Page 1 印度學備教學研究第四十四巻第一号 平成七年十二月 「大地

印度學佛教學研 究第四十 四巻第 一号
平成七年十二月
﹁
大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ に 関 す る 一考 察
特︱
に道 元 門 下 の立 場 を めぐ って︱
石
島
尚
雄
だ に 詳 ら か で は な い。 夙 に私 は 、﹃宗学 研 究﹄ 3
7号 で、﹃﹁大 地
道 元 禅 師 の ﹁大 地 有 情 同 時 成 道﹂ の典 故 に つ いて は 、 いま
豪 ・瑩 山 な ど に お い て は 頻 繁 に 出 て く る 。 特 に 、 詮 慧 ・経 豪
表 詮 さ れ る よ う に な る 。 し か る に、 道 元 門 下 、 特 に 詮 慧 ・経
繁 に は 出 て こ な い 。(
道3元
) に し て は じ め て 一連 の 意 味 を も って
道 元以 前 で は ﹁大 地有 情 同時 成道 ﹂ の フ レーズ は、 そ う 頻
二、 詮 慧 ・経 豪 に お け る ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂
有 情 同 時 成 道 ﹂ に関 す る 一考 察﹄ と題 し て発 表 し た の であ る
の ﹃正 法 眼 蔵 聞 書 抄 ﹄ に お い て は 、 枚 挙 に い と ま が な い 程 で
はじ め に
が 、 そ こ で 、 道 元 禅 師 (以下道 元と省略) の ﹁明 星 出 現 時 、 我
あ る 。 そ こ で そ れ ら の代 表 的 な も の を 検 討 し よ う 。
アリ ト ハ、成 道 ト云 道 理 タ ニモ、 イ テ ク レ ハ、 大 地 有 情 同 時 成 道
此 、/ ⋮ 、此 道 理 ナ ル ユ ヘ ニ、 同 時 発 心 モ ア ル ヘシ、 同 心 発 時 モ
⋮ 、 コノ ユ ヘ ニ同 時 発 心 ア リ、同 心発 時 也 、 ヲ ヨ ヒ修 行 成 道 モ如 レ
﹃聞 書 抄 ﹄ 有 時 に 、
与 三大 地 有 情 一同 時 成 道 ﹂ と いう フ レー ズ は、 真 浄 克 文 (一〇
(二〇 九 二︱ 一 一五 七 ) の ﹁山 河 大 地
二五︱ 二 〇 二) の ﹁明 星現 時 。 豁 然 悟 道 。大 地 有 情 。 一時 成
仏 ﹂(
の1表
)詮 と 、 宏 智 正 覚
草 木 叢 林 。 与 覚 上 座 同 時 成道 ﹂(
の2
表)
詮 を踏 ま え た 上 で の道
元 の造 語 で は な いか と 推 量 し た 。 そ こ で 、 今 回 は 、 作 業 仮 定
と し て、 道 元 の真 意 を よ り 深 く 理解 す る 為 に、 道 元 門 下 の
沙 汰 二不 レ及 ナリ 、 ユ ヘ ニ同 時 成 道 ト許 必 不 レ可 レ談 、 同 時 発 心 モ
ノ理 ヲ離 テ、 成 道 ト云 事 不 レ可 レ有 、 始 ソ終 ソ、 昔 ソ今 ソ ナ ム ト云
元 に先 立 つ世 代 と 道 元 以 後 の世 代 と そ の間 の 道 元 と を 二連 の
ア ル ヘシ、 同 心 発 時 モ ア ル ヘキ ナ リ、 同 時 成 道 ノ詞 許 ニカ カ ハラ
﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ を 吟 味 し た い。 そ し て 次 の機 会 に、 道
コ ソテ ク ス ト の上 で考 察 す る 基 礎 と し た い。
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)
サ ル ヘキ道 理 ヲ、 如 レ此 被 レ釈 ナ リ (﹃曹 洞 宗全 書 ﹄︿以 下 曹 全 ﹀ 注
と 説 く の みだ と い って いる 。 こ こを 見 る に、 ﹃聞 書 抄 ﹄ で は、
釈 尊 は ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ だ け を説 いた のだ と 、あ た か も
断 定 し て いる か の よう であ る 。 こ こ の箇 所 だけ を と って見 て
解 一、
と あ る 。 こ こ で は 、 ﹁同 時 成 道 ﹂ の ﹁同 時 ﹂ に 引 き 寄 せ ら れ 、
次 に、 ﹃聞 書 抄 ﹄ 行持 を見 る と、
も 、 ﹁大 地有 情 同 時 成道 ﹂ の フ レー ズが ﹃聞 書 抄 ﹄ で は か な
事 不 レ可 レ有 ﹂ と あ る と こ ろ に 注 目 し て み る と 、 こ こ で は 、 既
つこ
慈 父 大 師 釈 迦 尼 牟 仏 段 、 大 地 有 情 同 時 成道 ノ行 持 ア リ ト 云 ハ、 行
り ウ ェイ トを 持 った フ レーズ であ る ことが 看 取 さ れ る 。
に ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ が 熟 し た 成 語 で あ る と 見 做 さ れ て い
持 ハ成 道 以 前時 刻 ト コソ聞 ユレ、 十 九 歳 巳後 三十 成 道 巳 前 ナ ル ヘ
﹃有 時 ﹄ の 巻 の ﹁時 ﹂ に 関 連 せ る 内 容 に 注 を 振 っ た も の と 思
る こ と が 看 取 さ れ る 。 な ぜ な ら ば 、 ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ノ 理 ﹂
リ (
﹃曹 全 ﹄ 注 解 一、
キ 行 持 ヲ、 成 道 行 持 ト云 事 ハ、 教 行 証 ヲ、 三 ニタ テ サ ルイ ハレ ナ
わ れ る 。 中 で も 、 ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ノ 理 ヲ 離 テ 、 成 道 ト 云
と い っ て 、 ﹃聞 書 抄 ﹄ を 編 纂 し て い る 門 下 の 間 で は 、 説 明 す
)
る 必 要 も な い自 明 の 理 と 見 倣 さ れ て い る 感 が あ る か ら で あ
十 九 歳 の仏 寿 よ り 、 深 山 に行 持 し て 、 三 十 歳 の仏 寿 に い た り
と あ る 。 ﹃正 法 眼 蔵 ﹄ の 本 文 で は 、 ﹁慈 父 大 師 、 釈 迦 牟 尼 仏 、
次 に ﹃聞 書 抄 ﹄ 諸 悪 莫 作 を 見 る と 、
こ の箇 所 の 注 と 思 わ れ る 。 し か し 、 ﹃抄 ﹄ の ほ う は 、 ﹁如 レ文 ﹂
て 、 大 地 有 情 同 時 成 道 の行 持 あ り ﹂ (
行持上)と な って いて、
る。
釈 尊 一仏 ノ始 終 ニツ キ テ、 説 法 ノ ヤ ウ機 二随 ヒ物 ニ ヨリ テ コト コ
と あ る の み で ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ の 注 は な い 。 し た が っ
ト ナ リ、 イ カ ニイ ハム ヤ、 前 仏 後 仏 、 此 仏 他 仏 、 浄 土 穢 土 、 皆 以
異 ナ ル ヘシ、 シ カ ア レ ト モ、 是 等 ノ異 ハ、 釈 尊 二代 二一
三界 ヲ唯 心
て 、 ﹃抄 ﹄ を 編 纂 す る 段 階 で は 、 注 を 振 る 必 要 が な い ほ ど 自
(
﹃曹 全 ﹄ 注 解 一、
)
モ、 仏 成 道 ノ時 、 大 地 有 情 同 時 成 道 ト被 レ仰 ヌ ル ト キ ニ非
可
疑
地 、 須 弥 巨 海 、 張 三李 四、 聞 得 一句 ナ ム ト云 、 不 審 ナ ル様 ナ レト
未 発 菩 提 心 ト云 モ授 記 ノ上 ノ未 発 菩 提 心 ナ リ、 今 ノ授 記 ハ山河 大
次 に ﹃聞 書 抄 ﹄ 授 記 を 見 る と 、
明 の 理 で あ った こ と が 推 測 さ れ る 。(4)
ト説 キ、 諸 法 ヲ実 相 ト示 シ、 凡 悩 ヲ菩 提 ト イ ヒ、 生 死 ヲ浬 槃 ト云
程 ノ カ ハリ ナ リ、 イ ハム ヤ此 仏 モ、 大 地 有 情 同 時 成 道 ト宣 へ、 他
)
仏 モ大 地 有 情同 時 成 道 ト説 ノ ミ ナ リ、 此 等 ノ義 、 同 ト モ不 同 ト モ
イ ハム ニ、 違 ス ヘカ ラ サ ル道 理 ナリ (﹃曹 全 ﹄ 注 解 一、
と あ る 。 ここ で は、 仏 は、 方 便 で対 機 説 法 を 様 々 にす るけ れ
島)
﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂
ど も 、 そ れ ら の 違 い は 、 わ ず か な 違 い で あ って 、 言 わ ん と す
る と こ ろ は 、 此 土 の 仏 も 、 他 土 の仏 も
﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ に関 す る 一考 察 (
石
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﹁大 地 有 情 同時 成 道 ﹂ に 関す る 一考 察 (
石
る と す る の は よ く わ か ら な い こ と の様 に 思 え る が 、 ﹁大 地 有
とあ る 。 ここ で は、 未 だ 菩 提 心を 発 さ な いとき にも 授 記 が あ
て門 下 の詮 慧 等 の方 に、 日 本 天 台 と の接 点 が 見 え てく る のが
日 本 天 台 と の接 点 が な かな か見 出 せな い の に対 し て、 か え っ
成 道 ト 云 モ皆 同 心 ナリ ﹂ と いう 表 詮 に注 目 す る と 、道 元 で は
と あ る 。 こ の中 で、 ﹁草 木 国 土 悉 皆 成 仏 ト 云 モ 大 地有 情 同時
島)
情 同 時 成 道 ﹂ と い う 以 上 こ れ は 疑 う 余 地 のな い こ と で あ る と
興 味 深 い。(6)
おこ
の間 で は、 既 に定着 し て いた フ レー ズ であ る こと が 推 測 さ れ
主 張 し て い る 。 し て み る と 、 ﹃聞 書 抄 ﹄ を 編 纂 し て い る 門 下
次 に 、 ﹃聞 書 抄 ﹄ 十 方 を 見 る と 、
あ る が 如 何 が で あ ろ う か 。 ま た 、 門 下 の 間 で は 、 禅 家 の ﹁大
と いう フ レ ー ズ が 完 全 に 定 着 し て い た こ と を 推 測 さ せ る の で
め と す る 道 元 の 直 弟 子 の 間 に お い て 、 ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂
以 上調 べ て来 た の であ る が 、 いず れ に し ても 、 詮慧 を は じ
タ タ十 方 ハ 一方 ト 心得 ナ リ、 毎 物 ノ上 二、 十 方 ハ取 ヘシ、 一塵 ノ
る。
上 ニモ仏 土 ア ル ヘシ、 或 身 土 不 ニ ト モ ト キ、 或 大 地 有 情 同 時 成 道
と いえ よう 。
二 、 瑩 山 に お け る
(
以下瑩山と省略) にな る
ハ ユル我 トイ フ ハ、 釈迦 牟 尼 仏 ニア ラズ 、 釈 迦 牟 尼 仏 モ コノ 我 ヨ
⋮ 、 釈 迦 牟 尼 仏 、 見 明星 悟 道 曰、 我 与 大 地 有 情 同 時 成 道 、 ⋮ イ
﹃伝 光 録 ﹄ を 見 る と 、
と 、 ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ は よ り 一層 重 要 性 を 増 し て く る 。
詮 慧 ・経 豪 と く ら べ て 、 瑩 山 禅 師
﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂
も 関 連 さ せ て叙 述 さ れ て いる 事実 は 、 決 し て看 過 でき ぬ も の
地有 情 同 時 成 道 ﹂ と いう表 詮 が 、 中 国 天 台 にも 、 日 本 天 台 に
)
ト モ イ フ、 コノ ト キ国 土 モ、 十 方 モ ア ル ヘカ ラ サ ル カ (﹃
曹 全﹄
注 解 二、
と あ る 。 こ の 中 で ﹁或 身 土 不 ニ ト モ ト キ 、 或 大 地 有 情 同 時 成
道 ト モ イ フ﹂ と い う と こ ろ に 注 目 し て み る と 、 い わ ゆ る 禅 家
の ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ と い う 語 が 、 天 台 教 理 で い う 不 二 門
す な わ ち、 荊 渓 湛 然 が と な え た十 不 二 門 な ど と関 連 性 を も た
せ て 述 べ ら れ い る こ と が 分 か る 。(
少5な
)く と も 、 ﹃聞 書 抄 ﹄ を
編 纂 し て いる 門 下達 にと ってそ れ は 違 和感 のな い自 然 な表 詮
で あ った こ と が 看 取 さ れ る 。
次 に 、 ﹃聞 書 抄 ﹄ 如 来 全 身 を 見 る と 、
リ出 生 シ キ タ ル、 タ ダ 釈迦 牟 尼 仏 出 生 ス ル ノ 、
ミニア ラズ 、 大 地有
仏 ノ成 仏 ト コソ イ フ ヘケ レ、
龍 女 ノ成 仏 ハ止 息 ノ道 理 ト 可三心得
ガゴ ト ク、 釈迦 牟 尼 仏 成 道 ス ル トキ 、 大 地 有 情 モ成 道 ス、 タダ 大
草 木 国 土 悉 皆 成 仏 ト云 モ大 地 有 情 同 時 成 道 ト云 モ皆 同 心 ナ リ (﹃
曹
)
情 モ、 ミ ナ コレ ヨリ 出 生 ス、 大 綱 ヲ アグ ル ト キ、 衆 目 悉 ク ア ガ ル
全 ﹄ 注 解 二、
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シ、 大 地 有 情 ノ外 二、 釈 迦 牟 尼 仏 ヲミ ル コト ナ カ レ (﹃曹 全 ﹄ 宗
ト イ ヘド モ、 釈 迦 牟 尼 仏 ニ オ イ テ、 成 道 ノ オ モ イ ヲ ナ ス コト ナ
地有 情 成 道 ス ルノ ミ ニア ラ ズ、 三世 諸 仏 モ ミ ナ成 道 ス、 恁 歴 ナ リ
出現 時 、 我与 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ を造 語 し た の で はな い か
同時 成 道 ﹂ を見 出 し た。 更 に、 道 元 は これ を 踏 え て 、 ﹁明 星
一時 成 仏 ﹂ と 、 宏 智 正覚 の ﹁山 河 大 地 草 木 叢 林 。与 覚 上座
べ て いる が 、 こ の箇 所 を 克 文 の ﹁明 星 現 時 。 豁 然 悟 道 。 大 地
尼 仏 ニア ラ ズ、 釈 迦 牟 尼 仏 モ コノ我 ヨリ出 生 シ キ タ ル﹂ と 述
ら であ る。 更 に、 拈 提 で は 、 ﹁イ ハユル我 ト イ フ ハ、 釈 迦 牟
問 話 の初 端 か ら いき な り ﹁大 地 有情 同 時 成道 ﹂ が 出 てく る か
做 さ れ て いる こと が 看 取 さ れ る 。 なぜ な ら、 門 下 に説 き 示す
ーズ は、 単 な る 造 語 で はな く し て、 完 全 に定着 し た熟 語 と見
て いる 。(
瑩7
山)に お い ては 、 ﹁大 地有 情 同時 成 道 ﹂ と い う フ レ
と あ る 。 こ の則 は 明 ら か に 、 ﹃正 法 眼 蔵 発 無 上 心 ﹄ を 踏 ま え
成 道 ト 云 モ皆 同 心 ナリ ﹂ ⋮ 等 が そ う で あ り 、 更 に、 瑩 山 の
道 ト モイ フ﹂ と か、 ﹁草 木 国 土 悉皆 成 仏 ト 云 モ 大 地 有 情 同 時
非 可 疑 ﹂ と か 、 ﹁或 身 土不 ニ ト モ ト キ、 或 大 地 有 情 同 時 成
と か、 ﹁仏 成道 ノ時 、 大 地 有 情 同時 成 道 ト被 仰 ヌ ル ト キ ニ
情 同 時 成 道 ト宣 へ、 他仏 モ大 地 有 情 同 時 成 道 ト説 ノ ミ ナ リ﹂
ノ理 ヲ離 テ、 成 道 ト云事 不 可 有 ﹂ と か、 ﹁此 仏 モ、 大 地 有
る種 の既 成 事 実 化 し て いる 。 た と え ば 、 ﹁大 地 有 情 同 時 成 道
とも 、 直 弟 子 たる 詮 慧 ・経 豪 や 次 の世 代 にあ たる 瑩 山 で はあ
し か し、 そ の門 下 と な る と いさ さ か様 相 を異 にす る 。 少 く
と推測した。
有 情 。 一時 成 仏 ﹂ を引 き 合 い に出 し て比 較 し た のな ら ば 、 も
﹁イ ハ ユル我 ト イ フ ハ、 釈 迦 牟 尼 仏 ニア ラズ 、 釈 迦 牟 尼 仏 モ
)
はや こ の瑩 山 の拈 提 は成 立 し なく な る 。 し たが って、 瑩 山 に
コ ノ我 ヨリ出 生 シ キ タ ル、 タダ 釈 迦 牟 尼 仏 出 生 ス ル ノ 、
ミ ニア
源 下、
お い ては 、 ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ でな け れば な ら ぬ 理 由 が 厳
ラズ 、 大 地 有 情 モ、 ミ ナ コ レ ヨリ出 生 ス﹂ 等 が そ う であ る。
以 上 の こ と か ら 、 ﹁我 与 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ と いう フ レー
え て いる の でな け れば 、 と う て い説 明 でき な い。
特 に瑩 山 の拈 提 な ど は 、 皆 が 知 って い る既 成 事 実 と し て と ら
然 と し て あ る の であ る。
(8)
おわ り に
同時成
ズ は 、 道 元 門 下 に お い て 既 に定着 し た 熟 語 にな って い た こと
大地有情
道 ﹂ に つ い て考 察 を加 え て き た のであ るが 、 い ま だ に直 接 の
が 知 ら れ る 。 こ の こと は い った い何 を 意 味 し て いる のだ ろう
私 は夙 に、 道 元 の ﹁明 星 出 現 時 、 我 与
出 典 を 見 出 す こ とが でき な い。 し か し、 道元 が それ を 踏 え た
か。 す く な く と も 、 道 元 以 前 の人 々より も 、 道 元 以 後 の門 下
島)
表 現 と し て 、 真 浄 克 文 の ﹁明 星現 時 。 豁 然 悟 道 。 大 地 有 情 。
﹁
大 地有 情同時成道﹂ に関す る 二考察 (
石
241
島)
性 不 二門 。 四 者 因 果 不 二門 。 五 者 染 浄 不 二 門 。 六 者 依 正不 二
﹁大 地有 情 同 時 成 道 ﹂ に関 す る 一考 察 (
石
の人 々 に と っ て ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ が よ り 一層 重 要 な も の
門 。 七者 自 他 不 二 門 。 八 者 三 業 不 二 門 。 九 者 権 実 不 二 門 。 十 者
受 潤 不 二門 ﹂ (
)とある。
) と あ る。
頁 に、 ﹁明 星 を見 て/
日本 天 台 は道 邃 (一 〇 六︱ 一 五 七? ) の ﹃摩 訶 止 観 論 弘
決 纂 義 ﹄ 一に、 ﹁正 報 転 時 。 依 報 随 転 。 二仏 成 道 観 三見 法 界 草
木 国 土皆 悉 成 仏 ﹂ (
大 日本 仏 教 全 書 15、
田 島 柏 堂 、 ﹃日本 の禅 語 録 ﹄ 五 、 瑩 山
石 井 修 道 、 ﹃道 元 禅 の成 立 史 的 研 究 ﹄ の四 五二 頁 に ﹁
道元伝
の性 格 を検 討 す る こと を 最 大 の目 的 と す る本 論 にと って 、 ⋮ 、
(
曹洞宗宗学研究所研究員)
︿キ ー ワー ド﹀ 大 地 有 情 同 時 成 道 、 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 、 伝 光 録
成 道 ﹂ が 必 要 であ った こと を 指 摘 す る。
録﹄が ﹁
悟 則 ﹂ と し て の性 格 を 打 ち出 す 上 で、 ﹁
大 地 有 情 同時
道 元 の 本文 に更 に加 う る に、 ﹁見 ⋮ 悟 道 ﹂ が あ る と し て 、 ﹃伝 光
悟 ﹂ 等 の語 が 加 え ら れ た こと が 指 摘 でき ょう ﹂ とあ る 。 氏 は 、
問 題 を絞 って 四 つの点 に言 及 し た い。 第 一点 は、 本 則 に ﹁大
8
本 則 は、 直 接 に は ﹃正 法 眼 蔵 発 無 上 心﹄ に依 って い る と 思 わ れ
る﹂ とあ る。
7
6
に な っ て い た こ と が わ か る 。 私 が 推 測 す る に 、 そ れ は 、 ﹁大
地 有 情 同 時 成 道 ﹂ と い う 語 が 、 他 流 と は 違 った 道 元 の 宗 風 の
特 徴 を 表 わ す の に丁度 良 い語 で あ る と位 置 付 け ら れ て い た ふ
し が あ る の であ る 。
と も あ れ 、 こ こ ま で 来 る と 道 元 そ の 人 の ﹁大 地 有 情 同 時 成
道 ﹂ の意 義 を 検 討 す べ き 時 が い よ い よ 来 た と い え よ う 。 こ こ
に 、 道 元 の ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ の 考 察 を 今 後 に 期 し て 、 今
)。 ﹃普 灯 録 ﹄ 四 、 (
)等を参照。
﹃宏 智 禅 師 広 録 ﹄ 二、 (T ・48、 1 c) を 参 照 。
例 え ば 、 栄 西 の ﹃興 禅 護 国 論 ﹄ を 参 照 す る に、 ﹁大 地 有 情 同
)。 ﹃聯 灯 会 要 ﹄ 一四 、 (
大 慧 ﹃正 法 眼 蔵 ﹄ 六、 (
回 の論 考 を お わり た いと 思 う 。
1
2
3
山 内 舜 雄 、 ﹃続 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 の研 究 ﹄ 二 五 三 頁 に、 ﹁⋮ 、 こ
時 成 道 ﹂ の語 を 見 出 す こと は 一度 も な い の であ る。
﹃十 不 二 門﹄ に 、 二 者 色 心 不 二 門 。 二 者 内 外 不 二門 。 三者 修
われ る の であ る か ら 、 重 要 であ る。﹂ と あ る。
あ と は同 時 成 道 の行 持 と いう宗 意 し か のこ ら ず 、 教 と の異 和 感
は 否 定 す べく も な い。 そ し て、 注 者 詮 慧 が 、 最 も痛 切 に感 じ た
で あ ろ う こ の異 和 感 こそ 、 実 は道 元 禅 の特 質 の裏 が え し と も 思
証 ヲ三 ニタ テ サ ルイ ハレ ナリ ﹂ と 、 教 を 突 き 放 って し ま え ば 、
時 成 道 の行 持 が 成 り 立 つ、 と いう 論 法 で あ る 。 し か し 、 ﹁教 行
証 を 三 ニタ テ サ ル﹂ す な わ ち 教 行 証 を 一如 と 道 取 す る と ころ に
宗 意 が あ り 、 そ れ が行 持 と 表 詮 さ れ る か ら に は、 大 地 有 情 と 同
の ﹃聞 書 ﹄ の注 な ど も 、 発 想 法 そ のも のが 教 学 的 で あ る こと は
言 う ま で も な い。 そ れ だ け に解 り が よ い、 と いう も の の ﹁教 行
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