み みず ずほ ほ欧 欧州経 経済 済情 情報 20016年5月号 号 ◆ トピ ピック 英国E EU離脱の場合の の日本円 円・株価への影響 響 EU離 離脱を問う国民投 投票の行方 方は、依然 然予断を許 許さない。 。 市場の のリスク許容度が が低下した た場合、ド ドル円相場 場には2円 円 ~6円 円程度の円 円高圧力が がかかる可 可能性がある。 ◆ 景気 気判断 ユーロ ロ圏景気の回復テ テンポは は緩慢 企業サ サーベイは、5月に にかけて景 景気の回復テンポ ポが緩慢で で あるこ ことを示唆してい いる。こうした中、ユーロ圏 圏の多くの の 国では は財政緩和が計画 画されてい いる。 1.トピック:英国EU離脱の場合の日本円・株価への影響 英EU離脱を問う国民投 票の結果は予断を許さず EU離脱の是非を問う英国の国民投票実施まで、残り 1 カ月を切った。4 月以降の世論調査の結果は図表1の通りである。足元では若干残留派の支持 率が上回っているが、両者の支持率はおおむね拮抗している。残留派と離脱 派は、積極的なキャンペーンを繰り広げているものの互いに決め手に欠け、 国民投票の結果は予断を許さない。 金融市場ではポンド安、 相 国民投票で「離脱」が選択された場合、短期的にはグローバルな金融市場 手としては円が選好され の変動を通じた経済への影響が懸念される。英財務省は、英国がEUを離脱 る可能性 した場合の短期的な英経済や金融市場への影響を分析した報告書を発表し ている。その中では、英ポンド相場(実効レート)が 12~15%程度下落する 可能性があるとの推計結果が示されている。 日本にも為替相場や株価の変動を通じた影響が出る可能性がある。 「離脱」 投票後にポンドが売却された場合、その相手としては逃避通貨としての位置 づけを有する円が選好される可能性があるためだ。円高の進行は輸出企業の 収益に影響を与えるのみならず、物価にも下押し圧力を加えると予想される。 また、円高の進行に伴って株価が下落すれば、消費マインドの悪化を通じて 個人消費の下押し圧力にもなり得る。 円高・株安の進行は、リ 円高や株安がどの程度進むかは、金融市場においてリスク回避的な姿勢が スク回避度の高まりに どの程度強まるかによる。この問題については、松本(2015)※1 が開発した よる グローバル市場でのリスク許容度指数を基に考える。松本(2015)は、動学 因子モデルにより、株価、商品市況、ドル、長期金利、クレジットスプレッ ドなど各種金融指標の中から共通に動く部分を抽出し、リスク許容度を推計 した。リスク許容度指数(前月差)は図表 2 のとおりであり、①2008 年 10 月のリーマンショック直後、②2011 年 8 月の欧州債務危機の深刻化、③2016 年 1 月の欧銀健全性不安の台頭といった時期に、市場のリスク許容度は大き く低下している。 2016 年5 月時点で同指数は前月差横ばいに留まっているが、 英国民投票において「離脱」が選択された場合は低下が予想される。 ドル円相場には、2 円~6 図表 3 は、市場のリスク許容度が上記 3 つのリスクイベントと同程度まで 円程度の円高圧力がか 低下した場合の、ドル円相場と日経平均株価への影響を推計したものである。 かる可能性 推計は、ドル円相場(前月比) 、日経平均株価(前月比) 、米日長期金利差(前 月差) 、リスク許容度指数(前月差)の 4 変数からなるVARモデルを構築 したうえで、インパルス応答関数を用いて影響度を測っている。推計結果を みると、市場のリスク許容度が①~③のリスクイベントと同程度まで低下し た場合、ドル円相場には約 2 円~6 円の円高圧力、日経平均株価には約 1,000 円~3,000 円の下落圧力がかかる可能性があることを示している。 推計は月末値を用いているため、一時的な相場の振れは更に大きくなる可 能性や、リスク許容度の低下が長期化した場合に影響が拡大する可能性があ る点にも留意が必要だろう。 国民投票実施日に向け、金融市場は世論調査を睨みながら神経質な展開が 続く公算が大きい。リーマン・ショック時ほどのインパクトとは言わない 1 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) にしても、僅差で国民投票当日を迎え、 「離脱」が選択された場合は、相応 の円高、株安に備える必要がありそうだ。 (※1)松本惇(2015) 「中国発のリスクオフが主要国に与える影響をどうみるか」 みずほインサイト 図表1 英国民投票に関する世論調査 (%) 残留 60 離脱 図表2 グローバル市場のリスク許容度指数 態度保留 (前月差) 3.0 50 リスク許容度 高い 2.0 1.0 40 0.0 30 ▲ 1.0 ▲ 2.0 20 ▲ 3.0 10 ▲ 4.0 5月21日 5月16日 5月11日 5月6日 5月1日 4月26日 4月21日 4月16日 4月11日 4月6日 4月1日 0 ③欧銀健全性 不安('16/1) ①リーマン・ ショック直後 ('08/10) ▲ 5.0 ②欧州債務危機 深刻化('11/8) ▲ 6.0 (月/日) (注)同日に複数調査がある場合は平均値。 (資料)What UK Thinks EUより、みずほ総合研究所作成 リスク許容度 低い (年) (注)動学的因子モデルから抽出される13の金融指標の共変動が投資家の リスク許容度を表すとした。 (資料)Datastream、Bloombergなどより、みずほ総合研究所作成 図表3 Brexitの場合のドル円相場、日経平均への影響試算 過去のイベント リスク許容度指数 の5月実績とイベ ント発生時の差 推計値(当月の変化) ドル円相場 (単位:円) 日経平均 (単位:円) 2008年10月 ①リーマン・ショッ ク直後 ▲ 5.4 ▲ 5.9 ▲ 3,276 2011年8月 ②欧州債務危機 の深刻化 ▲ 3.9 ▲ 4.3 ▲ 2,381 2016年1月 ③欧銀健全性へ の懸念の高まり ▲ 1.6 ▲ 1.7 ▲ 940.4 (注)ドル円相場、日経平均株価、米日10年債利回り差、リスク許容度指数からなる4変数VARモデルを構築し、 インパルス応答関数により推計。推計値は、現状水準(ドル円相場:1ドル=110円、日経平均:16,000円) を基準に計算。推計期間は2008年1月から2016年5月。 (資料)Datastreamより、みずほ総合研究所 2 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) 2.ユーロ圏経済の概況:4~6 月期の景気回復テンポは緩やか 1~3 月期のユーロ圏成 1~3 月期のユーロ圏GDPは前期比+0.5%と、1 年ぶりの高い伸びとな 長率は高い伸び。消費回 った(図表 4)。 需要項目の内訳は 3 次推計値(6/7 公表)を待つ必要があるが、 復に加え、暖冬などが成 ドイツやフランスの結果を踏まえると、個人消費が回復を続けたほか、一時 長率を押し上げた模様 的要因の影響もあって固定投資が拡大し、成長率を押し上げたと推察される。 ドイツのGDP成長率は前期比+0.7%に加速した(図表 5)。良好な雇用環 境を背景に個人消費が改善したほか、固定投資が増加した。もっとも、輸出 の低調さや企業の慎重な投資計画などを踏まえると、固定投資の増加は、企 業の投資意欲の高まりを示すわけではないだろう。固定投資の内訳をみると、 建設投資と機械設備投資が共に増加したが、前者については暖冬により上振 れたとみられる(連邦統計庁も同様に指摘)。後者に関しては、難民問題に関 連した政府の投資増が影響したと考えられる。 フランスのGDP成長率は、個人消費を中心に前期比+0.5%へ加速した。 個人消費は、パリ市内で発生したテロの影響で 10~12 月期に落ち込んでお り、1~3 月期にその反動が生じたと思われる(10~12 月期同▲0.1%→1~3 月期同+1.2%)。 4~6 月期のユーロ圏景 気回復テンポは緩やか 4~6 月期に関しては、ユーロ圏の景気回復テンポは緩やかであるようだ。 GDP成長率との連動性の高い合成PMIは、5 月(52.9)も景気判断の節目 となる 50 を上回ったが、4 月(53.0)とほぼ同水準にとどまった(図表 6)。発 表元の Markit 社は、製造業、サービス業とも生産や受注の改善テンポが減 速したと述べている。 ユーロ圏各国は総じて 5 月初旬に出揃った各国の中期財政計画(安定レポート)を集計すると、 2016 年に一段の財政緩 2016 年のユーロ圏構造的財政赤字(GDP比)は 1.0%となり、昨秋時点の 和を計画。従来の財政計 2016 年当初予算案ベースの赤字(0.7%)を上回った(図表 7)。ユーロ圏全体 画からの逸脱となるが、 では、昨秋時点と比べ、緩和気味の財政政策が計画されているということだ。 欧州委は厳しい措置を 主要国ではいずれも、ドイツを除き、安定レポートにおける 2016 年の構 講じない見込み 造的財政赤字が、当初予算案における赤字を上回っている。この結果、スペ インに関しては、 「過剰財政赤字」の是正が遅れることになる。過剰財政赤 字とはGDP比 3%を超える財政赤字のことであり、スペインは 2016 年中に 赤字を 3%以下まで是正するはずだった。安定レポートを踏まえると、赤字 が 3%以下に縮小するのは 2017 年となる。 各国の財政計画は、昨夏に欧州委員会が承認していた計画よりも緩和的で ある。欧州の財政ルール上、欧州委は計画の是正を求めたり、場合によって は、罰則を勧告したりすることが可能である。しかし、景気回復テンポが緩 やかな中、欧州委は成長を重視し、従来の計画からの逸脱に対して厳しい措 置を講じるつもりはない模様である。既にスペインに関して、欧州委は、過 剰財政赤字の是正期限を 1 年延長すべきとの勧告を公表した。 3 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) 図表 4 ユーロ圏・主要国のGDP成長率 図表 5 (前期比、%) ドイツ・フランスのGDP成長率 (前期比、%) 1.0 1.0 0.8 0.8 0.6 0.6 0.4 0.4 0.2 0.2 0.0 0.0 ▲ 0.2 ▲ 0.2 ▲ 0.4 ▲ 0.4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 2014 Q3 Q4 15 ユーロ圏 ドイツ イタリア スペイン フランス Q1 ▲ 0.6 2015Q4 16 (年/四半期) (資料)Eurostat、各国統計局よりみずほ総合研究所作成 図表 6 図表 7 16Q1 フランス 固定投資 実質GDP 外需 個人消費 ユーロ圏・主要国の構造的財政収支 (構造的財政赤字(GDP比)、%) 2.0 2016年春時点の想定 1.8 10~12月平均 1~3月平均 54 1.8 2015年秋時点の想定 1.6 53 1.4 拡 52 張 1.2 ← 4・5月平均 1.2 1.0 51 0.8 景 50 気 0.6 1.3 1.2 1.0 0.7 0.7 → 0.4 49 縮 48 小 2015Q4 (資料)各国統計局よりみずほ総合研究所作成 ユーロ圏PMI (Pt) 55 16Q1 ドイツ 在庫投資 政府支出 0.5 0.2 合成PMI 2014/5 製造業 サービス業 15/5 16/5 (年/月) ユーロ圏 0.0 ドイツ フランス イタリア スペイン (注) ユーロ圏は、各国収支の加重平均値。 (資料) 各国財務省よりみずほ総合研究所作成 (資料)Markit よりみずほ総合研究所作成 図表 8 0.0 0.0 ユーロ圏景気の全体感を示す主要統計 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016 2015/12 2016/01 2016/02 2016/03 2016/04 2016/05 ユーロ圏(19カ国) 前期比、% 0.3 0.3 0.5 n.a. - - - - - - ドイツ 前期比、% 0.3 0.3 0.7 n.a. - - - - - - フランス 前期比、% 0.4 0.3 0.5 n.a. - - - - - - イタリア 前期比、% 0.2 0.2 0.3 n.a. - - - - - - スペイン 前期比、% 0.8 0.8 0.8 n.a. - - - - - - ユーロ圏合成PMI Pt 53.9 54.1 53.2 53.0 54.3 53.6 53.0 53.1 53.0 52.9 ユーロ圏製造業PMI Pt 52.2 52.8 51.7 51.6 53.2 52.3 51.2 51.6 51.7 51.5 ユーロ圏サービス業PMI Pt 54.0 54.2 53.3 53.1 54.2 53.6 53.3 53.1 53.1 53.1 長期平均=100 104.4 106.2 104.0 103.9 106.6 105.0 103.9 103.0 103.9 n.a. 1.4 1.5 1.7 1.5 - - - - - - 末値、% 0.05 0.05 0.00 n.a. 0.05 0.05 0.05 0.00 0.00 n.a. 末値、% 0.59 0.64 0.16 n.a. 0.64 0.27 0.11 0.16 0.28 n.a. 末値、€/$ 1.12 1.09 1.14 n.a. 1.09 1.08 1.09 1.14 1.15 n.a. ユーロ圏ESI 専門家調査(当年のユーロ圏GDP成長率、%) ECB主要政策金利 ドイツ10年国債利回り ユーロ/ドル (資料)Eurostat、欧州委員会経済金融総局、ECB、Markit、Datastream よりみずほ総合研究所作成 4 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) 3.ユーロ圏内外需動向:輸出・生産は減少。設備投資計画は下方修正 ユーロ圏輸出は減少基 調から脱せず ユーロ圏の輸出は減少基調である。3 月のユーロ圏域外輸出(国際収支統計 の財・サービス輸出金額)は前月比+0.3%と 5 カ月ぶりに増加したが、反発 力を欠いた。貿易統計より仕向地毎の財輸出の動向をみると、米国向けや南 米・アフリカ向けの減少基調が続いたほか、2 月に底入れの兆候がうかわが われた中国向けや NIEs・ASEAN 向けが落ち込んだ(図表 9)。 4 月以降の輸出を考えると、新興国景気の弱さに加え、英国景気の減速が 気懸りである。連関表による試算(※2)では、英国の内需が 1%減少すると、 ユーロ圏・主要国の輸出は 0.05%前後の減少が見込まれている(図表 10)。 影響は軽微なようにもみえるが、英国向け以外の輸出の低調さを踏まえれば、 輸出の下振れ要因として注意しておくべきだろう。 ユーロ圏生産は 2 カ月連 続の減少 3 月のユーロ圏鉱工業生産は前月比▲0.8%と、2 カ月連続で減産となった (図表 11)。主要国の結果をみると、ドイツやフランスで減産が続いたほか、 イタリアでは生産が停滞した。スペインは増産となったが、輸送機械に偏っ ており、4 月に反動減が生じる可能性がある。 ユーロ圏製造業の設備 投資計画は下方修正 英国の国民投票に関連した不透明感が強い中、ユーロ圏企業は、輸出セク ターを中心に、設備投資に慎重になっている模様である。欧州委員会の調査 では、ユーロ圏製造業の 2016 年の設備投資は+5.5%の増加が計画されてい る(図表 12)。伸び率の水準は高めだが、半年前の計画(+6.4%)からは下方 修正となっている。 ユーロ圏消費は改善テ ンポが減速 ユーロ圏の個人消費は改善テンポが減速している。3 月の小売数量は前月 比▲0.5%と、5 カ月ぶりに減少した。また、4 月の新車登録台数は同+1.2% と増加したが、均してみれば横ばい圏での推移にとどまっている。 ユーロ圏の雇用は改善 ユーロ圏の雇用は改善しており、3 月のユーロ圏失業者数は前月差▲226 千人と減少した。一方、4 月のユーロ圏企業の雇用見通しDIはプラス圏と なったが、春先からの低下傾向が続いた。今後も雇用は改善するものの、そ のテンポは緩慢となる見通しだ。 (※2) Timmer, M. P., Dietzenbacher, E., Los, B., Stehrer, R. and de Vries, G. J. (2015), "An Illustrated User Guide to the World Input–Output Database: the Case of Global Automotive Production", Review of International Economics., 23, pp.575~605 5 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) 図表 9 ユーロ圏仕向地別輸出金額 図表 10 英景気減速のユーロ圏輸出への影響 (各国輸出の減少幅、%) (2014/9=100) 115 フランス 110 ユーロ圏 105 スペイン 100 95 ドイツ 90 イタリア 85 全般に減少傾向 0.00 80 2014/9 14/12 15/3 EU向け NIEs・ASEAN向け 中国向け 15/6 15/9 15/12 16/3 (年/月) 米国向け 南米・アフリカ向け 0.02 0.04 0.06 0.08 (注)英国の内需が 1%減少した時のユーロ圏・主要国輸出 への影響を試算したもの。 (資料)Timmer et al(2015)よりみずほ総合研究所作成 (資料)Eurostat よりみずほ総合研究所作成 図表 11 ユーロ圏・主要国の鉱工業生産 図表 12 (2014/9=100) 105 104 103 102 101 100 99 98 2014/9 14/12 ユーロ圏 フランス 15/3 15/6 ドイツ イタリア 15/9 Q3 2015 外需 雇用 当年秋時点 実績 計画 ユーロ圏内外需関連統計 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016 2015/12 2016/01 2016/02 2016/03 2016/04 2016/05 鉱工業生産 ユーロ圏(19カ国) 前期比、% 0.3 0.4 0.9 n.a. ▲ 0.5 2.4 ▲ 1.2 ▲ 0.8 n.a. n.a. ドイツ 前期比、% 0.0 ▲ 0.6 1.6 n.a. 0.1 2.8 ▲ 1.1 ▲ 1.0 n.a. n.a. フランス 前期比、% 0.4 0.6 ▲ 0.6 n.a. ▲ 0.8 1.2 ▲ 1.4 ▲ 0.3 n.a. n.a. イタリア 前期比、% 0.4 ▲ 0.0 0.6 n.a. ▲ 0.6 1.7 ▲ 0.7 0.0 n.a. n.a. スペイン 前期比、% 0.6 0.6 0.1 n.a. 0.0 ▲ 0.2 ▲ 0.3 1.2 n.a. n.a. % 81.1 81.5 81.9 n.a. - - - - - - 前期比、% ▲ 2.0 1.4 ▲ 0.9 n.a. ▲ 0.1 ▲ 1.1 0.1 n.a. n.a. n.a. ユーロ圏設備稼働率 ユーロ圏製造業受注 (大型輸送機器除く) ユーロ圏経常収支 億ユーロ 27.4 28.1 24.2 n.a. 26.9 26.2 19.2 27.3 n.a. n.a. ユーロ圏財・サービス輸出 前期比、% ▲ 1.6 0.9 ▲ 1.4 n.a. ▲ 0.6 ▲ 0.1 ▲ 1.5 0.3 n.a. n.a. ユーロ圏財・サービス輸入 前期比、% ▲ 1.3 0.5 ▲ 2.1 n.a. ▲ 0.5 0.1 ▲ 1.0 ▲ 3.0 n.a. n.a. ユーロ圏実質雇用者報酬 前期比、% 0.7 0.7 n.a. n.a. - - - - - - % 10.7 10.5 10.3 n.a. 10.4 10.4 10.4 10.2 n.a. n.a. ユーロ圏小売数量 前期比、% 0.7 0.2 0.7 n.a. 0.6 0.3 0.3 ▲ 0.5 n.a. n.a. ユーロ圏新車登録台数 前期比、% 2.3 3.3 3.0 n.a. 3.8 0.3 ▲ 0.3 ▲ 1.5 1.2 n.a. ユーロ圏失業率 家計 当年春時点 (資料)欧州委員会よりみずほ総合研究所作成 (資料)Eurostat、ECBよりみずほ総合研究所作成 企業 2014 2016 伸び率の水準は高め。 ただし半年前から下方修正 前年秋時点 15/12 16/3 スペイン (年/月) 図表 13 2013 2015 (前年比、%) 金融危機前のレンジ 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 ▲ 2.0 ▲ 4.0 ▲ 6.0 ▲ 8.0 ▲ 10.0 ユーロ圏製造業企業の設備投資計画 (資料)Eurostat、欧州委員会経済金融総局、ECBよりみずほ総合研究所作成 6 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) 4.ユーロ圏物価動向:インフレ率はマイナス圏にとどまる 4 月のユーロ圏インフレ 4 月のユーロ圏インフレ率(消費者物価)は前年比▲0.2%となり、3 カ月連 率はマイナス。ユーロ安 続でマイナス圏にとどまった(図表 14)。エネルギー物価の下落幅が前月並み の押し上げ効果が縮小 となったほか、コア・インフレ率(エネルギー・食品等を除く)が低下した。 してきた模様 コア・インフレ率の内訳では、サービス物価上昇率が低下し、非エネルギ ー工業品物価上昇率は伸び悩んだ。前者に関しては、イースター休暇時期の ずれ(2015 年は 4 月→2016 年は 3 月)の影響を受けた、パッケージ旅行価格 や航空運賃の下落で殆ど説明可能である(図表 15)。一方、後者については、 ユーロ安の押し上げ効果が弱まってきたことを示唆している。推計によると、 非エネルギー工業品物価上昇率に対するユーロ安の押し上げ効果は、1~3 月 期がピークであり、4~6 月期以降はその効果が縮小していく(図表 16)。 今後については、油価の反発を主因に、ヘッドラインのインフレ率はプラ ス圏に復すると予想される。一方、コア・インフレ率は当面横ばい圏での推 移にとどまるみられる。この結果、プラス圏に復した後のヘッドラインのイ ンフレ率の上昇テンポは、緩慢となるだろう。コア・インフレ率が横ばい圏 となるのは、ユーロ安による押し上げ効果の縮小に加え、賃金上昇率が低位 にとどまると予想されるからだ。5 月に公表された欧州中央銀行(ECB)の 経済報告(Economic Bulletin)では、足元にかけての賃金上昇率の伸び悩み は、過去の低インフレに強く影響されている可能性があると指摘されている。 ECB理事会は政策効 金融政策の現状維持が決定された 4 月のECB理事会以降、政策効果を見 果を見極める方針。目先 極めたいとの理事会メンバーの発言が目立つ。状況次第では追加緩和を辞さ の注目は初回 TLTRO2 の ないという姿勢は従来通りだが、マイナス金利の弊害が注目される中では追 結果 加緩和バイアスを強調しづらく、まずは、6 月に開始される「貸出促進のた めの資金供給オペ第 2 弾(TLTRO2)」 の結果を待ちたいということなのだろう。 ユーロ圏金融機関全体でみれば、 初回 TLTRO2 で借入可能な金額は最大で約 1.4 兆ユーロとなる(図表 17)。金融機関は、企業・家計の資金需要やインタ ーバンク市場の状況などを踏まえ、オペの入札に臨む。 入札額を評価する上では、TLTRO1(貸出促進オペ第 1 弾)の早期返済の影響 を割り引く必要があろう。金融機関には、TLTRO1 を早期返済し、金利の低い TLTRO2 に借り換えるインセンティブがあるからだ。ユーロ圏金融機関は、こ れまで TLTRO1 で総額 0.4 兆ユーロを借り入れている。TLTRO2 の結果は、こ うした様々な要因に依存して決まることになる。 7 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) 図表 14 ユーロ圏インフレ率 (前年比、%) 1.5 図表 15 ユーロ圏サービス物価上昇率 1.2 (前年比、%) (前年比の前月差、%pt) 0.6 イースター休暇時期 (前年比、%) 1.0 のずれが影響したと みられる 0.8 1.5 1.4 0.4 1.3 0.9 0.6 0.2 0.6 0.4 0.0 0.2 ▲ 0.2 0.0 ▲ 0.4 ▲ 0.2 ▲ 0.6 ユーロ安効果 の縮小か 0.3 0.0 ▲ 0.3 2015/4 15/7 15/10 ユーロ圏インフレ率 非エネルギー工業品(右目盛) 16/1 サービス 16/4 (年/月) 1.1 1.0 0.9 4月の低下を 2品目でほぼ 説明可能 2015/4 15/7 その他 パッケージ旅行 15/10 0.8 0.7 16/1 16/4 航空運賃 (年/月) サービス全体(右目盛) (資料)Eurostat よりみずほ総合研究所作成 (資料) Eurostat よりみずほ総合研究所作成 図表 16 為替変動が財物価に及ぼす影響の推計 (前年比、%) 0.8 1.2 図表 17 新たな資金供給オペでの借入可能額 うち、為替面からの影響(推計値) 非エネルギー工業品物価上昇率 実施月 TLTRO2での借入可能な額 0.6 1.4兆ユーロ =①2016年1月末の民間向け貸出残高の 30%(1.6兆ユーロ)-②2014年のTLTRO1 で供給された額(0.2兆ユーロ) 1回目 2016年6月 0.4 0.2 以下、②が2016年6月に全額早期返済された場合 0.0 ▲ 0.2 2回目 2016年9月 ①から、初回TLTRO2での借入を除いた 金額 3回目 2016年12月 ①から、初回・第2回TLTRO2での借入を 除いた金額 4回目 2017年3月 ①から、初回・第2回・第3回LTRO2での借 入を除いた金額 ▲ 0.4 ▲ 0.6 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 2014 15 16 (年/四半期) (資料)Eurostat などよりみずほ総合研究所作成 (資料)ECBよりみずほ総合研究所作成 図表 18 ユーロ圏物価関連統計 Q3 2015 物価 商品 ユーロ圏インフレ率 コア(エネルギー・ 食品等除く) エネルギー Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016 2015/12 2016/01 2016/02 2016/03 2016/04 2016/05 0.1 0.2 0.0 n.a. 0.2 0.3 ▲ 0.2 ▲ 0.0 ▲ 0.2 n.a. 前年比、% 0.9 1.0 1.0 n.a. 0.9 1.0 0.8 1.0 0.7 n.a. 前年比、% ▲ 7.2 ▲ 7.2 ▲ 7.4 n.a. ▲ 5.8 ▲ 5.4 ▲ 8.1 ▲ 8.7 ▲ 8.7 n.a. 食品・アルコール・タバコ 前年比、% 1.2 1.4 0.8 n.a. 1.2 1.0 0.6 0.8 0.8 n.a. 非エネルギー工業品 前年比、% 0.4 0.5 0.6 n.a. 0.5 0.7 0.7 0.5 0.5 n.a. サービス 前年比、% 1.2 1.2 1.1 n.a. 1.1 1.2 0.9 1.4 0.9 n.a. ドイツ・インフレ率 前年比、% 0.0 0.3 0.1 n.a. 0.2 0.4 ▲ 0.3 0.2 ▲ 0.3 n.a. フランス・インフレ率 前年比、% 0.1 0.2 0.0 n.a. 0.3 0.3 ▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.1 n.a. イタリア・インフレ率 前年比、% 0.3 0.2 ▲ 0.0 n.a. 0.1 0.4 ▲ 0.3 ▲ 0.3 ▲ 0.4 n.a. スペイン・インフレ率 前年比、% ▲ 0.6 ▲ 0.5 ▲ 0.8 n.a. ▲ 0.1 ▲ 0.4 ▲ 1.0 ▲ 1.0 ▲ 1.2 n.a. 生産者物価(消費財) 前年比、% ▲ 0.6 ▲ 0.2 ▲ 0.4 n.a. ▲ 0.3 ▲ 0.2 ▲ 0.4 ▲ 0.6 n.a. n.a. 輸出物価 前年比、% 2.8 2.3 n.a. n.a. 2.9 1.4 ▲ 0.4 n.a. n.a. n.a. 輸入物価 前年比、% ▲ 2.1 ▲ 2.6 n.a. n.a. ▲ 1.2 ▲ 2.3 ▲ 4.8 n.a. n.a. n.a. ブレント原油(ユーロ建て) 前年比、% ▲ 41.0 ▲ 34.5 ▲ 34.3 n.a. ▲ 30.9 ▲ 31.1 ▲ 40.4 ▲ 32.5 ▲ 31.6 n.a. (資料) Eurostat、Datastream よりみずほ総合研究所作成 8 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) 5.英国経済の概況:国民投票を控え景気の減速感が強まる 経済指標は景気減速を 今月に発表された経済指標は、英景気の回復テンポが減速していることを 示唆。国民投票を前に企 示すものが多い。EU離脱の是非を問う国民投票の実施を控え、先行きに対 業の慎重姿勢が強まっ する不透明感が強まっている。実際、英国の経済政策の不透明感を示す指数 ている模様 は(※3)、過去最高水準まで上昇している(図表 19)。こうした中、企業は投 資・雇用に対する慎重姿勢を強めているようである。 PMIは一段と低下。製 造業は 50 割れ 4 月の合成PMIは、51.9 となり、景気判断の節目である 50 を上回るも、 3 月から一段と低下した(図表 20)。内訳をみると、サービス業PMI(52.3) が低下し、製造業PMI(49.2)は 50 割れとなった。発表元の Markit 社は、 国民投票を前に不透明感が高まって顧客が支出を遅らせているなどの企業 の回答を、PMI低下の背景として挙げている。 小売は均せば横ばい圏、 新車登録台数は減少 4 月の小売数量(前月比+1.3%)は増加した。とは言え、2・3 月分の落ち 込みを取り戻した程度にとどまり、均せば、小売数量は横ばい推移である。 また、4 月の新車登録台数(同▲6.6%)は急激に落ち込んだ。振れの大きい統 計であるため翌月に反動増が予想されるが、以下に述べる雇用・賃金の動向 を踏まえると、反発力を欠くと思われる。 就業者数は大幅増だが 3 月の就業者数(3 カ月移動平均)は前月差+49 千人と大幅に増加したが、 一時的である可能性。賃 一時的だろう(図表 21)。企業の雇用見通しDIが引き続きゼロ近傍にとどま 金上昇率は低下 り、企業の採用意欲の弱さが示唆されるためだ。また、3 月の民間賃金(賞与 除く、3 カ月移動平均)は前月比+0.1%と、増加テンポが減速しており、賃 金上昇圧力も弱い模様である。これらを踏まえると、家計所得の改善テンポ は鈍化が予想される。 BOEは政策の現状維 イングランド銀行(BOE)は、5 月の金融政策委員会(MPC)において、 持を決定。景気見通しは 全会一致で政策の現状維持を決定した。同時に発表されたインフレ報告書で 下方修正 は、GDP成長率の見通しが下方修正された(図表 22)。見通しは、英国がE Uにとどまることを前提としているが、投票を前にした不透明感の強まりが 4~6 月期の景気を下押しすることが反映され、下方修正となった。 カーニー総裁は、 「国民投票が見通し上の最大のリスク」と指摘した。総 裁は、仮に英国がEUより離脱する場合、MPCは物価と成長・雇用の「ト レード・オフ」に直面すると指摘した。離脱の場合、景気が急減速し、景気 後退に陥る可能性があって、これらは利下げ圧力となる。一方、ポンドが減 価することでインフレ率が上昇し、これは利上げ圧力となる。MPCは利上 げ・利下げのどちらを選択するかジレンマに陥ることになると、総裁は説明 した。 (※3) Scott, R. B., Bloom, N., Davis, B.J.(2015), "Measureing Economic Pollicy Uncertainty", NBER Working Paper, 21633 以上 9 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) 図表 19 英経済政策に関する不透明感指数 (長期平均=100) 500 62 図表 20 英PMI 合成PMI 製造業 (Pt) 60 58 300 拡 56 張 54 ← 400 52 景 50 気 48 200 → 100 0 1998 2000 02 04 06 08 10 12 14 16 (年) (注)英主要紙上の不透明関連ワードをカウント。 (資料)Sott et al.(2015)よりみずほ総合研究所作成 図表 21 (前月差、千人) 200 46 縮 小 44 2014/4 図表 22 160 120 0.4 80 0.3 40 0.2 0 0.1 ▲ 40 0.0 2.4 2.3 ▲ 120 2014/3 14/9 15/3 就業者数(3カ月平均) 民間賃金(賞与除く・3カ月平均、右目盛) 16/4 (年/月) BOEの成長率見通し (前年比、%) 2016Q1は下振れ。Q2以降、翌年に かけては下方修正 2.2 2.1 2.0 2016/2月時点 1.9 2016/5月時点 (2016Q1は実績値) 1.8 雇用の急増は ▲ 0.1 一時的の模様 ▲ 0.2 15/9 16/3 ▲ 80 15/4 (資料)Markit よりみずほ総合研究所作成 英雇用関連統計 (前月比、%) 0.6 賃金上昇率は 0.5 急低下 サービス業 1.7 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 2016 (年/月) (資料)英統計局よりみずほ総合研究所作成 Q3 Q4 17 (年/四半期) (資料)BOEよりみずほ総合研究所作成 図表 23 英景気の全体感を示す主要統計 Q3 2015 Q4 2015 Q1 2016 Q2 2016 2015/12 2016/01 2016/02 2016/03 2016/04 2016/05 成長率 実質GDP 0.4 0.6 0.4 n.a. - - - - - - 景況感 合成PMI Pt 55.1 55.5 54.2 51.9 55.3 56.2 52.7 53.6 51.9 n.a. 製造業PMI Pt 51.9 53.1 51.4 49.2 51.8 52.9 50.7 50.7 49.2 n.a. サービス業PMI Pt 55.4 55.4 54.0 52.3 55.5 55.6 52.7 53.7 52.3 n.a. 前期比、% 企業 鉱工業生産 前期比、% 0.2 ▲ 0.4 ▲ 0.4 n.a. ▲ 1.1 0.6 ▲ 0.2 0.3 n.a. n.a. 外需 財輸出 前期比、% ▲ 5.6 ▲ 1.2 0.7 n.a. ▲ 0.5 0.4 1.1 1.9 n.a. n.a. 財輸入 前期比、% 0.9 0.6 1.9 n.a. ▲ 3.6 5.1 ▲ 1.1 0.6 n.a. n.a. 雇用 失業率 民間賃金(賞与除く、 3カ月平均) 小売数量 % 5.4 5.1 5.1 n.a. 5.1 5.1 5.1 5.1 n.a. n.a. 前期比、% 0.4 0.4 0.8 n.a. 0.3 0.3 0.4 0.1 n.a. n.a. 前期比、% 1.0 1.1 0.9 n.a. ▲ 1.3 2.1 ▲ 0.8 ▲ 0.5 1.3 n.a. Nationwide住宅価格指数 前年比、% 3.5 4.0 5.0 n.a. 4.4 4.4 4.8 5.7 4.8 n.a. 家計 物価 消費者物価指数 金融 主要政策金利 英10年国債利回り ポンドドル 前年比、% 0.0 0.1 0.3 n.a. 0.2 0.3 0.3 0.5 0.3 n.a. 末値、% 0.50 0.50 0.50 n.a. 0.50 0.50 0.50 0.50 0.50 n.a. 末値、% 2.11 2.29 1.84 n.a. 2.29 1.93 1.79 1.84 1.99 n.a. 末値、£/$ 1.51 1.47 1.44 n.a. 1.47 1.42 1.39 1.44 1.46 n.a. (資料)英統計局、Nationwide、Markit、Datastream よりみずほ総合研究所作成 10 みずほ欧州経済情報(2016 年 5 月号) 2016年 5月 2 6 日 発行 欧米調査部上席主任エコノミスト 吉田健一郎 03-3591-1265 kenichi ro.yoshid a@mizuho- ri.co.jp 欧米調査部主任エコノミスト 松本 惇 03-3591-1199 atsushi .matsumot o@mizuho- ri.co.jp ●当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではあり ません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき作成されておりますが、その正確 性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されるこ ともあります。
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