『マルコム X 自伝』 総務課図書係主任 和田道拓 先日,米国のロック歌手プリンスが亡くなった。以前はよく聴いていたし,今も iTunes には何枚かのアルバムが入れてある。かつてのプリンスは,それほど社会的発言は多くな かったが,近年「黒人の命も(他の人種の命と同様に)大事ということを皆忘れていない か?」という趣旨の発言があった。 米国の歴史を専攻していたわけでもなく,公民権運動に格別興味があったわけでもない 大学生時代の私がこの本を手にとったのは,装丁が黒地に銀文字で目立っていたせいもあ ったし,ロックバンド U2に歌われたキング牧師について拾い読みした本にマルコム X の 名前が載っていたせいもあっただろう。 街のチンピラといった感じの若い頃の過ちを経て,刑務所内の図書館で大量の読書をす ることで様々な勉強をしたマルコム X。やがて彼は公民権運動の闘士として表舞台に登場す ることになる。穏健なキング牧師と対照的に過激なマルコム X。やがてともに暗殺の凶弾に 倒れたのは残念というしかないが,イスラムに傾倒し晩年は穏健になりつつあったマルコ ム X。(余談だが,イスラムは本来穏健な宗教なのである。 ) 本来ならば図書の紹介文なので内容にもっと触れるべきところなのだろうが,私の稚拙 なまとめを読むよりも,学生の皆さんが直接この本にあたる方がずっと効率が良いのでは ないかと思う。この本を読んで,学生であった当時の私は多少なりとも米国の歴史に触れ ることができたと感じた。黒人の血を引くオバマ氏が大統領になる時代が来ても,まだマ イノリティへの差別が完全に無くなったわけではないというのが,冒頭のプリンスの発言 である。 なお,本校の図書館にはこの本がありますが,現在は中公文庫で入手できます。
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