レアルは米利上げ観測が重し (PDF/526KB)

グローバル・マクロ・
トピックス
2016/
5/24
投資情報部
シニアエコノミスト
折原 豊水
市場は暫定政権を歓迎、レアルは米利上げ観測が重し
 ブラジルではテメル暫定政権が2016年の基礎的財政収支を下方修正する見込み。ルセフ政権
のいわば負の遺産を織り込みGDP比で▲2.7%程度の赤字に。
 省庁再編や国営企業の売却等の財政改善策を今週にも発表する見込み、ボルサファミリア等
は据え置きを示唆、改革に対する国民の反発と市場の評価をにらんでバランスが問われる。
 レアルは暫定政権の顔ぶれを評価。米利上げ観測が重しも相対的に底堅さ。中銀の為替介入
には留意必要。レアル円では過熱感はみられない。
暫 定 政 権 は 2016 年
基礎的財政収支を下
方修正する見込み
メイレレス財務相やジュカ企画予算管理相らテメル暫定政権の経済チームは
5/20、2016年の基礎的財政収支(プライマリーバランス)について、1,705億レアル
(484億ドル)程度の赤字とする法案を来週(5/23~)にも議会に提出するとした。
GDP比では▲2.7%程度になり、15年の▲1.9%から悪化する。なお、停職中のルセフ
大統領は16年3月に、議会に対して16年の赤字を966.5億レアルに修正することを
求めていたが、大統領弾劾を巡る混乱等により保留となっていた。
ルセフ政権下での財
政改革の 遅れ や 景
気低迷が影響
経済チームは下方修正の背景として、ルセフ政権時代の景気悪化による税収減
や歳出カットの遅れ、15年までに行われた公的事業やサービスの未払い分の計
上、ルセフ大統領が停職直前に国民の支持を得るために行った社会保障等のバラ
マキを考慮したとしている。今回の修正により、ルセフ政権が行ったような基礎的財
政収支の下方修正を繰り返すといったことが避けられるとした。メイレレス財務相は
財政収支の改善や公的債務残高の伸び抑制は最優先の課題であり、財政改善に
向けて各種の改善策を発表するとしている。
具体的には、政府支出の削減、省庁統廃合、国営企業の民営化、政府調達に
おける透明性向上、石油部門における民間企業の役割拡大といったことが盛り込ま
れる可能性がある。一方、ボルサファミリア(貧困世帯向け現金支給)の見直しにつ
いては貧困世帯の反発が予想され、修正を見送る方針をすでに示唆している。ま
た、金融取引暫定負担金(CPMF、税に相当)の復活についても与党の一部から反
発が出ており、今回の発表には盛り込まれない可能性がある。ただ、メイレレス財務
相は年金改革に前向きとみられ、労働組合等の反発が予想される年金の受給開始
年齢の引き上げ等が含まれるのか注目される。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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グローバル・マクロ・トピックス
暫定政権の発足間もないだけに、ルセフ政権の負の遺産である財政悪化の現状
をふまえて基礎的財政収支目標の下方修正を行ったうえで、負担を強いる国民や
産業界の反発、与党内の利害調整と、どの程度市場が改革の先送りを許容するの
かといった点で着地点を探っている可能性もあろう。
市場はテメル暫定政権の経済チーム等の顔ぶれを評価したが、今週発表される
財政政策の内容次第で評価の修正が一部進む可能性もあり注目される。
市場の信認の低いト
ンビニ中銀総裁の退
任が決定
テメル暫定政権は、中銀総裁について、トンビニ現中銀総裁に代えて、ブラジル
大手金融機関でエコノミストを務め、中銀元幹部であるイアン・ゴールドファイン氏を
任命した。今後議会で正式に承認を受ける。6/7~6/8の中銀会合以降、総裁が交
代するとみられる。6月の会合では前回4月会合において直ちに利下げを行うような
環境にはないと述べられたことや、5/20発表の5月消費者物価(IPCA-15、5月15日
締め)が前年同月比+9.6%と前月(同+9.3%)や市場予想(同+9.5%)を上回っており、6
月会合での利下げの可能性はほぼなくなったとみている。
みずほ証券では、消費者物価指数が今後、食料品価格を中心に徐々に鈍化し、
2016年10-12月期には前年比+7%台となり、2017年以降の物価安定が見えてくるこ
とで秋口以降利下げの可能性があるとみている。
レアルは政権交代期
待で上昇後、米利上
げ観測で上値重い
も、相対的に底堅さ
ブラジルレアルは2月末には1ドル=4.01レアル台であったが、4/17の議会下院に
おける弾劾審議の継続決定、5/12には上院における弾劾裁判の設置等により、政
権交代による政治的な混乱の収束や改革期待から、5/12に一時、3.43レアル台ま
でレアルが上昇した。その後、米国の追加利上げ観測により足元は新興国通貨が
やや弱含むなか、レアルは5/19には3.6レアル台まで下落する場面があった。た
だ、相対的には新興国通貨のなかで底堅く推移している。
市場は 暫定政権の
顔ぶれを評価、今後
は財政改革の内容を
見極めへ
今後は、テメル大統領代行により財務相や中銀総裁等、市場の信認の高い人物
が選ばれたことや、有力野党で市場の信認が高い民主社会党(PSDB)が当初閣外
協力にとどめると示唆していたにも関わらず、複数入閣し協力姿勢が明確になった
ことで政権の求心力が高まったことがレアルの下支えになろう。市場や国民の政権
支持が比較的高め推移するとみられる政権発足後2~3ヵ月以内に、財政改革に取
り組み、財政政策等に対する信認を回復することができれば、レアルは上値の余地
があろう。そうした場合、国民や議会の暫定政権への支持が続き、停職中のルセフ
大統領は8月もしくは9月に弾劾裁判で弾劾され、テメル大統領代行が2018年まで
の残りの任期を大統領として政権を担う可能性が高まろう。そうした点で既述のよう
に、今週発表される2016年の基礎的財政収支の修正や財政改善策の内容が市場
の期待に沿うものなのか、まず注目される。
この資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。銘柄の選択、投資に関する
最終決定はご自身の判断でお願いいたします。また、本資料は信頼できると思われる情報に基づいて作成したものですが、その正確性、完全
性を保証したものではありません。本資料に示された意見や予測は、資料作成時点での当社の見通しであり今後予告なしに当社の判断で随
時変更することがあります。最終ページに金融商品取引法に係る重要事項を掲載していますのでご覧ください。
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2016/5/24
グローバル・マクロ・トピックス
ドルレアルはやや過
熱感もレアル円には
過熱感見られず
ドルレアルの200日移動平均をみると、レアルの上昇により昨年のレアル安場面
における行き過ぎ感は薄れている。一方、レアルの実質実効為替レートをみると、長
期平均をいくぶん下回っており、足元のレアル高が直ちに産業の競争力低下や経
常収支の悪化につながるとはみていない。また、レアル円では200日移動平均から
みて、依然としてレアルに過熱感はみられない。
リスクとしては、中銀が3月下旬以降、為替の急激な変動を抑制するため、レアル
売りドル買いに相当するリバース(為替)スワップ入札を実施し、過去のレアル買い
介入で1,000億ドル超まで積み上がったスワップ残高は減少に転じたものの、依然と
して620億ドル程度ある。中銀はレアル高圧力が続く場面では徐々にポジションの
解消を続けるとみられ、レアルの上昇ピッチを抑制する可能性もある。また、外部環
境としては米国の追加利上げ時期の一層の後ずれ観測や原油等の商品市況の反
発がレアルを下支えしていた面もあり、当面これらの動きをレアル安のリスクとして留
意したい。
(2010年=100)
ブラジルレアルの実質実効為替レート
(月次:1994/1~2016/4)
120
110
100
90
80
70
60
50
40
94
96
98
00
02
04
06
実質実効為替レート
08
10
12
14
94年以降平均
16
(年)
(注)2010年=100、消費者物価ベース
出所:BIS資料よりみずほ証券作成
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2016/5/24
グローバル・マクロ・トピックス
米ドル・ブラジルレアルの推移
(1ドル=レアル)
(日次:2000/1/3~2016/5/20)
ドルレアル(左逆目盛)
+10%かい離(左逆目盛)
かい離率(右逆目盛)
1.0
1.5
(かい離率:%)
200日移動平均(左逆目盛)
▲10%かい離(左逆目盛)
▲ 140
▲ 120
2.0
▲ 100
2.5
▲ 80
↑レアル高
3.0
▲ 60
3.5
▲ 40
4.0
▲ 20
4.5
0
5.0
20
5.5
40
リーマンショック
6.0
60
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
ブラジル・レアル円の推移
(1レアル=円)
80
70
(日次:2000/1/3~2016/5/20)
レアル円(左目盛)
+10%かい離(左目盛)
かい離率(右目盛)
(かい離率:%)
200日移動平均(左目盛)
▲10%かい離(左目盛)
120
100
60
↑レアル高
80
50
60
40
40
30
20
20
0
10
▲ 20
0
▲ 40
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16
(年)
出所:ブルームバーグのデータよりみずほ証券作成
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2016/5/24
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