実務対応報告公開草案第46号『平成28年度税制 改正に係る

会計・監査
「実務対応報告公開草案第46号『平成28年度税制
改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の
取扱い(案)
』
」の解説
さ
せ
たけし
公認会計士 佐瀬 剛 1.はじめに
企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成28年4
月22日に実務対応報告公開草案第46号「平成28
年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実
が前提とされている点に留意が必要である。
なお、上記(本公開草案2項)の会計方針の変更
以外の減価償却方法の変更については、自発的に行
う会計方針の変更として取り扱うものとされている
(本公開草案3項)
。
務上の取扱い(案)」(以下「本公開草案」という。
)
を公表し、コメントを募集している。コメントの募
集期間は平成28年5月23日までとされている。
本稿では、本公開草案の概要について解説する。
なお、今後、ASBJにおいて、抜本的な解決を図
るために減価償却に関する会計基準の開発に着手す
ることの合意形成に向けた取組みを速やかに行う予
なお、文中意見にわたる部分については私見である
定とされている(本公開草案14項)
。また、本公開
ことをあらかじめ申し添える。
草案は、取り扱う範囲を平成28年度税制改正に係
る減価償却方法の改正に限定して緊急に対応したも
2.経緯
平成28年度税制改正において、平成28年4月1
日以後に取得する建物附属設備及び構築物の法人税
法上の減価償却方法について定率法が廃止され、定
額法のみとなる見直しが行われた。
のであり、今回に限られたものとして提案している
(本公開草案15項)
。
(2) 開示
上記3.「
(1)会計方針の変更に関する取扱い」
(本
公開草案2項)に従って会計基準等の改正に伴う会
これを受けて、当該税制改正に合わせ、平成28
計方針の変更として取り扱う場合、企業会計基準第
年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物
24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計
から減価償却方法を定額法に変更する場合に、当該
基準」第19項及び第20項の定めにかかわらず、次
減価償却方法の変更が正当な理由に基づく会計方針
の事項を注記するとされている(本公開草案4項)。
の変更に該当するか否かに関して、必要と考えられ
る取扱いについて緊急に審議を行い、本公開草案を
公表したものである。
(1) 会計方針の変更の内容として、法人税法
の改正に伴い、本実務対応報告を適用し、
平成28年4月1日以後に取得する建物附
3.実務上の取扱い
(1) 会計方針の変更に関する取扱い
従来、法人税法に規定する普通償却限度相当額を
属設備、構築物又はその両方に係る減価
償却方法を定率法から定額法に変更して
いる旨
(2)
会計方針の変更による当期への影響額
減価償却費として処理している企業において、建物
附属設備、構築物又はその両方に係る減価償却方法
について定率法を採用している場合、平成28年4
4.適用時期
月1日以後に取得する当該資産に係る減価償却方法
本実務対応報告は、公表日以後最初に終了する事
を定額法に変更するときは、法令等の改正に準じた
業年度のみに適用するとされている。これは、本実
ものとし、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更
務対応報告は、従来、法人税法に規定する普通償却
として取り扱うものとするとされている(本公開草
限度相当額を減価償却費として処理している企業が
案2項)。
税制改正に合わせて会計方針を変更する場合に適用
この取扱いは、従来、法人税法に規定する普通償
されるためである(本公開草案5項、17項)。
却限度相当額を減価償却費として処理している企業
2 テクニカルセンター 会計情報 Vol. 478 / 2016. 6 © 2016. For information, contact Deloitte Touche Tohmatsu LLC.
ただし、本実務対応報告の公表日時点で、すでに
告の公表日前に終了している場合であっても、当該
会計方針の変更の対象となる取引、すなわち、平成
事業年度に本実務対応報告を適用することができる
28年4月1日以後に建物附属設備及び構築物を取
とされている(本公開草案5項、17項)
。
得する取引が行われていることから、平成28年4
月1日以後最初に終了する事業年度が本実務対応報
以 上
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