一億総活躍、女性活躍推進法で潜在成長率底上げ

リサーチ TODAY
2016 年 5 月 27 日
一億総活躍、女性活躍推進法で潜在成長率底上げ
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
2016年5月「ニッポン一億総活躍プラン」がまとめられた。すでに、2015年8月には女性活躍推進法が成
立し、この法律により2016年4月1日以降、常時雇用する労働者が301人以上の企業には、数値目標を含
む行動計画の策定等が義務付けられている。みずほ総合研究所は、「一億総活躍社会の実現と女性活躍
の課題」という緊急リポートを発表している 1 。アベノミクス第2ステージで安倍政権が掲げるのが、今回の
「一億総活躍社会」の実現である。下記の図表に示されるように、女性活躍推進と一億総活躍は重なり合う
ことろが多く、女性活躍推進が一億総活躍社会の柱の一つになっている。ここでは、女性が活躍しやすい
職場環境は、高齢者や外国人など多様な人材が活躍し、さらに生産性の向上を実現する戦略経営につな
がるという理解が重要と考えている。
■図表:女性活躍推進と一億総活躍社会
女性活躍
推進法
ニッポン一億
総活躍プラン
女性の
継続就業支援
控除等の
税制見直し
生涯現役
社会の構築
女性の人材
育成強化
非正規の
待遇改善
社会保障
制度の見直し
教育制度
の複線化
女性の
積極的登用
子育て支援
の拡充
長時間労働
の是正
高齢者の
就業促進
マタハラ防止
日本
再興戦略
保育所の
定員拡充
介護離職
の抑制
一億総活躍社会
女性活躍推進
女性活躍
行動計画
障害者の
就業促進
一億総活躍
の緊急対策
(資料)みずほ総合研究所
次ページの図表は、日本の潜在成長率を要因分解したものだ。同成長率は1990年代に大きく低下し、
近年は1%を下回る水準にある。その落ち込みの要因の一つが潜在労働投入の減少であり、90年代以降
労働投入のマイナスが継続している。労働投入は自然体で今後減少するため、就業率を高めないとこの先
も成長率の押し下げ要因になる。アベノミクスについては開始後3年が経過し、通貨安に依存した金融政
策に限界が見え始めている。また、財政の余裕も日本の場合は限られる。金融財政政策をバネにいかに
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2016 年 5 月 27 日
潜在成長率を高める成長戦略を実現できるかが重要な課題であり、今回の一億総活躍プランはその趣旨
に沿ったものとなるべきだ。先日発表された実質GDP(速報値)では、日本の2015年度の成長率は0.8%と
なり、当初の予想を大幅に下回った。ただし、日本の潜在成長率を勘案すれば、相応のものと考えることも
できる。やはり潜在成長率の底上げが急務である。
■日本の潜在成長率とその要因分解
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(%)
潜在資本投入
潜在労働投入
潜在成長率
TFP
4
3
2
1
0
(年度)
-1
1990
95
2000
05
10
15
(注)潜在成長率はみずほ総合研究所による推計値。
(資料)内閣府「国民経済計算」
、
「企業行動に関するアンケート調査」よりみずほ総合研究所作成
次の図表は、女性・若者・高齢者・外国人の労働参加策を示したもので、これらの施策による労働力の
確保が期待される。先に示した潜在成長率の低下に歯止めをかけるためにも、これらの人達の就業率を引
き上げることが急務となる。なかでも外国人については、インバウンドの急増や、2020年の東京五輪を考慮
すると、移民による具体的な底上げをタブー視せず議論する段階になってきたと考えられる。
■図表:女性・若者・高齢者・外国人の労働参加
女
性
働き方の見直し
子育て支援
登用促進
若
者
就労支援
雇用の流動化
技能訓練
マッチング
労 働 市 場
活用促進策
雇用の流動化
能力発揮の
職場作り
高度人材の
優遇策強化
生活環境整備
高齢者
外国人
(資料)みずほ総合研究所
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「一億総活躍社会の実現と女性活躍の課題」 (みずほ総合研究所 『緊急リポート』 2016 年 5 月 23 日)
筆者の都合により、5 月 30 日(月)から 6 月 9 日(木)は休刊とさせていただきます。
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