みずほ米国経済情報 - みずほ総合研究所

みずほ米国経済情報
2016年5月号
◆ トピック
為替政策の監視リストは米国の強いシグナル
米国は5カ国の為替政策を監視下に置いた。有力シンクタ
ンクによれば、これは日中に対する米国の強いシグナルで
あるという。
◆ 景気判断
踊り場から拡大基調へ。内外の下振れリスクは残存
1~3月期は踊り場となったが、足元は緩やかな拡大基調に
戻りつつある。国内では信用状況の引き締まり、海外では
新興国経済の弱さ等、下振れリスクは残存している。
1.トピック:為替政策の監視リストは米国の強いシグナル
5 カ国の為替政策を監視
対象に
米国財務省は、半期為替報告書(4 月 29 日)において日本を含む 5 カ国の
為替政策を監視対象にした(図表 1)
。対米貿易黒字額(GDP 比)
、経常収支黒
字額(同)
、為替介入実績の 3 つの指標を基に為替操作国か否かを判断、3 指
標のうち 2 指標で該当したのが 5 カ国であり、監視が必要とした。
外国政府の政策意図を
これまでは、上記のような対外収支等の実績に加え、外国政府が自国通貨
問わない為替操作国の
安による輸出競争力の向上という政策意図をもっているのかどうかが重視さ
認定手続き
れてきた。米国政府としては、外国政府の為替政策に対する議会からの圧力
に対して「外国政府の意図は不明」と答えておけば、為替操作国の認定=不
必要な通貨摩擦を避けることができた。しかし今年 2 月に成立した貿易円滑
化・貿易執行法では外国政府の意図を問う文言が削除され、上記実績のみに
よって為替操作国か否かの判定が下される仕組みとなった。
為替介入実績の基準に
日本や中国が為替操作国と認定されるまでには大きなバッファがあり、そ
従えば日本と中国に多
の点で為替操作国の認定が著しく容易になったという訳ではない。為替介入
額の介入余地。しかし
に関する基準によれば、中国の場合は 2,000 億ドル、日本の場合は 1,0000 億
米有識者が基準厳格化
ドルもの介入余地がある。
を訴えている点に注意
必要
とは言え、この基準に収まる為替介入なら米国は全く問題視しないと考え
るのは早計である。国際通貨問題に詳しい米有力シンクタンクの1つ、ピー
ターソン国際経済研究所(PIIE)は、監視リスト化は日本と中国に対する米
国の懸念を示す強いシグナルだと言う。フレッド・バーグステン PIIE 前所長
らは、為替介入実績の基準は米国にとって緩やか過ぎると批判しており、基
準の妥当性を継続的にレビューする必要があると述べている。日本や中国が
大規模な為替介入を行えば、基準厳格化の機運を高めかねないだろう。
均衡ドル円相場は 1 ド
為替市場の「変動」に対する日米間の認識の違いは前月号で伝えた通りで
ル 108 円。日米間では
あるが、ドル円相場の「水準」についても日米間で大きな隔たりがあるとみ
為替市場の「変動」の
られる。日銀短観(3 月調査)によれば、日本企業の 2016 年度の想定為替レ
みならず、「相場水準」
ートは 1 ドル=117.46 円であり、足元のドル円相場はかなりの円高である。
でも認識に隔たり
一方、ウィリアム・クライン PIIE 研究員によれば、米国の経常収支不均衡を
是正するために必要なドル円相場
(均衡ドル円相場)
は 1 ドル=108 円であり、
足元のドル円相場はほぼ「適正」である(図表 2)
。米国にとって、今のドル
円相場は、
「変動」と「水準」の両面で日本による為替介入を容認する理由が
見当たらない。
米国発のドル高材料。6
こうした中、金融市場では米国発の強力なドル高材料が現れた。連邦公開
月利上げを巡る FOMC の
市場委員会(FOMC)の参加者が、4 月会合で「6 月利上げの可能性が高い」と
議論が明らかに
の認識を示していたことが明らかになった(5 月 18 日)
。
議事録によれば、国際経済・金融市場由来の下振れリスクは大きく後退し
ており、
「ほとんどの参加者が、4~6 月期の景気持ち直し、雇用拡大、インフ
レ率の持ち直しの 3 点が指標によって確認できれば 6 月利上げが妥当」と考
えていたようだ。
実際に利上げに向けた環境となり得るのか。 その可能性の度合いについては
1
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
声明文で 6 月利上げを
参加者の意見は分かれている。投票メンバーも、予断を持たずに景気動向を
示唆しなかったのは慎
見守ることで合意した。4 月の声明文に、次回会合での利上げを議論すること
重さの現れ
を示す文言が無かったのは、おそらくこうした判断が働いたためと思われる。
昨年 10 月声明文では、
「次回会合での利上げが適切であるかを判断するに当
たっては」との文言が示され、12 月利上げが強く示唆されていた。これと比
較すると、FOMC が慎重になっている様子がうかがえるのである。
警戒必要なドル高再燃
5 月に入ってからの経済指標は、6 月利上げをサポートするものが多い。雇
リスク。その回避とい
用統計はヘッドラインこそ弱かったが、中身は労働需要の堅調さを示してい
う点から、外国の追加
る。小売統計、鉱工業生産も良好である。日本を含む世界経済のためにも、
的金融緩和に対する米
米国の景気拡大が望ましいことは言うまでもない。しかし、それが FOMC の利
国のけん制が続く公算
上げを促すとなれば、急激なドル高が再燃し(図表 3)
、米国の輸出悪化、国
が大
際金融市場の不安定化、新興国経済からの資金流出などによって米国経済自
身の下振れをもたらす可能性が高い。米国政府が、利上げを試みる FOMC に圧
力をかけるのか不明だが、少なくとも外国に対しては、行き過ぎたドル高を
防ぐという観点から、為替介入と追加緩和に対するけん制を続けるだろう。
図表 1 半期為替報告書における為替政策の監視リスト
中国
対米貿易収支
(≧200億ドル)
経常収支
(GDP比>3%)
持続的為替介入
(GDP比>2%)
ドイツ
日本
韓国
台湾
☑ 3,657 ☑ 742 ☑ 686 ☑ 283 □ 149 3.1 ☑ 8.5 ☑ 3.3 ☑ 7.7 ☑ 14.6 □
□ 0.0 □ 0.2 ☑ 2.4 ☑
□ -3.9 (注)2015 年実績。為替介入は過去 12 カ月間であり、米国財務省の推計に基づく。
(資料)米国財務省より、みずほ総合研究所作成
図表 2 均衡対ドル相場
実質実効
レートの調
整(+は当
該通貨高)
人民元
±0.0 図表 3 主要 4 通貨の名目実効レートの推移
(2014/7/1=100)
均衡対ド
ル相場
5.74
130
直近の対
ドル相場
125
6.54
120
ユーロ
±0.0 1.24
1.12
115
円
±0.0 108
110
110
韓国ウォン
台湾ドル
米ドル
+4.3 998
25.4
32.7
▲9.9 -
-
人民元
105
1183
+16.9 ドル
円
100
95
ユーロ
90
85
2014/1/1
(注)実質実効レートの調整=経常収支/GDP 比が 2020 年時点
で 3%となるために必要な調整幅で、単位は%。直近の
対ドル相場は 2016 年 5 月 18 日時点。
(資料)PIIE、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
2015/1/1
2016/1/1
(年/月/日)
(資料)Bloomberg、FRB より、みずほ総合研究所作成
2
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
2.概況:踊り場から拡大基調に復する見込みも、下振れリスクは残存
緩やかな拡大基調に戻
米国経済は踊り場を経て、拡大基調に戻りつつある。
りつつあるが、内外の
1~3 月期の実質GDP成長率は 10~12 月期から減速した。これまでのドル
下振れリスクは残存
高と原油安の影響が輸出、設備投資を大きく下押したほか、年初の金融市場
の混乱が企業の投資活動や個人消費を抑制した。暖冬により季節商品の販売
が振るわなかったことも個人消費の押し下げにつながった。
しかし、
今春以降の景気は、
1~3 月期にみられた一時的な下押し要因が徐々
にはく落し、緩やかな拡大基調に戻りつつある。
金融市場が落ち着きを保つもとで、雇用所得の改善が続き、個人消費は堅
調さを取り戻している。やや慎重化していた消費者のマインドも、再び上向
いている。企業部門をみると、2 月以降のドル高一服を受けて、輸出需要に回
復の兆しがみられる。
一方、内外の下振れリスクは残存している。国内では米銀の貸出態度の厳
格化が懸念されている。海外では新興国経済の弱さに加えて、英国のEU離
脱を問う国民投票(6/23)を控えて、金融市場が不安定化する恐れがあり、
注意が必要だ。
製造業は増産
生産活動をみると、エネルギー部門、非エネルギー部門とも増産した。
エネルギー部門の 4 月の生産指数は、暖房需要の減少により急減した 3 月
の水準から持ち直した。他方、原油価格は足元で底入れしているものの、石
油・ガスの掘削活動は 8 カ月連続で減少した。
エネルギーを除く鉱工業生産指数は 3 カ月ぶりに上昇した(図表 5)
。自動
車、消費財、設備機器等の増産が全体を押し上げた。設備機器については、
2016 年 1 月を底に緩やかな持ち直し傾向にある。低迷が続いていた設備投資
に回復の兆しが伺える。
製造業の業況は持ち直
製造業の業況は持ち直しの力強さに欠ける。
4月の製造業ISM指数は50.8
しの力強さに欠ける。
と、引き続き 50 の水準を上回ったが、3 月から低下した(図表 6)
。新規受注
非製造業の業況は持ち
や生産に対する見方がやや後退した。業種別にみると、業況が改善した業種
直し
は 18 業種中 11 業種と、引き続き過半数の業種で業況が改善したが、前月(12
業種)から減少した。企業のコメントでは、
「改善の兆候はみられるが、低迷
したまま」
(化学)
、
「原油価格は底打ちしているが、エネルギー関連産業は停
滞が続いている」
(コンピューター・電子製品)等慎重なコメントがみられた。
5 月の地区連銀製造業業況指数も冴えない。ニューヨークがマイナス圏に沈
み、フィラデルフィアはマイナス圏のまま推移した(後掲図表 18)
。製造業の
業況はまだら模様である。FOMC の利上げ姿勢がドル相場の反転を招き、製造
業の回復の足取りが止まる恐れがある。
4 月の非製造業ISM指数は 55.7 と 2 カ月連続で上昇した(図表 7)
。新規
受注や雇用に対する見方が改善した。業種別では、業況が改善した業種は 18
業種中 13 業種と、前月(12 業種)から増加した。卸売、小売、医療、専門サ
ービス等の主要業種はそろって改善した。
3
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
図表 4
実質GDP成長率
(前期比年率、%)
8
政府支出
純輸出
在庫投資
設備投資
住宅投資
個人消費
図表 5
4.6
4.3
4
2.0
0.6
1.4
2
0.5
個人消費
「減速」
0
設備投資
在庫投資
外需
「悪化」
▲2
▲4
107
106
105
104
103
102
101
100
3.9
2.1
▲0.9
1
2
3
4
1
2
2014
3
2015
4
(%)
(2007=100)
実質GDP
6
79
78
77
76
75
74
73
72
15/4
15/10
1
設備稼働率(総合、右目盛)
(資料)連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
60
製造業ISM指数
新規受注
58
生産
図表 7
雇用
在庫
入荷遅延
16/4
(年/月)
鉱工業生産(除くエネルギー)
2016
(年/四半期)
図表 6
鉱工業生産と稼働率
総合指数
非製造業ISM指数
64
新規受注
事業活動
62
入荷遅延
総合指数
雇用
60
56
58
54
56
52
54
50
52
48
50
46
48
15/4
15/7
15/10
16/1
15/7
15/4
16/4
15/10
(年/月)
(年/月)
(資料)ISMより、みずほ総合研究所作成
(資料)ISMより、みずほ総合研究所作成
図表 8
景気の全体感を示す主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
成長率
実質GDP成長率
2016/2
2016/3
2016/4
2016/5
3.9
2.0
1.4
0.5
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
前期比年率、%
3.7
2.9
1.7
1.2
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
純輸出
寄与度、%Pt
0.2
▲ 0.3
▲ 0.1
▲ 0.3
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
在庫投資
寄与度、%Pt
0.0
▲ 0.7
▲ 0.2
▲ 0.3
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
前期比、%
n.a.
n.a.
n.a.
n.a.
0.2
0.1
▲ 0.5
0.8
n.a.
n.a.
製造業ISM指数
DI
52.6
51.0
48.6
49.8
48.0
48.2
49.5
51.8
50.8
n.a.
非製造業ISM指数
DI
56.5
58.2
56.9
53.8
55.8
53.5
53.4
54.5
55.7
n.a.
前期比、%
▲ 0.7
0.4
▲ 0.9
▲ 0.4
▲ 0.4
0.5
▲ 0.2
▲ 0.9
0.7
n.a.
非エネルギー部門
前期比、%
0.1
0.4
▲ 0.1
0.1
0.0
0.3
0.0
▲ 0.4
0.4
n.a.
鉱工業 設備稼働率
%
76.6
76.6
75.8
75.4
75.4
75.7
75.6
74.9
75.4
n.a.
%
75.5
75.7
75.4
75.3
75.2
75.5
75.4
75.1
75.3
n.a.
月次実質GDP成長率
生産活動
2015/12 2016/1
前期比年率、%
国内最終需要
企業業況
16/4
16/1
鉱工業生産指数
製造業
(資料)米国商務省、マクロエコノミック・アドバイザーズ、ISM、連邦準備制度理事会より、みずほ総合研究所作成
4
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
3.家計部門:個人消費は堅調。住宅は横ばい圏の動き
労働市場は良好な状態が続き、個人消費は堅調さを取り戻している。住宅
市場は横ばい圏の動きとなっている。
雇用は底堅さを維持
雇用は底堅さを維持している。4 月の非農業部門雇用者数が前月差+16.0
万人と、1 月以来の 20 万人割れとなった(図表 9)
。しかし、4 月の減速は政
府部門や建設業が主因であり、基調的なリストラの動きではないとみられる。
労働需給は改善
労働需給は改善している。失業率(5.0%)は前月から変わらず低水準とな
り、代替的失業率(9.7%)は前月から 0.1%ポイント改善した。4 月の労働
参加率は低下したが、2015 年 9 月を底に持ち直しの動きがみられる。
賃金上昇率は加速
4 月の時間当たり賃金上昇率(農業を除く民間部門)は前月比+0.3%
(3 月同+0.2%)
(図表 10)
、前年比では+2.5%(3 月同+2.3%)といずれ
も加速した。賃金上昇率が加速していることは、今後の個人消費の拡大やイ
ンフレ率の高まりをサポートする材料となるだろう。
小売売上高は勢いが強
まる
小売売上高は勢いを強めた(図表 11)。自動車販売台数(Autodata
Corporation)は 3 月(1,657 万台)に急減した後、4 月は年率 1,742 万台と
水準を戻した。また、コア小売売上高(自動車・ガソリン・建材・外食を除
く)は前月比+0.9%と大幅に増加した。無店舗販売を中心に、食料品、衣料
品等幅広く増加した。
消費者マインドは上向
き
消費者マインドは上向いた。
5 月のミシガン大学消費者信頼感指数
(速報値)
は昨年 6 月以来の水準に急上昇した。現状指数、期待指数ともに上昇した。
調査担当者は、あらゆる年齢層、所得層、地域で同指数が上昇したことを報
告しており、マインドの改善は広範囲に渡っていたことが分かる。
住宅着工は横ばい圏の
動き
住宅着工件数は年率 110~120 万件のレンジで、増減を繰り返している。4
月の住宅着工件数は前月比+6.6%(年率 117.2 万件)と 2 カ月ぶりに増加し
た(図表 12)
。また、先行指標である 4 月の住宅着工許可件数は同+3.6%(年
率 111.6 万件)と 5 カ月ぶりに増加した。許可件数の内訳をみると、戸建て
住宅、集合住宅ともに増加した。集合住宅については、昨年末以降の減少傾
向に歯止めがかかった格好だ。
建築業者の景況感を表す住宅市場指数をみると、横ばい圏での推移が続い
ている。しかし、住宅市場指数のうち 6 カ月先の販売予想が改善してきてお
り、建設業者の販売見通しに楽観的な見方が増えている。
住宅需要は底堅い。値
4 月の新築住宅販売件数は前月比+16.6%の年率 61.9 万件と、2008 年 1 月
頃感のある住宅の不足
以来の高水準となった。地域別にみると、中西部を除く 3 地域の販売件数が
も続く
急増した。新築住宅販売は毎月の変動が大きく、来月以降に改定される可能
性もあるが、春の住宅販売は堅調なスタートとなった模様である。住宅販売
の大宗を占める中古市場では、4 月の販売件数が同+1.7%(年率 545 万件)
と 2 カ月連続で増加した。全米不動産協会(NAR)によれば、住宅ローン
金利の低下が住宅需要の下支えにつながっている。しかし、住宅価格の上昇
が著しい西部を中心に、値頃感のある住宅が不足している状況も続いている
ようだ。
5
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
図表 9
(前月差、万人)
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
15/4
雇用統計
15/10
非農業部門雇用者数
図表 10
(%)
7.0
(前月比、%)
6.5
0.4
6.0
0.2
5.5
0.0
5.0
▲ 0.2
4.5
16/4
(年/月)
▲ 0.4
0.6
15/10
15/4
16/4
(年/月)
後方3か月移動平均
失業率(右目盛)
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
図表 11
時間当たり賃金
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
小売売上高
図表 12
(前月比、%)
2.0
住宅着工件数と住宅市場指数
(年率、万件)
130
70
1.5
60
1.0
50
115
0.5
40
0.0
30
▲ 0.5
100
▲ 1.0
15/4
15/10
コア
20
15/5
16/4
(年/月)
(資料)米国商務省、NAHB より、みずほ総合研究所作成
図表 13
家計部門の主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
非農業部門雇用者数
2016/2
2016/3
2016/4
2016/5
218
223
240
222
271
168
233
208
160
n.a.
%
5.4
5.2
5.0
4.9
5.0
4.9
4.9
5.0
5.0
n.a.
時間
34.5
34.6
34.5
34.5
34.5
34.6
34.4
34.4
34.5
n.a.
時間当たり賃金
前期比、%
0.6
0.6
0.6
0.6
0.0
0.5
0.0
0.2
0.3
n.a.
小売売上高
前期比、%
1.5
0.9
0.3
▲ 0.1
0.4
▲ 0.5
0.3
▲ 0.3
1.3
n.a.
前期比、%
0.9
0.9
0.3
0.7
0.1
0.2
0.4
0.2
0.9
n.a.
台数、百万台
17.1
17.8
17.9
17.2
17.3
17.6
17.5
16.6
17.4
n.a.
1966年Q1=100
94.2
90.7
91.3
91.6
92.6
92.0
91.7
91.0
89.0
95.8
n.a.
週当たり労働時間
コア小売
新車自動車販売台数
ミシガン大消費者信頼感
カンファレンスボード消費者信頼感
住宅市場
2015/12 2016/1
前期差、千人
失業率
個人消費
16/5
(年/月)
住宅着工件数
住宅市場指数(右目盛)
自動車・建材・ガソリン・外食
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
雇用環境
15/11
1985年=100
96.2
98.3
96.0
96.0
96.3
97.8
94.0
96.1
94.2
住宅着工件数
年率、千戸
1,156
1,156
1,135
1,147
1,160
1,128
1,213
1,099
1,172
n.a.
住宅着工許可件数
年率、千戸
1,259
1,146
1,221
1,142
1,201
1,188
1,162
1,077
1,116
n.a.
新築住宅販売件数
年率、千戸
493
487
508
n.a.
538
526
538
531
619
n.a.
中古住宅販売件数
年率、千戸
5,280
5,403
5,200
5,300
5,450
5,470
5,070
5,360
5,450
n.a.
DI
57
61
62
59
60
61
58
58
58
58
NAHB住宅市場指数
(資料)米国労働省、米国商務省、Autodata、ミシガン大、カンファレンスボード、NAR、NAHB よりみずほ総合研究所作成
6
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
4.企業・対外・政府部門:設備投資、輸出は低調
設備投資については、建設投資が緩やかに増加し、機械関連投資は低迷し
ている。
建設投資は緩やかに増
加
機械関連投資は低迷
建設投資(除く住宅)は緩やかに増加している。工場建設や商業施設の建
設増加を主因に、3 月は 3 カ月連続での増加となった(図表 14)
。
機械関連投資は低迷している。機械関連の設備投資動向を示す資本財(国
防・航空機を除く資本財)の 3 月の出荷額は横ばいとなった(図表 15)
。先行
きをみる上で重要な受注額は 2 カ月連続で減少し、企業の投資活動が依然弱
いことを示す結果であった。3 月の受注額の減少は、荷役運搬機械や建設機械
の減少が主因である。他方、鉱業・石油・ガス機械は増加し、2014 年以降の
悪化傾向が足元で一服する形となった。
企業の投資マインドは
まちまち
企業の設備投資マインドはまちまちである。5 月の地区連銀・製造業調査に
よる 6 カ月先の設備投資判断DIをみると、ニューヨークが低下する一方、
フィラデルフィアは一段と上昇した。
輸入、輸出ともに減少
3 月の実質輸出入はともに減少したが、輸入の減少幅が輸出を上回った(図
表 16)
。3 月の実質輸入は、幅広い品目における消費財の減少が全体を押し下
げた。実質輸出については、資本財が増加したものの、消費財、自動車、産
業用資材が全体の減少に寄与した。他方、5 月の輸出受注指数(製造業ISM
指数の補助項目)
は 2 カ月連続で 50 の水準を超えた。
主要な業種別にみると、
化学や金属関連で回復の動きが確認される。
2 月以降のドル高是正が回復の一
因になっているとみられる。今後輸出が本格的に回復するには、ドル高の修
正に加えて、米国にとって主要輸出先であるカナダや中南米経済(米国の裏
庭)の立ち直りも不可欠である。
連邦財政赤字は前年度
を上回る規模
2016 会計年度における4 月の連邦財政収支は1,065 億ドルの黒字となった。
内訳をみると、歳入が 4,384 億ドル(前年比▲7.1%)
、歳出が 3,320 億ドル
(同+9.1%)となった。納税申告の時期にあたる 4 月は、例年黒字になるこ
とが多い。一方、4 月までの累計でみると、赤字額(2015 年 10~2016 年 4 月)
は 3,546 億ドルとなり、前年度(2,828 億ドル)を上回る規模となった。
7
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
図表 14 非住宅建設投資
図表 15 資本財出荷・新規受注
(年率、億ドル)
4200
(年率、億ドル)
680
4000
660
3800
640
3600
620
3400
600
15/3
3200
15/3
15/9
15/9
16/3
(年/月)
16/3
(年/月)
非国防資本財新規受注
非国防資本財出荷
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
図表 16 実質財輸出・輸入
図表 17 累積連邦財政収支
(億ドル)
0
(2013年平均=100)
114
112
110
108
106
104
102
100
98
15/3
▲1,000
▲2,000
▲3,000
▲4,000
▲5,000
▲6,000
10
15/9
12
2
4
6
8
(月)
16/3
(年/月)
2015年度
輸入
輸出
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
2016年度
(資料)米国財務省より、みずほ総合研究所作成
図表 18 企業・対外・政府部門の主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
企業業況
設備投資
▲ 8.2
フィラデルフィア(PHL)連銀 現状判断
9.0
0.2
▲ 7.3
2.0
▲ 10.2
▲ 3.5
▲ 6.2 ▲ 19.4 ▲ 16.6
2016/3
2016/4
2016/5
0.6
9.6
▲ 9.0
▲ 2.8
12.4
▲ 1.6
▲ 1.8
コア資本財 受注金額
前期比、%
▲ 2.0
1.4
▲ 1.9
n.a.
▲ 4.1
2.4
▲ 2.1
▲ 0.8
n.a.
n.a.
コア資本財 出荷金額
前期比、%
▲ 0.8
0.4
▲ 1.7
n.a.
▲ 0.2
▲ 1.5
▲ 1.6
0.0
n.a.
n.a.
非住宅建設支出
前期比、%
9.3
0.5
▲ 0.1
n.a.
▲ 1.9
2.0
0.8
0.7
n.a.
n.a.
17.2
16.6
13.7
14.6
16.2
15.0
12.9
15.8
22.1
3.1
14.1
17.5
14.0
8.4
10.7
9.4
2.5
13.3
12.7
23.6
▲ 133 ▲ 139 ▲ 134
n.a.
▲ 45
▲ 46
▲ 47
▲ 40
n.a.
n.a.
PHL連銀 6か月先設備投資判断
財政
2016/2
0.2
NY連銀 6か月先設備投資判断
輸出入
▲ 9.2 ▲ 11.8
2015/12 2016/1
ニューヨーク(NY)連銀 現状判断
貿易収支
10億ドル
輸出
10億ドル
562
555
544
n.a.
180
176
178
177
n.a.
n.a.
輸入
10億ドル
695
694
678
n.a.
225
222
225
217
n.a.
n.a.
実質財輸出
2013年=100
103
104
102
n.a.
102
100
102
101
n.a.
n.a.
実質財輸入
2013年=100
109
110
109
n.a.
109
108
111
106
n.a.
n.a.
123 ▲ 123 ▲ 216 ▲ 245
▲ 14
55 ▲ 193 ▲ 108
106
n.a.
財政収支
10億ドル
歳入
10億ドル
1,027
802
766
711
350
314
169
228
438
n.a.
歳出
10億ドル
904
925
981
956
364
258
362
336
332
n.a.
(資料)ニューヨーク連銀、フィラデルフィア連銀、米国商務省、米国財務省よりみずほ総合研究所作成
8
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
5.物価動向:コアPCEデフレーターは加速傾向が一服
輸入物価は下落率が縮
小
4 月の輸入物価指数は前年比▲5.7%(3 月同▲6.1%)と、下落率が小幅に
縮小した(図表 19)
。ドル高や原油安が一服していることで、前年比ベースで
みた輸入物価に対する低下圧力が弱まった。最終財(自動車、消費財、資本
財)の下落率についても前月から縮小した。
国内企業部門の物価は
ゼロ近傍
4 月の最終需要・生産者物価指数(PPI)は前年比横ばい(3 月同
▲0.1%)となった(図表 20)
。エネルギーを含む財物価の上昇率はマイナス
幅が縮小したが(3 月同▲2.6%→4 月同▲1.9%)
、サービス物価の上昇率は、
毎月の変動が大きい卸売業者や小売業者等のマージン(利鞘)や、消費関連
サービス等が昨年 4 月に上昇していたことの裏が出る形で減速した(3 月同
+1.2%→4 月同+1.0%)
。
PCEデフレーターは
リテール部門では、昨年後半からのインフレ率の加速傾向が一服している。
加速傾向が一服
3 月の個人消費支出(PCE)デフレーター上昇率は前年比+0.8%(前月
同+1.0%)
、コアPCEデフレーター(食品・エネルギーを除く)上昇率は
同+1.6%(前月同+1.7%)といずれも前月から減速した(図表 21)
。サービ
ス物価の上昇率は前月と同率であったが、財物価の上昇率が自動車や娯楽用
耐久財を主因にマイナス幅を拡大させた。コアの 3 カ月前比年率上昇率をみ
ると、3 カ月連続で同+2.1%となった。基調的な物価上昇率は加速傾向が一
服している。昨年 1 年間を振り返ると、ダラス連銀刈込平均PCEデフレー
ター上昇率は同+1.6%から同+1.7%の狭いレンジで推移していた。その後、
2016 年 1 月は+1.9%と過去のレンジを上抜けする形となったが、2 月、3 月
は同 1.8%となった。
4 月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年比+1.1%(3 月同+0.9%)
と加速する一方、
コアCPI上昇率は同+2.1%
(3 月同+2.2%)
と鈍化した。
家具・家事用品や自動車等財物価のマイナス幅が拡大したことが下押し要因
となった。コアCPIの 3 カ月前比年率上昇率をみると、+2.2%と、2016
年 2 月(+3.0%)をピークに勢いが弱まっている。クリーブランド連銀の刈
込平均CPI上昇率は前年比+2.0%と前月から変わらなかった。
サーベイ調査のインフ
レ期待は小幅に上昇
市場取引ベースのインフレ期待は概ね横ばいとなった(図表 22)
。サーベイ
調査に基づくインフレ期待は小幅に上昇した。
以上
9
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
図表 19
輸入物価
(前年比、%)
5
図表 20
(前年比、%)
0.5
(前年比、%)
0.0
2.0
▲ 0.5
1.0
▲ 1.0
0.0
▲ 1.5
▲1.0
▲ 2.0
16/4
(年/月)
▲2.0
0
3.0
▲5
▲ 10
▲ 15
15/10
15/4
輸入物価
図表 21
15/4
15/10
16/4
(年/月)
コア
総合
うち最終財(右目盛)
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
最終需要PPI
(資料)米国労働省より、みずほ総合研究所作成
PCEデフレーター
図表 22
(前年比、%)
2.0
期待インフレ率
(%)
2.8
1.5
2.3
1.0
1.8
0.5
1.3
0.0
15/4
15/10
総合
15/11
15/5
16/4
(年/月)
ミシガン大 期待インフレ率(5~10年先) (年/月)
BEI(5年先5年)
コア
(資料)米国商務省より、みずほ総合研究所作成
(資料)ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
図表 23
物価の主要統計
Q2 2015 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016
輸入物価
輸入物価指数
消費者物価
2015/12 2016/1
2016/2
2016/3
2016/4
2016/5
▲ 9.5
n.a.
▲ 8.3
▲ 6.5
▲ 6.6
▲ 6.1
▲ 5.7
n.a.
▲ 1.4
▲ 1.6
▲ 1.6
n.a.
▲ 1.7
▲ 1.3
▲ 1.2
▲ 1.2
▲ 1.1
n.a.
最終需要 生産者物価指数
前年比、%
▲ 0.8
▲ 0.9
▲ 1.3
n.a.
▲ 1.1
▲ 0.2
0.0
▲ 0.1
0.0
n.a.
コア生産者物価指数
前年比、%
1.0
0.7
0.2
n.a.
0.2
0.6
1.2
1.0
0.9
n.a.
消費者物価指数
前年比、%
▲ 0.0
0.1
0.5
n.a.
0.7
1.4
1.0
0.9
1.1
n.a.
コア消費者物価指数
前年比、%
1.8
1.8
2.0
n.a.
2.1
2.2
2.3
2.2
2.1
n.a.
PCEデフレーター
前年比、%
0.3
0.3
0.5
n.a.
0.7
1.3
1.0
0.8
n.a.
n.a.
前期比、%
0.5
0.3
0.1
n.a.
▲ 0.1
0.1
▲ 0.1
0.1
n.a.
n.a.
前年比、%
1.3
1.3
1.4
n.a.
1.4
1.7
1.7
1.6
n.a.
n.a.
前期比、%
0.5
0.3
0.3
n.a.
0.1
0.3
0.2
0.1
n.a.
n.a.
前年比、%
1.7
1.7
1.7
n.a.
1.7
1.9
1.8
1.8
n.a.
n.a.
%
2.7
2.7
2.6
2.6
2.6
2.7
2.5
2.7
2.5
2.6
期末値、%
2.0
1.9
1.8
1.5
1.7
1.6
1.4
1.6
1.6
1.6
コアPCEデフレーター
刈込平均 PCEデフレーター
インフレ期待
▲ 10.0 ▲ 11.2
前年比、%
最終財
生産者物価
前年比、%
16/5
ミシガン大 期待インフレ率
BEI(5年先5年)
(資料)米国商務省、米国労働省、ダラス連銀、ミシガン大、Bloomberg より、みずほ総合研究所作成
10
みずほ米国経済情報(2016 年 5 月号)
2 01 6年 5月 25 日
発行
欧米調査部主席エコノミスト 小野 亮
03-3591-1219 mak ot [email protected] o. jp
欧米調査部主任エコノミスト 風間 春香
03-3591-1418 har uk a.kazama@mizuho-r i. co.jp
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