大腸検査の新戦力「CT コロノグラフィー」

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大腸検査の新戦力
「CT コロノグラフィー」
関
大腸検査の新戦力として CT コロノグラフィー
(大腸 CT 検査)が臨床に登場したことをご存じ
でしょうか。大腸病変の画像検査法としては、一
般に、注腸 X 線検査、大腸内視鏡検査が実施さ
れています。近年、マルチスライス CT の普及や
大腸解析ソフトの開発により、CT を使った新た
な大腸画像検査として CT コロノグラフィーが臨
床導入されました。当院でも、2015年7月より、
CT コロノグラフィーの臨床活用を始めました。
今回は、大腸画像検査の新メンバー 「CT コロノ
グラフィー 」 について、お話したいと思います。
CT コロノグラフィーは、大腸を炭酸ガスで拡
張させた状態で CT を撮像し、画像データを3次
元処理することで、大腸の形態や内腔の状態を解
析する検査法です。大腸内に充満した気体と腸管
壁とのコントラストを利用して3次元画像を作成
し、注腸 X 線検査や大腸内視鏡と同じような画
像(仮想注腸,virtual barium enema,図1a;
仮想内視鏡,virtual endoscopy,図1b)で大腸
を観察し、両者を比較しながら画像読影を行うこ
とができます。大腸内視鏡では、腸管の狭窄や屈
曲によりファイバーを奥まで送り込めないケース
がありますが、炭酸ガスは腸管の狭窄や屈曲を難
なく通過しますので、大腸内視鏡が届かない領域
でも仮想内視鏡を作成して観察することができま
す。また、大腸ファイバーでは観察できないよう
な方向からでも、3D 画像処理を用いれば自由に
観察することができます。ヒダの裏側に隠れてい
る病変も、仮想内視鏡であれば映し出すことがで
きるわけです。更に、注腸検査や大腸内視鏡は、
腸管の内腔から粘膜面のみを観察しているのに対
し、CT は内腔の情報のみでなく腸管壁および周
囲臓器の情報もデータ収集しているので、腸管壁
内の状態や周囲への病変のひろがりを多方向
か ら の 断 層 像( 多 断 面 再 構 成,multi-planar
reconstruction,図1c)で観察することが可能で
す。このように、CT コロノグラフィーは、ひと
裕
史
(a)
(b)
(c)
(d)
図1 結腸脾弯曲部の鋸歯状腺腫
(a) ‌仮想注腸:結腸脾弯曲部に隆起性病変(矢印)を
認める。
想内視鏡:亜有茎性(Isp)の形態が観察される。
(b) ‌仮
(c) ‌冠状断再構成:大腸病変(矢印)と周囲臓器との
関係が観察される。
(d) ‌大腸内視鏡:内視鏡下に切除され、鋸歯状腺腫
と診断された。
新潟県医師会報 H28.5 № 794
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つの検査から様々な形態の画像情報を提供し、大
腸病変の評価に役立てることができる検査法です。
CT コロノグラフィーには、病変の検出能を向上
させる3D解析機能も導入されています。
コンピュー
タ処理によって大腸を切り開いて展開したような
画像(仮想展開像,virtual gross pathology)を
作成し、異常所見の有無を効率よく拾い上げる手
法はそのひとつです。また、設定したサイズを超
える隆起構造を大腸病変の候補として自動検出し
て 表 示 す る コ ン ピ ュ ー タ 支 援 機 能(computeraided detection, CAD)も開発され、当院の大腸
解析ソフトにも実装されています。
CT コロノグラフィーは、検査手技による患者
の身体的苦痛が少ない点においても有用です。
CT コロノグラフィーで大腸を拡張させるために
用いる炭酸ガスは、空気に比べて腸管からの吸収
が約130倍速いと言われています。このため、CT
コロノグラフィーでは、検査後のお腹の張り(腹
部膨満感)や腹痛が少なく、検査終了後にトイレ
に駆け込むようなことはほとんどありません。ま
た、撮影体位は基本的には背臥位、腹臥位の2方
向のみで、入室から検査終了まで約10 ~ 15分程
度と短時間で検査は終了します。検査の際、腸管
蠕動を押さえるための抗コリン剤
(ブスコパン等)
の筋肉注射は必要ですが、内視鏡検査にしばしば
用いられることのある鎮静剤の投与は、CT コロ
ノグラフィーでは不要です。このように、CT コ
ロノグラフィーは、検査中の患者の身体的負担が
少なく、検査後は速やかに日常生活に戻ることが
できます。一方で、ガス吸収速度が速いため、十
分に大腸が拡張した状態を保ちながら撮影を行う
ためには検査中に炭酸ガスを持続的に注入するこ
とが必要となります。このため、CT コロノグラ
フィーでは専用の炭酸ガス自動注入器が装備さ
れ、撮影中はガスの注入圧や注入量をモニターし
ながら炭酸ガスの持続注入を行っています。
注腸 X 線検査や大腸内視鏡検査と同様に、CT
コロノグラフィーにおいても前処置が必要です。
注腸 X 線検査の前処置として用いられるブラウ
ン法は、検査前日より低残渣食を摂ってもらい、
下剤としてクエン酸マグネシウム(マグコロール
P)の高張液を服用することで、体内の水分を腸
管内に吸収して腸管を膨張させ、残渣を排泄させ
る方法です。この方法は、服用する量が少ないの
で患者さんの受容性が良好で、腸管内の残液も少
なくなりますが、残渣が腸管壁に付着しやすく、
新潟県医師会報 H28.5 № 794
この方法を CT コロノグラフィーに用いた場合、
残便が隆起性病変と紛らわしく偽陽性となりやす
いことが問題となります。大腸内視鏡検査の前処
置として用いられるゴライテリー法は、腸管洗浄
剤としてポリエチレングリコール(ニフレック)
の等張液を約2リットル服用し、多量の飲水で腸
管を膨張させ、残渣を洗い流す方法です。洗浄力
が高く残便は少なくなりますが、腸管内に残液が
多く残るため、CT コロノグラフィーに用いた場
合、残液に浸って観察できない腸管面が広範囲に
及びやすいという欠点があります。これらの問題
を解消するため、当院では、大腸 CT 検査に適し
た腸管内の水分状態を保ち、固形残渣の付着を避
ける水様便の形成を促すために、難消化性デキス
トリンを含んだ CT コロノグラフィー専用の検査
食を採用し、ラキソベロンとマグコロール P を
組み合わせた前処置を行っています。また、新た
な手法として、fecal tagging という方法が開発
されました。fecal tagging は、経口の陽性造影
剤を用い、腸管内の残液や残渣を高濃度に標識す
ることで、病変と識別しやすくする方法です。残
液や残渣は、単純 CT では腸管壁と CT 値が近い
ために識別することが困難とされていますが、陽
性造影剤と混合することで CT 値が上昇し、コン
トラスト差によって腸管壁の病変と区別すること
が容易となります。fecal tagging 用の硫酸バリ
ウムが、いよいよ日本でも販売される予定で、
CT コロノグラフィーの診断精度の更なる向上が
期待されています。
このように、大腸 CT 検査は、注腸 X 線検査
や大腸内視鏡検査に比べて様々な利点を持ってい
ます。しかし、各種大腸検査には、それぞれに利
点、欠点があります。大腸内視鏡検査では、病変
の色調や微細構造を観察することができ、生検に
よる組織診断や内視鏡的切除術を行うことができ
ます(図1d)
。X 線被曝についても内視鏡検査
では問題となりません。また、
注腸 X 線検査では、
バリウムの流れ方を観察することで、動態的な通
過状態の評価や、残渣か粘膜病変かの識別を行う
ことができます。
CT コロノグラフィーは、大腸疾患の病態解析
に新たな可能性をもたらしました。検査目的や患
者状態を考慮して適切に適応を選択することで、
大腸疾患の診療に大きく貢献することが期待され
ます。
(県立がんセンター新潟病院 放射線診断科)