リサーチ TODAY 2016 年 5 月 25 日 日本経済中長期展望、日本は新たな投資モデルに転換 常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創 下記の図表はみずほフィナンシャルグループのリサーチ&コンサルティングユニットが発表した「グロー バル経済の中期展望と日本産業の将来像」としたレポートの中で、みずほ総合研究所が示した総括的な 成長率の中長期イメージである1。日本経済についての一般的な認識は、2020年代に衰退するというもの だ。この背景には、本格化する人口減少と日本の産業の空洞化で企業の競争力が落ち込み、日本のプレ ゼンスも大幅に低下するとの見方がある。図表は2020年代までの日本の実質GDP年平均成長率のイメー ジを示す。2020年代を展望すれば、人口減による成長率の下押しは不可避である。ただし、一方で押し上 げ要因にも注目した。それは、①1990年代以降続いたバランスシート調整に伴う下押しが無くなること、② 2020年までのオリンピック需要、③グローバル経済の成長とアジアを中心としたインフラ需要増、④成長戦 略の実現による労働投入量の改善及び新技術の活用による生産性向上である。今回のレポートにおいて は、特にテクノロジーの進化が需要・市場構造に大きな影響を与える点に注目している。また、規制や社会 環境の変化を通じた産業創出にも重点を置いた。その結果、バブル崩壊以降長期低迷を続けた日本の成 長率が、2010年代後半、さらには2020年代になって以降も、1%程度まで回復するとの展望を描いた。 ■図表:日本の実質GDP年平均成長率のイメージ 6% 人口減少 5% 失われた 20年 4% 資産デフレ 転換 グローバル経済成 長とアジアを中心と したインフラ需要 バブル 崩壊 3% バランスシート 調整 4.7% 2% オリンピック 需要 1% 1.0% 0.8% 0.6% 90年代 2000年代 10年代前半 0% 1980年代 1.0% 1.0% 10年代後半 20年代前半 (注)2015 年度以降はみずほ総合研究所予測 (資料)内閣府「国民経済計算年報」等よりみずほ総合研究所作成 この図表で、特に重視したのは、世界のなかで最も高い成長続けるアジアを取り込むビジネスモデルの 1 リサーチTODAY 2016 年 5 月 25 日 実現である。なかでもアジアのインフラ需要の拡大に注目している。下記の図表に示したように、世界経済 のなかでアジアの占めるウェイトは、2015年の33%から2025年には40%程度まで拡大していく見通しである。 特にアジア圏のインフラ投資は、今後10年で約14兆ドルと試算され、こうした投資需要を取り込むことが日 本経済の成長に寄与することになる。 ■図表:世界経済に占めるアジア経済のウェイト 2025年 (%) 45 40% (2013年=100) 160 世界全体のGDP 2015年 33% 140 内アジア 120 世界全体に占めるアジアの割合(右目盛) 40 35 30 100 25 80 20 60 15 40 10 20 5 0 2000 2005 2010 2015 2020 0 2025 (年) (注)2013 年の PPP ウェイトをベースとして、各国・地域の実質 GDP 成長率を利用して試算。2015 年以降は みずほ総合研究所予測。アジアは中国、インド、NIEs、ASEAN5 の合計 (資料)各国統計よりみずほ総合研究所作成 前ページの図表では、2020年代に日本の成長率は1%程度に回帰・正常化するとしたが、その際、日本 は新たな成長モデルに立脚している可能性がある。具体的に、成長モデルは下記の図表に示したように、 国内生産(GDP)型から国民所得(GNI)型へ転換していよう。GDP型成長モデルでは、製造業を中心とした 財の輸出が中心のモデルである。一方でGNI型成長モデルでは、直接投資を中心とした投資の見返りとし ての収益を拡大させる総合商社型モデルである。以上の戦略には、インバウンド需要と、非製造業を中心 とした海外での活動を取り込むことが重要となる。 ■図表:GDP型成長モデルからGNI型成長モデルへの転換 GDP型成長モデル ⇒ 輸出型モデル ⇒ 財の輸出モデル ⇒ GNI型成長モデル 直接投資型モデル (総合商社型モデル) 広義のサービス輸出モデル (インバウンド・アウトバウンド 双方の取り込み) (資料)みずほ総合研究所作成 1 『Mizuho Research & Analysis』(2016 No.1 2016 年 5 月 10 日)「グローバル経済の中長期展望と日本産業の将来像」を参照い ただきたい。当レポートはみずほ総合研究所、みずほ銀行産業調査部、みずほ情報総研による共同作業で約 350 ページにわた る分析である。 http://www.mizuho-fg.co.jp/company/activity/onethinktank/vol001/index.html 当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき 作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。 2
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