2016-2017年度経済見通し特集号

2016 年 5 月 第 4 週号
(原則、毎月第 2 週、4 週発行) 2016 年度 vol.4
< フォーカス> 2016-2017年度経済見通し特集号
当社では、2016年1-3月期 GDP 速報値の発表を踏まえ、「2016-2017年度経済見
通し」を作成、5月23日(月)にプレス発表しました。全文は、当社ホームページ、「ニュースリ
リース」 に掲載していますので、そちらをご参照ください。
http://www.meijiyasuda.co.jp/profile/news/release/index.html
主要なポイントは以下のとおりです。
1. 日本のGDP成長率予測 (カッコ内は2月時点の予測値)
実質GDP成長率: 2016年度 0.6%(1.0%)
2017年度 0.9%(0.1%)
名目GDP成長率: 2016年度 1.1%(1.2%)
2017年度 1.1%(0.7%)
2.要 点
①日本経済は、停滞局面が続いている。今後についても、内外需とも確たるけん引役が不在のな
か、交易条件の改善が下支えとなって、緩やかな回復傾向が続くと予想する。2016年度、20
17年度とも、成長率は1%を下回るとみている。
②個人消費は、原油安に伴う家計の実質購買力の改善が下支えとなるものの、消費マインドの回
復の遅れなどから、持ち直しは緩やかと予想する。住宅投資は、低金利環境などによる下支え
効果が見込まれるものの、消費増税などによる需要先食いの影響が残っているとみられるほか、
貸家の節税需要も減衰するとみられ、停滞気味の推移をたどるとみる。設備投資は、国内での
能力増強投資は低迷が続くと予想するが、老朽化設備の蓄積による更新・維持投資の需要が
下支えとなって、均せば、緩やかな回復が続こう。公共投資は、2016年度本予算の早期執行
や、補正予算の編成が下支えとなり、持ち直しに転じるとみる。輸出は、世界的な投資の冷え込
みが下押し要因となって、伸び悩むとみている。
③米国景気は、雇用環境の改善や、家計のバランスシートの正常化が進んでいることで、回復傾
向が続くとみる。欧州景気は新興国景気の減速による輸出の伸び悩みなどを背景に、緩慢な回
復を予想する。中国景気は、構造改革を進めるなか、緩やかな減速傾向で推移するとみている。
(Shana wrote)
目
次
<フォーカス>2016-2017 年度経済見通し特集号・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1 ・主要経済指標レビュー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
・経済情勢概況・・・・・・・‥・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2 ・日米欧マーケットの動向・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17
・2016-2017 年度経済見通し(要約版)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
経済情勢概況 (※取り消し線は、前回から削除した箇所、下線は追加した箇所)
日
本
日本経済は、停滞局面が続いている。今後も、引き続き交易条件の改善が下支えするとみるものの、
内外需ともけん引役不在のなか、景気の回復ペースは緩慢なものにとどまると予想する。
個人消費は、弱めの動きが続いている。原油安に伴う家計の実質購買力の改善が後押しするとみる
ものの、名目賃金の伸び悩みが続くとみられるなか、今後の持ち直しペースは緩やかも緩慢なものに
とどまると予想する。
住宅投資はの持ち直しているペースは鈍い。今後はも、相続税対策としての貸家の節税需要が減衰
するとみられるほか、需要先食いの影響も残ることで、停滞気味の推移をたどるが続くと予想する。
設備投資は、更新・合理化投資が下支えとなるものの、製造業の能力増強投資の低迷が続くとみる
もののことで、更新・維持投資の需要が下支えとなって、均せば緩やかな今後も緩慢な回復が続くに
とどまるとみる。公共投資は、2016 年度本予算の早期執行や、補正予算の編成が下支えとなり、持
ち直しへ向かう資材価格の上昇が一服するなか、震災からの復興需要も下支えとなるとみられ、緩や
かながら上向くとみている。
輸出の回復ペースは鈍い。今後も、世界的な投資の冷え込みなどが下押し要因となって米国向けの
力強い回復が期待できないなか、新興国景気の減速の影響もあって、伸び悩みが続くと予想する。生
産は、目先は震災の影響により、弱めの動きとなろう。その後についても、在庫調整が終盤に近づい
ているものの、輸出や消費の戻りが鈍いなか、回復ペースは緩慢一進一退の推移が続くとみている。
消費者物価(コア CPI)は、0%を下回って推移している。需要面からの押し上げ圧力が弱いこと
で、物価の戻りのペースも鈍いとみており、2016 年度のコア CPI は、前年比+0.2%程度にとどまる
と予想する。日銀が目標とする「2017 年度中」の達成も困難とみている。
米
国
米経済は、緩慢な回復が続いている。海外新興国景気の減速などが景気の下押し圧力になるとみる
が、雇用環境の改善が続くとみられるほか、ガソリン安によって家計の実質購買力が向上しているこ
とや、家計のバランスシートの正常化が進んでいることなどから、今後は緩やかな景気回復が続くと
予想する。
個人消費は、雇用環境実質所得が改善していることなどから、回復傾向が続く可能性が高いと予想
する。
住宅市場は、雇用者数の増加環境の改善や低金利環境などに支えられ、回復基調持ち直し傾向で推
移するとみる。
設備投資は、エネルギー関連業種の業況が足かせとなり、目先当面停滞気味に推移するとみられる。
ただ、交易条件の改善がサービス業を中心に企業収益を下支えすることなどから、夏場年央以降は
徐々に回復に向かうと予想する。
輸出は、海外新興国景気の減速や、ドル高の影響がも残ることからで、軟調な推移が続くとみる。
FRB は 2015 年 12 月の FOMC で、FF レートの誘導目標レンジを 0-0.25%から、0.25-0.5%へと引
き上げた。今後も景気回復が続くとみており、年後半に 1 回の利上げが実施されると予想する。その
後も 2017 年末までは年 2 回程度のペースで利上げが行なわれるとみる。
欧
州
ユーロ圏経済は、回復傾向で推移している。ECB による緩和的な金融政策の継続が見込まれるのに
加え、難民対策や景気への配慮もあって、各国の財政スタンスがやや緩和する見通しであることなど
から、内需は今後も改善雇用環境の改善などを背景に、個人消費は回復傾向が続くとみる。ただ、輸
出はが、新興国の景気減速などを背景に受け、輸出は引き続き伸び悩む展開が続くとみられることな
どから、今後のユーロ圏景気の回復持ち直しペースは緩慢なものにとどまると予想する。
個人消費は、サービス業を中心に雇用者数の増加傾向が続くと見込まれるのに加え、原油価格の下
落や銀行貸出態度の緩和などを背景に、家計の資金繰りも改善しているとみられることなどから、緩
やかな回復傾向が続くとみる。
固定投資は、緩和的な金融環境などが下支えとなるもののになるとみるが、企業の生産活動のが停
滞し、企業景況感の改善も遅れていることなどが足かせとなってから、力強い回復には至らない今後
の回復ペースは緩慢なものにとどまると予想する。
ECB は 3 月の理事会で、主要政策金利を 0.05%から 0%まで、中銀預金金利を▲0.3%から▲0.4%
まで引き下げたほか、毎月の資産買入れ額を 600 億ユーロから 800 億ユーロに増額することや、長期
資金供給オペを実施することなどを決定した。今後については、ECB は包括緩和の政策効果を見きわ
めるため、当面様子見姿勢をとるとみているが、景気回復ペースが緩慢ななか、2017 年 3 月以降も
資産買入れ策を継続実施すると予想する。
2
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
2016-2017 年度経済見通し(要約版)
1.日本経済見通し
けん引役に乏しい日本経済
1-3月期の実質GDP成長率は前期比+0.4%(年率換算:+1.7%)と、2四半期ぶりのプラスとなった。
ただ、個人消費がうるう年効果により、押し上げられたことが大きく、景気が明確な回復に転じたとは
言い難い。今後についても、内外需とも確たるけん引役が不在のなか、交易条件の改善が下支えとなっ
て、均せば緩やかな回復傾向が続くと予想する。2016年度、2017年度とも、成長率は1%を下回るとみ
ている。
個人消費の回復ペースは緩慢
(出所)総務省「家計調査」、内閣府「消費総合指数」
16/3
15/12
15/9
15/6
15/3
14/12
国内では安定的な利益成長が見通し難いなか、多くの
14/9
2016年春闘の賃上げ率は昨年を下回る見込みである。
14/6
個人消費の低迷の主因は、賃金の伸び悩みである。
14/3
まっている。
13/12
向かっているものの、回復ペースは緩慢なものにとど
13/9
停滞感を強めた(図表1-1)。足元では、持ち直しに
13/3
ったほか、家計が選別消費の動きを続けてきたことで、
2010年=100 (図表1-1)実質消費関連指数(季調値)の推移 2005年=100
112
116
実質消費支出
110
114
実質コア消費支出
108
112
消費総合指数(右軸)
106
110
104
108
102
106
100
104
98
102
96
100
94
98
92
96
90
94
13/6
昨秋以降の個人消費は、天候要因が下押し圧力とな
企業は固定費の増加につながるベアには引き続き慎重に対応するとみられる。加えて、近年では、失業
率の改善が賃金の上昇につながりにくい状況となっている。企業の採用ニーズがパートタイムに偏って
きたことや、相対的に賃金の低い産業の労働者が増加していることなどが主な要因とみられ、労働需給
のひっ迫も、力強い賃金の上昇には至らない状況が続くと予想する。加えて、消費者マインドも冷え込
んでいる。年金受給世帯が増加し、勤労者世帯でも社会保険料などの負担が拡大していることが、引き
続き個人消費の重しとなるとみる。
今後の個人消費は、交易条件の改善に伴う家計の実質購買力の改善や、政府による消費底上げ対策へ
の取組みも期待されることから、緩やかな回復傾向で推移すると予想する。
住宅着工は停滞気味の推移へ
新設住宅着工戸数(季調値)は、昨年夏場に、大
型マンションの着工増などを受け、一時高い伸びと
なったものの、その後は、減少傾向が続いてきた。
60
万戸
(図表1-2)利用関係別新設住宅着工戸数の推移
(季調済年率換算戸数)
万戸
120
50
100
根強い貸家需要に加え、分譲マンションでの大型案
40
80
件の着工による押し上げもあって、3 月には消費増
30
60
税前のピークに近い水準まで回復した(図表 1-2)。
20
だ、消費増税などによる需要先食いの影響が残って
3
分譲
総戸数(右軸)
(出所)国土交通省「住宅着工統計」
16/3
15/12
15/9
15/6
15/3
14/12
14/9
14/6
14/3
13/9
13/12
13/6
13/3
12/12
20
12/9
住宅支援策や、低金利環境が下支えするとみる。た
貸家
10
12/6
今後については、住宅ローン減税制度などの各種
40
持家
12/3
ただ、2,3 月については、相続税対策などを受けた
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
いるとみられるほか、所得環境の回復ペースが鈍いことで、消費者の慎重姿勢が続くとみる。節税対策
としての貸家需要も徐々に減衰へ向かうとみられ、今後の住宅着工の足元の勢いは鈍化し、停滞気味の
推移をたどるとみている。2016 年度の着工件数は、2015 年度を下回る 89 万戸程度、2017 年度について
も、87 万戸程度にとどまると予想する。
設備投資の回復ペースは緩慢
(図表1-3)設備投資先行指標の推移(3ヵ月移動平均)
表 1-3)。機械受注(船舶・電力を除く民需)につ
115
いては、年明け以降、特殊要因もあって増加傾向と
105
なっているものの、4-6 月期の受注見通しは 3 四半
機械受注(船舶・電力を除く民需)
建築物着工床面積(非居住用)
資本財国内出荷 (除く輸送機械)
95
期ぶりのマイナスと、慎重な内容となっている。先
にとどまる可能性が示唆される。
14/3
13/9
13/3
12/9
12/3
85
11/9
行指標からは、今後の設備投資の回復は緩慢なもの
16/3
125
15/9
は、昨夏以降、均せば減速傾向で推移している(図
2010年=100
15/3
(非居住用)や、資本財国内出荷(除く輸送機器)
135
14/9
設備投資の先行指標を見ると、建築物着工床面積
(出所)内閣府「機械受注」、国土交通省「建築着工」、経済産業省「鉱工業出荷内訳表」
3 月調査の日銀短観における 2016 年度の大企業・製造業の設備投資計画は、前年比+3.1%と、前年
の同+5.0%をやや下回る水準でのスタートとなった。年初以降の株安や円高、アジア新興国を中心と
する世界経済への不透明感などにより、投資意欲は慎重化している可能性があるとみられる。内閣府の
「企業行動に関するアンケート調査(2015 年度)」では、業界需要の実質成長率は今後も低迷が続く見
通しとなっており、国内の中長期的な低成長期待が定着している様子が見て取れる。企業は、国内での
能力増強投資を今後も慎重に進める可能性が高い。
ただ、製造業では、平均設備年齢の上昇が続いており、設備の維持・補修への需要自体は蓄積してい
ると見込まれ、製造業の設備投資を下支えするとみられる。非製造業でも、運輸関連でネット取引拡大
に対応した物流網の整備が続くとみられるほか、小売や外食関連では訪日外国人サービス強化のための
投資が活発化すると見込まれることで、底堅い推移が続くとみており、設備投資全体では、緩やかなが
らも回復傾向が続くと予想する。
公共投資は持ち直し傾向へ
公共投資には底打ちの兆しがみられる。実際の工
(図表1-4)公共工事請負金額、建設総合統計、
建設技能労働者過不足率(季調値)の推移
%
%
事の進行を反映する建設工事出来高(建設総合統計、
30
3 ヵ月移動平均)を見ると、
3 月は前年比▲5.1%と、
20
4
6 ヵ月連続のマイナスとなったものの、2 ヵ月連続で
10
2
マイナス幅が縮小した(図表 1-4)
。足元の公共投資
0
0
の底打ちについては、2015 年度補正予算の効果が出
-10
てきた可能性があるほか、人手不足や資材価格の高
-20
ることが寄与したとみられる。
-2
不
足
過
剰
16/4
16/1
15/10
15/7
15/4
15/1
14/7
-4
14/10
14/4
14/1
13/10
13/7
13/4
13/1
12/7
12/10
12/4
12/1
11/7
公共工事請負金額
建設総合統計(公共)
過不足率(8業種計、右軸)
11/10
騰といった公共投資のボトルネックも緩和しつつあ
6
(*)公共工事請負額と建設総合統
計は3ヵ月移動平均の前年比
(出所)国土交通省「建設総合統計」、「建設労働需給調査」、
東日本建設業保証㈱「公共工事前払金保証統計」
政府は、2016 年度本予算について、上半期のうちに 8 割の執行を目標としている。加えて、熊本地震
を受け、2016 年度補正予算も成立しており、今後の公共投資は持ち直し傾向が続くと見込まれる。2017
年度についても、景気の回復ペースが鈍いなか、本年度並みの予算が組まれるとみられるほか、首都圏
では、オリンピックに向けての工事も本格化するとみられ、公共投資は回復傾向で推移すると予想する。
4
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
輸出は伸び悩みが続く
貿易統計によると、
4 月の輸出金額は前年比▲10.1%
(図表1-5)前年比輸出指数の推移
%
20
15
10
1-5)。輸出金額の伸びを価格と数量に分解すると、価
5
輸出価格指数
輸出数量指数
輸出金額指数
-10
金額指数=数量指数×価格指数
為替相場を見ると、足元では円高が進んでいる。た
15/1
14/10
14/7
14/4
14/1
13/7
13/10
-15
の減少で、実勢としての輸出の基調は弱い。
16/4
2015 年度通年では、輸出数量は同▲2.7%と、3 年ぶり
16/1
数量も同▲4.6%と、2 ヵ月連続のマイナスとなった。
15/10
0
-5
15/7
格は同▲5.7%と、
6 ヵ月連続のマイナスとなったほか、
15/4
と、3 月の同▲6.8%からマイナス幅が拡大した(図表
(出所)財務省「貿易統計」
だ、日本の場合、近年、輸出の為替弾性値が低下しているため、円高が足かせとなって、輸出が大幅な
マイナス基調に転換する可能性は高くないとみている。
もっとも、外需環境は依然として厳しい。日本の輸出の太宗を占める資本財や中間財については、中
国での過剰生産設備の解消や、米国でのシェールオイル関連企業の開発投資の低迷などを中心とした世
界的な投資の冷え込みが下押し圧力になっている。加えて、企業のサプライチェーン構造の見直しや、
アジアの日系現地法人の日本からの輸入による調達比率の低下なども、引き続き輸出の下押し圧力とな
るとみられることから、今後の輸出は伸び悩みが続くと予想する。
コアCPIは下振れが鮮明に
16/4
15/4
14/4
13/4
し上げ効果のはく落も影響しているとみられる。
*白塚(2015)に基づき、CPI総合にHPフィルター(λ=14,400)を用いて算出
いずれの系列とも消費増税の影響を除く
12/4
いが、これまで物価を押し上げてきた円安による押
-3
11/4
-2
10/4
どを背景に、エネルギー価格が低下した影響が大き
09/4
-1
08/4
んだ(図表1-6)。コアCPIの伸び鈍化は、原油安な
07/4
0
06/4
縮小傾向となり、3月には前年比▲0.3%まで落ち込
05/4
1
04/4
を見ると、昨年4月をピークとして、その後は伸びが
(図表1-6)物価の「基調的な動き」とコアCPI、新型コア指数の推移
物価の「基調的な動き」*
除く生鮮食品
CPI刈込平均値
除く生鮮・エネルギー
01/4
指数、以下コアCPI、消費増税の影響を除くベース)
2
%
03/4
3
02/4
全国消費者物価指数(生鮮食品を除く消費者物価
(出所)総務省「消費者物価指数」、日本銀行より明治安田生命作成
当社では、1-3月期の需給ギャップは▲2.1%程度と試算しており、需給面からの物価の押し上げ
圧力も依然として弱い。家計や企業の期待インフレ率についても、伸びが鈍化していることから、エネ
ルギー価格の下落による影響の緩和後も、コアCPIの上昇ペースは鈍いとみている。コアCPI上昇率は、
2016年度通年では前年比+0.2%程度、2017年度も同+0.4%程度の上昇にとどまると予想する。
(担当:謝名、山口、開發)
(図表1-7)日本のGDP成長率予測表(ことわり書きのない箇所は前期比)
予測
2014年度 2015年度 2016年度 2017年度
予測
2015年度
10-12月
2016年度
1-3月
4-6月
7-9月
10-12月
2017年度
1-3月
1-4月
1-5月
1-6月
1-7月
実質GDP
▲ 0.9%
0.8%
0.6%
0.9%
▲ 0.4%
0.4% ▲ 0.1%
0.3%
0.5%
0.2%
0.1%
0.2%
0.3%
0.2%
前期比年率
▲ 0.9%
0.8%
0.6%
0.9%
▲ 1.7%
1.7% ▲ 0.5%
1.3%
1.8%
0.8%
0.2%
0.7%
1.3%
0.6%
▲ 2.9%
▲ 0.3%
▲ 0.0%
0.7%
▲ 0.8%
0.5% ▲ 0.3%
0.0%
0.2%
0.2%
0.2%
0.2%
0.3%
0.1%
▲ 11.7%
2.4%
0.1%
0.4%
▲ 1.0%
▲ 0.8%
0.1% ▲ 0.1%
0.5%
0.1%
0.2%
民間最終消費支出
民間住宅投資
0.9% ▲ 0.2% ▲ 0.0%
民間設備投資
0.1%
1.6%
1.4%
0.9%
1.2%
▲ 1.4%
0.8%
0.4%
0.8%
0.1% ▲ 0.0%
0.2%
0.2%
0.2%
政府最終消費支出
0.1%
1.6%
1.9%
1.5%
0.7%
0.7%
0.4%
0.5%
0.4%
0.4%
0.3%
0.4%
0.5%
公的固定資本形成
▲ 2.6%
▲ 2.2%
1.7%
3.5%
▲ 3.5%
0.3%
1.8%
1.5%
1.2%
1.1%
0.7%
0.8%
0.5%
0.4%
7.9%
0.4%
2.1%
2.5%
▲ 0.8%
0.6%
0.2%
0.9%
0.8%
0.6%
0.5%
0.6%
0.7%
0.5%
▲ 0.5%
財貨・サービスの輸出
財貨・サービスの輸入
3.4%
▲ 0.1%
0.5%
2.6%
▲ 1.1%
名目GDP
1.5%
2.2%
1.1%
1.1%
▲ 0.2%
GDPデフレーター(前年比)
2.4%
1.4%
0.5%
0.3%
1.5%
0.3%
0.3%
0.3%
0.6%
0.5%
0.8%
0.6%
0.6%
0.6%
0.5% ▲ 0.3%
0.6%
0.8%
0.4% ▲ 0.2%
0.3%
0.5%
0.3%
0.9%
0.4%
0.5%
0.6%
0.3%
0.1%
0.1%
0.5%
0.5%
(消費増税は再延期を前提)
5
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
2.米国経済見通し
(図表2-1)米国の実質GDP予測値 (前期比年率)
1-3 月期の GDP は低い伸び
2015
年
暦年ベース
1-3 月期の米国実質 GDP 成長率(改定値)は前期
2015
2016
2017 10-12
(%)
2016年
1-3
4-6
7-9
2017年
10-12
1-3
4-6
7-9
10-12
比年率+0.8%と、10-12 月期の同+1.4%から伸び
実質GDP
2.4
1.7
2.5
1.4
0.8
2.0
2.4
2.7
2.6
2.5
2.7
2.5
幅が縮小した(図表 2-1)
。4-6 月期は、海外景気の
個人消費
3.1
2.5
2.6
2.4
1.9
2.5
2.7
2.8
2.7
2.3
2.6
2.4
減速が続くものの、ガソリン価格の低下に伴い、実
住宅投資
8.9
10.0
7.1
10.1
17.1
7.4
8.6
6.5
6.3
8.2
6.7
6.2
質所得が改善していることなどから、景気は個人消
設備投資
2.8
-0.4
4.1
-2.1
-6.2
1.4
3.6
3.9
4.0
4.6
5.3
4.7
費をけん引役に持ち直すと予想する。家計のバラン
民間在庫
(寄与度)
0.2
-0.3
-0.1
-0.2
-0.2
-0.2
-0.4
-0.1
0.0
0.0
0.0
0.0
スシートの正常化が進んでいることもあって、7-9
純輸出
(寄与度)
-0.6
-0.1
-0.0
-0.1
-0.2
-0.1
0.2
0.1
-0.1
-0.1
-0.1
-0.1
政府支出
0.7
0.9
0.4
0.1
1.2
0.8
0.6
0.4
0.3
0.3
0.4
0.4
月期以降も景気回復傾向が続くとみる。
予測
個人消費は回復傾向が続く可能性が高い
個人消費は、雇用環境の改善などを背景に、回復傾向が続いている。4 月の雇用統計では、非農業部
門雇用者数の増加幅が+16 万人と、堅調さを示す 20 万人を 3 ヵ月ぶりに下回った。ただ、失業率が FRB
(米連邦準備制度理事会)の長期見通しのレンジ(4.7-5.0%)に達しているほか、広義の失業率(非
自発的パートタイマーや求職断念者などを失業者に含む)も低下傾向が続くなど、労働市場の需給は改
善が続いている。加えて、ガソリン価格がすでに大きく低下していることで、家計への実質的な減税効
果が今後も期待できることなどから、個人消費は回復傾向が続く可能性が高いとみている。
住宅投資は回復基調で推移するが、設備投資と輸出の回復は遅れる
住宅投資は、住宅ローン金利が低水準であることや、雇用者数の増加が続いていることなどを背景に、
今後も回復基調で推移すると予想する。一方、設備投資は、エネルギー関連業種の業況が足かせとなり、
目先停滞気味の推移が続くとみている。ただ、原油安に伴う交易条件の改善がサービス業を中心に企業
収益を下支えすることなどから、夏場以降は徐々に回復に向かうと予想する。
輸出は、昨年以降、下振れが明確になっている。海外景気減速の影響が残ることから、今後も軟調に
推移するとみる。
利上げは年後半に 1 回実施後、2017 年末までに 2 回程度を予想
4 月 26-27 日開催の FOMC(米連邦公開市場委員会)では、政策金利である FF レートの誘導目標が 0.25
-0.50%ですえ置かれた。声明文では、海外情勢への懸念が和らいでいるとの見方が示されたが、「世
界経済と金融情勢を引き続き注視する」との一節が追加されるなど、海外情勢を引き続き警戒する姿勢
がすえ置かれた。
FRB が注視しているとされるコア PCE デフレーターを見ると、
3 月は前年比+1.6%と、
2 月の同+1.7%
から伸び幅が縮小した。一方、FRB が 4 月に公表したベージュブック(地区連銀経済報告書)を見ると、
いくつかの地区で賃金上昇圧力が強まっている兆しがあると報告されている。平均時間給の推移を見て
も、4 月は前年比+2.5%と、3 月の同+2.3%から伸び幅が拡大した。輸入物価は、除く原油ベースで
も低下が続いているものの、昨夏以降、賃金の伸び幅が拡大しつつある。労働市場の需給改善に伴って、
今後は賃金の改善が物価の上昇要因になるとみている。
海外景気の減速が今後も続くとみられることなどから、FRB は当面利上げを見送るとみるが、米国景
気の回復は今後も続く可能性が高く、年後半には 1 回の利上げを実施すると予想する。その後も 17 年
末までは年 2 回程度のペースで利上げが行なわれるとみる。
(担当:信本)
6
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
3.欧州経済見通し
ユーロ圏景気は回復傾向で推移
(図表3-1)欧州の実質GDP予測値(前期比)
(%)
2016年
2015年
1-3 月期のユーロ圏実質 GDP 成長率(改定値)
2015 2016 2017
年
年
年 10-12
は前期比+0.5%と、10-12 月期の同+0.3%から
ユーロ圏 実質GDP
伸び幅が拡大した(図表 3-1)。主要国別では、ス
家計消費
ペインが高めの伸びを維持したほか、ドイツ、フラ
政府消費
固定投資
ンス、イタリアはいずれも伸びが加速した。
輸出
ECB(欧州中央銀行)による緩和的な金融政策の
輸入
継続が見込まれるのに加え、難民対策や景気への配
在庫投資
(寄与度)
純輸出
(寄与度)
慮もあって、各国の財政スタンスがやや緩和する見
通しであることなどから、内需は今後も改善傾向が
英国
実質GDP
1-3
4-6
7-9 10-12 1-3
2017年
4-6
7-9 10-12
1.6 1.4 1.4
0.3 0.5 0.2 0.3 0.3 0.4 0.3 0.4 0.4
1.7 1.5 1.4
0.2 0.5 0.3 0.4 0.3 0.3 0.4 0.3 0.4
1.3 1.4 0.9
0.6 0.3 0.3 0.3 0.2 0.2 0.2 0.2 0.1
2.7 2.7 1.6
1.3 1.0 0.2 0.4 0.4 0.4 0.5 0.5 0.3
5.0 1.7 2.8
0.2 0.4 0.3 0.6 0.6 0.8 0.7 0.8 0.8
5.7 2.8 2.8
0.9 0.5 0.5 0.7 0.5 0.8 0.8 0.7 0.8
-0.0 0.2 0.0
0.1 -0.0 0.0 -0.0 -0.0 0.0 -0.0 0.0 0.1
-0.1 -0.4 0.1 -0.3 -0.0 -0.1 -0.0 0.1 0.0 -0.0 0.1 0.0
2.3 1.9 2.1
続くとみる。ただ、輸出は新興国景気の減速などを
0.6 0.4 0.2 0.7 0.4 0.5 0.6 0.5 0.5
予測
背景に、伸び悩む展開が続くとみられ、ユーロ圏の景気回復ペースは緩慢なものにとどまると予想する。
ECB は 2017 年 3 月以降も資産買入れ策を継続実施すると予想
ユーロ圏の個人消費は、原油安などに伴う実質所得の改善を背景に、回復傾向で推移している。サー
ビス業を中心に雇用者数の増加傾向が続くと見込まれることなどから、今後も回復傾向が続くとみる。
固定投資は、緩和的な金融環境が引き続き下支えになるとみているが、企業の債務残高は依然として
高水準にあるほか、生産活動の停滞なども足かせとなって、力強い回復には至らないと予想する。
輸出は、主要相手先である米国や英国向けが下支えになるとみるものの、中国やロシアといった新興
国景気の減速などを受け、伸び悩む展開が続くとみている。
ECB は 3 月の政策理事会で、利下げや資産買入れ額の増額などの包括緩和策を決定した後、4 月の政
策理事会では、金融政策をすえ置いた。原油価格が底入れするなか、一段のインフレ下振れ懸念が和ら
いでいることもあり、ECB は当面、包括緩和の政策効果を見きわめる姿勢をとるとみる。ただ、ユーロ
圏の景気回復ペースは今後も緩慢と見込まれるなか、物価や景気を下支えするため、2016 年末ごろには
資産買入れ策の実施期限を再度延長し、2017 年 3 月以降も、資産買入れ策を継続実施すると予想する。
英国景気は目先伸び悩むも、年央以降は緩やかな回復が続くと予想
英国の 1-3 月期実質 GDP 成長率(速報値)は前期比+0.4%と、13 四半期連続のプラス成長とな
った。個人消費は、雇用・所得環境の改善が続いているほか、住宅価格上昇に伴う資産効果なども
あって、今後も回復傾向が続くとみる。一方、輸出は、新興国景気の減速などを背景に、引き続き
伸び悩むとみている。固定投資も、輸出回復の鈍さなどから、企業の投資マインドの改善は遅れる
とみており、一進一退での推移が続くと予想する。4-6 月期は、EU 離脱を問う国民投票の先行き
不透明感などが下押し圧力となって、低めの成長率にとどまるとみている。ただ、年央以降は個人
消費を中心に、景気は緩やかな回復傾向で推移すると予想する。
5 月の金融政策委員会では、政策金利(0.5%)、資産買取り枠(3,750 億ポンド)が全会一致でと
もにすえ置かれた。物価の動向を見ると、4 月のコア CPI は前年比+1.2%と、前月から伸び幅が
縮小しており、基調的な物価上昇圧力は弱い。足元では EU 離脱問題への懸念が強まっているほか、
労働需給が引き締まるなかでも、低インフレの長期化が賃金上昇を抑制していることなどから、利
上げは 2017 年央ごろまで見送られると予想する。(担当:尾家)
7
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
4.中国経済見通し
中国景気は減速傾向が続く
中国の 1-3 月期の実質 GDP 成長率は前年比+
(図表4-1)中国実質GDP成長率の推移(前年比)
%
16
15
14
した(図表 4-1)。消費の回復ペースは緩慢なもの
13
にとどまったほか、投資や輸出の低迷が続いた。政
11
7
16/3
15/9
15/3
14/9
14/3
13/9
13/3
12/9
12/3
11/9
11/3
10/9
10/3
09/9
09/3
08/9
6
08/3
強まる可能性が高い。政府は、引き続き財政・金融
8
07/9
構 造改 革を 進めて いく 過程で 景気 の下 押し圧 力が
9
06/9
費主導の経済構造への転換をめざす方針だが、今後、
10
07/3
府は、製造業の過剰生産設備の解消を図りつつ、消
12
06/3
6.7%と、10-12 月期の同+6.8%から伸びが鈍化
(出所)中国国家統計局
政策で景気の失速を避け、緩やかな減速傾向に収れ
(図表4-2)中国実質GDP成長率予測(前年比)
んするよう、景気のかじ取りを行なっていくとみて
いる。2016 年通年の実質 GDP 成長率は同+6.6%、
実質GDP成長率
2017 年は同+6.5%と予想する(図表 4-2)。
(%)
2014年
(実績)
2015年
(実績)
2016年
(予測)
2017年
(予測)
7.3
6.9
6.6
6.5
生産・投資は持ち直しの動き、消費は緩やかな回復にとどまる
企業マインドは回復の兆しがみられる。国家統計局発表の 4 月の製造業 PMI(購買担当者景気指
数)は 50.1 と、製造業活動の拡大と縮小の境目を表す 50 を 2 ヵ月連続で上回った。実際の経済の
動きを示すハードデータは、不動産市況の回復や政府による交通インフラの投資などを背景に、持
ち直しの動きがみられており、3 月の生産は前年比+6.8%と、2015 年平均(同+6.1%)を上回る
伸びとなった。ただ、4 月は同+6.0%と、再び伸びは鈍化するなど、生産の基調の弱さが窺える。
固定資産投資(累計)については、1-4 月は同+10.5%と、2015 年通年(同+10.0%)を上回る
伸びとなった。今後は、引き続き政策支援が下支えとなる一方、過剰生産設備の解消の動きが下押
し圧力となり、生産は均せば 6%前後、固定資産投資も昨年並の 10%程度の推移にとどまるとみる。
輸出は低調な推移が続いている。1-3 月期は同▲9.7%と、4 四半期連続のマイナスとなったほ
か、4 月単月も同▲1.8%と、回復力の弱さが続いている。人件費などのコスト上昇を背景に、労働
集約型産業の強みが失われつつあるほか、製造業の生産拠点として中国の魅力が低下していること
もあって、今後も輸出の回復ペースは鈍いものにとどまると予想する。
4 月の名目小売売上高は同+10.1%と、2015 年平均を下回る伸びにとどまった。今後の雇用・所
得環境は改善ペースが鈍化するとみており、個人消費も緩やかな回復にとどまるとみている。
財政・金融政策で景気を下支え
中国政府は、「供給側改革」と称して、過剰生産設備や不動産在庫の解消を進めつつ、増値税に
一本化することで企業の税負担を実質的に軽減するといった財政政策も行なっている。ただ、構造
改革については、企業再編などの動きが国有企業中心であることから、「国進民退(国有企業のシ
ェア拡大と民間企業のシェア縮小)」をもたらし、国際競争力の低下が懸念されている。加えて、
金融緩和で支えてきたことで、企業債務は拡大傾向にあり、国有銀行による国有企業への過剰融資
なども不振企業の延命につながっている。政府は、今後も財政・金融政策で景気を下支えする方針
だが、過剰融資が銀行の不良債権の拡大をもたらす可能性が高く、将来への課題先送りにもつなが
るため、いっそうバランスのとれた難しいかじ取りをせまられることとなろう。(担当:平野)
8
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
5.その他アジア新興国・豪州経済見通し
アジア新興国は中国景気の減速の影響が続く
(図表5-1)その他アジア新興国・豪州の実質GDP成長率予測(%)
アジア新興国景気は、中国景気の減速などを背景
2014年
2015年
2016年
2017年
に、多くの国で鈍化傾向が続いている。ただ、一部
(実績)
(実績・予測)
(予測)
(予測)
韓国
3.3
2.6
2.7
3.0
の国では、内需を中心に回復へ向かう兆しもみられ
台湾
3.9
0.8
1.4
1.8
る(図表 5-1)。
シンガポール
3.3
2.0
1.6
2.0
フィリピン
6.1
5.8
6.1
6.2
インドネシア
5.0
4.8
4.7
4.7
タイ
0.8
2.8
3.0
3.1
マレーシア
6.0
5.0
4.4
4.5
韓国の 1-3 月期の実質 GDP 成長率(速報値)は前
期比+0.4%と、前期の同+0.7%から、伸びが鈍化
した。主要輸出先である中国景気の減速などが足か
せとなって、輸出や設備投資が落ち込んだほか、民
間最終消費もマイナスに転じ、全体を押し下げた。
今後は、民間最終消費は、原油安に伴う家計の実質
香港
2.6
2.4
1.6
2.0
インド
7.2
7.5
7.5
7.7
豪州
2.6
2.5
2.6
2.9
(注1)インドは年度ベース(4月~翌3月)
(注2)2015年の網掛け部分は当社予測
購買力の改善が下支えするとみるものの、家計の債務残高の拡大が重しとなって、力強さに欠く展開が
続くとみる。輸出も、中国景気の減速を背景に、低迷が続くとみられることから、韓国景気は停滞気味
の推移が続くとみる。台湾の 1-3 月期の実質 GDP 成長率は前年比▲0.8%と、3 四半期連続のマイナス
成長となった。今後は、省エネ家電に対する補助金など、消費刺激策の多くが終了したことで、個人消
費の回復ペースが鈍化するとみられるほか、主力の IT 製品では、スマートフォン需要の一巡で、輸出
の低迷が続くとみており、景気は一進一退の動きが続くと予想する。シンガポールも、中国景気の減速
の影響を受けた輸出の伸び悩みが続くとみられ、国内景気の回復ペースは緩慢なものにとどまろう。
インドネシアは、世界的な資源需要の回復ペースが鈍いなか、輸出の伸び悩みが見込まれ、景気は停
滞気味の推移が続くとみる。タイでも、輸出の低調な推移に加え、家計債務の拡大が個人消費の下押し
圧力となるとみられることから、景気の回復ペースは緩慢と予想する。マレーシアでは、政府債務の拡
大を受け、財政健全化に向けた取組みを進めていることから、公共投資の縮小傾向が続くとみており、
今後の景気は鈍化傾向で推移すると予想する。一方、フィリピンでは、在外労働者からの送金などを背
景に、景気は底堅く推移すると予想する。インドも、2 月の予算案でインフラ投資の拡大方針が示され
たことで、公共投資が堅調に推移するとみられることから、景気は緩やかな拡大傾向で推移するとみる。
CPI(消費者物価指数)を見ると、原油安や国内景気の弱さを受け、多くの国で伸びが鈍化している。
こうしたなか、景気を下支えするねらいもあって、韓国では秋口までに、台湾では次回会合で追加利下
げが実施されるとみている。インドでも、貸出金利の引き下げを通じて、投資を刺激する目的などから、
年央までに追加利下げが実施されよう。シンガポール、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ
では、様子見スタンスを続けると予想する。
豪州景気は停滞気味の推移
豪州景気は一進一退で推移している。10-12 月期の実質 GDP 成長率は前期比+0.6%と、前期の同+
1.1%から伸びが鈍化した。個人消費や政府支出が底堅く推移したが、民間固定投資や輸出の低迷が全
体を押し下げた。今後も、原油安に伴う家計の実質購買力の改善や雇用環境の回復を受け、個人消費は、
底堅く推移するとみるが、世界的な資源需要の低迷で、民間固定投資や輸出の回復が遅れるとみられる
なか、景気は停滞気味の推移が続くと予想する。インフレ圧力も高まらないとみており、RBA(豪州準
備銀行)は、秋口までに追加利下げを実施すると予想する。(担当:平野、山口、開發、磯部)
9
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
6.商品相場見通し
ドル/バレル
(図表6-1)WTI価格とブレント価格
70
WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエー
60
ト)原油価格は、2 月中旬に 26 ドル/バレルまで下
50
落、12 年ぶりの安値をつけた後、持ち直し傾向が
40
WTI
30
ブレント
(石油輸出国機構)加盟国などの主要産油国によ
16/4
16/1
15/10
度な不透明感が後退したことなどがある。
20
15/1
る増産凍結合意への期待のほか、世界景気への過
15/7
続いている(図表 6-1)。背景には、ロシアや OPEC
15/4
原油価格は上値の重い展開を予想
(出所)ファクトセット
米国内での減産の動きも、原油価格の底打ちにつながった。シェール関連企業の業績悪化で投資
余力が限られるほか、これまでのリグの減少が寄与することで、米原油生産量は緩やかな減少傾向
が続くとみており、今後も原油価格の押し上げ要因になると予想する。
一方、米国の原油在庫の推移を見ると、過去最高水準で推移している。今後も、世界的な供給過
剰が続くなか、前年を上回る水準が続くとみられ、引き続き原油価格の下押し圧力として働くとみる。
OPEC が公表する原油生産量を見ると、4 月は日量 3,224 万バレルと過去最高水準で推移している。
世界シェアの維持・拡大を優先する戦略を取っていることが大きいが、40 ドル/バレル台の水準で
は、OPEC をはじめとする主要産油国の財政均衡価格を大きく下回っている。このため、主要産油国
では、増産凍結に向けた協議を進めているが、サウジアラビアは全ての主要産油国が協調すること
を求める一方、イランは「経済制裁前の水準に達するまで、原油の生産を拡大する」との姿勢を堅
持するなど対立しており、6 月の OPEC 総会でも、増産凍結の合意は見通しにくい状況である。
こうしたことなどから、原油価格は当面上値の重い展開になるとみている。ただ、米国では減産
の動きがみられるなど、今後の需給はゆっくりと改善に向かうとみており、2016 年秋以降は均せば
緩やかな上昇傾向で推移するとみる。2016 年の原油価格は、35~55 ドルを中心とした推移を予想する。
その他の商品は引き続き安値圏での推移を予想
まず、銅価格を見ると、1 月中旬に 6 年ぶりの安値をつけた後、中国景気への過度な懸念の後退など
から上昇傾向となったものの、4 月に入ると、中国の銅在庫が過去最高水準で推移していることを嫌気
して再び下落した。今後も在庫の高止まりなどが重しとなって、銅価格は軟調な推移が続くと予想する。
金価格を見ると、年明け以降の金融市場の混乱などを背景に、安全資産として選好されたことで大き
く上昇した。米国の利上げペースが緩やかとみられることなどが、上昇要因になるとみるが、世界景気
への過度な先行き不安の後退などから、今後の金価格は一進一退の推移になるとみている。
穀物のうち、大豆価格は、アルゼンチンやブラジルの天候不順の影響による生育抑制の懸念などから、
3月以降、大きく上昇した。ただ、ブラジルでは収穫面積の拡大が見込まれており、世界の生産量が過
去最高水準になると予想されることなどから、今後の大豆価格は上値の重い展開を予想する。トウモロ
コシ価格は、アルゼンチンの生産拡大見込みなどから、昨年7月から軟調な推移が続き、4月当初は一段
と売り込まれた。主要消費国の中国で在庫が高水準で推移していることなどから、今後も低調な推移を
たどるとみている。小麦価格も、米国やロシアなどの豊作見込みなどから、昨年7月の調整後も、軟調
な推移が続いた。米農務省の世界需給見通しによると、2015/2016年の世界全体の生産量が過去最高と
なることが見込まれることもあり、小麦価格は今後も軟調に推移するとみている。 (担当:村上、陳)
10
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
主要経済指標レビュー(5/9~5/27)
本≫
景気ウォッチャー調査 現状判断DI
ポイント
70
60
50
40
現状判断DI
30
現状判断DI 家計
現状判断DI 企業
20
現状判断DI 雇用
16/3
15/9
15/12
15/6
15/3
14/9
14/12
14/6
14/3
13/9
13/12
13/6
13/3
12/9
12/12
10
12/6
○ 4 月景気ウォッチャー調査(5 月 12 日)
4月の景気ウォッチャー調査では、現状判断DIが前
月差▲1.9ポイントの43.5と、2ヵ月ぶりの低下となり、
横ばいを示す50を9ヵ月連続で下回った。先行き判断
DIは前月差▲1.2ポイントの45.5と、3ヵ月連続のマイ
ナス。ウォッチャーによる基調判断は、「引き続き弱
さがみられる」とし、前月の「このところ弱さがみら
れる」から、事実上のすえ置きとなった。熊本地震な
ど が一時 的な押 し下げ 要因 として 働いて いるこ とか
ら、トレンドが掴み辛いが、今後の景気については、
賃 金が伸 び悩ん でいる こと で個人 消費の 堅調な 回復
は見込めないほか、新興国景気の低迷の長期化を背景
に輸出も伸び悩む可能性が高いことから、均してみれ
ば回復ペースは緩慢なものにとどまると予想する。
12/3
≪日
(出所)内閣府「景気ウォッチャー調査」
○ 4 月企業物価指数(5 月 16 日)
4月の国内企業物価指数は前年比▲4.2%と、前月の
同▲3.8%からマイナス幅が拡大した。23種目中、8業
種が押し上げに寄与、14業種が押し下げに寄与、1業
種が前月と同じとなった。輸出入物価指数(円ベース)
では、輸出物価(同▲9.1%→▲9.5%)のマイナス幅
が拡大した一方、輸入物価(同▲20.3%→▲19.4%)
のマイナス幅がやや縮小した。需要段階別では、中間
財や最終財のマイナス幅が拡大しており、最終財の落
ち込みは、国内最終需要の弱さが示された形である。
今後は原油価格が2月中旬から持ち直していることな
どを受け、企業物価のマイナス幅は縮小に向かうとみ
ている。
11
2010年=100
第3次産業活動指数の推移
106
%
6
104
4
102
2
100
0
98
-2
第3次産業活動指数(季調値)(左軸)
前年同月比(右軸)
96
-6
12/3
12/6
12/9
12/12
13/3
13/6
13/9
13/12
14/3
14/6
14/9
14/12
15/3
15/6
15/9
15/12
16/3
94
-4
(出所)経済産業省「第3次産業活動指数」
%
30
企業物価指数(前年比)の推移
%
6
20
4
10
2
0
0
-10
-2
-20
-4
-30
-6
-40
-8
12/3
12/6
12/9
12/12
13/3
13/6
13/9
13/12
14/3
14/6
14/9
14/12
15/3
15/6
15/9
15/12
16/3
○ 3 月第 3 次産業活動指数(5 月 13 日)
3月の第3次産業活動指数は前月比▲0.7%と、3ヵ月
ぶりのマイナスとなった。個人向けと事業所向けに分
けると、広義対事業所サービスが同+0.3%と、2ヵ月
ぶりのプラスとなった一方、広義対個人サービスは同
▲1.3%と、3ヵ月ぶりのマイナスとなった。業種別で
は、11業種中、5業種で低下、6業種で上昇した。低下
した業種は、金融,保険、卸売、情報通信など。金融,
保険では、流通業務や金融決済業務などが押し下げに
寄与した。一方、上昇した業種は、事業者向け関連サ
ービス、小売など。今後についても、所得環境の回復
ペースの鈍さを背景に、対個人サービス関連の活動は
一進一退で推移するとみており、第3次産業活動指数
全体でも、均せば緩やかな回復にとどまると予想する。
素原材料(左軸)
最終財(右軸)
(出所)日銀「企業物価指数」
中間財(右軸)
国内企業物価指数(右軸)
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
前期比(%)
3.0
実質GDP成長率と寄与度
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
個人消費
民間住宅
民間設備
公的需要
純輸出
実質GDP
16/1Q
15/4Q
15/3Q
15/2Q
15/1Q
14/4Q
14/3Q
-5.0
14/2Q
○ 1-3 月期日本 GDP 速報(5 月 18 日)
1-3月期の実質GDP成長率は、前期比+0.4%(年率
換算:+1.7%)と、2四半期ぶりのプラスとなった。
10-12月期が同▲0.4%のマイナスだった反動という
要因が大きく、うるう年効果に助けられていることも
考えれば、景気が明確な回復に転じたとは言い難い。
2016年度の日本経済は、個人消費、設備投資、輸出と
い った主 要項目 にけん 引役 として の役割 が期待 でき
ないなか、緩慢な回復トレンドの持続を余儀なくされ
るとみる。マイナス金利は今のところインフレ期待の
上昇に繋がっておらず、実質金利は高止まりしている
可能性が高い。企業・家計の成長期待も盛り上がらず、
積 極的な 賃上げ や設備 投資 を積み 増す機 運が出 にく
い状況が続いている。
民間在庫
(出所)内閣府「四半期別GDP速報」
12
単月
1.1
3ヵ月移動平均
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
16/3
15/12
15/9
15/6
15/3
14/12
14/9
14/6
14/3
13/9
13/12
13/6
13/3
12/9
12/12
12/6
12/3
0.5
(出所)内閣府「機械受注統計」
現金給与総額(前年同月比)の推移
(事業所規模5人以上:調査産業計)
%
%
現金給与総額 (左軸)
所定外給与 (右軸)
(出所)厚生労働省「毎月勤労統計」
所定内給与 (左軸)
16/3
15/12
15/9
15/6
15/3
-6
14/12
-4
-3
14/9
-2
-2
14/6
-1
14/3
0
13/12
2
0
13/9
4
1
13/6
2
13/3
6
12/12
8
3
12/9
4
12/6
○ 3 月毎月勤労統計(確報、5 月 20 日)
3月の毎月勤労統計では、現金給与総額(事業所規
模5人以上:調査産業計)が前年比+1.5%と、2月の
同+0.7%から伸び幅が拡大した。内訳項目では、定
期給与(2月:同+0.6%→3月:同+0.7%)の伸び幅
が や や 拡 大 し た ほ か 、 特 別 給 与 ( 同 + 20.4 % → +
15.4%)も、現金給与総額に占める割合が2月から拡
大し、高い伸びが続いたことで、全体を押し上げた。
定期給与では、所定内給与(同+0.6%)は2月と同じ
伸びとなったが、所定外給与(同+0.1%→+1.3%)
の伸びが拡大した。ただ、2016年の春闘では、ベアの
水準が昨年を下回るとみられるほか、労働需給の引き
締まりを受けた賃金上昇も、一部の職種に限られると
みられ、所得環境の改善ペースは緩やかなものにとど
まると予想する。
機械受注(船舶・電力を除く民需)の推移
兆円
1.2
12/3
○ 3 月機械受注(5 月 19 日)
3月の機械受注(船舶・電力を除く民需)は前月比
+5.5%と、2ヵ月ぶりのプラス。業種別では、非製造
業(除船・電)が同▲6.9%と、4ヵ月ぶりのマイナス
となったものの、製造業が同+19.7%と、2ヵ月ぶり
のプラスとなり、全体を押し上げた。一方、3月下旬
の調査による4-6月期の見通しは、前期比▲3.5%と、
3四半期ぶりのマイナスであり、慎重な受注見込みと
なっている。今後の設備投資については、製造業では、
国 内の中 長期的 な低成 長予 想が定 着して いるこ とな
どから、能力増強投資は引き続き海外優先になると見
込まれるほか、世界景気の先行き不透明感などが重石
となり、国内設備投資の回復ペースは鈍いものにとど
まると予想する。
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
13
20
15
10
5
0
-5
-10
輸出金額指数
輸出数量指数
16/3
15/9
15/12
15/3
15/6
14/9
14/12
14/6
14/3
13/9
13/12
13/3
12/9
12/12
12/6
12/3
13/6
金額指数=数量指数×価格指数
-15
輸出価格指数
(出所)財務省「貿易統計」
3.5
全国コアCPIの推移(前年同月比寄与度)
%
電気・ガス・灯油
ガソリン
生鮮食品を除く食料
その他
コアCPI
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
(出所)総務省「消費者物価指数」
16/3
15/12
15/9
15/6
15/3
14/12
14/9
14/6
14/3
13/12
13/9
13/6
13/3
12/12
12/9
-1.5
12/6
○ 4月全国消費者物価指数(5月27日)
4 月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く消費者
物価指数、以下コア CPI)は前年比▲0.3%と、2 ヵ月
連続のマイナスとなった。コアコア CPI(食料〈酒類
除く〉・エネルギーを除く消費者物価指数)は同+
0.7%と、前月と同じ伸びにとどまった。為替の影響
を受けやすい品目を中心に伸びが鈍化した。今後につ
いては、エネルギー価格下落の影響が残るとみられる
ほか、円安による押し上げ効果も減衰することで、コ
ア CPI は当面、前年比ゼロ近傍での推移が続くとみる。
年度後半以降は、上昇に向かうとみるものの、期待イ
ンフレが低下傾向となっているほか、需要面からの押
し上げ圧力も弱いことから、物価上昇ペースは緩慢と
みている。
輸出金額の推移(前年比)
%
25
12/3
○ 4 月貿易統計(5 月 23 日)
4 月の貿易統計によると、輸出金額は前年比▲
10.1%と、7 ヵ月連続のマイナスとなった。輸出の実
勢を示す数量指数は同▲4.6%と、2 ヵ月連続のマイナ
ス。数量指数を相手地域別に見ると、米国向けが同▲
11.3%と、12 ヵ月連続のマイナス。中国向けは同+
1.3%と、2 ヵ月連続のプラスとなったが、その他のア
ジア諸国向けが不振となったことで、アジア全体では
同▲1.2%と、3 ヵ月ぶりのマイナスとなった。主要輸
出先である米国・アジア向けで冴えない状況が続いて
いる。今後も、中国を中心とする新興国景気の減速が
下押し圧力になるほか、米国向けについても、米国内
の投資需要の低迷もあって、資本財を中心に伸び悩む
とみられ、輸出は緩やかな回復にとどまると予想する。
経済ウォッチ
国≫
除く自動車・ガソリンスタンド・建材
ガソリンスタンド
小売売上高
16/4
16/3
16/2
16/1
15/12
15/11
15/10
15/9
15/8
15/7
15/4
15/2
15/6
小売売上高の伸びと寄与度(前月比)
%
15/5
○ 4月小売売上高(5月13日)
4 月の小売売上高は前月比+1.3%と、2 ヵ月ぶりに 2.0
増加し、市場予想(同+0.8%)を大きく上回った。 1.5
自動車・部品が同+3.2%と、2 ヵ月ぶりに増加し、全 1.0
体を押し上げたほか、ガソリン価格の上昇を背景に、
0.5
ガソリンスタンドが同+2.2%と 2 ヵ月連続で増加し
0.0
た。GDP の算出に使用される「除く自動車・部品、ガ
ソリン、建材ベース」でも、前月比+0.8%と、3 ヵ月 -0.5
連続の増加となった。家計の実質購買力が向上してい -1.0
ることや、雇用環境の改善傾向が続くとみられること、
家 計のバ ランス シート の正 常化が 進んで いるこ とか
ら、今後の個人消費は回復傾向が 続く可能性が 高い。
15/3
≪米
2016 年 5 月第 4 週号
自動車・部品
建材
(出所)米商務省
5
4
3
2
1
0
-1
-2
16/4
15/4
14/4
13/4
12/4
11/4
10/4
CPI
コアCPI
(出所)米労働省
2007年=100
鉱工業生産と設備稼働率の推移
%
110
90
85
65
80
60
鉱工業生産
設備稼働率(右軸)
16/4
70
15/4
90
14/4
75
13/4
95
12/4
80
11/4
100
10/4
85
09/4
105
(出所)FRB
14
09/4
08/4
07/4
-3
08/4
○ 4月鉱工業生産(5月17日)
4 月の鉱工業生産は前月比+0.7%と、3 ヵ月ぶりの
プラスとなり、市場予想(同+0.3%)をも上回った。
産業別に見ると、製造業が同+0.3%と、3 ヵ月ぶりの
プラスなり、全体を押し上げた。ガス・電気などの公
益事業も同+5.8%と、暖冬に伴う暖房需要の減少に
よる影響が和らいだことで、3 ヵ月ぶりのプラス。一
方、石油掘削などの鉱業は同▲2.3%と、8 ヵ月連続の
マイナスとなった。海外景気の減速が続いていること
や、原油安を背景にエネルギー関連業種の業況が低調
に推移していることなどから、今後の生産は停滞気味
に推移するとみる。
CPIの伸び(前年比)
%
6
07/4
○ 4月CPI(消費者物価指数)(5月17日)
4 月の CPI は前月比+0.4%と、2 ヵ月連続で上昇し
た。エネルギーが同+3.4%と 2 ヵ月連続で上昇し、
全体を押し上げた。前年比でも+1.1%と、3 月の同+
0.9%から伸び幅が拡大した。一方、エネルギーと食
料品を除いたコア CPI は前月比+0.2%と、3 月の同+
0.1%から伸び幅が拡大。アパレルの低下幅が縮小し
たことなどが影響した。ただ、前年比では+2.1%と、
3 月の同+2.2%から伸び幅が縮小した。修繕費などが
低下した影響が大きい。輸入物価の低下が続いている
一方、賃金の改善傾向が続くとみられることから、今
後 のコア インフ レ率は 緩や かな上 昇が続 くと予 想す
る。
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
千件
1,400
新築・中古住宅販売件数と住宅着工件数の推移
3,000
400
2,000
200
1,000
住宅着工件数
新築住宅販売件数
16/4
600
15/4
4,000
14/4
800
13/4
5,000
12/4
1,000
11/4
6,000
(出所)米商務省、米不動産業協会(NAR)
15
千件
7,000
1,200
10/4
○ 4月住宅販売・着工件数(5月17,20,24日)
4 月の米新築住宅販売は年率換算で 61.9 万戸、前月
比+16.6%と、2 ヵ月ぶりに増加した。市場予想(年
率換算 52.3 万戸)を大きく上回り、2008 年1月以来
の高水準となった。中古住宅販売は年率換算で 545 万
戸、同+1.7%と、2 ヵ月連続で増加。住宅着工件数は
年率換算で 117.2 万戸、同+6.6%と、2 ヵ月ぶりに増
加したほか、先行指標とされる着工許可件数も年率換
算で 111.6 万戸、
同+3.6%と、
5 ヵ月ぶりに増加した。
低金利環境が続いていることや、雇用者数の増加が続
いていることなどから、住宅市場は今後も回復基調で
推移すると予想する。
中古住宅販売件数(右軸)
経済ウォッチ
州≫
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
16/3
15/12
15/9
15/6
15/3
14/12
14/9
(出所)ユーロスタット
ユーロ圏CPI・コアCPIの推移(前年比)
%
16/4
15/10
15/4
14/10
14/4
13/10
13/4
12/10
12/4
11/10
11/4
10/10
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
-0.5
-1.0
コアCPI
CPI
(出所)ユーロスタット
現況指数
(出所)Ifo経済研究
期待指数
IFO景況指数
16/5
15/5
14/5
13/5
12/5
11/5
独Ifo景況感指数
ポイント
10/5
○ 5月ドイツIfo景況感指数(5月25日)
5月のドイツIfo景況感指数は107.7と、前月の106.7 125
から1.0ポイント改善した。同指数の改善は2ヵ月ぶり。 120
内訳を見ると、現況指数が113.2→ 114.2と、2ヵ月ぶ 115
りに改善したほか、期待指数も100.5→101.6と、3ヵ 110
105
月連続で改善。産業別では、製造業が6.5→7.8、建設 100
95
業が0.5→ 3.4、卸売業が10.7→13.1、小売業が6.8→
90
11.1と、いずれも改善した。これまでの原油安に伴う
85
実質購買力の向上などを背景に、個人消費が底堅く推
80
75
移すると見込まれることから、ドイツ景気は今後も回
復傾向が続くとみている。ただ、新興国向け輸出の低
迷などが足かせとなることで、回復ペースは緩やかな
ものにとどまると予想する。
16
14/6
14/3
-1.5
09/5
○ 4月ユーロ圏CPI(消費者物価指数)
(5月18日)
4月のユーロ圏CPIは前年比▲0.2%と、2ヵ月ぶりの
マイナスとなった。財価格は同▲1.1%と、前月と同
じマイナス幅だったが、サービス価格は同+1.4%→
+0.9%と、イースター休暇の時期が例年とずれたこ
とによる影響などから、2ヵ月ぶりにプラス幅が縮小
した。国別では、フランスが同▲0.1%と、前月と同
じ低下幅だったが、イタリアは同▲0.2%→▲0.4%、
スペインは同▲1.0%→▲1.2%と、ともにマイナス幅
が拡大。ドイツも同+0.1%→▲0.3%と、2ヵ月ぶり
のマイナスとなった。原油価格は春先以降上昇傾向で
推移しているものの、新興国景気の減速を受け、域内
景 気は 力強さ に欠 く展 開が続 くと 見込ま れる ことか
ら、ユーロ圏CPIは今後も停滞気味に推移するとみる。
ユーロ圏鉱工業生産の推移(前月比)
%
3.0
10/4
○ 3月ユーロ圏鉱工業生産(5月12日)
3月のユーロ圏鉱工業生産は前月比▲0.8%と、2ヵ
月連続のマイナスとなった。財別で見ると、消費財が
同▲2.3%→▲1.8%、中間財が同+0.1%→▲0.8%、
資本財が同▲1.1%→▲1.1%と、いずれもマイナスと
な っ た 。 主 要 国 別 で は 、 ス ペ イ ン が 同 ▲ 0.3% → +
1.3%と、4ヵ月ぶりのプラスとなったものの、ドイツ
は 同 ▲ 1.1% → ▲ 1.0% 、 フ ラ ン ス は 同 ▲ 1.3% → ▲
0.3%と、ともに2ヵ月連続のマイナス。イタリアも同
▲0.7%→0.0%と、横ばいにとどまった。ユーロ圏の
個人消費は改善傾向で推移しているものの、輸出は新
興 国向け を中心 に伸び 悩みが 続くと みられる ことな
どから、鉱工業生産は今後も停滞気味の推移が続くと
予想する。
08/5
≪欧
2016 年 5 月第 4 週号
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
日米欧マーケットの動向
(2016年5月30日現在)
▽各国の株価動向
(円)
18000
17000
16000
日経平均株価
15000
14000
13000
16/5
16/2
16/2
15/9
15/12
15/12
15/6
15/3
15/1
14/7
14/10
14/4
14/2
13/8
13/5
13/11
(出所)ファ クトセット
12000
16/5
16/2
15/9
15/12
15/6
15/3
15/1
14/7
14/10
14/4
14/2
13/8
13/11
(出所)ファ クトセット
(出所)ファ クトセット
(ポイント)
英国の株価指数(FT100)
7200
15/02
14/11
14/08
14/05
14/03
13/12
13/09
13/06
13/04
13/01
ドイツの株価指数(DAX)
12/10
13/5
ダウ工業株30種平均
19000
12/07
12/04
12/02
12000
(ドル)
日経平均株価
23000
21000
19000
17000
(円)15000
13000
19000
11000
18000
170009000
16000
150007000
14000
13000
12000
11000
10000
9000
(ポイント)
8000
7000
13000
6900
11000
6600
10000
6300
9000
6000
5700
16/5
15/9
15/6
15/3
15/1
14/10
14/7
13/5
16/5
16/2
15/12
15/9
15/6
15/3
15/1
14/10
14/7
14/4
14/2
13/11
13/5
13/8
5400
6000
14/4
(出所)ファ クトセット
14/2
(出所)ファ クトセット
13/11
7000
13/8
8000
▽外為市場の動向
17
16/5
16/2
15/12
15/9
15/6
15/3
15/1
14/10
14/7
14/4
14/2
16/5
16/2
15/12
15/9
15/6
15/3
15/1
(出所)ファ クトセット
14/10
16/5
16/2
15/12
15/9
15/6
15/3
15/1
14/10
14/7
14/4
14/2
13/11
13/8
13/5
(出所)ファ クトセット
14/7
110
14/4
120
14/2
130
13/11
140
円/ポンド相場
13/8
200
190
180
170
160
150
140
130
120
110
150
90
13/11
(円)
円/ユーロ相場
160
100
13/8
16/5
16/2
15/12
15/9
15/6
15/3
15/1
14/10
14/7
14/4
14/2
13/11
13/8
(円)
ドル/ユーロ相場
(出所)ファ クトセット
13/5
1.45
1.40
1.35
1.30
1.25
1.20
1.15
1.10
1.05
1.00
(出所)ファ クトセット
13/5
135
130
125
120
115
110
105
100
95
90
85
80
75
70
(ドル)
円/ドル相場
13/5
(円)
80
1400
65
1300
50
1200
35
1100
20
1000
18
16/5
95
16/2
(出所)ファ クトセット
1600
15/12
(ドル)
16/5
16/2
15/12
15/9
15/6
15/3
15/1
2.4
15/9
原油先物(WTI、中心月)
16/5
16/2
15/12
15/9
15/6
15/3
15/1
14/10
14/7
14/4
14/2
13/11
(出所)ファ クトセット
15/6
-0.1
14/10
(出所)ファ クトセット
14/7
(%)
14/4
政策金利(ユーロ圏、定例オペ最低入札金利)
14/2
1.0
13/11
0.1
13/8
2.0
13/8
0.2
13/5
2.5
13/5
16/5
0.3
15/3
-0.25
16/5
16/2
15/12
3.0
15/1
0.4
16/2
15/12
15/9
0.4
14/10
0.00
15/9
15/6
(%)
3.5
14/7
0.9
15/6
15/3
政策金利(米国、FFレート)
14/4
0.25
15/3
15/1
14/10
16/5
16/2
15/12
15/9
15/6
15/3
15/1
14/10
14/7
14/4
14/2
13/11
13/8
13/5
16/5
16/2
15/12
15/9
15/6
15/3
15/1
14/10
14/7
14/4
(出所)ファ クトセット
14/2
1.4
15/1
14/10
14/7
14/2
0.0
(%)
1.0
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0.0
-0.1
-0.2
13/11
0.50
14/7
14/4
0.1
13/8
1.9
14/4
13/11
13/8
13/5
日本の無担保コール(O/N)
13/5
16/5
16/2
15/12
15/9
110
15/6
15/3
15/1
14/10
14/7
14/4
(ドル)
14/2
(%)
0.5
14/2
13/11
13/8
(%)
0.2
14/2
13/11
(%)
1.00
13/8
13/5
-0.1
13/11
0.75
13/5
0.0
13/8
13/5
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
▽各国の金利動向
長期金利(日本、10年国債)
(出所)ファ クトセット
長期金利(米国、10年国債)
1.5
(出所)ファ クトセット
長期金利(ドイツ、10年国債)
(出所)ファ クトセット
▽商品市況の動向
金先物(COMEX)
1500
(出所)ファ クトセット
経済ウォッチ
2016 年 5 月第 4 週号
本レポートは、明治安田生命保険 運用企画部 運用調査 G が情報提供資料として作成したものです。本
レポートは、情報提供のみを目的として作成したものであり、保険の販売その他の取引の勧誘を目的と
したものではありません。また、記載されている意見や予測は、当社の資産運用方針と直接の関係はあ
りません。当社では、本レポート中の掲載内容について細心の注意を払っていますが、これによりその
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●照会先●
明治安田生命保険相互会社
運用企画部 運用調査グループ
東京都千代田区丸の内2-1-1 TEL03-3283-1216
執筆者 :小玉祐一、謝名憲一郎、信本将巳、平野真依子、山口範大、
尾家小春、開發彰徳、村上梨子、磯部雅人、陳家斉
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