送契約に関する条約:CMNI
(2)海上運送
貨物運送
国内:商法 737 条以下
国際:国際海上物品運送法
1924 年船荷証券に関するある規則の統一のための国際条約(ハーグ・ルールズ)+
1968 年改正議定書(ヴィスビー・ルールズ)+1979 年 SDR 改正議定書の国内法化
適用範囲:船積港または陸揚港が日本国外にある場合(国際海運 1 条)
日本→外国、外国→日本、外国→外国
外国法の準拠法指定の可否
運送人の責任と免責事由(国際海運 3-5 条)、責任限度額(国際海運 13 条)等
片面的強行規定(国際海運 15 条)
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*その他の海上貨物運送に関する国際条約
1978 年の国際連合海上物品運送条約(ハンブルク・ルールズ)
2008 年の全部または一部が海上運送による国際物品運送契約に関する国際連合条約」
(ロッテルダム・ルールズ)
旅客運送:商法 777 条以下
*旅客とその手荷物の海上運送に関するアテネ条約は未加盟
(3)航空運送
国内航空運送:商法典に規定なし、航空法と約款のみ
国際航空運送:ワルソー条約(1929 年)+改正議定書、モントリオール条約(1999 年)
(4)改正法による適用関係
物品運送・旅客運送のそれぞれについて総則規定の創設
➡国内の陸上・海上・航空運送に共通して適用
海上貨物についてのみ特則
複合運送に関する規定の新設
Cf. 各国の運送法立法のスタンス
ドイツ:CMR をベースに国内運送の各手段の規律を統一、片面的強行規定化
フランス:運送手段ごとに国内・国際で統一
1.1.3.約款と業規制
約款
認可制度と標準約款制度(Cf.道路運送法 11 条と航空法 106 条)
業界標準約款/書式
業法による規制
事業・約款の許認可、運賃規制、事業計画の規制、契約締結強制等
顧客の保護と業者の保護
陸上:道路運送法、貨物自動車運送事業法、鉄道事業法・鉄道営業法
貨物利用運送事業法
海上:海上運送法、内航海運業法、港湾運送事業法
航空:航空法
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1.2.運送法の強行法規性と競争政策
ハーグ・ヴィスビー・ルールズ:片面的強行規定
CMR:両面的強行規定
ロッテルダム・ルールズ:片面的強行規定(79 条)、数量契約についての特則(80 条)
海運業者の独占的交渉力と不当な約款利用の恐れへの対処としての片面的強行規定性
Cf.海運同盟に対する独占禁止法の適用除外(海上運送法 28 条)
海運同盟の影響力の低下と大口荷主の交渉力の増大
同盟外新興船社の台頭、アメリカ 1984 年海運法と北米サービスコントラクトの普及
EU による独禁法適用除外の廃止(2006 年)
ロッテルダム・ルールズの数量契約の特則への批判
1.3.運送事業者の営業形態
(1)実運送と利用運送
実運送
利用運送
貨物利用運送事業法
旅客の利用運送は?
(2)個品運送と貸切り形態の運送
個品運送
貸切り形態の運送
Ex.船舶の賃貸借、傭船契約等
傭船契約については片面的強行規定の適用除外(国際海運 16 条)
(3)運送取扱人、相次運送と複合運送
運送取扱人(商法 559 条以下)
物品運送の取次ぎ
相次運送(商法 579 条)
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複合運送
NVOCC(Non Vessel Operating Common Carrier)の増加
運送取扱事業に関する業法上の規律の廃止
Cf.フレイト・フォワーダー
【参考文献】
法 制 審 議 会 「 商 法 ( 運 送 ・ 海 商 関 係 ) 等 の 改 正 に 関 す る 要 綱 案 」 available at
http://www.moj.go.jp/content/001172144.pdf
山下友信「商法(運送・海商関係)等の改正に関する要綱について」NBL1072 号 4 頁(2016
年)
山下友信「運送営業・倉庫営業・場屋営業」NBL935 号 49 頁(2010 年)
中村眞澄=箱井崇史『海商法(第2版)』(成文堂、2013 年)
藤田勝利編『新航空法講義』(信山社、2007 年)
森隆行『現代物流の基礎』(同文館出版、2007 年)
マルク=レビンソン『コンテナ物語』(日経 BP 社、2007 年)
藤田友敬「統一条約の受容と国内的変容-国際海上物品運送法を例として」
『関俊彦先生古
稀記念 変革期の企業法』(商事法務、2011 年)369 頁
藤田友敬「新しい国連国際海上物品運送に関する条約案について」ソフトロー研究 13 号
57 頁(2009 年)
小塚荘一郎「運送人・荷主間のリスク・バランスと強行法的規制」海法会誌復刊 53 号 10
頁(2009 年)
小塚荘一郎「海運同盟と競争政策」『海法大系』(商事法務、2003 年)697 頁
清水真希子「EU における海運同盟への競争法一括適用除外の廃止について」『関俊彦先
生古稀記念 変革期の企業法』(商事法務、2011 年)409 頁
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