パネルディスカッション概要 地域経済活性化に向けた地域金融機関が抱える課題・果たすべき役割について 中小企業側からの要望等 当社で新事業の研究開発をする際は、産学官連携で取り組むことが多いが、補助金頼み のためスピード感のある事業展開は難しい(商品化も困難)。また、補助金の予算が付か なくなると開発ペースが落ちてしまう。産学官プラス金(金融機関)という形になれば、 研究開発のスピードアップが図れるので、地域金融機関に協力してもらえると大変あり がたい。 今は、産学官連携の前に産産連携が非常に重要となっているところがある。しかし、各 企業が研究開発費を予算に組んでいないことが多く、産学官連携の形を取らざるをえな い場合がある。地方の企業も、常日頃から研究開発費を持つ仕組みが必要である。地方 銀行には、資金面も含め新事業をどういう形で起こすのか等についてサポートを行い、 基調講演でお話のあったような視点で、地元企業を育てていただきたい。 支援機関や金融機関には企業を支援する様々な仕組みが出来上がっているようだが、こ のシンポジウムで初めて聞いた内容であり、改めて都市部と地方には相当な格差がある と感じた。是非地方の金融機関の方々には、このような情報を早く地方に流して、支援 の機運を高める役割を果たしていただきたい。 当社はベンチャー企業であるため、日本政策金融公庫には事業計画の策定等を親身にな って考えていただいた。地方銀行から融資を受ける際には事業計画が必要となるが、銀 行に事業計画のどこが悪いのか、どう直せばよいのかを尋ねてもなかなか回答がない。 また、海外進出を考える際、各金融機関によって強み、弱み(海外への送金の可否や海 外との連絡網等)があるが、当社のような小さな会社では把握し切れない。金融機関に はもっと企業に寄り添って考えていただき、対応が少しずつでも改善すると助かる。 地域経済活性化に向けた地域金融機関が抱える課題・果たすべき役割 都市部と地方で情報の格差がある、あるいは金融機関には地元企業を育て上げ、指導し て欲しいという話があったが、突き詰めていくと人について回る問題である。事業性評 価を行う人(行員)の金融機関における育成に1つ課題があるのでは、と感じた。 当行では、事業性評価を各支店の営業担当者がきちんと実践していけるよう取り組んで おり、事業性評価推進委員会を立ち上げて推進している。これまで、企業の財務を見る 際は、バランスシートに目が行きがちだったが、今後は「財務的な評価」に加えて、各 支店の担当者が経営者と様々な話をする中で判断した、 「5年後、10年後を見据えた事 業性評価的な評価」の両方で融資案件を捉えていけるような体制を築いていく必要があ る。 当行では、営業店の行員一人一人に事業性評価をやらせても、一人一人違う結果が出る と考えている。企業の実態は残高試算表で把握できるが、例えば、その中の売上の基礎 が何で、消費者にどう支持されているのかを経営者に聞くことで、銀行は融資できる。 しかしながら、今現場では、そのような目で見るべき行員の質にばらつきが認められて おり、人材育成が課題となっている。 事業性評価については、是非社長さん方にも日々のやり取りの中で、営業店の行員を鍛 えていただき、聞く力やそれを理解する力、考える力を伸ばしていただきたい。 事業性評価を進めていくには、上から目線で説教するのではなく、関係者が対話して一 緒に作っていこうという姿勢が大事である。北九州でも実際に産学官金の利害関係者(マ ルチステークホルダー)によるワークショップで、事業性評価について考えた事例があ るが、皆さん納得される。金融庁のフレームワークでもそうなっているが、事業性評価 を一緒に考え、それを可視化・構造化し、対話の材料にするということが一番重要であ る。 経営者は既存事業を運営していくことで精一杯で、なかなか新しい事業への展開まで考 えが回らない。しかしイノベーションを起こすことは経営者にしかできない。社員にや れといっても難しい。地方においては経営コンサルティングに近い機能を果たす人材は、 都市部に比べて乏しいという現状の中で、多くの人材を擁している地域の銀行が中心的 な役割を果たすことが重要だと考える。 パネリスト(左から五十音順) 入江 康雄 氏 五島 コーディネーター 西田 顕生 氏 久 氏 坂井 俊之 氏 鴫山 一仁 氏 村岡 隆史 氏 保井 俊之 氏
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