プロジェクトの概要(PDF / 518KB)

2016.5.23
日本財団
子どもの貧困対策に 50億円 -日本財団
ベネッセらとプロジェクトチーム発足、秋にも埼玉・戸田に第一号拠点
日本財団(会長・笹川 陽平)は、子どもへの支援をさらに強化するため、「日本財団子どもサ
ポートプロジェクト」として、関連事業を一体的に運営することになりました。昨今、深刻化する子
どもの貧困問題を受け、子どもの貧困対策を重点支援分野と位置づけ、日本財団は50億円を
用意いたします。
また、子どもの貧困対策のモデル事業として、子どもの自立する力を育む「家でも学校でもな
い第三の居場所」を設置するべく、株式会社ベネッセホールディングス(以下、ベネッセ)ら様々
なパートナーとともにプロジェクトチームを発足させます。
(1)子どもサポートプロジェクト -子どもの貧困対策に 50 億円
日本財団は、特別養子縁組支援や難病児支援、不登校児への教育支援など「生きにくさ」を
抱える子どもたちへ多くの支援を行なってまいりました。今般、子どもへの支援をさらに強化する
ため、関連事業を「日本財団子どもサポートプロジェクト」として一体化させることになりました。
我が国の子どもの貧困率(※)は増加傾向にあり、6 人に 1 人の子どもが貧困状態にあるとい
われています。また、子どもの貧困がもたらす経済的影響は、昨年 12 月に発表した日本財団の
調査によれば、一学年あたり2.9兆円と推計されており、まさに国民的課題となっています。
深刻化する問題を受け、日本財団は、子どもの貧困対策をサポートプロジェクトの重点支援分
野として位置づけ、民間の立場から問題解決に取り組むモデル事業を実施することといたしまし
た。日本財団は、事業実施のために必要な予算として 50 億円を用意いたします。
※子どもの貧困率:国民を可処分所得の順に並べ、その真ん中にくる人の半分以下しか所得がない世帯(=
相対的貧困の世帯)の 18 歳未満の子どもの割合
(2)家でも学校でもない第三の居場所 -全国に 100 カ所設置予定、戸田市に第一号拠点
都市化が加速し、コミュニティが弱体化する現代においては、貧困世帯が孤立し、支援につな
がらず、結果として問題の深刻化を招いています。そこで、今回のプロジェクトでは、「家でも学校
でもない第三の居場所」を設け、地域社会とつながる場所づくりを目指します。日本財団は、この
拠点を全国に 100 カ所設置することを目標としています。第一号拠点は 2016 年 11 月(予定)に
埼玉県・戸田市に設置いたします。
(3)「社会的相続」への注目 -ベネッセらとプロジェクトチーム形成
国内外の調査研究を通じて、我々は、貧困の連鎖と「社会的相続」(『自立する力』の伝達行為)
に密接な関係があると考えています。そこで、拠点では専門スタッフのほか、大学生等によるボラ
ンティアを配置し、生活習慣の形成、学習支援、体験活動等のサービスを提供することで、子ど
もたちの自立する力を育みます。
事業実施にあたっては、多くのパートナーとチームを形成し、協働して取り組みます。中でも、
ベネッセはチーム形成当初より日本財団の事業構想にご賛同頂き、拠点のサービス設計や子ど
もの教育や生活に関するノウハウについてご協力頂くことになっています。
また、本プロジェクトでは、子どもの貧困問題の有効な解決策を模索するべく、研究者の協力の
もと、効果の検証を行ないます。
[資料①]
●子どもの貧困について
我々は、子どもの貧困問題を経済問題として捉えるべきだと考えております。貧困の連鎖を放置すれば、所得の
低い層が増えることによって国内市場が縮小するほか、所得減少に伴って税金・保険料の支払額が減少することで
政府収入にも大きな影響を与えます。
子どもの貧困の社会的損失推計(現在 15 歳の 1 学年のみ) 出典:日本財団(2015)
●「社会的相続」とは
社会的相続とは、「自立する力」の伝達行為です。エスピン=アンデルセンは、従来の所得のみに注目した議論
を批判し、社会的相続こそが格差の根底にあると指摘しました。貧困を背景とした親から子への「負の社会的相続」
が、子どもの将来の自立する力を奪う可能性があります。
また、支援は低年齢期に行われれば行われるほど、効果が期待できるとされており、海外では先行研究におい
て、低年齢期の支援の有効性が実証されつつあります。
※社会的相続のイメージ
※低年齢期に支援することへの有効性 [人的資本の投資対効果の推移モデル]
出典/原出典:丸山圭(2014)p.37、Heckman et al(2005)p.110
[資料②]
●全国展開するにあたってのプロジェクトチームを結成・順次拡大
本プロジェクトは日本財団が全体をコーディネートし、各社が得意分野の強みを持ち寄って最適なスキームを構築。
子どもたちへの支援サービスを一元化にて提供します。
●今後の展開について
施設・運営経費については、当面日本財団の資金で実施を予定しています。将来的には、各自治体での「子ども
の未来応援基金」「子どもの未来応援交付金」との連動により、一層の拡大を図る予定です。
●「日本財団子どもサポートプロジェクト」関連事業
1:「日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト」
日本財団は、産みの親が育てることのできない赤ちゃん達が、愛情のある家庭で育つことのできる社会を目指し、特
別養子縁組の推進活動を行っています。2013 年から開始した「日本財団ハッピーゆりかごプロジェクト」では、特別養
子縁組の普及・啓発活動や調査研究のほか、民間養子縁組団体への資金協力も行っています。
2:「日本財団夢の奨学金」
日本財団は、2016 年度より、社会的養護出身者の進学や就職を応援するため、奨学金、生活費、住居費を給付する
新しい奨学金制度「日本財団夢の奨学金」を開始しました。日本財団夢の奨学金ソーシャルワーカーが奨学生に伴
走し、卒業や就職までの間、随時奨学生の相談に対応する、これまでにない奨学金制度です。
3:「子どもの貧困の社会的損失推計」レポート
子どもの貧困は、非常に重要な問題でありながら、この問題が社会にもたらす負のインパクトを定量的に分析した研
究や文献はほとんど存在しません。子どもの貧困は決して「他人事」ではなく、国民一人ひとりに影響しうる「自分事」
であると多くの方に認識していただくため、子どもの貧困の放置による経済的影響に関する日本初の推計を行い、
2015 年より複数のレポートを発表しました。